まあ、日本人とアメリカ人、ということについて、いろいろ最近考えているわけですが、
アメリカ人の仮名ジムが僕にいろいろ言ってくるので、いろいろ考えちゃうんですね。
まあ、いろいろな示唆のあるおしゃべりになるので、
「こいつ、有用だなあ」
なんて、思っていたりするわけです。
で、先日、飲み屋で、ジムは、こんなことを言ったわけです。
「日本ってさ、アカデミックスマートと、ストリートスマートっていう概念そのものがないんじゃね?」
そんなこと言われたって、アカデミックスマートとか、ストリートスマートという言葉も知らないし、概念がわからないもんねー(笑)。
「俺が見るには、日本の社会って、アカデミックスマートの人間に牛耳られているから、いろいろ、うまく行ってないんじゃねーの?」
とジムに唐突に言われ、
「アメリカは、特にハーバード大は、大学に入ったら、アカデミックスマートから、ストリートスマートへ思考法をチェンジする教育をやっているんだ」
とジムは、言い、
「だから、アメリカ人は、優秀なんだ。日本人と違うのは、そこだ!」
などと、決め付けるように、言われたんですねー。
まあ、日本擁護側の僕は、さすがに、目を白黒させましたが、
「あのさ、とりあえず、アカデミックなんちゃら、ストリートなんちゃら、の説明をしてくれよ。俺、英語さっぱりだから」
と言うと、ジムも、そこには、気づいたようです。
「ああ。でも、日本にその概念がなかったら、意味ないんだけど・・・」
などと、言うジムは、アメリカ至上主義ですからねー(笑)。
「アカデミックスマートとは、まあ、大学に入るためにいろいろ知識を蓄えて、そこから、いろいろ思考する人間のことだな」
とジムは言います。
「まあ、大学に入るまでは、それでいいけど、大学に入ったら、今度は、知識からの憶測だけではだめなんだよな・・・」
と続けます。
「研究や実験と言った経験から、いろいろ思考して、知恵を出すように転換していかなければ、いけないんだ。それが、出来ないとアメリカでは、大学を卒業できない」
と説明し、
「そうやって、卒業した人間が、ストリートスマートという人間なんだ。まあ、実際の現場を踏んで、そこから思考の出来る人間ということかな」
と、ジムは、言います。
「日本の大学は、卒業するのは、難しくないって言うじゃん。つまり、アカデミックスマートのまま、社会に出て、そういう人間が力を持っているんじゃないの?」
とジムは指摘します。
「あのさ、アカデミックスマートってのは、思考していないんだよね。従来から持っている偏狭な知識から、しゃべるだけなの」
と、ジムは言います。
「逆にストリートスマートというのは、経験から思考するから、賢いんだよ。いろいろ見えている」
と、ジムは説明します。
「だから、アカデミックスマートというのは、頭でっかちなだけなんだよ。経験から思考していないから、仕事任せても、あんまり使えないんだよな」
と、ジムはジムなりの感想を僕に言います。
「だから、日本の官僚は、頭でっかちの東大生ばかりなんだろ?マイケル・サンデルの授業の東大版見たけど、内容が浅くて、いかにも、アカデミックスマートの集まりって感じだったぜ」
と、ジムは吐き捨てます。まあ、こういうのは、東大生が聞いたら、激怒するだろうけどね。あのね、これ、ジムの言葉だからね。僕は言ってないよ(苦笑)。
「うーん、その指摘は、厳しいけれど、日本にだって、アカデミックなんちゃら、ストリートなんちゃらの概念はあるぜ!」
と、僕もようやく反撃です。
「へー、そうなの?」
と、ジムは、少し興を覚まされたように、僕を見ます。
「僕的に言葉を作っているんだけど、要は、「知識からの知しか使えない人間」、と、「経験からの知を駆使出来る人間」ってことだろ?それ?」
と、僕が言うと、
「なんだ、わかってんじゃん。ゆるちょ!」
と、一気にご満悦な、ジムです。
「なるほどー、アメリカの大学は、アカデミックスマートからストリートスマートへの変換が行われているのか。それは、確かに日本の大学より、すごいね」
と、僕が言うと、さらにご満悦なジムは、
「そんなの、当たり前だと思っていたけどな。なにしろ、アカデミックスマートの奴らは、仕事の環境が変わると見るも無残に対応できないからな」
と、ジムは苦虫をつぶしたような、表情で笑います。
「環境が変化しても・・・というより、自分の能力にあった、ビジネス環境を作り、成果を上げていくのが、アメリカ社会のいいところだ」
と、ジムは言い、
「それが、出来ないアカデミックスマートは、アメリカじゃあ、いらない集団なんだ」
と、アカデミックスマートの全否定を行うジムです。
「だから、転職の数が多いほど、自分の理想のビジネス環境に近づいていることってなるから、そういう人間は、ストリートスマートとして、信頼が置けるんだよ」
と、アメリカの価値観を教えてくれるジムです。
「なるほどー」
と、そこは、同意する僕です。
「日本は、終身雇用って言うじゃないか」
とジムはほくそ笑みます。
「だから、アカデミックスマートで、やっていけるんだ。というか、ストリートスマートになる必要がないんだろ。それじゃあ、だめだ」
と、ジムは日本の職場環境に手厳しい感想を持っています。
「でもさ、日本でも、ストリートスマートになって、自分向けのビジネス環境をつくって成功している人間は、たーくさんいるよ」
と、僕が言うと、
「あー、そういえば、ゆるちょも転職組だったな。だったら、そのあたり、わかるだろ?」
と、ジムが言います。僕は、
「俺はまだまだだけど、ライターとしてインタビューした起業組の社長さん達は、まさに、ストリートスマートだったね」
と、言います。
「ほう。日本もまだまだ、捨てたもんじゃないな」
と、ジムはそこは、素直に話します。
「だが、日本が、アカデミックスマートに牛耳られているってのは、真実だと思わないか?」
と、ジムは美味そうにビールを飲み干すと、
「官僚という名の、アカデミックスマートにさ」
と、結論を僕に叩きつけます。
そして、ジムは、赤くなった顔で、
「一番搾り、おかわり!」
と、店の姉ちゃんに言うのでした。
僕は地味に考えてこんでいるのでした(笑)。