「浪花の恋の物語」 1959年 日本
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/2b/7da2349aee1321daf057b40a0aa07bfa.jpg)
監督 内田吐夢
出演 中村錦之助 有馬稲子 雪代敬子
花園ひろみ 植木千恵 日高澄子
浪花千栄子 市川小太夫 香川良介
白木みのる 中村時之助 織田政雄
澤村宗之助 進藤英太郎 千秋実
東野英治郎 田中絹代 片岡千恵蔵
ストーリー
忠兵衛は浪華飛脚問屋・亀屋の養子だった。
同業丹波屋八右衛門に無理やり新町廓に連れこまれたところ相方は梅川だった。
八右衛門が口裏を合わせ、無事に家へ入れたが、たちまち、その夜、廓へ足が向いていた。
義母の妙閑は彼の金遣いの荒らさに気づいき、大阪を離して為替の差額を取りに江戸へ向かわせる。
忠兵衛から梅川に江戸土産として櫛が届いた。
縁を切るとのなぞ言葉かと梅川は泣きくずれた。
藤兵衛という小豆島の醤油の大尽が北陸から帰ってきたら、梅川を身請することになっていた。
旅姿のままつい寄った忠兵衛はそれを聞かされ、持っていた八右衛門に届ける五十両を、身代金二百五十両の内金として入れ、いつづけを始めた。
八右衛門に見つかり、家へ帰った忠兵衛に武家の為替三百両を届ける用事が命じられた。
彼は金を懐ろに廓へ行ってしまう。
藤兵衛が帰阪してい、梅川の身請の祝宴を挙げようとしていた。
忠兵衛は口惜しく、思わず懐ろの小判を梅川の主人の前に置き、梅川を連れて去った。
武家のお蔵金の封印切りは獄門なので、忠兵衛の代りに妙閑が引っ立てられた。
二人はどこまでも一緒にいようと誓い合う。
新口村の入口で捕ったが、二人は実の親に会いに行くところだった。
近松はこの話を三幕の世話狂言に仕立てた。
寸評
東映の演技派といえば片岡千恵蔵、中村錦之助ぐらいなものではなかったかと思う。
その二人が台詞の少ない役柄で演技を披露している。
活発な役が多かった中村錦之助が珍しく気の弱そうな婿養子を演じている一方、御大の片岡千恵蔵は薄笑いと眼力だけの演技で中村錦之助以上に台詞はない。
何といっても廓の描写が秀逸で、古い日本の風俗を興味深く見せると同時に「男女の情感の風情」と「立ち振る舞いの美しい流れ」を見せて圧巻である。
そして、現代では顧みられることの少ない和楽や浄瑠璃、長唄が劇中に流れ、日本文化の奥深さを見せつける。
特にラストで中村錦之助、有馬稲子が見せる浄瑠璃を模した芝居は様式美の極致と言っても過言でない。
漆黒の中で白塗りの二人が舞うシーンは、その色彩的効果もあってうっとりとしてしまう。
日本人の根底にある情感と美意識を再認識させてくれるシーンだ。
梅川が少女の指があかぎれになっているのを見て、チリ紙を包帯代わりにして巻いてやるシーンなどはその所作に艶があった。
艶のある所作は梅川が遊女だからだけではなく、有馬稲子自身が身に着けていたものからにじみ出ていたように感じたし、中村錦之助も同様で俳優その人に備わっていた物なのかもしれない。
昔の役者さんはすごかったなあと思ってしまうのだ。
俳優は、中村錦之助、有馬稲子、片岡千恵蔵、東野英治郎、田中絹代、千秋実、進藤英太郎、浪花千栄子、等が綺羅星のごとくの名演のアンサンブルで、まるで俳優名鑑のようだ。
梅川は「金が仇の世の中」と言うが、金権主義に走る時代になってしまった今の世の中を呪っているようでもある。
二人は金では動かぬ情けの世界に生きようとするが、現実はそんなに甘くはない。
父親の手紙にあるように忠兵衛はカッとなる性格で、婿養子のためそんな性格を押し殺していたのに、梅川の身請け話時にその性格が出てしまい、「仇」と梅川が言った金のために横領という犯罪を犯してしまう。
変なところで意地が出て、使い込みの深みにはまり込んでいく。
忠兵衛は捕らえられて獄門磔になり、梅川は二度奉公となる悲惨な結末が待っている。
近松門左衛門はそれではあまりにもむごいのではないかと結末を書き換える。
人形浄瑠璃が演じられ、近松はその出来栄えにうっすらと涙をにじませるが、僕はもう一度中村錦之助と有馬稲子による浄瑠璃場面を見たかった。
自殺しようとした梅川を止めるくらいで、別段存在しなくてもいいような浄瑠璃の作者である近松門左衛門だが、本人が登場することでなんだか作品に風格が生じてしまうのだから映画って不思議だ。
ところで、近松門左衛門が執筆にかかる場面で片岡千恵蔵の小指の爪が伸びていたけれど、あれは一体どんな意味があったのだろう?
