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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

直面(3)ー触れたいー

2014-09-25 01:00:00 | 雪3年3部(対面~彼のコレクション)
雪から淳への初めての告白。

その一言から、二人の間の空気が幾分変わった。

淳は徐ろにソファから立ち上がると、「少し詰めて」と言って雪の隣に座る。



こんな真剣な話し合いの最中に、急に仲直りしたかのように振る舞う彼に雪は戸惑った。

しかも彼は隣に座っても何を話し出すでもなく、ただ頬杖をつきながら沈黙している。



雪は暫し彼が口を開くのを待ったが、やはり彼が何も言い出さないので、一つ息を吐いた後自分から口を開いた。

「私が言ったことは合ってるでしょう?

私を嫌ってたこと、色々上手く行かなければ良いって思ってたこと」


 

その雪の言葉に、淳は姿勢を変えぬまま口だけ動かした。

「‥ああ」



雪はハァッと大きく息を吐いた。ようやく彼が過去への言及に応じたのだ。

淳は雪の方を見ないまま、続けてこう言った。

「だけど今は違うよ」



「それは信じて欲しい‥」



その彼の答えを聞いて、雪は思った。

いや‥それについては前にも何回か話し合ったよな‥。



またどこか論点がズレ始めたような気がする‥雪がそんなことを考えていると、

続けて淳が口を開いた。

「俺は、簡単に誰かが好きだとか嫌いだとかを口にしたりはしないけど、

人間である以上、当然そんなこともある」


 

