ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

北新地クリニック 放火殺人事件

2021-12-26 14:48:28 | 日記



大阪・北新地のクリニック放火殺人事件について、興味深い記事が舞い込んだ。以下はけさ届いたメルマガの記事からの引用である。

「25人が犠牲になった大阪・北新地の放火殺人事件で、大阪府警は、谷本盛雄容疑者(61)が大勢の人々を巻き込んで自殺を図ったとの見方を強めている。こうした行為は拡大自殺と呼ばれ、同様の大量殺害事件は近年たびたび起きている。その背景には孤立感や絶望感があると指摘されている。
わずか80平方メートルのクリニックに30人近い患者らが集まっており、ある大阪府警幹部は『自分が死ぬことを恐れず、大量殺人を確実に実行したいという強固な意志があったのは明らかだ』と話す。」
(読売新聞オンライン12月26日配信)

記事によれば、谷本某の行為は「大勢の人々を巻き込んで自殺を図った」もので、「拡大自殺」の一つと見られるのだそうだ。

この記事には《大阪放火、大勢の人々を巻き込んで自殺図る「拡大自殺」か…背景に孤立・絶望感》というタイトルが付けられ、「拡大自殺」という聞き慣れぬ呼称が、さも大きな発見のように強調されている。しかし、この呼称に大した意味はない。人は理解不可能な物事にネーミングを行い、一定のクラス分けをすることで、なんとなく解った気になるものだ。「拡大自殺」という新奇なネーミングは、居心地の悪さを拭い去るためのある種儀式のようなものだと思えばよい。

そもそもこの事件の犯人・谷本某は、なぜ「大勢の人々を巻き込んで自殺しよう」などと考えたのだろうか。谷本某の強い殺意、「大量殺人を確実に実行したいという強固な意志」は、彼自身の自殺への意志とどう関係するのか。あるいは、ーーどちらが先かは分からないがーー谷本某の自殺願望は、どうして「大量殺人を確実に実行したいという強固な意志」へと変質したのか。

記事によれば、谷本某は「離婚後に仕事を辞めるなど生活が荒れ、2011年に息子を包丁で負傷させる事件を起こした」という。この事件で谷本某に懲役4年の実刑判決を下した大阪地裁は、「(谷本某は)寂しさに耐えかね、自殺を考えるようになったが、死ぬのが怖くて踏み切れず、誰かを殺せば死ねるのではないかと思うようになった」と見ている。

この記事を読んで、私は谷本某の行為に、弱々しい兵士の姿を重ね合わせた。死を恐れる臆病な兵士は、目をつぶり、「ウォー」と雄叫びをあげながら、銃剣をかざして敵陣に切り込んでいく。

記事によれば、谷本某の心の奥には「社会への復讐願望」があったという。とすれば、彼の本来の敵は「社会」そのものであったはずだが、この得体の知れない「社会」の内実は、どうしてか彼の中で心療内科の患者たちに置き換えられてしまっている。この事件のやるせなさの核心は、この「置き換え」にあるのだと思う。


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北京オリ・パラ 岸田政権の態度は

2021-12-25 11:37:01 | 日記



まるで「八方美人」ならぬ「三方美人」だな。北京冬季オリ・パラをめぐる政府の対応である。

来年2月から始まる北京冬季オリ・パラに、政府は閣僚ら政府高官を派遣しない方針を決めたと発表した。代わりに東京オリ・パラ組織委員会の橋本聖子会長、日本オリンピック委員会の山下泰裕会長らオリ・パラ関係者3人を出席させるという。

米国に対して。
「バイデンさん、あなた達は中国の人権問題に抗議して、外交使節団を派遣しない『外交的ボイコット』をするんですってね。わかります。貴国の方針には、我が国も賛同します。ですから我が国も、閣僚ら政府高官を派遣しないことに決めたのです。『自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要だ』というのが、我が国の基本的見解です、はい」

中国に対して。
「日本もアメリカの『外交的ボイコット』に加担するのか、ですって?いえいえ、そんなことはありません。その証拠に、我が国は、東京オリ・パラ組織委員会の橋本聖子会長、日本オリンピック委員会の山下泰裕会長ら政府関係者を派遣すると決めています。貴国と事を構えるなんて、滅相もありません」

