Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

それぞれの風

2015-10-04 01:00:00 | 雪3年3部(牙を潜める虎~了)
”青田淳から貰った過去問”をめぐって、雪の周りの人間が動き始めた。

雪は外の道を走りながら、プリプリと怒っている。

ったくもう!皆過去問目当てに‥!



思い巡らすのは、こうなってしまった元凶(?)の彼‥。

先輩ってばどーして話しちゃったのよぉぉ‥



ただでさえゴタゴタの毎日に、更なる心配の種が植わってしまったかのようだった。

期末こそは集中しないといけないのに‥。

正直言って、店、超繁盛してるってわけでもないじゃん?

姉ちゃんは勉強に集中しなよ‥




脳裏に浮かぶ、昨夜蓮から言われた言葉。

歩くスピードを緩めながら、雪はもう一度その言葉の意味を噛みしめる。



つまり、奨学金を受けろって意味だ‥







昨夜の父親は、Z社のニュースを見ながら少し神経質になっていた。

そんな父親、そして必死に店を切り盛りしている母親の為に、

彼らの子どもとして出来ることをと、蓮は考えたのだろう。




蓮ってば、それなりに成長したな‥。

そういうことにも気が回るようになって‥




いつも遊び歩いているだけだと思っていた、弟の成長。なんだか少し感慨深い。

すると不意に、ポケットの中の携帯電話が震えた。



今度の日曜どこへ行こうか?

どこか行きたい所ある?




先輩からのメールだった。

雪はその場に立ち止まり、彼に返信を打つ。



そんな雪の姿を、離れた所から見つめる人影があった。

河村亮だ。



亮は、音大の方向へ伸びる道中で立ち止まっていた。

視線の先には雪が居る。



呼び止めようとすれば、出来る距離だ。

しかも彼女は立ち止まっている。

けれど‥。



亮は何も言わなかった。

彼が居るこの道から、ただ、彼女の居るその道を見つめるだけ‥。



携帯電話をポケットに仕舞って、やがて雪は歩き出した。

亮のことには気づかずに、ただ彼女の行くべき道を真っ直ぐに。








ただ、互いに自分の道を歩いて行く。

それだけだ。



亮は雪の後ろ姿が小さくなっていくのを暫くじっと見つめていたが、

やがてその姿が見えなくなると、ゆっくりと歩き出した。




雪は思う。


私達には、それぞれの風がある、と。



共に生きて行く中で、時折交差することもあるけれど、

結局は、そのまま過ぎ去って行ってしまう




人の持つ、それぞれの風。

誰しもが持っている、運命という名のその風。



河村静香は苦い顔をしながら、「コンピューター税務会計」という本を読んでいる。

読んでも読んでも、頭に入って行かないであろうが。



床に落ちているのは「税務」の本だが、

静香の意識はクッションの下に置いてある本の方に注がれている。



「パターン美術」と書かれたその本は、

日常という名の下に隠した、彼女の情熱だろう。






洗っても洗っても終わらない食器の山。

赤山蓮は、店のシンクで洗い物と格闘している。

そして



彼は昔よりほんの少し、色々なものが見えるようになったようだ。

良く見知った人の新しい面を目にすることもある



風向きはいとも簡単に変わる。

良い方向にも、悪い方向にも。



OKです~!今回は近場でどうですか?



雪からのメールを目にした途端、その表情が柔らかく綻んだ。

淳は微笑みを浮かべながら、そのメールに返信する。



OKです!

良い所探しとくよ



彼女と共にどこへ行こう。

それを考えると、顔の無い周りの人間達とのやり取りも、

どこかマシになったように思えるだろう。





再び、雪は考える。


他人によって思いもよらないことが起こるということは、

彼らが私とは違う人生を歩んでいるからであり、異なる考えを持っているからだろう。




図書館で勉強に励む雪。

傍らに置かれたテキストや課題は、まだまだ終わりそうにない。




それでもやらなければならない。

この道を真っ直ぐ歩いて行く為に。

この先に待ち受ける運命を、自分の力で切り開いて行く為に。


だから私は、今日も少し不安に駆られる



果たして明日は、



そしてその後は、どうなるんだろうと。








チーズインザトラップ 3部 了


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<それぞれの風>でした。

チートラ3部、ここに終了です

いや~長かったですよね!全108話!

