Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

痕跡の正体

2014-11-02 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)
雪は先輩に向けてメールを打った。

イライラする気持ちを落ち着け、しおらしい自分を演出しながら。

今日大学で河村氏のお姉さんに会ったんですが、ちょっと嫌な感じで‥。

度々先輩の話を出して‥怖いことする‥T T




するとすぐに、彼から返事が返って来た。

もう大学に行くなと言っておいたのに、また事を起こしたんだな‥。

嫌な気持ちになっちゃったかな。止めるようによく言っておくべきだったのに‥ごめんね




その彼の返信を見ながら、雪は「フン!」と息を吐いた。

今は下校途中の地下鉄の中。未だ雪の怒りはおさまらない。



メールの文面ではしおらしく涙マークまで付けた雪だったが、実際は黒い顔をしながら口角を上げていた。

私は今日一匹の密告者となる‥!お前は俺に侮辱感を与えた‥!



雪は有名なフレーズを口ずさみつつ、未だ消えない嫌悪感を持て余していた。

てかマジであの人ヤバイわ‥。ヤ◯ザ?ヤ◯ザなの?

つーか人を怒らせるように話すのが、無駄に上手すぎでしょ‥




雪が特に引っ掛かっているのは、静香が口に出したあの言葉だった。

てかアンタ達付き合ってどのくらいなのよ?

互いの何をどのくらい分かってるっていうの?







引っ掛かるのは、どこかその言葉が図星だったからだった。

長い年月を共に過ごした静香から言われる言葉だからこそ、説得力があったし、ムカついた。

そして静香が発したもう一つの言葉が、鼓膜の裏にこびりつく。

あたしの弟もゾッコン~







こびりついているのは、静香のその言葉だけでは無かった。

瞼の裏に焼き付いているその光景が、再び脳裏に蘇る。



赤い痕跡が心の中に付着して、凝固している。

あの秋の景色の中でそこだけが朱に染まったような、あの時感じたあの感覚‥。



雪は地下鉄の揺れに身を任せながら、一人その意味について思いを巡らせていた。

心の中に残っている、その痕跡の正体を。



雪は心の中で、その気持ちを言葉にする。

ううん、本当は前から‥多分‥



河村氏は、私のこと‥



雪はそのことに、先ほど初めて気づいたわけでは無かった。

本当はずっと前から、彼の想いの欠片を微かに感じていた‥。



それきり雪は俯いて、ゴトンゴトンと揺れる地下鉄の地面に目を落としていた。

すると不意に携帯が震え、見てみると先輩からのメールが写真付きで入っている。

夜勤やだよーT T



雪はそれを見て、ふっと微笑んだ。

そして携帯カメラの無音シャッターを選択し、自分の後ろに広がる景色を撮影する。



写真には自分の顔が半分と、車窓の外に広がる夜景が入った。

下校中。座ってるよーん



それから二人は、他愛もないやり取りを交わした。

コーヒーでも飲むよと言って落ち込む彼氏と、頑張ってとメッセージを送る彼女。






雪は彼とのメール交換を終えると、自身の携帯に入っている写真を眺め始めた。

まず最初に表示されたのは、いつか教室内で撮った写真だった。

太一と聡美、同期の仲間が写っている。



同期の女子達と撮った、学食での写真もあった。

日替わり定食を食べる傍ら何気ないことを話して笑い合う、それは平凡な時間の痕跡。



聡美が撮った写真だろうか、頬杖をついた雪の写真。

勉強をしているのかレポートを書いているのか‥これも日常の一片だ。



そして写真は、先輩から送られて来たものも沢山あった。

彼がインターン先で見ている風景。整理された机の上、PCに貼られたタスクの付箋。



スーツを着て、コーヒーを飲んでいる彼の写真。

今の彼が置かれている、日常の風景だ。



同じインターン生同士で撮られた写真もあった。

皆に囲まれて笑う先輩の姿。

そこに雪の姿は無いけれど、彼の日常の一片が雪の携帯に入っている。



雪はインターン生達に囲まれた先輩の姿を見て、こう思った。

先輩、ここでも中心みたい‥



雪は笑みを浮かべながら、彼が微笑んでいる写真を見ていた。

いつの間にか彼女の日常の中に、当然のように彼が居る‥。



そしていつしか地下鉄の揺れに合わせ、雪はコックリコックリと船を漕いだ。

その平坦な一本道を、地下鉄は雪を乗せて進んで行く‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<痕跡の正体>でした。

ここの手書きの台詞‥「お前は俺に侮辱感を与えた‥!」



という題名の歌がありました。この台詞は、ここから来てるのかな‥?

