おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

皇帝ペンギン

2022-07-04 06:54:38 | 映画
「皇帝ペンギン」 2005年 フランス


監督 リュック・ジャケ  
声優 ロマーヌ・ボーランジェ
   シャルル・ベルリング
   ジュール・シトリュック

100万年前の氷で覆われた南極大陸に冬がやってくる3月、多くの生き物たちが暖かさを求めて北へ移動する中、逆に南へと旅を始めるものたちがいた。
ペンギンの仲間の中でもっとも大きい、身長120センチの皇帝ペンギンたちだ。
胸を黄金色に輝かせ、ペタッ、ペタッと2本足で数千の皇帝ペンギンが行進してくる。
隊列を組んで行進を始めるペンギンたちが目指すのは、外敵が近づきにくい氷山に囲まれた土地だ。
ここでペンギンたちは、お互いのパートナーを見つけるための求愛行動を始める。

ある日、一組の皇帝ペンギンの夫妻が一つの卵を産んだ。
5月末、産卵を終えたメスたちは卵を自分のパートナーに託し、自分とこれから産まれるヒナのための餌を求めて産卵で体重の1/5を減らしてまでも、もうじき生まれてくるヒナのために100キロあまり離れた海へ向かう。
再び会える事を信じて・・・。

卵をあたためる父ペンギンは、寒さの中、仲間と円陣を組んで暖め合い、120日間も何も食べずに必死に卵を守る。
メスが餌を求めて留守にしている間、オスたちは途中で卵を投げ出すこともなく、身を寄せあってその帰りを待つ。
メス達が帰ってくると今度はオスたちの番だ。
すでに体力は海にたどり着く為の20日間の行進分しか残っていない。
再び親子がめぐり合える家族もあれば、帰ってこない親たちもおり、息絶える子供もいる。

そして長い冬が終わり、ようやく太陽が姿を現わすシーンが感動的だ。
地平線に頭を出した太陽は空に上ることなく、そのまま地面の上を滑るように横に移動してまた沈んで行く、すばらしいカットがある。


寸評
ペンギンてどこか人間に似たところがあるからかすごく親近感がある。
どうしてこんなにかわいいのだろうと思う。
そしてピカピカに光った胸の毛のなんて美しい事か。
美しいといえば冒頭の南極大陸の美しさも筆舌に現し難い。
この眼で是非見てみたい場所の一つだ。

ペンギンのヨチヨチと歩く姿が何となくユーモラスで、つい微笑んでしまい「可愛いなあ」と呟いてしまう。
あちこちから集まりだし、それが長い長い隊列となり数千頭になっていくことに神秘さえ感じる。
太陽と月が出会う時と表現されているように、大自然のおおきなうねりの中でその時期を体感し、毎年変わる周りの景色に惑わされる事なく目的地にたどり着く。
動物が持っているその本能と認知能力に感心する。
それらはすべて種の保存を維持するために神が与えた能力なのだろう。
その必死に子育てをする姿を見ると、出発点は同じ動物だった筈の人間達は一体何をしているのだと叫ばれてるような気がした。

彼らは一個しか卵を産まない。
雪の上に産み落とせば雛はかえることは出来ないので、自分の足の上で暖められる一個だけなのだ。
当然、自由に動き回れないから、ひたすらじっと立ったままで暖め続ける。
吹雪がきても背中で受けとめ、仲間同士が固まってじっと耐える。

映画はその苦難の行進と、耐えつづける彼らの姿を、彼らに姿を借りたナレーションで綴っていく。
何とも美しいシーンもあれば、絶える事さえ困難な自然の猛威のシーンもあるが、特に吹雪のシーンは感動ものだ。
必死で撮影するスタッフの姿も頭に浮かんだが、かれらはペンギンほど耐えられなかった筈だ。
なぜなら、産卵のシーンがない。
きっと撮影クルーが離れた間に産卵が行われていたのだと思う。
そんな事を想像すると彼らの忍耐力と、種を保存しようとする意志の強さに感心させられる。
子供達が海に飛び込み、四年の歳月を経て、再びかの地に戻ってくる事も神秘である。

ジャック・ぺランが撮った「WATARIDORI」という記録映画も有ったけど、フランスはこの手の映画が得意なのか、それとも受け入れられる土壌があるのかな。
ただナレーションのフランス語がこの映画の雰囲気も盛り上げていたように感じた。