Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

対面(3)ー昨夜の話ー

2014-09-22 01:00:00 | 雪3年3部(対面~彼のコレクション)


雪は心の綻びから、ポロポロと気持ちが零れ出るのを感じていた。

我慢出来ずに、先ほどから抱えていた不満を口に出す。

「先輩、昨日私が録音した物を受け取ってたんですってね?

あの中に私の悲鳴や怒声が全部録音されてたでしょ?

それを聞いておいて、どうしてメールの一通も打たないで居られるんですか?!」




雪は両の拳を握り締めながら、心の奥にこびりついているその感情を吐露した。

彼のこういった一面に触れる度、心の一部が零れ出る。

「正直、寂しいです‥すごく‥。

先輩がもしそんな状態だったら、私ならすぐに電話しますよ?!」


 

幾分激しい雪のその追及を、淳は目を丸くして聞いていた。

そして彼女の言葉が切れると同時に、冷静なトーンで話し出す。

「それは‥録音は事が起こった後で福井が送って来たし、それを聞いた時はすでに時間も遅かった。

雪ちゃんもケガは無かったっていうから、敢えて連絡する必要を感じられなかったんだよ。

ただでさえ俺ら微妙な雰囲気だったし、近い内会いに行くつもりだったし‥」




淡々と続ける淳の言葉を、雪は顔を青くして聞いていた。

あんぐりと開けた口から漏れる声は、まるで言葉にならない。



するとふと、彼に対して同じ様な感情を感じた時の記憶が蘇った。

あれは夏休み後半、一人暮らしをしていた時の隣人、秀紀が警察に捕まった時のことだ。

あの時彼は、電話でこう言った。

「現場で下着が出てきたんじゃしょうがないよ」

「兄さんが無実ならすぐに釈放されるだろうから心配ない」

「秀紀兄さんのことは俺らがこうして話し合ったところで解決することじゃない。まずは待ってみよう」




あの時雪はこう思ったはずだ。

”幼馴染みって言ってなかったっけ‥?”と。



あまりにも冷静な彼の返答に覚えた違和感。

そして雪は今また、その違和感を彼に対して感じている。

そうだった‥この人、本来こういう人なんだ‥



彼の方をチラリと見ると、キョトンとした顔で青ざめる雪をじっと見ていた。

その瞳の中に嘘や後ろめたさは窺えない。



ということは、やはり彼は元来そういった性分なのだということだ。

けれどそれに「はいそうですか」と納得する雪ではなかった。そういった性分だろうが何だろうが関係ない。

今日はとことん彼と向き合うつもりでここまで来たのだ。



胸にムカムカと込み上げる怒りにも、素直になろうと思った。

雪はバッと顔を上げ、彼に食って掛かる勢いで口を開く。

「太一と連絡を取る時間はあっても、私と連絡を取る時間は無かったってことですかっ?!」



雪の皮肉を込めたその言葉と勢いに、幾分淳は目を丸くした。雪の主張は止まらない。

二人の言い合いが始まった。

「先輩の家の前で待ってる時もずっと”忙しい”の一言メールだったのに、

太一とメールをやり取りする時間はあったってことですよね?!」


「本当に忙しかったんだよ。

福井から写真を受信した時も、俺は一方的に受けただけで、一つ一つに返事をする時間もなかった」


「それじゃあ昨日は?昨日も太一と話をしたんですよね?!」



それまで冷静に言葉を返して来た淳だったが、雪の勢いに押されて幾分感情が波立った。

二人の声のトーンが、徐々にシンクロして荒くなって行く。

「それじゃ自分はどうなんだよ?」



「自分こそ友達に報告する時間はあっても俺に説明する時間はなかったのか?

なぜ俺に話をしなかった?!横山からストーキングを受けてるって!」




「雪が話さないから、俺も陰で助けることしか出来なかっ‥」

「全部埋めてしまおうって言ったじゃないっ!!」



バンッと雪が机を叩いた拍子に、カップが傾いでコーヒーが零れた。

雪はキャッと声を上げ、淳はそんな雪を心配する‥。



コーヒーは既に冷めてしまっていた為、雪は火傷せずに済んだ。

液体は、ただ雪の袖を冷たく濡らす。



そして二人の間の空気も、冷めてしまったかのようだった。

俯く雪のことを淳はじっと見つめるが、二人の間に言葉は無い。



暫くして、淳が雪の名を呼びかけた。

しかし雪は彼のそれには応えず、小さな声で口を開く。

「先輩と会えなかった間‥ずっと‥先輩のことを考えてました」

 

雪は彼の方を向かないまま、言葉を続けた。濡れた袖が肌に冷たい‥。

「先輩があんな風に怒って立ち去って、また互いに冷戦状態で。そうしてる間に誤解が積もって、

また私は先輩にこんな風に問い質して‥。尋ねてみても、先輩は常に先輩なりの理由があるから、そこで終わってしまう。

一体どうして私たちは、いつもこうなってしまうのか‥」




淳も俯いたまま、その話を聞いていた。そんな彼に、雪は問い掛ける。

「先輩も分かっているでしょう?」



答えない淳に向かって、尚も雪は言葉を続ける。

「去年私が体験したことには、全部先輩が関わっていました。

知らないはずがありません」




「今回の件も私一人で解決したと思ってたら、最終的には陰に先輩が居た‥」



雪は膝に置いた手をゆるりと握っていた。徐々に話の舵をそこへ向かって切って行く。

「遠藤さんのことについても同じです」



「レポートを捨ててまで私に奨学金を譲歩した先輩に対してありがたく思うべきか、

遠藤さんを利用したその方法がおかしいと怒るべきか、ものすごく困惑しました」




あの時去り際に雪は言った。”どうしてもありがとうとは言えそうにないです”と。

それは今でも変わっていない。雪は心の中でもう一つの問題について考える。

平井和美の件についても複雑に絡んでたような気がするけど‥、

もうそれはさらに掘り下げようとは思わない‥




雪は平井和美の問題もまた”同じこと”だと思ってはいたが、それを口には出さなかった。

雪は頭を抱えながら、両極にあるその感情の狭間で揺れている。

「今回のことも、私を助ける為に証拠を整理してくれた先輩に対してありがたく思うべきか、

太一がスレを上げることをそのまま傍観した先輩に対して怒るべきか、分からないんですよ‥!」




雪は途方に暮れながら、力無く言葉を続けた。だんだんと話は、真相に近付いて行く。

「どうして‥」



「一体どうして、

相反する気持ちを持ち続けなければいけないのかって、苦しくて‥」




淳は真っ直ぐに雪を見つめていた。

しかし雪は彼の方を見ること無く、遠いその場所を眺めながら言葉を紡いでいる。

ずっと二人の間に横たわっている、元凶とも言えるその場所を。

「ずっと考えて考えて‥それで、わかったんです」



そして雪は遂にそこに辿り着いた。

二人が今、向き合わなければならないそこに。

「去年のことをただ埋めるなんてことは、出来ないってことを」





雪は今まで避けてきたその領域に、とうとう足を踏み入れるー‥。





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<対面(3)ー昨夜の話ー>でした。

秀紀さんの件の時は、言ってみれば他人事なわけで、淳に対するその違和感を飲み込んだ雪ちゃんですが、

今回はやはり自分のことなので見過ごせなかったようで‥。

佳境に入って参りましたね‥!


さて次回から<直面>で記事を綴って行きたいと思います。(本家と題名合わせてます^^!)


次回<直面(1)ー知りたいー>です。


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