淳は頬杖をついたまま、遠い目をして自分の心情を語り出した。

何かを諦めたような、どこか疲れたような話し方で。

「去年散々つきまとわれた平井も、俺を責め立てた横山も、

俺に何でも要求してくる学科生達も嫌いだった」




長い前髪の間から覗く彼の瞳は、ひどく冷めていてどこか暗かった。

長い間ずっと晒されてきたその疲弊が、彼の瞳に陰鬱な影を落とす。

「皆何が目的で俺に近寄って来てるか分かるから、それに見合った対価を与えるんだ。

俺のその考え方は、間違ってないと思う」




それは彼が幼い頃から、ずっと彼の周りにあったものだった。

ニコニコと近寄って来る人達の瞳の中に透けて見えるもの。

打算、計算、見返り、下心‥。



それが自分の周りにある、世界の全てだった。

今彼が口にしたその答えは、自身が奪われていく世界の中で、自ずと彼が身につけた処世術だった‥。




以前も耳にしたことのある彼のその考え。

けれど雪にはその考え方が、どうにも理解出来なかった。共感も出来ない。

単純に上から目線の嫌味に思える。



イライラしながら彼を見ていた雪の方を、不意に淳は振り向いた。

去年散々目にした、あの瞳で。



そして淳は続けて、昨年雪に対して抱いていた気持ちを口に出した。

「無理して俺に挨拶する雪ちゃんも、他の子達と同じに見えた。

もしかしたら彼らよりさらにウザかったと言えば、ウザかったかもしれない」




雪は覚悟はしていたものの、自分への悪口を実際目の前で聞くと腹が立った。

ブルブルと震えながら、ムカムカと湧いてくる怒りを感じる。



雪は皮肉を込めながら、少し意地悪な気持ちであの頃の彼への感情を話し出した。

「そりゃ~もちろんそういう下心が無かったとは言いませんよ。人気がある先輩と良い関係を築けば、

正直言って得ですからね。けど打算の元にタカってやろうとか、そんな気持ちがあったワケじゃないです」




雪のその言葉に、淳は薄く微笑みながら「分かってるよ」と答えた。

雪は去年彼に対して取った態度の弁解を、ポンポンとテンポ良く話す。

「先輩が目に見えて私のこと嫌ってるのに、それでも挨拶してたのには訳があって‥。

”いつかまたイメージが良くなるだろう” ”それでお互い気持ちよくまた大学に通えるだろう”って思ってたんです。

そうしてたらその内、私が挨拶すること自体嫌そうに見えるから、あれこれしてもダメなら、嫌な気持ちにしてやる!って‥」




半ばヤケクソの気持ちだったと、そう口にした雪を見て、

淳は笑って言った。

「もう分かってるよ」



そして淳は続けた。

「雪ちゃんは、いつも俺からの助けを拒むよね。

今回のことも証拠を集め終えたら、君一人で横山と対決しようとしただろう?」




その声には、少し寂しさが滲んでいた。

雪は何も言わぬまま、じっと彼の方を見ている。



そして淳は再び前を向いて、再び暗い影を瞳に宿した。

視線の先にあるのは、去年の自分と雪の姿‥。

「あの頃の俺は‥君から、異常な程影響を受けてると思った。そしてそれは、実際その通りだった‥」







「目つきや声、一つ一つの仕草全てが、いちいち気に障った。他に嫌ってた奴らよりもずっと。

明らかに俺に対する言葉や行動じゃない時でさえも」




ゆるりと、心の扉が開いて行く。

僅かに開いたその隙間から、閉じ込めていた気持ちが零れ出る。

「もしかしたら俺は、君のことが怖かったのかもしれない。

最終的には俺のことを、侵害するのかと思って‥」







扉の中で、幼い彼が頭を抱えて座っている。

自身を侵害され奪われゆくその恐怖に耐えながら、彼は必死に自分を守ろうとしている。


淳は続けた。

その恐怖に耐えるように、掠れた声で、頭を抱えて。

「俺はそれが‥すごく嫌だ。本当にすごく‥嫌なんだ‥」







雪は、初めてこの少年をハッキリ目にした気がした。

普段の彼からは想像もつかないような、何かに怯えたような、その少年を‥。

そして淳は俯いたまま、今の心情を言葉にして紡ぐ。

「それで今は‥君が俺から離れて行くんじゃないかって‥

それで俺はずっと、これ以上話すのが怖かったんだ」




消え入りそうな声でそう口にした淳を、雪は静かにただ見つめていた。

淳は俯いたまま、「雪ちゃん」と彼女の名を口にする。



そして淳は、ゆっくりと顔を上げた。

少し細めたようなその瞳は微かに潤んでいて、目の前の彼女がそこに映る。



淳は雪の方を真っ直ぐに見つめながら、柔らかな声でこう言った。

「好きだと言ってくれて、ありがとう」



そして彼女の両肩に優しく手を置くと、自分の気持ちを口にする。

「俺も君が好きだ」



そして甘えるように、雪の肩に頭を乗せた。

彼女への気持ちが、次から次へと溢れ出る。

「本当にすごく‥好きだ」



そして淳は、彼女の肩から頭を上げた拍子に、その唇にキスをした。

雪は目を丸くしながら、不意打ちのそれを受ける。



二人の前髪が触れ合うその距離のまま、淳は再び告白した。

赤面する雪が、慌てて彼を止めようとする。

「好きだ」  「あの‥ちょっ‥」



けれど淳は止まらなかった。

彼女に触れたい、その気持ちが、彼を本能的に動かして行く。

淳は雪の両腕に手を置いて、もう一度彼女に口づけた。



今までとは違う、彼と深く繋がるキス‥。




やがて淳は唇を離した。

雪はまだ今の状況に頭がついていかないまま、目を見開いて当惑する。

「あ」



すると淳は、彼女の袖に触れて、小さく声を出した。

雪の手首を掴みながら、ゆっくりとその袖を下に下げる。

「何するんですかもう!この人は‥!」

「ねぇ、服に何かついてるよ」



その淳の言葉に、雪は思考が止まるのを感じた。

彼の瞳をじっと見る。



そんな雪を見つめ返す淳の瞳。

真っ直ぐに、彼女の姿を映している。



雪は彼から目を逸らせないまま、彼の言った言葉を頭の中で反芻していた。

その瞳の奥に、彼の気持ちが透けて見える。彼の大きな手が、雪の手首をぎゅっと握る‥。



雪は一言、淳に向かって「分かってます」と言った。

先ほど零したコーヒーの染みが、彼の体温を彼女に移して熱くなって行く‥。




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<直面(3)ー触れたいー>でした。

雪が好きだと言ってくれたことで、淳がようやく心の扉を少し開けてくれましたね‥!

「すごく嫌だ」と、頭を抱えるシーンが印象的でした。。


そして!四十九話ぶり、一年二ヶ月ぶりの、キスシーン‥!(デコチューは除く)

読者にしたら長いおあづけでしたよ本当‥今までよく耐えた‥!我ら‥!笑



次回は‥話の流れ上、めっちゃ短くなります。申し訳ないです‥!

<待ちぼうけ>です。



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