1部が46話、2部が67話、からの108話‥。

一体4部は何話くらいになるんでしょうね。今から楽しみです~!!


次回から4部突入です。

<遠藤助手の気遣い>です。久しぶりの遠藤さん!


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男のプライド

2015-10-02 01:00:00 | 雪3年3部(牙を潜める虎~了)


日はとっぷりと暮れ、雪は自宅へと帰って来た。

靴を脱ぎながら、リビングに居る父に帰宅の挨拶を口にする。

「ただいま‥」「帰ったか」

「ねぇ今日ってお店早く閉める日‥」



雪がその続きを口にしようとした時、ソファに座りテレビを見ている父の姿が目に入った。

頬杖を付きながら、じっとニュースを眺めている。



テレビ画面に目を向けると、Z企業に関するニュースをやっている所だった。

やり手と評判のZ企業会長が、画面に大きく映し出される。

青田会長は今回の研究結果が‥



黒い髪と意志の固そうな太い眉は、彼の息子によく似ていた。

今後のz社の事業展開に大きな影響を及ぼすことと‥



全国ニュースで映し出される会長の顔を、雪の父はリビングのソファに座ってじっと見つめている。

そして父は娘からの視線を感じて、苦い顔でリモコンに手を伸ばした。

既に中国では現地化に成功しており‥



プツン



幾分不機嫌そうに、雪に向かって口を開く父。

「どうして自分の部屋に行かないんだ。もう遅いぞ。早く寝ろ」

「あ‥うん」



「おやすみなさい」「ああ」



会話する父と娘の後ろから、蓮がひょこっと顔を出した。

父は自分の寝室に入る前に、長男に向かって声を掛ける。

「ところで河村はまだ働くんだろうな?」

「うん、当分の間働けるってさ」「フン」



小さく舌打ちをしながら、父は寝室のドアを閉めた。

雪と蓮は静かに見送る。



そして父がいなくなったのを確認してから、蓮が小さな声でこう言った。

「‥父さん、Z社のニュース結構チェックしてるみたいよ」

「え?」



蓮は肘でチョイチョイと雪を小突きながら、意外そうな顔をしている姉に、こう続ける。

「ま、姉ちゃんが気にすることないって」



「んー‥」



蓮は少し考える間を置いた後、自分の考えを口にし始めた。

視線の先には、父の居る寝室がある。

「‥けど、なんかちょっと焦ってるかなって感じ。

正直言って、店、超繁盛してるってわけでもないじゃん?

とにかく父さん、もっともっと稼ぎたいって思ってんじゃないかな」




父の持つ、男のプライド。

蓮はその一端を感じ取っていた。

「ま、とにかく!」



蓮は雪に向かって手を伸ばし、そのまま姉と肩を組む。

「とにかくさ、店のことは俺にまかせて、姉ちゃんは勉強に集中しなよ」







赤山家特有の、切れ長の目が見つめ合う。

二人はそれ以上何も言わず、互いの瞳の奥にある気持ちを映し合う。

「んじゃ、おやすみー」



そして蓮は自室へと入っていった。

雪はそんな弟の姿を、その場でじっと見つめている。

 

”姉ちゃんは勉強に集中しなよ”

彼がさっき口にした、その言葉が心に残った。



雪はその場に佇みながら、その言葉の奥に秘められた、彼の気持ちを思い量る‥。







翌日。

A大学経営学科の廊下に、雪と健太の声が響き渡った。

「嫌ですって!前にもコピー渡したじゃないですか!」

「そうだよ~くれたろ~?じゃあなんで今回はくれねーんだよぉ?」

「嫌ですってば!!」「えぇ~??」

 

