そいつはやっと去っていった。きょうの早朝、そいつはやっと去り、身体からどっと力が抜けた。心地よい脱力感の中で、私は久しぶりにウトウトした。ホントに久しぶりだ。そいつに取り憑かれていた間は、つい全身に力が入り、昨夜はまんじりとも出来なかった。テレビ・ドラマを見る気にもなれず、早々とベッドに横になったが、眠くはならず、一晩中そいつと戦っていた。
若かった頃は、時々そんなことがあった記憶がある。医者に診てもらったら、「慢性十二指腸潰瘍」だと言われた。H2ブロッカーの「ガスター20」を処方してもらい、そいつが顔をだすとこのヤクを服用してそいつに対処した。
このH2ブロッカーはそいつを退治する特効薬だったが、50歳になった頃、「十二指腸潰瘍には、ピロリ菌の除菌が良い」と聞き、さっそくこの治療法を試した。治療といっても、ただ薬を飲むだけ。丸々1週間、禁酒を強いられたのは辛かったが、ともかく1週間、薬を飲み続け、除菌が完了した。
効果は抜群だった。以後、そいつはピタリと姿を現さなくなり、つい最近まで、つまり20年間も、私はそいつのことを忘れていた。
そいつが再び顔を出したのは4ヶ月ほど前のことだった。そのときはたじろいだが、一過性のことだろうと思っていた。ところが、こうも頻繁にそいつが姿を現すようになると、何が原因なのかと考え込んでしまう。まさか胃がんではないだろうな。もしそうだとしたら、今の(妖怪コロナに翻弄されている)医療体制では、私は治療を諦め、死を覚悟するしかない。
他に原因はないのか。やたら鼻水が出る。きっと夏風邪を引き、それが胃痛の引き金になったのだろう。いやいや、それだけではないぞ。この夏は暑かった。暑かったから、冷たいアクエリアスをガブガブ飲んだ。ビールも冷やしてガブガブ飲んだ。それがいけなかったに違いない。
ともあれ、今はそいつも姿を消し、キーボードに向かう気力も戻ってきた。そいつに取り憑かれていた間は、何も考える気にはなれず、テレビ番組を楽しむこともできなかった。
今は総裁選もたけなわ。テレビのワイドショーはその話題で持ちきりだが、残念ながら私は、この格好のエンターテインメントを楽しむことができなかった。わが「日本丸」の次の船長がだれになろうが、そんなことはどうでも良いことのように思えてくる。そんなふうに感じるのは、良いことなのか、それとも悪いことなのか。〈そいつ〉を呪うべきか、感謝すべきか、今、私は迷っている。
若かった頃は、時々そんなことがあった記憶がある。医者に診てもらったら、「慢性十二指腸潰瘍」だと言われた。H2ブロッカーの「ガスター20」を処方してもらい、そいつが顔をだすとこのヤクを服用してそいつに対処した。
このH2ブロッカーはそいつを退治する特効薬だったが、50歳になった頃、「十二指腸潰瘍には、ピロリ菌の除菌が良い」と聞き、さっそくこの治療法を試した。治療といっても、ただ薬を飲むだけ。丸々1週間、禁酒を強いられたのは辛かったが、ともかく1週間、薬を飲み続け、除菌が完了した。
効果は抜群だった。以後、そいつはピタリと姿を現さなくなり、つい最近まで、つまり20年間も、私はそいつのことを忘れていた。
そいつが再び顔を出したのは4ヶ月ほど前のことだった。そのときはたじろいだが、一過性のことだろうと思っていた。ところが、こうも頻繁にそいつが姿を現すようになると、何が原因なのかと考え込んでしまう。まさか胃がんではないだろうな。もしそうだとしたら、今の(妖怪コロナに翻弄されている)医療体制では、私は治療を諦め、死を覚悟するしかない。
他に原因はないのか。やたら鼻水が出る。きっと夏風邪を引き、それが胃痛の引き金になったのだろう。いやいや、それだけではないぞ。この夏は暑かった。暑かったから、冷たいアクエリアスをガブガブ飲んだ。ビールも冷やしてガブガブ飲んだ。それがいけなかったに違いない。
ともあれ、今はそいつも姿を消し、キーボードに向かう気力も戻ってきた。そいつに取り憑かれていた間は、何も考える気にはなれず、テレビ番組を楽しむこともできなかった。
今は総裁選もたけなわ。テレビのワイドショーはその話題で持ちきりだが、残念ながら私は、この格好のエンターテインメントを楽しむことができなかった。わが「日本丸」の次の船長がだれになろうが、そんなことはどうでも良いことのように思えてくる。そんなふうに感じるのは、良いことなのか、それとも悪いことなのか。〈そいつ〉を呪うべきか、感謝すべきか、今、私は迷っている。