日本国民に対して。
「煮えきらない曖昧な態度ではなく、中国の人権問題は見過ごせないと、はっきり中国に対して意見すべきだ。そうおっしゃるのですね。でも、そんなことをしたら、中国のことです、何をしてくるか分かりません。我々が恐れているのは、レアメタルの輸出禁止などの経済的報復です。我が岸田内閣は、経済安保を重視しています。国益の観点から、中国を怒らせることは得策ではない、と、そう考えるのです」

だが、この「三方美人」の作戦は、どこまで功を奏するだろうか。「巧言令色すくなし仁」という言葉もある。賢しらのおべっかは、かえって同盟国の信用を損なうことになるのではないか。サイト「zakzak」が掲載する記事《“外交不安”岸田政権、やっと北京五輪「外交的ボイコット」表明 米に疑心暗鬼抱かせた責任重大 世界の大激動を招きかねない》(12月24日配信)は、次のように主張している。

岸田政権の優柔不断な「米中二股外交」は、米国の不信をあおり、日米同盟を不安定なものにする。その結果は重大である。
「いうまでもなく、日本の平和と安定、繁栄の礎は日米同盟だ。中国は『日米同盟が揺らいだ』と見れば、必ずスキを突いてくる。結果として、中国に誤解を与え、台湾への軍事侵攻を誘発しかねない。沖縄県・尖閣諸島に対する威嚇も高めてしまう。」

この記事の心配が、杞憂に終わればよいのだが・・・。


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イブぼっちの 彼女と私

2021-12-24 11:31:33 | 日記


きのうリハビリ・デイサに行ったら、
女子トレーナーのB子さんがこんなふうにつぶやいた。
「あしたはクリスマス・イブかぁ。あ〜あ、あたしは今年もイブぼっちだわ」
そして、
「Cさんちに行っちゃおうかしら」とも。

Cさんは36歳の男子スタッフで、1ヶ月前に結婚したばかり。
出産のため、このデイサを辞めたA子さんの後任として、
数ヶ月前に他の系列店からこのデイサに回されてきた。
新入りではあるものの、ベテランの生活相談員である。
「新婚さんの家に行くのはまずいんじゃないか」
私が言うと、
「それはわかっているけど。でもねえ・・・」

私にはB子さんの気持ちが解らないではない。
B子さんはきっと寂しいのだ。
その寂しさは、どうやら「クリスマス・イブは恋人と過ごす」という
最近の風潮から来ているらしい。
この風潮は、「クリスマス・イブは恋人と過ごすべし」という
強迫観念となって、
多くの「ぼっち」たちを悩ませているらしいのだ。

私はといえば、妻との生活も早40年。
毎日が変哲もない日常の繰り返しで、
ハレもケもあったものではない。
のみならず、最近はコミュニケーション上の齟齬が目立ち、
孤独を感じることが多くなってきた。
「あなたがもし孤独を恐れるのならば、結婚すべきではない。」
ロシアの作家チェーホフはそう言ったというが、
この箴言を身をもって実感している天邪鬼爺のこの頃である。
Cさんは何年後に、この言葉を実感するだろうか。


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国家の謎

2021-12-23 11:15:55 | 日記


きょうの朝日新聞は謎のような紙面編成だった。社会面を丸々一面費やして、国交省の「統計書き換え問題」が文字通り問題のままで、「だれが、いつ、どうして始めたのか」、「なぜ是正できなかったのか」が不明のままだということ、このことを指摘して終わっている。普通なら「謎が解けたぞ!」と胸を張るところだが、きょうの朝日新聞は、「全く不可解な話ですな」と井戸端談義を垂れることに多くの紙面を費やしているのである。まるで「我が国の行政は不合理で、手に負えませんな」とでも言いたげである。




謎はほかにもある。昨夜、こんなニュースを聞いた。

「安定的な皇位継承のあり方などを議論してきた政府の有識者会議は22日、最終的な報告書をまとめました。
皇位継承の議論は機が熟していないとしたうえで、皇族数を確保する方策として▽女性皇族が結婚後も皇室に残る案と▽旧皇族の男系男子を養子に迎える案の2つが盛り込まれました。」
(NHK NEWS WEB 12月22日配信)