健太からの要求に首を振りながら、雪は猛スピードで彼から逃げた。

しかし健太は雪の前方へ回り込み、再び交渉を始める。

「どーしてだ???学会が禁止してるわけでもねーじゃん!」



「ただの過去問じゃんか!」

遂にこの人も知ってしまったか‥



雪が”青田先輩の過去問”を持っていることは、遂に健太の耳にも届いたようだ。

雪はウンザリした表情を浮かべながら、この最高にしつこい先輩に辟易中だ。

‥こういう時は、逃げるが勝ちだ。

「あー!聡美!一緒にいこー!!」「!」



「おいっ!」



雪はそう言いながら、その場からダッシュで姿を消した。

健太は悔しそうな顔をして、雪が去った方向を見て舌打ちする。

「クソッ‥」



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<男のプライド>でした。

裏目氏、ニュースにも出てくる様な大物人物なのですねー。あんなに裏目なのに‥。

雪のお父さんの面白くない気持ち、分かる気がしますね。男のプライド。

蓮はその辺を良く汲んでますよね。

そして健太‥休学ノートはまだかーー!


次回は<それぞれの風>。

なんと次回で三部終了です。

本家ではその後に特別編が更新されてますが、それはまた追々訳して行こうと思っています。

あしからず‥

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分かっていたこと

2015-09-30 01:00:00 | 雪3年3部(牙を潜める虎~了)
雪はプリプリと怒りながら、大股で構内を歩いていた。

ったくもう‥!



思い出すのは、自販機の前で河村静香と皮肉を言い合った先程の場面だ。

何を考えているのか分からない静香に、雪のイライラは募る。



それでも雪の心にあるのは、苛立ちだけでは無かった。

今までには無かった感情が、心の片隅に芽生えている。

でも喧嘩じゃ敵わないかもだけど、

口喧嘩なら負けないかも‥!




いつもペースを崩されっぱなしの雪も、さっきは少し対抗出来ていたような気がするのだった。

いつの日か自分がペースを握り、彼女を言い負かすことが出来るかもしれない‥。



そんな思いを胸に歩いていると、ふと見覚えのある姿が視界に入った。

「ん?」






カーキ色のジャンパーのポケットに手を突っ込んで、一人歩く彼。

グレーのキャップを目深に被っているので、その表情まではよく分からない。



雪はその場に立ち止まり、彼を凝視した。

河村氏?



音大の方行くのかな‥?



亮の纏う神妙な雰囲気に、なんとなく声を掛けられなかった。

小さくなる彼の背中を、雪はその場に立ち止まったまま見送る。

コンクールの準備頑張ってるんだな‥真剣な顔して‥

良かった‥







見上げた先には、音大の校舎があった。

あの中にあるピアノ室で、今から彼は練習するんだろうか‥。



暫し鍵盤を弾く亮に思いを馳せる雪。

しかし以前彼から言われた言葉を思い出し、ハッと我に返る。

いけないいけない。関係ないって言われたじゃん!

私は勉強に集中集中!




そうよ!ガリ勉まっしぐらー!



力強く拳を天に掲げ、雪は授業へと向かった。

しかしその先は‥。



<教養の授業中>



教養課程のこの授業では、再びグループワークをさせられる。

しかし同じグループのメンバーはというと‥。

メンバー1:欠席



メンバー2:寝てばっかり



メンバー3:始めはやる気だったけど、

段々テンション落ちて行ったっぽい




チーン‥。



しかしそれは、最初から分かっていたことだった。

頑張ろっと



”なまじ他人に期待してヤキモキするより、一人でやってしまった方が気楽”。

それは一年前も今も、変わっていない‥。








ここはA大学音楽学部。

ピアノの練習室が並んでいる廊下。



河村亮はその一室で、コンクールの為の準備をしているところだった。

長い指が、白と黒の鍵盤をはじく。







神妙な顔をしてピアノを弾く亮。彼には独特の雰囲気があった。

練習室から漏れる音につられ、女子学生達が窓から中を窺っている。

 