有馬さんは20代での市川監督との不倫と堕胎を噂され、その後中村錦之助と結婚・離婚をされ貫禄が出た女優さんだが、この頃の有馬さんは色気がある。
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監督 内田吐夢
出演 中村錦之助 有馬稲子 雪代敬子
花園ひろみ 植木千恵 日高澄子
浪花千栄子 市川小太夫 香川良介
白木みのる 中村時之助 織田政雄
澤村宗之助 進藤英太郎 千秋実
東野英治郎 田中絹代 片岡千恵蔵
ストーリー
忠兵衛は浪華飛脚問屋・亀屋の養子だった。
同業丹波屋八右衛門に無理やり新町廓に連れこまれたところ相方は梅川だった。
八右衛門が口裏を合わせ、無事に家へ入れたが、たちまち、その夜、廓へ足が向いていた。
義母の妙閑は彼の金遣いの荒らさに気づいき、大阪を離して為替の差額を取りに江戸へ向かわせる。
忠兵衛から梅川に江戸土産として櫛が届いた。
縁を切るとのなぞ言葉かと梅川は泣きくずれた。
藤兵衛という小豆島の醤油の大尽が北陸から帰ってきたら、梅川を身請することになっていた。
旅姿のままつい寄った忠兵衛はそれを聞かされ、持っていた八右衛門に届ける五十両を、身代金二百五十両の内金として入れ、いつづけを始めた。
八右衛門に見つかり、家へ帰った忠兵衛に武家の為替三百両を届ける用事が命じられた。
彼は金を懐ろに廓へ行ってしまう。
藤兵衛が帰阪してい、梅川の身請の祝宴を挙げようとしていた。
忠兵衛は口惜しく、思わず懐ろの小判を梅川の主人の前に置き、梅川を連れて去った。
武家のお蔵金の封印切りは獄門なので、忠兵衛の代りに妙閑が引っ立てられた。
二人はどこまでも一緒にいようと誓い合う。
新口村の入口で捕ったが、二人は実の親に会いに行くところだった。
近松はこの話を三幕の世話狂言に仕立てた。
寸評
東映の演技派といえば片岡千恵蔵、中村錦之助ぐらいなものではなかったかと思う。
その二人が台詞の少ない役柄で演技を披露している。
活発な役が多かった中村錦之助が珍しく気の弱そうな婿養子を演じている一方、御大の片岡千恵蔵は薄笑いと眼力だけの演技で中村錦之助以上に台詞はない。
何といっても廓の描写が秀逸で、古い日本の風俗を興味深く見せると同時に「男女の情感の風情」と「立ち振る舞いの美しい流れ」を見せて圧巻である。
そして、現代では顧みられることの少ない和楽や浄瑠璃、長唄が劇中に流れ、日本文化の奥深さを見せつける。
特にラストで中村錦之助、有馬稲子が見せる浄瑠璃を模した芝居は様式美の極致と言っても過言でない。
漆黒の中で白塗りの二人が舞うシーンは、その色彩的効果もあってうっとりとしてしまう。
日本人の根底にある情感と美意識を再認識させてくれるシーンだ。
梅川が少女の指があかぎれになっているのを見て、チリ紙を包帯代わりにして巻いてやるシーンなどはその所作に艶があった。
艶のある所作は梅川が遊女だからだけではなく、有馬稲子自身が身に着けていたものからにじみ出ていたように感じたし、中村錦之助も同様で俳優その人に備わっていた物なのかもしれない。
昔の役者さんはすごかったなあと思ってしまうのだ。
俳優は、中村錦之助、有馬稲子、片岡千恵蔵、東野英治郎、田中絹代、千秋実、進藤英太郎、浪花千栄子、等が綺羅星のごとくの名演のアンサンブルで、まるで俳優名鑑のようだ。
梅川は「金が仇の世の中」と言うが、金権主義に走る時代になってしまった今の世の中を呪っているようでもある。
二人は金では動かぬ情けの世界に生きようとするが、現実はそんなに甘くはない。
父親の手紙にあるように忠兵衛はカッとなる性格で、婿養子のためそんな性格を押し殺していたのに、梅川の身請け話時にその性格が出てしまい、「仇」と梅川が言った金のために横領という犯罪を犯してしまう。
変なところで意地が出て、使い込みの深みにはまり込んでいく。
忠兵衛は捕らえられて獄門磔になり、梅川は二度奉公となる悲惨な結末が待っている。
近松門左衛門はそれではあまりにもむごいのではないかと結末を書き換える。
人形浄瑠璃が演じられ、近松はその出来栄えにうっすらと涙をにじませるが、僕はもう一度中村錦之助と有馬稲子による浄瑠璃場面を見たかった。
自殺しようとした梅川を止めるくらいで、別段存在しなくてもいいような浄瑠璃の作者である近松門左衛門だが、本人が登場することでなんだか作品に風格が生じてしまうのだから映画って不思議だ。
ところで、近松門左衛門が執筆にかかる場面で片岡千恵蔵の小指の爪が伸びていたけれど、あれは一体どんな意味があったのだろう?
有馬さんは20代での市川監督との不倫と堕胎を噂され、その後中村錦之助と結婚・離婚をされ貫禄が出た女優さんだが、この頃の有馬さんは色気がある。