おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

2022-07-18 07:11:33 | 映画
「さ」になります。
2019/6/15 の「13デイズ」出始まり、以下「サード」「最強のふたり」「最後の忠臣蔵」「サイドカーに犬」「サウルの息子」「サウンド・オブ・ミュージック」「櫻の園」「細雪」「サッド ヴァケイション」「座頭市物語」「サニー 永遠の仲間たち」「さびしんぼう」「サムライ」「さよなら渓谷」「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」「39 刑法第三十九条」「山椒大夫」「三度目の殺人」「秋刀魚の味」でした。
2回目は2021/2/24の「サイコ」から「ザ・シークレット・サービス」「殺人の追憶」「聖の青春」「砂漠の流れ者」「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK」「ザ・ファイター」「侍」「さよなら歌舞伎町」「さよならコロンバス」「サンシャイン・クリーニング」「サン・ジャックへの道」「三人の名付親」「サン★ロレンツォの夜」と続きました。

興味のある方はバックナンバーからご覧ください。
今回は3巡目になります。

「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」 2012年 日本


監督 入江悠
出演 奥野瑛太 駒木根隆介 水澤紳吾 斉藤めぐみ
   北村昭博 永澤俊矢 ガンビーノ小林
   美保純 橘輝 板橋駿谷 中村織央 配島徹也

ストーリー
元“SHO-GUNG”メンバーのマイティは、イックとトムと別れ、東京に出て行った。
しかしラップを諦めきれず、恋愛系右翼ヒップホップクルー“極悪鳥”のメンバー入りのチャンスを狙って、パシリのような扱いに甘んじていた。
ある日、マイティが1人で参加するバトルで優勝すればメンバーになれると約束される。
しかし、マイティの対戦相手が、極悪鳥が世話になるヒップホップクルーのメンバーだったため、決勝直前にわざと負けるよう電話が入り、マイティは指示通り負けるが、メンバー入りの約束を反古にされる。
怒りを爆発させたマイティは、極悪鳥のメンバーの1人に大怪我を負わせてしまう。
マイティは栃木に逃げ、違法行為で商売する大人たちの一員として働き始める。
金儲けのため、栃木で音楽イベントを行うことになる。
素人の大人と少年たちの仕切りで、有料の詐欺まがいの出演者オーディションが行われ、マイティの知らないところでイックとトムが参加していた。
そこでTKDタケダ先輩のトラックを通じて意気投合した、日光のヒップホップクルー“征夷大将軍”と一緒にイベントに参加することになる。
イベント当日、栃木に逃げてきてから暴力と盗みを重ねたマイティは、胴元の大人たち、警察、ゲストとして来ていた極悪鳥から追われる。
イックとトムは征夷大将軍と共にステージに立ち、思いがけない悲痛な再会を果たした3人は……。


寸評
この作品はシリーズの第3弾で最終章とのことであるが、僕は前2作を見ていないので予備知識もなく単独作品として見たことになるのだが、単独作品として十分に鑑賞に堪えるものとなっている。
主人公のマイティは“SHO-GUNG”というラップグループから抜けて東京に出ていくのだが、マイティの実家は埼玉でブロッコリーを生産する農家ということなので、同時にこれは地方都市、農村地方の空虚感と閉塞感を示しているとも言える。
そして東京に出て行ったマイティは挫折を味わうことになるのだが、埼玉を去っていくマイティが運転する車に音楽ポスターではなく東京デズニーランドのポスターがあることで早くも暗示されていたと思う。
夢見て東京に出てきたマイティだが2年経ってもラップグループ”極悪鳥”の使い走りをやっている。
扱いはひどいものだが、コンテストで決勝に残ればステージに立たせてもらう約束を得る。
マイティは決勝に残るが”極楽鳥”からわざと負けるように指示されて、優勝を目指していた彼は不本意ながら承諾したのだが約束は破られてしまう。
コンテストで優勝するほどラップの腕を上げているマイティの努力の様子が描かれていたら、彼の悔しさはもっと伝わっただろう。
優勝を諦め、今またステージに立つ約束を反故にされてマイティの怒りが爆発し、”極楽鳥”の一人を半殺しの目に合わせてしまい、彼らから追われる身となってしまう。
栃木に逃げたマイティは違法行為で商売をするヤクザ組織のようなところで働き始めるが、チンピラのような若者の上にたっているものの、ここでもやはり使い走りのような立場である。
音楽を目指していたはずだが、夢は破れて現実はまったくの半グレと化している。

”極楽鳥”に暴力をふるったことで追われる身となったマイティは、栃木でも同棲している女の子に売春をさせたとして美保純に暴力をふるい再び逃げる羽目になる。
負の連鎖で暴力をふるうたびにマイティの状況が悪化していく。
反対に田舎での音楽活動を諦めなかったかつての仲間の二人は”栃木祭”のステージに立っている。
主催者から金を奪ったマイティは、金を奪われた大人たち、違法営業を追う警察、仕返しをしようとする”極楽鳥”のメンバーから追われ、イベント会場を逃げ回る。
手持ちのカメラは逃げるマイティを追い続ける長回しで、カメラは逃亡する車の後部座席に乗り込んでフロントウィンドウから見える暗い夜道を映し続けるというこの長回しは見ものである。

逮捕されたマイティの面会にかつての仲間二人がやってくる。
そこで窓越しに衝突が起き、ついにはラップで言い合いとなる。
他の管理官がやって来てもよさそうなものだが、両方の管理官がそれぞれ一人で制止するのを払いのけて三人はラップでののしり合う。
この場面も長回しで1カットで撮られている。
ラップというリズミカルな音楽があって見ておれるが、若者の挫折を描いた救われない作品で切なさが残る。
ラストシーンにも僕は未来を感じることが出来なかった。
僕には一風変わったヤクザ映画を見ているようだった。