彼女達が目にしたのは、旋律に合わせて微かに身体を揺らす、亮の背中だった。

彼の弾く音が、狭い練習室に響き渡っている。






曲はもう終盤だ。

アンダンテからのリタルダンド。もうじき曲が終わる。







最後の音を奏で終わった亮は、静かに鍵盤の上に手の平を置いた。

手に伝わる音の余韻。

その僅かな振動が止まると、練習室はしんと静まり返った。





どこかにぽっかりと穴が開いているかのようだ。

音も気持ちも何もかもが、そこへ吸い込まれて行ってしまった。



亮は視線を動かし、部屋の隅に置いてある自分のボストンバッグの方を見た。

ファスナーが少し開いている。



その中にあるのは、一冊のテキストだった。

<高校卒業認定試験>








頭の中に、あの日々のことが蘇る。

笑いながら、しかし時に真剣に勉強を教えてくれた、彼女の横顔もー‥。








ファスナーの隙間から見えるテキストは、あの時感じた気持ちを想起させる。

だから彼は、固く心の扉を閉める。

自らに誓った、その決意がぐらついてしまわない様に‥。







亮はテキストから目を逸し、ぼんやりと前を向いた。

自分が進むべき、行くべき場所を、ただひたすらに見つめながらー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<分かっていたこと>でした。

亮さんの感情を抑えている表情が、切ない‥。



この日の朝、店で雪と会った時もこういう顔してました。



そしてコンクールは何を弾くんでしょうね。

その時亮は何を思うのか‥先の展開が気になります。


次回は<男のプライド>です。

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どっちつかず

2015-09-28 01:00:00 | 雪3年3部(牙を潜める虎~了)


聡美と太一と別れた雪は、一人自販機の前で財布を出していた。

ジュースを買うために小銭を取り、自販機に入れる。

 

何にしよう。

種類が沢山あって迷う。

「うーん」



暫く悩む雪。

そしてようやく決まった。

「ビタミン入り‥」



さてボタンを押そう、そう思った時だった。

ピッ



緑のマニキュアが塗られた長い爪が、雪が押そうとしたボタンを先に押す。

ジュースはガラゴロと滑り落ちた。



「‥‥‥」



もう見なくても分かる。

こんなことをする人は、知ってる人の中で一人しかいない。



河村静香。

その厄介な美しき獣、である。



「私のお金‥」と呟いてみたところで、当然返って来ないだろう。

静香はジュースをグビグビと飲み干し、威勢よく息を吐いた。

「っかー!」



頭を押さえながら、深い溜息を吐く雪。

この人とバッタリ出くわすのにも、だんだん慣れて来たような気がする。

「‥んとに最近どうしてうちの大学にこうちょくちょく顔を出すんです?

どんな用があるんですか?」




皮肉たっぷりの雪の言葉に、静香は舌を出して返答する。

「どーしてよ?大学はアンタみたいな賢い子のモンで、

あたしみたいなのは来ちゃダメ~ってことぉ?」
「何言ってんですか」



自販機の前で会話を重ねる二人。

「最近はモグリ学生よ」「モグリ?何の授業ですか?」



雪の質問に静香が返答する前に、雪は続けて聞いた。

純粋な疑問符を瞳の中に光らせて。

「美術のですか?」



何も恐れずに真っ直ぐ、踏み込んで来た。

静香は雪を見下ろしながら、口角を微かに上げる。



静香はニッコリと笑顔を浮かべ、雪に近付いた。

「このこの~どこでそんな情報仕入れてくんのよぉ。可愛い真似するじゃない」

「ていうか、どうして電算税務の本なんて持ってるんですか?目標が衆口難防じゃないですか」

「何?ナンボー?」



雪が口にした四字熟語の意味を、静香は分からず首を捻った。

雪はしたり顔をしながら、彼女にその意味を教える。

「つまり、どっちつかずってことです」

「あ~なるほどね~。でもあたしこのテストをパスしたら、淳ちゃんの会社で働くからさぁ」



嫌味や皮肉対決、両者一歩も譲らず。

(若干雪が苛立っているが‥)



