Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

イタチの最期

2014-09-16 01:00:00 | 雪3年3部(語らぬ彼~隠された思惑)
携帯は新たに数度震えた。

自分が赤山を追って走る写真の後に、動画が一つ添付してある。



横山は恐る恐る再生ボタンを押した。

すると動画は、昨夜自分が赤山に向けて言った内容を再生する。

”クッソが‥お前の大学生活、メチャクチャにしてやろうか?

帰り道の度に身の竦むような思いをさせてやろうか?

お前んちの食堂に来てる客の前で髪の毛引っ掴む真似でもしねーと、お前は目ぇ覚まさねぇか?”




それを目にする横山の顔が、みるみる怒りで歪んで行く。

これはどう解釈しても脅迫に他ならない。これを持って警察に行かれたら、自分は有罪間違い無し‥。

「あ‥うわあああっ!!」



横山は頭を抱え、その場で吼えた。

咆哮により怒りが多少出て行くと、今度は恐怖が襲って来る。



横山はキョロキョロと、大きな仕草で周りを見回し始めた。

それは何らかのパフォーマンスでは無い。彼は周りが見えぬ程、追い詰められているのだ。

今も‥?今もなのか‥?今も俺を‥



ずっと俺を‥!



誰かが自分を見ている。

誰かがどこかで自分のことを、瞬きもせずに見つめている。

横山は堪らず駆け出した。

どこだ?!どこで見てやがる?!一体誰が‥?!

こんなこと許されねぇ‥!俺の知らないとこでこんなこと‥許されねぇぞ!!




握りしめた携帯には、相手からの最終通告が書かれていた。

”金輪際赤山雪に手を出すな”と。



今や横山は、そのメッセージの主が青田淳本人であるということを確信していた。

しかしこの時間に大学で彼を探し回ってみたところで、インターン中の彼とは会える筈がなかった。

横山はどこへ向かえば良いのか分からなかった。恐怖に突き動かされるように、闇雲に駆けて行く。

「うわああああああ!」



一心不乱に走っていた横山は、とうとう足がもつれ、転んでしまった。

ドスン、と鈍い音が辺りに響く。



横山は固い地面に手を突きながら、あまりの悔しさにギリギリと歯噛みした。

畜生、と呟く声が、頼り無く震える。



そのまま地面に突っ伏し、横山が悔しさに打ち震えていると、不意に頭上から声が掛かった。

「あの‥」



「何だよ?!」と横山は、その声のする方へ顔を上げた。

声を掛けた女性は、横山の怒気に思わずビクッと身体を強張らす。



そこに居たのは、再び大分野暮ったくなった清水香織だった。

「あ‥いやその‥げ、元気‥?」



香織は眼鏡のフレームを何度も指でいじりながら、辺りを気にするように見回して話を続けた。

横山は、香織を見上げたままポカンとして固まっている。

「あ‥久しぶり‥私はちょっと‥大学に用事が‥

その‥休学関係のことで教授に用が‥あとまぁ色々‥こっそり終わらせてすぐに帰るから‥、

私に会ったことはその‥内緒‥ね?」




香織は歯切れの悪い言葉をオドオドと続けながら、しきりに辺りを気にしていた。

しかしそんな香織の話など、横山の耳にはまるで入って来なかった。

今この瞬間も、どこかで見られているのかもしれない‥。



視線を揺らしながら、怯えるように辺りを見回す横山を見て、香織はニヤリと笑った。

「あ‥それでその‥横山君‥その格好マジウケる‥」

 

