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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

発表

2013-09-04 01:00:00 | 雪3年1部(淳と秀紀遭遇~グルワ発表)
遂にグループワークの期末課題である、班別発表の時間がやって来た。

グループ1から順に、各グループの発表が始まる。



まとまっているグループもあれば、途中しどろもどろになるグループもあり、

そういった時はすかさず教授のチェックが入った。



順調に発表は進み、次はグループ4、青田淳の居るグループの発表だった。

冒頭の佐藤から始まり、スムーズに発表は進行した。



中でも淳のプレゼンはスマートで上手だった。



女子たちは目をハートにして彼を眺めていたし、



教授もその出来に感嘆の溜息を吐いた。

「グループ4は完璧でしたね。とても良かったですよ」



あまり褒めないことで有名な教授が、珍しく拍手をした。

そんな雰囲気の中で、雪たちのグループ5の名が呼ばれた。



よりによって青田の次なんて‥と言う健太先輩のボヤきを聞きつつ、雪たちは壇上へと向かった。

一応はそれなりにはまとめたし‥。A+じゃなくてもAくらいは貰えるだろう‥。

発表さえ上手く行けば!




雪は神に祈るような気持ちだった。

ぶっつけ本番に近い発表だ。上手くいくだろうか。

しかし健太先輩はこう見えて瞬発力がある方だし、直美さんも普段から勉強熱心な人だ。香織ちゃんも真面目だし‥。

いける。

やれる。

雪達グループ5は、鬼気迫る気迫で壇上へと上がった。

よし!どうにかなる!!



ドドンと4人は胸を張った。

一番手の清水香織が、パワーポイントの電源を点ける‥。







「えーっと‥ということで時間厳守とは全ての国家の文化的習慣でありながら‥えーっと‥」



プリントを持つ手が、ブルブルと震えている。

清水香織はプリントにかぶりつきで、たどたどしくその文章を読み上げていた。

その発表の下手さに教授は開いた口が塞がらず、雪達3人もその出来にドン引きだった。



「あれ?えーっと、韓国‥じゃなくてアメリカが‥」



言葉に詰まりまくりの香織に、雪は顔面蒼白になった。



その後も何かにつけ文章を前後させて読む香織に、遂に教授がストップをかけた。

先ほどからプリントばかり見ていて、聞く側への配慮が全く出来ていないと指摘された。



平謝りの香織に、尚も教授は続ける。

「それに発表中にプリントを参考にするにしても、基本的な内容は覚えておくべきじゃないのかな?」

それを受けて、直美さんと健太先輩はバタバタと慌てた。



清水香織のプレゼンは失敗‥。それでもあと3人残っている。Aは無理でもBは貰えるはず‥。

そう思っていた雪に、教授は決定的な一言を香織に言った。

「‥見るからに君は自身の発表内容を全く理解してないみたいだが‥」



「ちゃんと自分で調べたんだろうね?」

ギクッと、雪の表情が固まった。他3人も同様だ。

  

香織が、小さな声で肯定した。

その自信の無さそうな返事を受けて、教授は香織に先ほど彼女がプレゼンした部分の質問をして来た。

「我が国が国際通商でなだらかな交渉を進めることが出来なかった原因には、

どのようなことが挙げられるかな?」




香織はおどおどと下を向いて口ごもるばかりで、答えられなかった。

見かねた雪が口を開きかけたが、教授の容赦無い言葉が香織に浴びせられた。

「さっきはっきりと自分で調べたと言いましたよね?!」



事態の成り行きに教室はざわめき、雪は頭を抱えた。

  