Verbal Jint - (ft. Koonta)


*追記*

この台詞は映画の台詞が元ネタだそうです^^CitTさんに教えて頂きました~!Thanxsです!


そしてそして‥遂に雪ちゃんが亮さんの気持ちに本格的に気づきましたねぇ‥。

前回の自然の中で時が止まるような大カットは、それに気づいた瞬間だったのですね‥。



しかしそれにしちゃ、雪ちゃんあんまり動揺してない‥。

亮さん‥ファイティンです‥。

そして‥太一家の夕食会はどうなったんだー‥!見たかった‥orz

次回<知らないところで>です。

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宣戦布告

2014-11-01 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)


不意に呼び止められ、振り向いた静香が目にしたのは、厳しい顔をして立っている雪の姿だった。

雪は覚悟を決めると、静香の方を見ながらハッキリとその意志を口に出す。

「あなたが河村氏のお姉さんだから、今まで何も言わなかったですが、この前のこと‥。

”先輩の彼女だ”って直接私に言って来たり、今こういう形で青田先輩の話を出して来たり‥」


 

雪は顔に怒りを滲ませながら言葉を続けた。

「正直不愉快です。こんなことをしてくる意味も分かりません」

 

突然の雪からの攻撃を受けて、静香はふっと片眉を上げた。

そのまま何も言わない静香を、雪はじっと睨み続けている。



すると静香は雪の方へ歩み寄り、その顔を覗き込むような仕草で雪に問い掛け始めた。

「え~?何なの?どうして突然その話が出てくるの?謝ったじゃん?冗談だって」

「たとえ冗談だとしても、私は不愉快です!」



しかし雪は誤魔化されない。キッと静香のことを見据え、ハッキリとこう続けた。

「それにそんな冗談言って、誰か信じたらどうするんですか?

もうそんなこと言うの止めて欲しいんです!」




雪は真剣な顔をしてそう言った。

しかし静香は首を傾げると、突然雪の方を指さして笑い始めたのだった。

「はぁ?はぁぁ~~??」



いきなり笑われて雪は怯んだが、気を取り直して言葉を続けようとした。

しかしサングラスを外し目の前に立った静香の瞳と向き合った途端、雪は言葉が紡げなくなった。

「おい、」



静香は瞳孔の絞られた瞳で雪のことを見据えながら、瞬きもせずにそう声を掛けた。

雪は鼓膜の裏に響く、自身の心臓の音ばかりが気になってしまう。

「アンタ何か勘違いしてるみたいだけど‥」



静かな、それでいて低く通る声が、重々しく雪の耳に届いた。

「アンタあたしの弟とあたしの幼馴染み、あの二人と上手くいってると思ってるみたいだけど、

いつまでそうしていられると思ってるワケ?」




目を丸くしてそれを聞く雪の表情を見て、

は、と静香は息を吐き捨てた。



静香はニヤリと口角を歪めながら、何も言わない雪に向かって話を続ける。

「あの二人超イケメンだから、アンタ正気に戻れないんでしょ?

私ってシンデレラ~?みたいな、結婚夢見ちゃう~みたいな?それとも二人の男の間で揺れる、

ドラマのヒロインみたいな気分なのかしら?」




静香の言葉は鋭利な刃物のように、その弱みや急所を目掛けて飛んでくる。

その言葉の先で相手が何も言い返せなくなるように、先回りしながら。

「てかアンタ達付き合ってどのくらいなのよ。

長くて半年ってとこ?それじゃああたしとはどのくらいの付き合いだと思う?」




そして雪は、案の定黙り込んだ。

下を向き口元をぎゅっと結ぶ雪を、静香は高い所から見下ろす。



雪は一人、心の中で呟いた。

そうだ‥三人は、私の知らない過去を共有してる。

私は絶対に、入り込めない‥




ぐっと拳を握り締める雪に向かって、静香は自分の優位を見せつけるかのような言葉を続ける。

「アンタ、互いの何をどのくらい分かってるっていうの?

