おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シェーン

2019-07-06 10:24:35 | 映画
「シェーン」 1953年 アメリカ


監督 ジョージ・スティーブンス
出演 アラン・ラッド
   バン・ヘフリン
   ジーン・アーサー 

ストーリー
1890年の初夏、ワイオミングの高原に1人の旅人が漂然とやってきた。
男は移住民の1人ジョー・スターレットの家で水をもらい、家族の好意で1晩泊めてもらうことになった。
男は名をシェーンと名乗った。
妻マリアン、1人息子ジョーイと3人暮らしのジョーは、かねて利害の反する牧畜業者ライカーに悩まされていたので、冬まででも働いてくれないかとシェーンに頼んだ。
シェーンは、何か心に決めたことがあるらしく、町の酒場でライカーの手下から喧嘩を売られたときも、相手にならなかった。
図に乗ったライカー一味は、シェーンが再び酒場に現れた時にまた彼に絡んだが、今度はジョーの応援を得てシェーンは群がる相手を叩き伏せ酒場を引き揚げた。
怒ったライカーはシャイアンから殺し屋のウィルスンという男を呼び寄せ、移住民の1人、短気なトリーがウィルスンのピストルの最初の犠牲となった。
ライカーに農場の明け渡しを要求され、農民一同のために命を捨てる決心をしたジョーは単身敵の酒場に乗り込もうとしたが、シェーンはジョーを殴って気を失わせて、マリアンに別れを告げ敵地に歩みを進めた。
酒場で、さすがのウィルスンも一瞬早いシェーンのピストルに斃れた。
殆ど同時に3発目の弾がライカーを倒していた。
酒場を出ようとするシェーンの後を狙ったライカーの弟も一瞬のうちに命を失った。
酒場の表に立つジョーイに、立派な男になれと言ってシェーンは馬にのって去って行った。
その後ろ姿に呼びかけるジョーイの叫び声が、ワイオミングの荒野にこだましていた。


寸評
流れ者がやって来て正義側の世話になり、悪人をやっつけて去っていくという内容である。
ヤクザ映画の多くが旧来の風習を守る側を正義とし、新時代に即した資本側を悪として描くのに対し、「シェーン」では開拓者として苦労したライカーが悪者で、後から入植してきたスターレットたちが正義側になっている。
ライカーは旧来型の放牧による牧畜を行っていて広い土地を必要としており、スターレットは牛舎による家畜生産を目指している。
ライカーがスターレットたちを暴力で排除しようとするのは洋の東西を問わずお決まりの設定で目新しくはない。
この映画に傑作の評価を与えているのは作品全体のアンサンブルだ。
まず背景となる景色がいい。
ワイオミングの美しい山間風景が平和な世界を印象付ける。
オープニングと共に流れるテーマ曲の「遥かなる山の呼び声」が脳裏に残り、この平和を壊す者としてライカーが登場する。

ライカーは悪役には違いないが、憎らしくて仕方がない悪役には見えない。
スターレットたちが非暴力で戦っているから存在出来ている悪役たちで、取り巻きの連中も含めて対決することが出来ない暴力集団という気がしない。
一味の一人が改心する経緯も上手く描き切れていたとは言い難い。
僕は世評ほどこの作品を評価していないのだが、その原因はこの圧倒的でない対立構造にある。
それを補っているのがジャック・パランスの殺し屋ウィルソンの存在だ。
凄腕ぶりは発揮されていたとは言い難いが、黒ずくめの雰囲気は力関係を決定付けるインパクトがある。
アラン・ラッドはこの一作と言ってもいいぐらいの演技で、僕が子供の頃に一番の早打ちはアラン・ラッドで、二番は「ララミー牧場」のロバート・フラーだと話し合ったことを思い出す。

シェーンとスターレットにおける友情の芽生え、ジョーイ少年のシェーンへのあこがれ、シェーンとマリアンとの秘めた愛などが物語を彩り、その描き方のバランスもいい。
僕はマリアンの方がシェーンに対して思いを寄せていたのではないかと感じている。
少年を通じて語る言葉尻などは彼女の思いだったと思う。
何よりも「私を強く抱きしめてと」夫に言う場面は、気持ちがシェーンに向かうのを必死で止めていた表れだ。
ダンス・シーンで夫であるジョーはそれを感じ取っても良かったのだが、深くは描かれていなかった。
悲恋の要素が作品から排除されていることがオーソドックスさを感じさせるのかもしれない。

少年は決闘に向かうシェーンを追っていくが、向かうシェーンよりも少年に焦点を当てた描き方がなかなかよくて、さらに犬を登場させて川を渡らせる遠景描写は、この作品の雰囲気を最後まで保たせたと思う。
そして作品を決定付けるのがジョーイ少年の叫び声で、ラストシーンにふさわしいものである。
「シェーン、カムバック!」の甲高い叫び声がワイオミングの山にこだまする。
このラストシーンあってこその「シェーン」で、「シェーン」と言えばこのシーンだろう。


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