そんな雪を、淳は心配そうに見つめていた。



グループ5、と教授から声が掛かった。

「我が国の交渉の問題点を、そこの長髪のキミ、答えてみなさい」



いきなり当てられた雪は始め戸惑ったが、その後きちんと正解を答えた。

「アメリカのスーパー301条とは?」



続けてされた質問にも、雪は完璧と言える回答をした。

「スーパー301条とは‥。米国通商法で交渉対象国に関する政策や慣行を‥」



そこまで答えた所で教授は雪の言葉を遮り、全く同じ質問を健太先輩にした。

アメリカのスーパー301条とは何か、と。

「ア‥アメリカが‥貿易をする上で‥貿易を‥」



しどろもどろである。

続けて直美さんも教授から同じ質問をされたが、彼女も答えられなかった。

もう結構、と教授は呆れたように言った。



教室がざわめきに揺れる。

雪は事態がどんどん悪い方向へ進むのが、信じられない思いだった。







教授は一つ溜息を吐くと、教室全体の方を向いて話をした。

「我々は今、経営交渉論を学んでいます。これは単なる課題や外部問題ではなく、

これから皆さんが直面するであろう問題なのです」




「それなのに対外的な経営交渉論を学んでいる学生が、

たかがグループ内での交渉さえもまともに成立出来なかったようですね」



事態は想定し得る最悪の結果に辿り着きそうだった。

雪の心は焦れる。

おしまいだ‥BどころかC‥。

後で個人的に一人でやったことを談判して、成績をどうにか上げてもらうしかない。




しかし続けて、教授はグループ5への所存を話し始めた。

私の授業は私のルールに従ってもらいます、と前置きをして。

「グループ5のレポートに目を通してみても、そしていまの発表の状況を見た上でも、

一人でやったということが丸見えだ」




そう言って教授は、雪の方を見た。



そしてレポートに視線を移し、正直内容的にはとても上等だと言った。

それを受けて、雪は幾分気分が和らいだ。

案外相談してみたら幾らか希望が見えてきそうだぞ?私だけでもBくらいは貰わないと‥



「しかし、」と教授は強い口調で言った。

「一人で頑張ってくれた学生には悪いが、事前に伝えたように判断を下すつもりです」



ルールはルールですからね、と教授は続けた。

グループ作業を最重視する、と何度もそう彼は言っていたのだ。

そして雪たちのグループ5は、問題外だと言った。

「グループ5は全員Dです」





3人は顔面蒼白になった。

  

ざわめく学科生達は、雪に同情の視線を送った。



バカな奴ら、と嘲る佐藤の隣で、淳もその様子を見守っていた。




重ね合わせた雪の手が、小刻みに震えている。



雪は顔を上げて教授を見た。私一人だけでも成績を上げて貰いたい‥



雪と目が合った教授は、フンと息を吐いて首を傾げた。

そして宣告するように、強い口調で言った。



「例外は認めません」







窓の外は、夏休み目前の青い青い空が広がっていた。

雪の一縷の望みは、その青い空に吸い込まれるように、散って行った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<発表>でした。

これで雪三年の一部は終わりです。

記事数は大体雪二年時と同じくらいの数になりました!

二部も、よろしくお願いします♪


次回は<ぶちまけた不満>です。

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損な生き方

2013-09-03 01:00:00 | 雪3年1部(淳と秀紀遭遇~グルワ発表)