クルクルパーのジェスチャーと共に、香織はクスクスと笑いながら駆けて行った。

彼女もまた、横山にあのスレで悪口を書かれていた内の一人だ‥。



香織が走り去って行くのを、横山は呆然としながら眺めていた。

固く冷たい地面に座り込む彼の前を、走る車のエンジン音が通り過ぎて行く。



横山は地面に力無く手を置いた。自分が座っているこの場所だけ、流れる景色に取り残されてしまったようだった。

横山は俯きながら、呆然の中で一人呟く。

「完全に‥完全に踊らされてたんだ‥俺‥」



登り詰めたと思った場所は、脆い砂の城の上だった。

人を蹴落とし、騙し、馬鹿にしていたツケが今、自分の身に降りかかって来ている。



横山は天を仰いだまま、ゆっくりとその場に倒れて行った。

まるで高い場所から転落したかのように、彼の身体は仰向けのまま動かない。



これにて、虚像を纏ったイタチはその見せかけを全て剥ぎ取られ、ただの無力な一匹の小動物と化した。

誰も手を差し伸べない。自滅したイタチは、ボロ布のように固い地面に捨て置かれた。

「あ‥ああぁ‥ぁぁぁ‥」



荒野に見捨てられたか弱きイタチはそのままいつまでも、

小さな鳴き声を空へと響かせていた‥。













「うーわマジやべぇ」 「横山イッちゃってんな」 「オーマイガッ!」「これ俺のことじゃね?!」



その頃A大経営学科の教室では、横山の話題で持ち切りだった。

皆が、先ほど経営学科のウェブ掲示板に上がったスレを見て騒然としている。

「いつかアイツ何かやらかすぞって俺が言ってたじゃん!!」「うははは!腹がよじれて死ぬ~!こんな面白ぇ場面見逃しちまった~!」



教室にその掲示板の話題を持ち込み、皆に広めているのは、勿論先ほど横山食事会に参加していた男子学生達だ。

健太はその無礼な後輩に皆の前で憤り、その場に居合わせなかった柳は涙を流すほど笑ってこの状況を楽しんでいた。



そんな中直美は、一人プルプルと震えながら言葉も出ない程憤っていた。

それを見て、彼女の友人達はヒソヒソと話を交わす。

「直美さんどうしたの?」 

「あ‥ホラ、さっき清水香織がちょっと大学に来てて、偶然出くわしちゃって‥」



そして彼女が話し出したのは、横山が書き込んでいたスレの内容を直美が知ることになった顛末だった。

横山が掲示板に書き込んでいた直美に関する内容とは、以下の通り。

マジで男に飢えてたんか、告白するやいなやすぐにOKした年上の女がヤバイ。

ことあるごとに口出しおせっかい。あーうぜ。マジ後悔




別れる間際になったら、その女怖くなったのか縋り付いて来て、俺がいなきゃ生きられないって感じなんだけど、

こういう女って後々ストーカーになんじゃねーの?女のストーカーとか、どういう対処すりゃいーの?

体験したことある人~?




それまで直美は、その掲示板の存在を知らなかった。

ほんの数時間前、大学の構内でバッタリ香織と顔を合わすまでは‥。



思わず邂逅した香織と直美らは暫し黙って顔を見合わせていたが、じきに香織がオドオドと口を開いた。

「あ‥久しぶり‥その‥ちょっと教授に用があって‥あ‥それでその‥な‥直美さん‥」



そして香織は携帯片手に、ファイティンポーズを直美に送った‥。

「スレ見ました。が、がんばって下さいね‥っ☆」



そして直美はその掲示板の中身を知った。

バイトがあるから、と駆けて行く無責任な香織の後ろで、直美が泡を噴いて倒れて行く‥。



‥という先程の出来事を思い出して、直美は怒りに打ち震えていた。

あんなの事実じゃないと叫ぶ直美の後ろで、友人達は彼女に同情のまなざしを送る‥。



横山に対する恨み言を叫ぶ直美の声が、教室にこだまする。


皆に嫌われ、嫌われ、嫌われ尽くしたこの現状。


これが、イタチの最期だった。




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<イタチの最期>でした。

横山‥ケチョンケチョンにやられましたね。

結局彼が馬鹿にしていた全ての人からしっぺ返しをくらって、壮絶な最期を遂げました‥。

個人的に注目したいのは、久しぶりに出て来た清水香織がやってくれた所!

「その格好マジウケる‥」



ここのクルクルパーのジェスチャーは、香織が皆の前でボロボロになった時、

彼女を見捨てた横山がしたジェスチャーでした。



因果応報ですね‥。

さようなら横山翔!どうぞ心を入れ替えて‥!



さて次回は<太一の秘密>です。




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