舛添要一氏(前東京都知事、国際政治学者)がツイッターに投稿し、スガ首相の退陣表明について述べた見解の一端が、ネット記事で紹介されている。それによれば、「感染第5波のピークは8月25日頃であり、菅首相が退陣を表明したのは10日後の9月3日だ」。舛添氏はこう事実関係について指摘した上で、「尾身チームでなく、もっと優秀な専門家が側にいてピークアウトを指摘していれば、(菅首相は)退陣せずに済んだかもしれない」と述べたという(東京中日スポーツ9月27日配信)。
これだけの内容からは、舛添氏の真意は判然としないが、彼はこう言おうとしているのかもしれない。もしスガ首相が「ピークアウトは8月30日です」と専門家から報告を受けていたら、この日を境に支持率は回復すると首相は判断したに違いないから、9月3日に早々と退陣を表明したりはしなかっただろう、と。
話は飛ぶが、先日、私は本ブログで次のように書いた。
「スガ総理は(ワクチン接種が効果を発揮するという)自分の達見を信じ、この成果(ピークアウト)が出るのを泰然として待つべきだった。自分の達見を信じていれば、彼は総裁選への不出馬を表明せずに済んだはずだ。」
(9月26日《グッジョブだよスガ総理》)
この私の見解は、舛添氏のそれと軌を一にしていると言えるだろう。違う点があるとすれば、それは、ピークアウトの日時をはっきり予測できなかった不明を、だれの所為にするかである。舛添氏はこれを(政府の「新型コロナ対策分科会」会長である)尾身茂氏の所為にし、彼に対して激しい糾弾の矢を放っている。
舛添氏が「尾身会長の政変など無関係なような厚顔無恥ぶりには愕然とする」と書くのは、「菅首相が退陣を表明したのは、尾身会長の政変の策略にまんまと乗せられたからだ」と見ているからだろう。
私はそうは見ない。妖怪コロナの勢力の消長は、どうにも予測不能で、はるかに人知を超えている。そう考えている。どれだけ優秀な専門家を集め、チームを編成しても、この妖怪には太刀打ちできないだろう。確実に予測できるのは、絶対に予測不可能だということ、それだけである。
政府はきのう28日、緊急事態宣言と「まん延防止等重点措置」を30日限りで解除すると発表したが、私はこれをもって妖怪コロナが根絶やしにされたとは考えていない。きのうの発表は、スガ首相の退陣に花道を設(しつら)えるための舞台装置でしかない、ーーそう考えている。きのう夕方のスガ首相の記者会見を、きっと妖怪コロナはどこかで嘲笑っているに違いない。