二人は顔を見合わせ、ニヤッと笑った。

クククク‥と小さな笑いが口から漏れる。



そして二人は会話を続けた。静香が甘えた口調で雪に話し掛け、雪がそっけなく返答する。

「とにかくこうなったからにはさぁ、仲良くしとこ?マジで。ね?」

「え、嫌です」「うそーん」



「てかどうして仲良くしなきゃいけないんですか?」

「悪い話じゃないじゃん?」

「私‥本当にあなたが何を考えているのか一向に分からないんですけど‥」



状況は若干静香に有利なようだ。雪が「からかわないで下さい」と幾分踊らされている‥。

「あれ?」



するとそこに、柳瀬健太と、経営学科のメガネの学生が通りがかった。

メガネ君は静香を指差し、大きな声を上げる。

「あの女!」「ん?誰?女?!」



メガネ君につられて健太も大きな声を出し、その指の先を視線で追う。

するとそこに、見覚えのある後ろ姿があった。

「うおっ!」



佐藤広隆とよく一緒に居る、あの女だった。

彼女から、幾度と無く無礼な言葉を掛けられた‥。



健太は白目を剥きながら動揺する。

「あの女がまた‥ここに‥?!」

「横山翔の彼女‥だよな?あ、”元”か‥



”横山翔の元カノ”‥?

メガネ君が口にした言葉に、健太はキョトンと目を丸くする。



「は?」

「すごく目につくから、見た途端分かりましたよ。

横山翔の彼女です。泣きながら出て行った‥」




メガネ君は、あの時のことを思い出していた。

今そこに居る彼女が横山翔と糸井直美の元に乗り込んで、大騒動を起こしたこと‥。




メガネ君がクク‥と笑う。

「あの時見てなかったですか?あのド修羅場ww」



その場面に遭遇しそこねた健太にはピンと来ない話だった。

しかしメガネ君は自販機に居る”横山の元カノ”を見つめながら、健太に話し掛け続ける。

「赤山と一緒に居ますね。そういや、赤山があの女と知り合いだって言ってたな」



「つーかここの学生なんですかね?大学で何してるんだろう。ま、いっか。行きましょ」



真相のパズルのピースが次々と出てくるが、真実は未だ繋がらずに宙に浮く。

健太の視線の先に居るのは、”佐藤の横に居た女”であり、”横山の元カノ”であり、”赤山の知り合い”‥。



「‥‥?」



どっちつかずの彼女。

健太はその美しい色素の薄い髪を見つめながら、疑問符を浮かべ続けた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<どっちつかず>でした。

さて、雪ちゃんが口にしたこの言葉。

「このこの~どこでそんな情報仕入れてくんのよぉ。可愛い真似するじゃない」

「ていうか、どうして電算税務の本なんて持ってるんですか?目標が衆口難防じゃないですか」

「何?ナンボー?」



”衆口難防”とは、韓国の四字熟語で「多くの人々を全部口止めするのは難しいという意味」だそうで。

ここでは雪ちゃんが「目標が衆口難坊」と言っているので、

「美術に携わっているのに電算税務の本なんて持って、目標がフラフラしてますよ」という意味でしょうね。

つまり「どっちつかず」ということになるかな?と。(合ってんのかな‥)

*追記

CitTさんより、ここの追記頂きました!詳しくはコメ欄にて!


