趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『神の手 上』 久坂部 羊

2010年07月01日 | 
久坂部 羊さんは、1955年大阪府堺市生まれの医師で作家です。
2003年『廃用身』で作家デビューされました。
他に『破裂』、『無痛』をかつて読んだことがあります。
いずれも医療がテーマとなっていて、
現場を知る医師ならではの発想や筋立てが、とても印象深い記憶があります。

新聞広告で新刊の案内を読み、早速図書館で借りました。
下巻はまだ順番待ちです。



この『神の手』は、安楽死が大きなテーマとなっています。
安楽死というものも、それを受け取る立場によって
大きく意味が違い、思いもしない方向に微妙に絡まって複雑さを見せるのです。
それだけでなく、
現代医療の問題点が詳しく論じられ、安楽死問題だけにとどまりません。
安楽死の是非を問う先に、新たな医療の体制作りが絡んできます。

でも、と。
安楽死をめぐる中には、必ず不治の病に苦しむ患者とその家族がいるわけで、
その事だけは変わりません。
それを忘れてはならないと思いました。

若い患者ほど安楽死が必要という箇所に、びっくりしました。
そして、その説明になるほどと思いました。
末期のがん患者の苦しむ描写に、亡くなった友人を思い出して
ちょっと辛くなりました。
当時、苦しみをどうにもできないもどかしさと
医療の限界を目の当たりにして、激しく医療不信に陥ったことを思い出し
14年の歳月は、何をもたらしたかと、
またずっと考え続けています。
今の自分なら、どうするだろうか??