人と人との関係ってさぁ、浮き沈みはあるとしても、長続きするのはマジ並大抵なことじゃないじゃん。

でもアンタは、まだそれを始める段階ですらないじゃない」




静香には自負があった。誰よりも近くで淳を見てきたという誇りが。

それが彼女を何よりも強くさせ、どの”淳の彼女”にも負ける気がしないのだ‥。




静香はニッコリと笑顔を浮かべると、雪の肩を軽く叩いた。

己の優位を盾にしながら、彼女に宣戦布告する。

「だからさぁ、マジ調子乗んな?」






静香のその言葉を聞いて、それまで黙っていた雪の頭の奥で、何かがブチッと切れた。

こンの野郎~~~とワナワナしながら、雪は口元を引き攣らせながら話し出す。

「‥昔仲良かったからって、今も優位だってわけじゃないでしょう‥?」



は?と聞き返す静香に、雪はギリッと歯を噛み締めながら尚も続けた。

「必ずしも、長く続く関係だけが良いものとは限りませんよ。

そちらさんは、今あの二人との関係は良好なんですか?」




もうヤケクソだ、と雪は思った。

この後がどうなろうと、もう受け取るしか無い。静香からの、宣戦布告を。

「そうじゃないみたいですけどねーーぇ‥」



雪はそう言って顔を上げ、静香からの宣戦布告を受け取り、そして返上した。

すると雪のその言動を前にした静香の顔が、ぐにゃりと歪む。

「死にてぇのか?」



ひぃぃぃぃーーーっ!



ドスの利いた声でそう言った静香を前に、雪はヒイッと息を飲んだ。

だが今にも殴りかかって来そうな形相の静香も、あと一歩のところで押し留まっている。

「あらあら‥この口がそんなこと言いやがったのかしら?

可愛いわねぇ~」




完全に据わった目つきをしながら、静香は雪の頭を軽く撫でる。

そしてその気概とは裏腹に動けなくなっている雪に向かって、静香は脅しを掛けた。

「ねぇ社長令嬢、口は達者だけど腕っぷしの方はどうなのかしら?

今までアンタみたいにピーピー言った子たち皆、あたしにボコボコにされたことを知っての上で、

こんな風に言ってるのよね?」




その幼稚な脅しに対し、雪は単純に腹が立った。

バッと顔を上げ、大きな声で言い返す。

「知りませんよ!そんなの子供同士の喧嘩で通用する内容でしょう?!」



その剣幕に気圧される静香に向かって、雪はギリッと歯を食いしばりながら言葉を続けた。

「昔は何をどうしていたのか知りませんけど!

今その年齢で人を殴ったらどうなるか、さすがにご存知でしょう?そちらさんに将来はありませんよ!」




「口だけは達者‥」と呟きながら、静香は怒りにブルブルと震えた。

雪は自身の顔を差し出しながら、静香を挑発してみせる。

「殴ってみますか?したら痛くて死にそうだって言いますからね。

私は手出ししないから、ほら、殴ってみなさいよ!」


 

その雪の言葉を聞いて、静香は遂に拳を固めた。ブンッ、と重たい音が空気を裂く。

「殴れって言うなら殴ってやるっー‥!」



雪は身を庇いもせず、自ら殴られる為に静香と向き合った。

虎とライオン、二匹の猛獣が牙を剥きながら、今相対するー‥。



しかし静香の拳が雪の頬に当たるより先に、雪は鼻から一筋の鼻血を流した。

雪は鼻に違和感を感じ、手で触ると手の平に血痕が残っている。

「あ‥」



静香はその突然の出来事に、事態が把握できず拳を固めたままフリーズした。

鼻を押さえる雪に向かって、「?まだ殴ってないけど‥」と言って心底不思議そうだ。



ハッ!



しかしそこで静香は我に返った。

今雪を殴ることのメリットは何も無く、むしろデメリットばかりが増えるということに気づく。

「あたし殴ってないわよ?!脅しはしたけど殴ってない!ね?!

