おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

フューリー

2024-07-08 07:14:38 | 映画
「フューリー」 2014年 イギリス

                                                
監督 デヴィッド・エアー                                       
出演 ブラッド・ピット シャイア・ラブーフ ローガン・ラーマン
   マイケル・ペーニャ ジョン・バーンサル
   ジェイソン・アイザックス スコット・イーストウッド
   ジム・パラック ラッド・ウィリアム・ヘンケ

ストーリー
1945年4月、第二次世界大戦下。
ドイツ軍が文字通りの総力戦で最後の徹底抗戦を繰り広げていたヨーロッパ戦線。
戦況を優位に進める連合軍も、ドイツ軍の捨身の反転攻勢に苦しめられていた。
ナチス占領下のドイツに侵攻を進める連合軍の中にウォーダディー(ブラッド・ピット)と呼ばれる米兵がいた。
長年の戦場での経験を持ち、戦車部隊のリーダー格存在である彼は、自身が“フューリー”と名付けたシャーマンM4中戦車“フューリー号”に3人の兵士と共に乗っていた。
ある日、ウォーダディーの部隊に新兵のノーマン(ローガン・ラーマン)が副操縦手として配属される。
だが彼はこれまで戦場を経験したことがなく、銃を撃つこともできない兵士であった。
繰り返される戦闘の中、想像をはるかに超えた戦場の凄惨な現実を目の当たりにするノーマン。
5人の兵士たちがぶつかりあいながらも絆を深めていく中、ドイツ軍が誇る世界最強のティーガー戦車がたちはだかる。
やがて彼らはドイツ軍の攻撃を受け他部隊はほぼ全滅となる。
なんとかウォーダディーの部隊は生き残るが、300人ものドイツ軍部隊が彼らを包囲していた。
そんな状況下、ウォーダディーは無謀にも“フューリー”で敵を迎え撃つというミッションを下す…。


寸評
映画が始まる前に米軍の戦車シャーマンがドイツ戦車ティーガーに劣っていたことがテロップされる。
そんな中での戦車戦が繰り広げられるが、戦車バトルを追求した戦争アクション映画ではない。
新兵が一人前の兵士に成長する話がメインではあるが、それが圧倒的な説得力を持つのは指導役とも言うべきブラッド・ピットが魅力を放っているからだ。
彼は戦場における勧善懲悪、スーパーヒーロではない。
新兵のノーマンに人を殺す事から教え始めるとんでもない上官である。
無抵抗の独軍捕虜を自分も手伝いながら無理やり射殺させる。
捕虜は家族がいるから助けてくれと写真を見せるが、その写真を叩き落して射殺する。
侵攻した村では美しいドイツ娘をノーマンに抱かせる。
生きて帰る為の強いリーダーなのか狂人なのか分からない。
そのくせ作戦、命令には忠実で激戦地にためらいもなく進んでいく。
戦場はそんな人間を育ててしまうのかもしれない。
ノーマンはその象徴だ。
これは戦争映画ではなく戦場映画なのかと言いたくなるくらい、戦場のリアルな様子が映し出される。
よくある戦死者の十字架を建てた埋葬シーンなど出てこない。
前線ではそんな事が出来ないくらいの死者が出ているのだ。
彼等はブルドーザーでもって一気に掘り起こされた穴の中に投げ入れられる。
そんな様子が兵士がうごめく背景として映し出され、戦車は死者をためらいもなく押しつぶして行く。
これが現実の戦場だと叫んでいるようでもあり、イスラム国に志願した日本人男性に見せたい気分だ。

戦闘シーンはとてつもない恐怖と興奮を与える。
弾がどこから飛んでくるかわからない。
跳弾の表現も臨場感を出し、貫通力を重視した対戦車砲の描き方も迫力がある。
5人のヒューマンドラマと言うよりも、不十分な戦力で攻撃をいつくらうかわからない恐怖に襲われながら進軍する過酷な戦場の物語のように感じた。
したがって、連合軍、ドイツ軍、どちらにも過剰に肩入れせず、かといって突き放しもしていない。
最後のドイツ兵士の行動などを見ると、独軍=悪という単純構図ではないことが分かる。
これもよくある戦場のセンチメンタリズムではあるのだが、不思議とこれが都合主義には見えない。
舞台はDデイも終わって連合軍がベルリンを目指していたヨーロッパ戦線の終結4週間前だが、まだ死闘が繰り返されている。
ウォーダディーは「戦争は終わる。その前に大勢の人間が死ぬ」と言う。
もうすぐ終わるという時期に、大勢の人間が死んでいった事実を突き付けられる。
ドイツ娘との食事や交流、教育的指導による殺人など一見妙なエピソードも必然性というものを感じてしまう不思議さがある。
それでもやはりアメリカ万歳的なメッセージが見え隠れすると感じてしまうのは、アメリカの戦争映画に対する先入観がもたらしているものなのだろうか?
ラストはちょっと拍子抜けした。


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