完徹明けの雪が教室で座っていると、同じグループの3人はこぞって昨夜の言い訳を始めた。


メンバー1:清水香織
理由:妹にPCを壊され、修理の人がなかなか来なかった上に家庭の事情が入った。





メンバー2:直美さん
理由:夕方頃から具合が悪くなり薬を飲んだせいかなかなか起きれなかった。




メンバー3:健太先輩
理由:‥‥‥‥。




ジャージ姿の健太先輩の元に、男子学生が二日酔いの薬を持って来た。‥そういうことだ。




雪はキリキリと痛む胃を撫でながらも、皆に発表の台本を渡した。



重かった空気が3人の笑顔で弾む。

黙々と台本を読む彼らの前で、雪は寝不足とストレスで頭が痛んだ。



ふと視線を上げると、青田先輩の姿が目に入った。



雪とは対照的に、スッキリとした表情をしている。





淳のグループでは、発表の打ち合わせの最終段階に入っていた。

順番は佐藤から始まるため、彼が淳にその確認をしていた。なかなか自信があるらしく、鼻歌交じりに台本を見直している。



しかし淳はそんな彼に、「そういえばパワーポイントのスライド2,3ページ目は省くことになったからよろしくな」と言った。

佐藤の受け持っていた部分だ。当然彼は腹を立てた。

「なんだって?! どうして人が作ったものを勝手に消すんだよ!」



淳の意見としては、プレゼンなのに付加的な内容が多すぎるから、ということだった。

それに柳も同意した。

「お前の部分だけ長すぎんだよ!スティーブ・ジョブズじゃねーんだから」



まだグチグチと消された部分の重要性を訴える佐藤だが、そのままでは発表時間が佐藤だけ長くなってしまう。

グループワークは共同性が重要視され、4人の発表時間も平等に配分する必要がある。

そういう理由で省いたんだと淳は説明した。



その代わり、レポートにはしっかり入れておいたから、とフォローも忘れなかった。

柳が、俺らのグループが絶対一番だと自信を持って言った。佐藤はまだ不満そうだが、きっと発表は上手くいくだろう。






雪は離れた席から、そんな様子をヨダレを垂らしながら見つめていた。

いいなぁ‥あのグループは、みんなで一生懸命やったんだろうなぁ‥



雪の目の前の3人が、必死の形相で台本と格闘している。



グループメンバーは無作為決定とはいえ、雪は思わずにはいられなかった。

私も先輩と同じグループだったら、良かったのになぁ‥。



ぼんやりと、そしたら良い点数が貰えただろうになぁと雪は思った。

去年のグループワークで同じ班になった時とは、まるで違う心持ちで先輩を眺めていた。


その後雪は、発表の台本について皆から質問攻めに合い、本番までの時間を忙しく過ごしたのだった‥。







その頃亮は、同じ下宿の小太り君に牛乳を差し出しているところだった。

「ほらよ牛乳」



小太り君は本当に買ってきた亮に対して、意外な顔をした。

何本か足りなかったが、亮はきっとそれは下宿の皆がお前の牛乳を飲んでいるせいだと言って悪びれない。



小太り君は亮に、どうしてこんな時間に家に居るのかと聞いた。勉強しなくてもいいのか?と。

それを聞いた亮は、思わず吹き出した。そんな質問は、学生時代にもされたことがない。

「先生~僕の内面評価どうしてこんな低いんですか~?

僕が大学に行けなかったらどうしてくれるんですか~?ってか?」




亮は”勉強”のイメージを幾分皮肉ってみせた。それを見た小太り君は、若干反抗的な態度になった。

「必死に勉強しても報われない人は沢山いるんだぞん!バカにしないでくれん!」


(小太り君の口調は独特だ)

