おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

荒野の1ドル銀貨

2022-07-05 06:24:55 | 映画
「荒野の1ドル銀貨」 1965年 イタリア / フランス


監督 カルヴィン・ジャクソン・パジェット
出演 モンゴメリー・ウッド (ジュリアーノ・ジェンマ)
   イヴリン・スチュワート
   ピーター・クロス
   ジョン・マクダグラス
   フランク・ファレル

ストーリー
南北戦争が終り、南軍捕虜は北軍から解放された。
ここ、北軍駐屯所では、捕虜を釈放するとき、武勲にすぐれた兵士たちに、銃身のほとんどを切りとった、一ヤードそこそこしかとばない拳銃を渡した。
その、解放された兵士たちの中に、拳銃さばきの名手ゲイリーとフィルの兄弟がいた。
弟のフィルは一獲千金を夢見て、西部にでかけ、兄のゲイリーは、故郷のバージニアにいる妻ジュディのもとに帰ったが、別れぎわにフィルは、わが家の柱時計の中にかくした貯金をゲイリーに託した。
数日後、妻に再会し、その無事を確かめたゲイリーは、弟の貯金から、一枚の一ドル銀貨をお守りとして胸のポケットに入れ、再びフィルの後を追って西部に旅立った。
まず、ゲイリーが到着した町は、無法者たちが狼籍をきわめるイエローストーンであった。
ゲイリーは早速その拳銃さばきを買われて、町の顔役マッコリーの用心棒にやとわれた。
最初の仕事は、マッコリーに敵対する男“ブラックアイ”を倒すことだ。
が、いざこの“ブラックアイ”に対峙してみると、この男は、実は弟のフィルその人であった。
が、後むきのフィルは、兄とは知らず、ふりむきざま、抜き射ちにゲィリーを射った。
と同時にフィルも待ちうけていたマッコリー一味の銃弾の雨に倒れた。
だがゲィリーは、胸ポケットの一ドル銀貨に銃弾があたり、奇跡的に命びろいした。
かくして、復讐の鬼と化したゲイリーは、弟の仇マッコリーを討つべく、あの手この手の機略縦横。
一方のマッコリーも、町のシェリフを抱きこみさらに、ゲイリーを訪ねてやって来た彼の妻ジュディを人質にして防戦するが、ゲィリーの奇略が功を奏してマッコリー一味と悪徳シェリフは暗やみの中で同士討ちして、その大半が倒れてしまう。
遂にゲイリーとマッコリーは相対し、マッコリーはジュディを人質にして、ゲイリーの前にたった。


寸評
公開当時はイタリア製西部劇、いわゆるマカロニ・ウエスタンが人気を博していたが、本場の西部劇に比べると単純明快、残酷シーンを含むアクション全開が特徴で、人間描写や社会性といった点には乏しく、内容的には希薄なものだったが映画の持つ娯楽性だけは抜きん出ていた作品が何本か見受けられた。
なかでも英語のタイトルにドルがうたわれた作品が偶然の産物かベスト3に挙げられるだろう。
それは1964年の「荒野の用心棒 For a Fistful Dollars」、1965年の「夕陽のガンマン For a Few Dollars More」、そして1966年の本作「荒野の1ドル銀貨 One Silver Dollar」である。

「荒野の1ドル銀貨」も突っ込みどころは満載なのだが、作品を面白くしているのは小道具の使い方にひねりが効いていることだ。
題名の1ドル銀貨に加え、鏡や銃身を短く切った拳銃などが効果的に使われている。
僕は後年アメリカ旅行中に1ドル銀貨を手にしたが、想像以上に大きくて高校時代に見ていた本作を思い出し、これなら拳銃の弾丸も受け止められるなと思った。
しかし映画の中では銀貨に穴が開いており、それだと貫通していたはずだから生きているのはおかしいし、出血が見られないのに死んだと思われたことも不自然なのだが、マカロニ・ウェスタンはそのような細かいことはふっ飛ばしてしまう痛快さを持っている。
1ドル銀貨はジュリアーノ・ジェンマがもてあそぶシーンに何度か登場するが、弟の隠した証拠品を見つける場面でも上手く使われている。
しかし、発見した証拠品を見ると、ブラックアイを名乗る弟のフィルがなぜ牧場主のドナルドソンにその事実を明かさなかったのか疑問だ。
もっと重大なものなら納得だが、あれでは町の人たちと協力して簡単に解決できたはずなのにと思ってしまう。
それでも見ているうちはそんな疑問も感じさせない畳みかけるようなストーリー展開を見せる。

不満と言えば相手側にジュリアーノ・ジェンマに匹敵するスゴ腕の男がいないことだ。
それらしい男は居るのだが、とてもジェンマの相手になるようには感じられないし、マッコリーに至ってはボスとしての貫禄に欠けていて、戦う前から勝負は見えていた。
しかし最後の対決場面を描くために時代を南北戦争後に設定し、冒頭で戦争終結シーンを描いていたのだなと納得する。
西部劇なのにセリフがイタリア語で話されているのに抵抗感が生じるが、もともと字幕頼みの僕には我慢できてしまうので、それもちょっと情けない気はする。
ジェンマのカッコ良さだけが際立っており、日本では時代を経ても彼の人気は衰えず1980年代前半には、スズキのスクーター「ジェンマ」のイメージキャラクターとしてCMに出演した。

1969年に本場アメリカから「勇気ある追跡」、「ワイルド・バンチ」、「明日に向かって撃て!」などの名作が公開されて、そろそろ飽きられてきていたこともあってマカロニ・ウエスタンは一気に消え去った。
さんざん西部劇を撮ってきたアメリカ映画には蓄積した財産があったということだと思う。