淳ちゃんには言わないでね!?あたしのクレジットカード~!!」




そう言って焦る静香と、鼻を押さえて俯く雪と‥。

こうして、両者の宣戦布告はその結末を見ないまま、一筋の鼻血によってお流れになったのだった‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<宣戦布告>でした。

雪ちゃん、真っ直ぐですね~~。

話をはぐらかしながら相手を煙に巻いていく静香に対して、本当にとことんストレート‥。

そして、あの二人(淳と亮)と「昔から親しい」静香と「今親しい」雪との、プライドのぶつかり合いは見応えがありますね^^!

案外この二人、違うところで会っていたなら良い友人になれたのかも、ですね‥。


次回は<痕跡の正体>です。


*そしてそして‥今日は太一の誕生日です‥!!おめでとう太一!

いつまでも真っ直ぐで甘えん坊な末っ子長男で居て下さい。聡美とお幸せに!




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サングラス越しの瞳

2014-10-31 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)


自身に迫り来る新たな危険のことなど露ほども知らない雪は、相変わらず授業中船を漕いでいた。

グラグラと不安定な頭が、前に倒れたかと思えば後ろに倒れ‥。隣に座る男子学生もビックリである。



この後雪は眠気のあまりペンを落とし、この隣の男子学生に拾ってもらった。

しかし意識を取り止めようとすればするほど睡魔は自身を襲い、授業終了後に見たノートは途中から解読不可能‥。

 

雪は溜息を吐きながら、試験についての連絡をする教授の話に耳を澄ます。

「それでは期末は、グループ発表に置き換えさせてもらいます」



その教授の話に、雪は尚の事溜息が出た。またグループワーク‥。

きっと卒業まで続くであろうその苦行に、雪はもうウンザリだ。



その後雪は同じグループの人と携帯番号を交換し合ってから、教室を出た。

授業中にどれだけ寝ても、いくらでも出るアクビを噛み殺しながら‥。




一人構内を歩いていると、ふと携帯が震えた。

取り出してみると先輩からメッセージが入っている。雪はそれにすぐ返信する。

今日もひたすらコピーばっかりさせられてるよ‥T T

先輩がコピー?ウケるww



すると再び携帯が震え、彼からのメッセージが一言。

あー会いたいな



その甘い言葉に、雪はくすぐったくなって思わずその場でニヤけてしまう。

くぅ~っと一人声を漏らしながら。



気分が良くなった雪は、ふと空を見上げてみた。

秋晴れの空は瑞々しいほど青く、爽やかな風が天空を吹き抜けていく‥。



そのあまりの心地良さに、雪はふにゃっと顔を緩めて一人笑った。

あ~~いい天気だわぁ~~~



心が浮き立つような気分で、今まで引きずるように歩いていた足取りも思わず軽くなった。

雪はニヤニヤと笑いながらスキップを始める。

そうよ!鼻血が何よ!鼻血流してまで勉強して、卒業したらZ企業に行くのよ!

輝かしい未来がそこにあるのよーっ!




‥というゴキゲン雪ちゃんを、一人眺めていた人間が居た。

河村静香である。

 

ピシッと、思わず石になる雪‥。

しかし静香は構わず声を掛けてきた。サングラスで目元は見えないが、不敵に口角が上がる。

「どーーも」



静香を前にして、思わず雪の顔は引き攣った。挨拶を返しつつも、その動揺は隠せない‥。

「あ‥はぁ‥こんにちは‥ちょくちょく会いますネ‥」「嫌なの?」「い、いえそんな‥



その気まずさに耐え切れず、「それじゃこのへんで‥」と立ち去ろうとする雪と、静香は気にせず会話を始める。

「デートでも行くのぉ?バカみたいに嬉しそうだったけど」



雪は目玉をクルクルさせながら、小さな声でモゴモゴと返した。

「‥いえ、まだ授業が一つ残って‥行かないと‥」



しかし静香はどこか楽しそうに、雪をからかいつつ彼女の周りを回った。

「あら~マジメなのね~~。顔に性格が表れるって言うけどぉ」



そして静香は、何気なくその名前を口に出す。

「だから淳が好きなの?」



優等生スタイルって感じ、と静香は皮肉ってそう言った。

高校生の時、淳の彼女が皆彼に似たような優等生タイプだったことを静香は思い出している。



雪は静香が淳の話を持ち出したことに、ついカチンと来た。

”淳‥”