亮が何してる人なのかは知らないが、少なくとも自分の入っているゼミは超レベルが高いところだと胸を張った。

亮は耳をかっぽじりながら「へーへー」と流していたが‥。



小太り君は語る。

勉強の果てに合格したって競争は終わらないのだと。

僕らは一生を勉強に費やして、競い合わなければならないと。



両手を上げて大仰に語る彼に、亮は素朴な疑問をぶつけた。

どうしてそんなに勉強に執着するんだと、勉強が出来なくても稼ぎどころは沢山あるのにと。

「何も分かってないぞん‥。それは一時的なものなんだぞん。老後を考えたことがあるかん?」



「そういうお宅は勉強以外に何か自信のあるものがあるのかん?」



亮はそう言われても、口を噤んだままだった。

続けて小太り君は、亮が暮らしていく上で必要なお金や結婚相手など、そういった安定したものがあるのかと聞いてきたので、

亮は言ってやった。

「オレには面倒見てくれる女が沢山いるから心配ご無用。

バイト先近くのOL達がいつもメシおごってくれんだぜ?この牛乳だって貰いもんだし~」




調子に乗った亮は小太り君にタックルされ、その場に倒れ込んだ‥。






その頃大学では、遂にグループ発表が始まろうとしていた。


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<損な生き方>でした。

雪にしろ小太り君(勝手に命名しました‥)にしろ、真面目な人間ほど苦労するんですかね‥。

その分、辛いことも沢山抱えてるけど奔放に生きてる亮を見ると、楽な気分にさせられますね。


あと、柳先輩のスティーブ・ジョブズのくだりは日本語版ではカットされてました~。


次回は<発表>です。

次回で1部も終わりです!雪3年時は1部2部3部とカテゴリ分けしていきますね~

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徹夜の発表準備

2013-09-02 01:00:00 | 雪3年1部(淳と秀紀遭遇~グルワ発表)
期末テストの準備や課題に追われているこの頃の雪の部屋は、とっ散らかっていた。



しかし今日も掃除をしている暇はない。時刻はもう夜9時。チャットミーティングの時間だった。

いよいよ明日は発表。なんとしてでも今日中にレポートをまとめなければならない。

お風呂上りの雪は、急いでPCの前に座った。




「‥‥‥‥」



しかしチャット場には雪以外、まだ誰もオンラインになっていない。

雪は皆が来るまでに資料の整理でもしようとノートを開いた。




それから時計は、カチカチと長針が一周した。



まだ誰も、チャット場には現れない。

3人に電話を掛けてみたが、誰も電源が入っていないか音声案内につながるかだった。

「ふざけんなぁーーー!!」



雪は携帯を布団に向かって投げると、頭を抱えた。

有り得ない事態が起こっている。



結局資料も雪がほとんど探して、しかも今のままでは分析も自分一人でやらなければならない。

発表前日にこんなことになるとは‥。雪はそのまま机に突っ伏した。



ハッキリ言ってやりたくない。マジでやりたくなさすぎる。

疲れもストレスも溜まってるし、もう夜も更けた。このまま寝てしまいたい‥。

もう明日の発表は、このまま皆でバックれだ‥。



ぼんやりとした眠気が襲って来て、雪の意識が遠くなっていく‥。




♪Wow Wow Yeah Tonight Tonight♪



いきなり大音量で流れた着メロに、雪は驚きのあまり飛び起きた。

急いで先ほど投げた布団の上の携帯を取り、着信画面を見る。



すると画面には、予想だにしない人物の名が点滅していた。

「はいもしもし?」  「姉ちゃん?俺だけど!」



電話口から聞こえてきたのは、久しぶりに聞く弟、蓮の声だった。

アメリカに留学中の蓮は、時差を考えるのを忘れてこの時間に電話してきたようだ。

「あんた元気してんの?」 気の抜けた雪は、そのまま壁にもたれて通話を続けた。



蓮は相変わらずだと答えた。そして雪に、姉ちゃんは最近忙しいのかと聞いてきた。

「昨日母さんと電話したんだけどさ、

オレもそうだし姉ちゃんも家出てからなかなか連絡よこさないって寂しがってたからさぁ」




だからたまには実家に連絡しなよ、と蓮は言った。

雪は弟からのいきなりの説教に、開いた口が塞がらなかった。



悪いけどお互い人のことを言える立場ではないと雪は言った。しかも雪は期末を控えて多忙な身なのだ。

けど俺はちゃんと電話したぜ?と蓮の主張は続いた。

最近親父の事業もうまくいっていないみたいだ、とも言った。

「俺はアメリカだから行ってやれないけどさ、

姉ちゃんたまには実家帰って母さんのこと気遣ってやんなよ」




蓮は「頼んだよ」と言うと、そのまま電話を切った。

その一方的な通話を終えて、雪は頭を抱えた。



言っていることは的を得ているのだが、自由奔放に生きている弟に言われると癪に障る‥。

雪は暫し家族の問題を思って頭を悩ませた。



しかしふと視線を上げた先に、まだ未完成のレポートがあった。

そのままノソノソと机まで這って行く。ともかく今は明日の準備に取り掛からなければ‥。



徹夜は確定。

なんとか良い成績を取らなければ、一人暮らしまでした意味が無い。

いつまでも腹を立ててもしょうがない。今大事なのは成績よ!



雪は腹を決めると、メラメラとした意欲を燃やして目の前の仕事に取り掛かった。

行くぜ!!



午前1時過ぎから資料分析、3時半前から発表のカンニングペーパー作成、そしてパワーポイントの編集‥。


気がついたら空が白んでいた。

スズメの鳴く声が聞こえる。



「出来たぁーーー!!!」



雪は思わずバンザイをした。窓から差す朝日の光が、神からの祝福のように見えた‥。



レポートのグループとメンバー名を書く欄を見て、雪は沸々と怒りが沸いてきた。

私の名前だけ書いてやりたい‥。お前らが何をしたってんだ‥。



キーボードに指を置いた所で、耳の奥から幻聴が聞こえた。

あ、忘れてるみたいだからもう一度言うけど、

課題はグループの共同作業を重視するって言いましたよね?




教授が妖精となって雪の周りをブンブン飛ぶ。

全員で協力し合い、発表もまた自分が任された部分を各自発表してもらいます。

すなわちグループ全員で課題に取り組み発表をすること!




完徹の雪の頭の中はカオスだったが、

脳内教授のお陰で、発表するのにも皆がその内容すら知らないことに思い至った。



雪は残り少ない時間を使って、発表の台本を大急ぎで作成した。

出かける数十分前にようやく出来上がり、急いで身だしなみを整えると、また屍化した隣人も構わず学校へとダッシュした‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<徹夜の発表準備>でした。

今回出てきた着メロはこちら↓

Lisa - Tonight (feat. Dynamic Duo)


実は去年の夏休みの横山からの着信の時に、この着メロ出てきてました。↓



雪は着メロをどうやって使い分けしてるんでしょうね。

テンボルは‥ってもう止めます。^^;