皇族問題。これも国家規模の大問題であるらしい。私が不可解だと思うのは、なぜ政府が国費を費やして「有識者」を雇い、「皇族数を確保する方策」について検討させねばならないかである。「皇族」という特異な種族の保存を図ることが、なぜそれほど国家の重要懸案なのか。私にはとんと解らない。

私の理解するところでは、「皇族」とは、天皇家を支える昔ながらの一族の集団である。天皇には戦争責任がある、とは言わないが、昔むかし軍人の集団が、「天皇」という御神輿の権威を利用して政治的ヘゲモニーを握り、戦争を起こしたことは、争えない事実だろう。無謀な戦争の結果、大日本帝国は敗者となり、勝者の連合国は日本が二度と戦争を起こさないよう「天皇」の政治的権威を抹消しようとした。

その結果、天皇はただの「国家の象徴」となり、皇族はこの政治的シンボルを支える幻の集団になった。天皇にも、皇族にも、もはや維持すべき積極的な政治的意義はないと言うべきだろう。

今の日本では、これ以上言うと極右のテロの標的になりかねないから、私はこれ以上は言わない。言えない、と言うしかない。

・・・あ、政府が国費を費やして「有識者」を雇い、「皇族数を確保する方策」について検討させるのは、極右の存在を恐れてのことなのかな。そうなのかもしれない。謎が一つ、解けた気がする。

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岸田首相の記者会見

2021-12-22 11:29:04 | 日記


臨時国会が閉会したきのう21日、岸田首相の記者会見が行われた。私は夕食を口にしながら、その
様子をNHKニュース番組のライブ映像で見た。立て板に水の岸田首相の発言を聞きながら、私が感じたのは、「そんなにカネをばら撒いて、この国は大丈夫なのかなあ・・・」ということだった。

岸田首相は高らかにこう宣言した。

「昨日の補正予算成立により、事業規模78.9兆円のコロナ克服と新時代開拓のための経済対策がいよいよ実行段階に入ります。」
(首相官邸のHPより。以下同じ)

この78.9兆円という予算額は、どうせ国債の発行によって賄うつもりなのだろう。赤字のツケは当然、将来世代に回される。私の子や孫やひ孫は、この負担に耐えられるのだろうか。

記者会見の質疑応答の席で、次のような質問が出た。

「6月の骨太の方針ではプライマリーバランスの黒字化目標について、今年度中に2025年度の黒字化目標を再確認するというふうにしていますけれども、この再確認するというのは、よほどのことがない限りこの目標年度に沿って、目標年度を確認するために検証作業をするということでしょうか。」

これに対して、岸田首相はこう答えた。

「今は新型コロナという危機の最中にあり、必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく行い万全を期さなければいけない、こうした段階にあると思います。そういった思いで大規模な経済対策を用意したということであります。そして、経済あっての財政であり順番を間違えてはならない、こういったことは再三申し上げております。」

さらに岸田首相は、こうも述べている。

「先ほども申し上げましたが、この順番を間違えてはならない。コロナ禍を乗り越えて、経済を再生し、そして財政健全化を考えていく、こういった道筋をしっかりと大事にしながら、財政健全化についても考えていきたいと思っています。」

なるほど。たしかに筋は通っている。そう思いながら、私が気になったのは、直前に言われた次の言葉との関連だった。岸田首相は次のように言ったのである。

「財政は国の信頼の礎であり、中長期的に財政健全化に取り組む必要があると考えています。」

この考え方も、尤もなことだと私は思う。財政が健全な国は、他国の政府や企業から信頼を寄せられ、不健全な財政の国は、他国の政府や企業からの信頼を失って、そっぽを向かれる。

私はさらに次のように考えた。

財政が不健全で、他国の政府や企業から信頼を失った国は、他国(たとえばアメリカ)と安全保障上の同盟関係を結べなくなるだろう。また、他国(たとえばアメリカ)との貿易も行えなくなるだろう。そうなれば、その国は経済を再生することができなくなるだけでなく、自国の防衛すらできなくなるのではないか。

私には、この国が真っ暗闇に向かって突進しているようにしか見えなかった。

キシダくん、この順番は間違っていないよね。
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