雪は乾いた笑いを立てながら、適当な相槌を打つ。

「はは‥。はい、まぁ‥」

「「はは‥はい、まぁ‥」?クソテキトーな答えね~」



適当に流せると思いきや、意外に静香は雪のその答えに食いついた。

ジリジリと近寄りながらツッコミを続ける。

「あまりにも当然のことすぎて話すことないってこと?」

「い、いえそういうわけじゃ‥ど、どうしていきなりこんな‥」「え?」



雪はその追及にタジタジだ。完全に静香のペースである。

「あたしが何したって?」



サングラス越しの瞳が、意地悪そうに嗤っている。

まるで目の前にした獲物を屠りながら、楽しんでいるような。

彼女のその本心を見抜いて雪は顔を顰めたが、静香は更に言葉を続けた。

「社長令嬢~アンタ思ったより相当やり手じゃない。ちょっと秘訣を教えてよ」

「な‥何を‥」 「ケロッとした顔しちゃってぇ。あたしの弟もゾッコン、淳ちゃんもゾッコン~」



雪の脳裏に、以前彼女が口にした言葉が蘇った。

次のターゲットは、あたしの好きなようにするわ



そう言いながらガリガリと、虎は雪の目の前で咀嚼を続けた。

雪から真っ直ぐ、目を逸らさずに。

「てかあの二人のタイプ、こういう感じじゃなかったのになぁ~超不思議~」



そのまま会話を続ける静香のことを、雪はじっと見つめた。

その横顔から覗く、サングラスの中にある彼女の本心を。






雪の鼓膜の裏に、以前電話越しに聞いた静香の声が響く。

あたしは、淳の彼女だけど?



あの時、そう口にする静香の顔を見たわけじゃない。

けれどその声に秘められた彼女の本心を、自分に向けられたその牙を、雪は確かに感じた。

自分は今この人から攻撃されている、と。彼女のターゲットとは、自分のことなのだと。





「てかご飯食べながら話さない?今日はあたしが‥」

「あの。」



突然、雪は切り出した。

自分はただ食われるだけの獲物ではないと、ハッキリと雪はその意志を表明する‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<サングラス越しの瞳>でした。

今週分、アップされましたね。来月休載ということは、次回からもう休載なのか‥?

と気になりつつ、今回は本家の題名に驚かされました。

なんと「ディナーショー第三幕」!!

合コンの後のスネ淳が見どころの「ディナーショー第一幕」、



雪の家の前で亮と出くわしたスネ淳が見どころの「ディナーショー第二幕」



に続いての今回!!

作者さんのブログには「最後のディナーショーです」と書いてありましたが、

今度はどんなスネ淳が出てくるんだろう‥と気になりつつ、今後の展開にドキドキですね‥!!


次回は<宣戦布告>です。


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探し人

2014-10-26 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)
「この人、見たことあります?この前方の建物にある英語塾に以前居たんですが」



そう言いながら男はチラシを通行人に見せたが、誰しもが首を横に振って行く。

「あーくそっ!誰も見ちゃいねぇ!」



その男ー河村亮が以前地方にて働いていた時の社長ーは、そう言って地団駄を踏んだ。

そんな社長を後ろで見つめるのは、亮と仲の良かった元同期の男である。男はオドオドと社長に声を掛けた。

「しゃ‥社長‥もうやめましょうよ~探せないですって‥」

「俺の勝手だろ!!」



社長は通行人もビックリする程の声を上げながら、依然として亮探しを諦めない。

もう数ヶ月もこんな感じなのだ。さすがに元同期の男もゲンナリ顔である。



男は社長に近寄ると、彼の説得を試みた。しかし社長は首を縦に振らない。

「社長‥どうしてこんなに亮に執着するんです‥。もう忘れたかと思ったのに‥」

「俺ぁとびきりアイツを可愛がってたんだよっ!」



社長の剣幕に、男はスゴスゴと引き下がった。心の内にその不満を押し込みながら。

それなら金をピン撥ねしなきゃ良かったのに‥



社長はプンスカ怒りながらも、手当たり次第に通行人に声を掛けて行く。

元同期の男は溜息をつきながら、そんな彼を見て心の中でひとりごちた。

つーか亮のヤツ結構な額持ち出しちゃったから、

社長も引くに引けないんだろうなぁ‥。アイツ電話番号も変えちゃったから、連絡も出来ないし‥。

どうする~?どうするよ~?もう俺も知らないよ~?




