おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ビリケン

2024-07-04 06:46:33 | 映画
「ビリケン」 1996年 日本


監督 阪本順治     
出演 杉本哲太 鴈龍太郎 山口智子 岸部一徳
   泉谷しげる 南方英二 國村隼 原田芳雄
   石井トミコ 浜村淳 笑福亭松之助

ストーリー                         
大阪・新世界に立つ通天閣に安置されているビリケン像にチンピラやホームレスなど様々な人々が願を懸けにやって来る。
その願いを叶えようと奔走するビリケンだったが、あることがきっかけで信用を失ってしまう。
同時にビリケン像は質屋に売り飛ばされてしまい、超能力を失ってしまう。
ビリケン像を買い戻すため、ビリケンは肉体労働を始める。
その頃、住民の立ち退き工作のために新世界にやって来た江影は、ビリケンの正体を知る、ビリケン憧れの月乃の教え子・清太郎を人質に通天閣に立てこもるのだが・・・。

寸評
ビリケンを演じた杉本哲太がはまり役。
いつも思うのだが、どのようにしてキャスティングしているのかと・・・。
この映画の第一の功労者は杉本哲太をキャスティングした人だと思う。
本来持っている杉本のエネルギッシュな印象の本作での描き方は、今までの杉本哲太像を変えてしまったのではないか。
身体にぴったりした縞のスーツに裸足というスタイルとともに、この映画の面白さはひとえに杉本哲太のキャラクターと脇役人の配置にあると思う。
山口智子はもちろん、岸辺一徳、南方英二、泉谷しげる、浜村淳、原田芳雄にはしびれる。

通天閣の上に杉本哲太を立たせて、その周りをヘリで旋回しながら空撮するショットを考えたひとも殊勲大だ。
ビリケン登場直後とエンディングに登場するこのショットが、通天閣の守護神ビリケンの一切を象徴的に描き出している。
兎にも角にもこれは大阪が誇る摩天楼『通天閣』の映画なのだ。

僕はこの通天閣がある新世界は大阪で好きな場所の一つである。
当時は映画館もたくさんあった。
公楽座の入り口の前に立つと、館内で上映されている映画のスピーカーからの独特のこもった音(声)を場外に流していた。
ラジオを聞いていると思えば、一日中楽しむ事ができたのだ。
でも昔の映画館はみなそうだったように思う。
入り口に貼られているスチール写真を見ていて、もれてくる音を聞くとつい切符を買ってしまっていたものだ。

通天閣は化粧直しが施されて看板の上にあった日立マークがなくなっています。
日立の広告はありますが、マークがないのはなんとなく淋しいです。
ビリケンさんは5階の展望台におられます。
エレベーターを乗り継いで展望台まで上りますが、 エレベーターガールはいなくて、おっちゃんと兄ちゃんの間ぐらいの人が案内してくれていました。
今はどうなっているのでしょう?

このビリケンさん、実は米国ミズーリ州カンザスシティーで“誕生”した神様です。
米国での呼び名も「ビリケン(BILLIKEN)」で、1909年にはビリケンの貯金箱や小さな置物が売り出され、大人気となったが半年ほどでブームは冷え込んだそうだ。
ビリケンさんが初めて大阪・新世界にあった遊園地「ルナパーク」に置かれたのは、1912年(明治45)のこと。
1923年の遊園地閉鎖とともに行方不明となったが、1980年に繊維商社の田村駒に残っていたのを見本に復活させ、伊丹市在住の安藤新平さんが彫刻されたということである。
知らない人は足の裏を撫でているが、願い事をするときは足の裏を掻いてやらねばならない。
そのため、足の裏は溝になって擦り切れている。
(映画ではビリケンがくすぐったがっていた)
長い間、通天閣に行っていない。
想い出の中にある通天閣は変わってしまっているかもしれない。

アメリカ生まれのマスコットが、神さまに変身して、なにわのシンボルの通天閣に鎮座する。
その姿は何ともほほえましいではないか。