次回は<損な生き方>です。

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なんでもいいから

2013-09-01 01:00:00 | 雪3年1部(淳と秀紀遭遇~グルワ発表)


教室に着いてからも、雪は自身の取った行動を悔いていた。

無意識とはいえ、先輩に失礼な態度を取ってしまった‥。



落ち込む雪を見て、淳は当たり障りの無い話題を振った。

「そういえば雪ちゃんてどんな音楽聴くの?よく聴いてるなぁと思って」



その質問に、雪はMCプレイヤーを取り出して説明した。



「そうですね、私は最近流行りの歌とか‥

あ、もしかしてこのバンド知ってます?」




雪は好きなバンドについて嬉しそうに語った。

そんな雪に先輩は微笑み、「俺も今度聴いてみよう」と言った。

雪は是非聴いてみて下さいと勧めた後、「先輩はどんな曲聴くんですか?」と彼に質問した。

「え? 俺?」



先輩は、少し考えてから特に好きな曲は無いと言った。



たまに運転しながらクラシックを聴くくらいだと。



運転もクラシックも無縁な雪は、相槌を打ちながら固まった‥。


「あ、それじゃあ!好きな食べ物は何ですか?」



続けて好きな食べ物の話を振る雪に、淳は微笑んだ。

彼女は、一番好きな食べ物を教えて下さいと言う。

「今度私がご馳走しちゃいま‥」

「んー‥、ヨーロッパ行った時‥」 



またしてもキーワードは雪と無縁のヨーロッパ‥。



雪の意図を今知った先輩も、思わず苦笑いだ。


まだヨーロッパにダメージを受けている雪に、先輩はフォローする。

「雪ちゃんが好きなものでいいからさ」



それでもせっかく夕飯を食べに行くんだから、一番好きなメニューが良いんじゃないかと雪が言いかけると、

先輩は微笑みながらこう返した。

「俺は何でも大丈夫だから。雪ちゃんが好きなものなら俺も好きだよ」



「ね?」



雪はそれきり何も言えなかったが、心の中では少し引っかかっていた。

せっかくご馳走すると言っているのに、「なんでもいい」とは少しテキトーすぎやしないか‥。



そんな雪の考えを解さない先輩をよそに、雪は鋭い視線を彼に送っていた‥。






一方大学のPCルームでは、聡美と太一が夏休みの旅行先を一生懸命考えていた。



今のところの最有力候補は海の近くの県で、行くからには美味しいものをいっぱい食べようと太一が意気込んでいた。

「でも雪の意見も聞いてみないと‥」



そう言って頬杖をつく聡美に、太一が「聞かなくても賛成だと思いますけど‥」と言った。

はぁ、と聡美が溜息を吐く。



雪がもう少し積極的にものを言ってくれればいいのにと、聡美は項垂れた。

「どこでも~とか、なんでも~とかじゃなくてさぁ」



気ぃ遣いの雪は、いつだって自分の意見を通さない。

二人の好きにしていいよと言われるのが、聡美はいつも寂しかった。

「あたし一人で浮かれてバカみたいじゃんか‥」




そう言った聡美を、太一は何も言わず見つめていた。

旅行先はまだ本決まりではない。

二人は雪が自分から言い出してくれるのを、内心ずっと待っているのだ‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<なんでもいいから>でした。

人は”なんでもいい”と気を遣って言うことも多々ありますが、

言われた方は案外困ってしまうこともありますね。

雪にしても聡美にしても、言われた方は戸惑っていますね。



そして先輩に音楽を聴く趣味はないということも明らかになりました。

運転しながらクラシック、一番おいしかったのはヨーロッパ行った時に食べたもの。

やっぱり坊ちゃんですね‥。


私事ですが、今日でブログ開設から100日を迎えました(^0^)!
毎日コメント頂いて、楽しんで頂けて、本当に感謝感謝です。
これからもよろしくお願い致します!