ここで亮を探すこと数ヶ月、今まで一人も亮のその後を知る人間は居なかった。

男は「この人知ら‥ないでしょ?どうせ」と通行人に言いながら、やる気無く社長に付き合っていた。

「あ、あ、知ってます」



するとそんな矢先、予想だにしない言葉が耳に入って来た。思わず男は声のする方を振り返る。

「知ってるって?」

「はい、はい。前にある英語塾の講師だった‥」



その通行人の言葉に、思わず社長は苛立った。そこまでなら、今まで何人かが口にしたのだ。

「だーから今はその塾にはいねぇだろうがっ!」

「い、今は辞めたっす‥」



通行人のその男は、フードを目深に被った小柄の男だった。

終始オドオドしている彼は、目だけをキョロキョロと動かしている。

「‥‥‥‥」



横山翔は、今のこの状況をじっと窺っていた。

目の前の柄の悪い中年は、どうやらチラシのあの男に、赤山雪の傍に居たあの男に、何かしらの恨みがありそうだ‥。

「この人、A大にちょくちょく出没するんで、そこを探してみたらいいかもっす」

「A大?」 「俺そこでこの人見ました」



社長は横山の口にした情報に顔を顰め、声を荒げた。横山はビクビクと返答する。

「たったそれだけの情報でどうやって探すってんだよ!」

「ひぃっ‥!も、勿論それだけじゃ見つけられません‥」



横山翔は、やつれた顔でニヤリと笑った。

あのヤンキー男に一矢報いることが、今ここから再び出来るかもしれない‥。



「A大に、その男と親しい仲の赤山雪という女が居るんです。

そいつに聞いてみればいいですよ。経営学科です」




横山はそれだけ言うと、「それじゃ」と早口で口にして彼らに背を向けた。

キャップのつばを目深に被りながら、小走りでその場から走り去る。



社長は重々しく頷きながら、元同期の男に声を掛けた。

「ほぉ‥こんな情報が‥。A大だとよ。まさかホラじゃねぇだろうが‥」



元同期の男は、遂に亮のその後を口にする人間が現れ、動揺していた。

そんな男の心情などお構いなしに、社長は彼に向き直り、こう問う。

「あ、その女の名前‥なんといったっけ?」




悪縁を紡ぐ運命の歯車が、カラカラと回り出していた。

今は呑気に船を漕ぐ雪の方へ、その影はゆっくりと近づいて来る‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<探し人>でした。

8話ぶりに出て来た横山‥すっかりやつれちゃって‥。



‥横山久しぶりだなと思いきや、時系列で言うとこの日(イタチ陥落)の翌日なんですよね、これ‥。



もうパラレルワールドです、私‥。


そして社長‥すごい執念ですね。仕事はほったらかしで良いのか??