しかし雪ちゃん。いつもなら会話の節々に気を使う性質なのに、静香の前だと自然体に見えますよ。

亮然り、案外河村家の人間とは気が合うんじゃないですかね~。


次回は<分かっていたこと>です。


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携帯の中の鍵

2015-09-26 01:00:00 | 雪3年3部(牙を潜める虎~了)
太一が力こぶを作りながら言った。

「ちょっと筋肉ついたと思いませン?」



突然のその告白に、雪も聡美も目を丸くする。

「何の話?」「いや、ナチュラルマッチョになったんじゃないかなーと思いまシて‥」

「ジムでも行ってんの?」「いきなりどうした?」



聡美は不思議そうな顔をしながら、太一に向かって手を伸ばそうとした。

「てか服着てたら分かんないじゃん。チェックして‥」

「おろろろ!脱ぎたくはありまセン!」



太一はそう言って身体を庇う仕草をした。その乙女なリアクションに、思わず聡美は握り拳だ。

「はぁ?!誰がんなこと!」「きゃー」



「ったくこのガキ!見たくないわんなもん!「バリアー!」



二人のそんなやり取りが楽しくて、雪は無邪気に笑っていた。これでこそ聡美と太一だ。

そして彼らはいつも通り、味趣連としてランチに繰り出すー‥

「ねぇ!てかお昼何食べよっか?表通りの方に新しくスープ屋さんが出来たって‥」



‥はずだったのだが、なんと太一は首を横に振った。

「あ、俺ダイエット中なんでパスするッス」



太一がさらりと口にしたその言葉に、聡美と雪はビックリ仰天である。

「ダイエット?!」「ダイエットォォ?!」「何スか」



あまりにも予想外のその言葉。しかし太一は笑うこと無く説明した。

「最近あんまり食べてないの気づいてなかったスか?何を今更驚いてるんデスか」

「そ‥そうだったっけ?」「アンタがいつ?!」



真剣な顔で、ダイエットする理由を口にする太一。

「萌菜さんから早急に体重落とせって言われてるんス。

当分はメシあんま食わないで確実に落としマス」




そんな太一の横顔を見て、聡美は言葉に詰まる。

「え‥?」



「あ‥」と聡美が続ける言葉を探している内に、太一はジャンパーの襟を正して得意顔だ。

「この服、萌菜さんがタダでくれたんスよ。服代が浮きマス。割の良い神バイトデスよ」

「よ‥良かったね?」



”萌菜”の名が出てくると、聡美の表情が少し引き攣る。

けれど彼女は気にしないフリをして、明るい口調で太一にこう質問した。

「そ、それじゃあたしが将来服屋さん開いたら、モデルとして働いてくれる~?」



しかし太一は聡美と目を合わせずに、そっけなくこう返す。

「さぁ‥それは‥。その時までバイトしてるかどうかは分かんないんで‥」



その返事を聞いて、聡美の表情が固まる。

「そ‥そっか」

「聡美さんも雪さんもスタジオ来て下さいヨ。俺のイケてるモデル姿を拝みに‥」



しかし太一が言葉を続けるより先に、

彼のお腹がグルグルと鳴った。

 

その顔に、思わず苦悶の表情が浮かぶ。

「うっ?!」



「危険シグナル‥!ちょっと行ってきマス‥!」



自らの鞄を聡美に投げ渡すと、太一は猛ダッシュでトイレへと駆け出した。

そんな彼の背中を、雪と聡美は呆然として見つめている。

「ほ‥本当にダイエット中?」「ありえん‥」



どちらかというと食べ過ぎでトイレに駆け込むことが多いのが太一だ。雪が首を捻りながら呟く。

「マジでご飯抜いてんのかなぁ‥」

「あっ」



すると聡美が不意にバランスを崩し、持っていた彼の鞄を落としてしまった。

ドサドサ!



しかもジッパーが開いていたらしく、盛大に中身が地面にぶち撒けられてしまう。

「あー‥やっちゃったよ」



地面に落ちたノートにペンケース、教科書を拾った聡美。

最後に画面の光った携帯に手を伸ばす。

「電源ついちゃった」



不意に、その画面に目を落とした時だった。

聡美の大きな瞳が、真ん丸く開いて固まる。



「!」



そんな聡美を見て不思議に思った雪が、同じく画面を覗き込んだ。

「あれ?これ‥前に聡美が欲しいって言ってたのじゃなかった?」

「う、うん‥」







太一の携帯画面に表示されていたのは、

いつだったか大学のカフェテリアで、欲しいなと話していたあのピアスだった。

それを太一がチェックしていたということは‥。



二人は顔を見合わせて、共通の思いを心に描いた。

しかし聡美はそれを口に出すことなく、太一の携帯を鞄に仕舞い直す。

「か‥勝手に携帯見ちゃダメだよね。

まったく太一ってば、だらしないんだから‥」




携帯の中にあったその画像は、彼の気持ちを暗示する鍵。

それを垣間見た聡美は、隠し切れない気持ちに口元が緩む‥。




「トイレの近くで待っててやるか!」



雪はそんな友人の気持ちを感じて、自然と笑顔になった。

すれ違う彼らの関係が、どうか上手く行きますように‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<携帯の中の鍵>でした。

携帯の中にあったピアス。それがこの先の鍵になるのですが‥。

先の展開に続きます。


次回は<どっちつかず>です。

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