次回は<徹夜の発表準備>です。


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刻まれた記憶

2013-08-31 01:00:00 | 雪3年1部(淳と秀紀遭遇~グルワ発表)


夏休み目前の空は、蒼く抜けるような色をしていた。

木々の緑は色濃く、風に揺れると大きく葉擦れの音がする。



雪は音楽を聴きながら緑道を歩いていた。

昨夜遅くまで課題に取り組んでいたので、半分眠りながらの登校だった。

「雪ちゃん」



ふと後ろから名前を呼ばれた。

しかしイヤホンをしている雪は気付かない。



青田淳は、背後からもう一度彼女の名前を呼ぶ。



雪はやはり気付かない。

ふぅ、と息を吐きながら淳は彼女との距離を縮めた。



淳の耳には、サワサワという葉擦れの音が聞こえている。



「雪ちゃん ゆーきーちゃーん」



爽やかな朝の緑道に、彼の声が響く。

淳は一層彼女に近付いた。

「雪ちゃん?」



淳が近づいて見ると、その小さな耳にイヤホンが見えた。



ムニャムニャと半分眠りながら歩いている彼女に、淳はプハハと小さく笑う。

「雪ちゃん!」



トントン、と淳は手の甲で雪の肩を叩いた。

雪はハッと目を開け、振り返った。



雪の目の前に、青田先輩が微笑みながら立っていた。

「先輩‥!」 



雪は突然現れた彼に驚き、声を上げる。

目の前の彼は、何やらとあるジェスチャーをしているが、その言葉は聞こえない。




「え?先輩の髪型ですか?」




先輩は笑いながら否定する仕草をした。まだ言葉は届かない。




さすがにおかしく思った雪が、それがイヤホンのせいだとようやく気がついた。 

「あちゃ‥」




メロディーが、木漏れ日揺れる緑道を包む。

先輩がまた何か言った。



何と言ったのか聞き取れない。

雪の耳に、彼の手が伸びる。










世界は無音になった。

時が止まったようだった。

生まれたての世界で聞こえてきたのは、彼の発する落ち着いた声だった。

「イヤホン外さなきゃ」




最近ずっと上の空だね、と先輩は言った。

いきなりの彼の行動に、雪は思わず固まる。



先輩はイヤホンをまとめると、

「ここに入れればいい?」と雪の鞄に入れようと身を屈める。



ち、近い‥!



雪は思わぬ彼との接近に動揺した。

「私が‥!自分で‥!」



雪はイヤホンを取り返そうと先輩から身を離した。

するとコードが絡まりそうになり、二人はワタワタした。



雪の足がもつれ、後ろに転びそうになる。



しかし背後に居た先輩が雪の肩を掴み、その身体を支えた。

「雪ちゃん!」



強く掴まれた肩。

「気をつけないと!」



その言葉。





雪の脳裏に、急激に記憶の波が押し寄せてきた。




アイツには気をつけろ



河村亮からのあの忠告。

次に思い浮かんできたのは、去年ホームレスから傷を付けられた翌日、

自販機の前で先輩が言った言葉だった。

君は、転んだり怪我したり忙しいな



そして書類を落とした時の、あの警告。

前にも言っただろ?






肩にかけられたあの強い圧力。

そして掛けられた言葉。

これからは気をつけろよ



目の前にある暗く沈んだ瞳。



その冷酷な闇に飲み込まれてしまいそうな、あの恐怖‥。







雪は息も出来なかった。

慄然とした小さな叫びを上げながら、雪はその身を縮こまらせた。



淳は彼女の反応に、目を丸くした。

二人を包んでいたあの温かい空気が、手からこぼれ落ちていく。



次の瞬間、雪はハッと我に返った。

「あ‥!び、びっくりしちゃって‥!ご、ごめんなさい!」



先輩は何も言わない。

わざとじゃないんですと弁解しながら、雪は自分を責めた。

何やってんの私! ありえない!!



先輩はそんな雪を見て、「大丈夫だから気にしないで」と言った。



そろそろ授業の時間だ、と言って先輩が雪を教室へと促した。

並んで歩きながらも、雪は自分の行動に激しく後悔していた。



頭を抱える雪を、淳は横目で見ていた。



先ほど目にした彼女の反応に、彼も又去年の記憶を思い出していた‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<刻まれた記憶>でした。

今回の前半部分は個人的に好きなシーンです。

雪が何の音楽を聴いていたのか非常に気になりますね。

爽やかな緑道でのちょっとトキメキ感ある場面なので、こんなLove全開popはいかがでしょう。

Yoseob & Eunji - Love Day MV [English subs + Romanization + Hangul] HD


完全私の趣味で上げただけなのであしからず‥。

そして皆さんの「トキメキソング」聞きたいです!

聞くだけでワクワクする、ときめく、萌える!というオススメがあれば、コメント欄にて教えて下さい☆



後半は水面下にあった苦い記憶が出てきてしまいましたね‥。

雪の怯えっぷりが半端ないです。

これを受けて、淳の彼女に対しての態度が少し変わっていきます。


次回は<なんでもいいから>です。


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