さてどういう風に物語が動いて行くのでしょうか。来週分がアップされたらきっと来月は休載だし‥。

気になる木‥。


次回は<サングラス越しの瞳>です。


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覗く素顔

2014-10-25 01:00:00 | 雪3年3部(二人の弟~痕跡の正体)
「あら~広隆、久しぶりぃ。グルワ課題は無事終わった?」



佐藤広隆を見てそう言った静香に、佐藤は小さな声でこう返した。

「いや‥まだ終わってない‥」



佐藤は静香に対して不満を感じていた。気にせず鏡を見ている静香の傍で、佐藤は一人憤る。

俺にあんな事言ったくせに、申し訳ない素振りをしたり避けるどころか‥。

最初から何の考えもないのかコイツは‥ムカつく‥




佐藤と静香が顔を合わせるのは、あの屈辱的な出来事があった日ぶりなのだ。

佐藤の脳裏に、静香から発せられたあの言葉が蘇る。

てかアンタも大概ね。正直ガッカリだわ



強さに屈服する姿をバカにされ、自身の弱さを露呈され、佐藤は突きつけられた己の不甲斐なさに落ち込んだ。

それでも佐藤は、どこか静香を憎み切ることが出来なかった。

ムカつく‥けど‥



佐藤は静香の顔を見ることが出来ないまま、

カバンから一冊の本を取り出す。

「あの‥これ」



自分に向かって差し出されたそれを見て、

静香は歯に挟まった何かを取りながら、彼に聞いた。

「ん?なぁに?」



佐藤は静香から目を逸らしながら、小さな声で説明する。

「美術のためにモグリまでするんだから、興味あるかと思って‥」



静香は佐藤の方をじっと見つめながら、「ふぅん?」と言って目を丸くした。

彼が何を言いたいのかが、いまいちよく分からない。



本を手に取ろうとしない静香に対して、佐藤はモゴモゴと話を続けた。

「その‥俺の親戚が美術専攻なんだけど、この本をオススメしてたんだ。

評価もいいし、美術専攻の学生の間でも有名な本で‥」




すると静香は、下を向きながらそう話す佐藤に向かって、突然ズイと自分の顔を近づける。

「それで?あたしにくれるの?これを?どうして?」



佐藤はそんな静香の行動を前にして幾分動揺しながら、彼女から目を逸らすとこう言った。

「だからその‥プレゼント‥だよ‥」



すると静香は目を丸くして、あんぐりと口を開けた。

「プレゼントォ?これがぁ??」



静香は不思議そうな顔をしながら、佐藤が手に持っている本を指さしてこう続ける。

「中にネックレスでも仕掛けてあるの??」

「ど、どういうことだ?俺はただ、良い内容の本だから‥!」

「ねぇプレゼントがどういうものかってのを知らないの?鞄とか靴とか財布とか、そういうものよ?」






その静香の言葉に、佐藤は腹が立った。

そして次の瞬間、佐藤は真っ直ぐに静香の顔を見上げ、ハッキリとこう口にする。

「お‥俺は君の彼氏じゃないんだ!どうしてそんなものあげなきゃならないんだ?」






大きな声でそう口にした佐藤に、静香はその言葉の意味を汲み取って首を傾げる。

「ふぅん‥ふぅぅ~ん‥。へぇ~へぇぇぇ~?」

 

そして彼の心の奥底に潜む気持ちを見透かすように、静香はクスッと笑った。

「ん、分かったわ」



佐藤は彼女が何を言いたいかが分かったような気がして、真っ赤になって黙りこむ。

すると佐藤が持っている本に向かって、静香が手を伸ばした。



静香はそのまま本をパラパラと捲りながら、彼に向かってお礼を言った。少しぶっきらぼうに。

「とにかく、くれるって言うんなら貰っとくわ。ありがと」



佐藤は決まり悪そうに舌打ちをしながらも、心の中が温かくなるのを感じた。

口元に微かな微笑みが浮かぶ。



佐藤の視線の先に、静香の手に載った本がある。佐藤はそれを見ながら、嬉しそうに言葉を紡いだ。

「そ、それで、今度◯◯講堂で美術家を招いての特別講義もあるんだって。

誰が来るのかは正確に思い出せないんだけど‥」


 

そう言って佐藤は顔を上げた。

そしてそこで彼は、目にしたことの無い表情をした彼女を見る。



色とりどりの絵が描かれた本に目を落としながら、静香は神妙な顔をしていた。

彼女がとうに失った夢が、その本の上に散らばっている。



色素の薄いその瞳の奥に、見たことの無い哀愁のようなものが浮かんでいた。

いつもの自信過剰な彼女からは想像もつかない位儚い、きっとそれは彼女の素顔‥。



佐藤は静香の横顔を見つめながら、初めて見る彼女の姿に驚いていた。

今まで感じたことのない感情が、微かに胸を疼かせる‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<覗く素顔>でした。

最初静香に気まずさを感じ、目を合わせられなかった佐藤君が、

「俺は君の彼氏じゃない」と怒る時に真っ直ぐ静香の目を見ているのが印象的でした。



そして静香も、初めて「男」ではなく「友人」からの本のプレゼントを受けて、

ぶっきらぼうながらにも本心でお礼を言っているのが印象的です。



この二人なら、飾らない自身で関わり合える間柄になれる気がしますね。

この先の展開に期待です^^


次回は<探し人>です。


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