「プリズナーズ」 2013年 アメリカ
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 ヒュー・ジャックマン ジェイク・ギレンホール
ヴィオラ・デイヴィス マリア・ベロ
テレンス・ハワード メリッサ・レオ ポール・ダノ
ディラン・ミネット ゾーイ・ソウル
ストーリー
感謝祭の日、平穏な田舎町に暮らすケラー・ドーヴァ(ヒュー・ジャックマン)とグレイス(マリア・ベロ)夫妻の6歳になる愛娘が、隣人のフランクリン・バーチ(テレンス・ハワード)、ナンシー(ヴィオラ・デイヴィス)夫妻の娘と一緒に忽然と姿を消してしまう。
警察は現場近くで目撃された怪しげなRV車を手がかりに、乗っていた青年アレックス(ポール・ダノ)を逮捕する。
しかしアレックスは10歳程度の知能しかなく、まともな証言も得られないまま釈放の期限を迎えてしまう。
ケラーは釈放されたアレックスの発した言葉や口ずさむ替え歌から彼が犯人であることを確信する。
しかし、一向に進展を見せない捜査に、ケラーは指揮を執るロキ刑事(ジェイク・ギレンホール)への不満を募らせていく。
そして自ら娘の居場所を聞き出すべく、ついにアレックスの監禁という暴挙に出てしまうケラーだったが…。
寸評
名作「羊たちの沈黙」を髣髴させる面白さと風格を持っていて、ワンシ-ン、ワンシーン、一言一句に意味が有り153分の長尺を全く飽きさせない。
ロキ刑事はハリー・キャラハンやジョン・マックレーンのようなスーパー刑事ではない。
その分、リアリスティックな刑事であり、彼は沈着冷静に地道な捜査を進めていく。
それとは対照的に、暴走していく父親を描いて対比することで異常な状況を一層盛り上げる。
オリジナル脚本ということだが、兎に角ストーリーが滅法面白い。
そのストーリー展開だけでも十分に観客を引き込んでしまう。
この映画のキャッチコピーの一つに”この映画、人ごとじゃない”とあるが、孫たちを滅茶苦茶に可愛く思っている自分が同じ立場になったら、はたしてあそこまでやれるだろうかと不安になってしまう。
ケラーの行為は罪に問われるのだろうが、それでも妻のグレイスに「私は感謝しています」と言わせている。
一言々々が大きな意味を持っていたと後で分かるのはミステリー映画の常道だけれど、適度の間隔でうまく散りばめられていた。
何の繋がりもないような事件が思いがけない形でからんでくるのも常道と言えば常道だが、それがあざとくないのがこの作品のいいところ。
新聞記事と雨のシーンが度々登場するが、新たな展開と息苦しさをうまく表現していたように感じた。
最悪の結末も有りうるのだと思わせ続ける演出もいい。
フェードアウトでそのシーンの後をくどくど描かないのもかえって雰囲気を醸し出していていい。
その手法はラストシーンでも生きていて、”おお!なかなかいいじゃないか!”と無言の内に叫んでしまいたい衝動にかられた。
ホイッスルという小道具を登場させた以上、最後の結末は容易に想像できるが、その描き方にはセンスを感じた。
日本映画だと絵空事に思えてしまいそうな話なのだが、アメリカ映画だと妙に真実味を感じてしまうのは僕のアメリカ社会に対する偏見なのだろうか。
アレックスは二重の意味でプリズナー(捕虜)だったのだけれど、完全主義者的なケリーもまたそれゆえに目をそむけることが出来ず狂気に走ってしまうプリズナー(自由を奪われた人)だったのだろう。
タイトルの複数形はそういうことではなかったか・・・。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、前作の「灼熱の魂」も良かったけれど、こっちもそれを上回る出来栄えだった。
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