Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

健太との対決(3)

2016-02-15 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)


またしても両手をぶらんと下げたまま、健太は固まった。

雪は厳しい表情を崩さぬまま、キッと健太のことを見据える。



「その反応を見ると、間違いないようですね」



そう言ってから、雪は徐々にこの場を後にする準備を始めた。

これ以上健太を刺激すると、きっと厄介なことになる‥。

「ですからもう、何度も変な弁解をするのは止めて、

今回の件、事の収拾を試みて下さい」




このままソロソロと健太の前から姿を消せば良い。

そう思って、一歩踏み出そうとした時だった。







「おいっ!!」



突然、凄まじい力で腕を引っ張られた。

その大声と力の強さ、そして何よりその剣幕に、雪は思わずサッと顔が青ざめる。



見上げたその先には、荒々しく肩で息をする健太の姿があった。

怒りのあまり顔にも首にも血管が浮き出ている。



固まる雪。

そんな彼女の上方から、健太の大きな手が伸びてくる。

 





すると次の瞬間、雪の視界がグルングルンと回り始めた。

「何回言わせんだっ?!俺じゃねーっつの!

証拠あんのか?!ねーだろ?!どうしてこんな仕打ちすんだよぉ!おらぁ!」




健太は必死の形相で、力加減も無しに雪の身体を前後に揺さぶる。

「俺がやったって言い張りやがって!次はどうしようってんだ?!

マジで学科長に言いに行くつもりか?!

俺が卒験の為に、教授達に良い顔しようとどれほど努力してると思ってんだっ!」




「あ!てかお前学科長に言いに行くって嘘だったんだろ?!このクソがっ!」



回り続ける視界。「ちょ‥待っ‥」と呟いた雪の声は、健太には届かなかった。

「んなナンセンスなことやるなら、他のヤツ探してやれよ!」



「俺に絡んで来んじゃねぇ!!」



そして健太は雪を揺さぶり続けた挙句、バッと強引に突き放した。

雪の視界はグラグラと揺れ、気持ち悪さを覚えた雪は思わず嘔吐く。

「おえっ‥」「クソが‥何てヤツだ‥!」



しかし健太はそんな雪の様子に気付かず、怒りにまかせて更に大声で捲し立てた。

「おいお前!ちゃんと考えて行動しろよ?!」



「どっかで俺が泥棒だなんて言ってみろ!マジでぶっ殺‥」



健太がその先を口にしようとした時、雪に異変が起こった。

揺れる視界のせいで、地面がグラリと歪む。



「あ‥」



平衡感覚を失くした雪の足元がフラフラともつれ、重心が後ろへと傾いた。

徐々に天地がひっくり返る‥。







その時、後方から彼女に走り寄る人物があった。

スローモーションのように倒れて行く彼女に向かって、その人物は両手を差し伸べる。







後ろへと傾いで行く彼女の後方に、その人物が重なって倒れて行く。

咄嗟に振り向いた視線の先には、みるみる迫り来る地面があった。



そして倒れる瞬間、そこにあったコンクリート杭が、その人物の手の甲を掠める。







ドサッ、という音と共に、雪とその人物は同時に地面に倒れ込んだ。

健太はその場で手を伸ばしながら、突然の出来事に面食らうばかりだ。








駐車場には、見覚えのある白い車がいつの間にか停まっていた。

そこから出て来たその人物が、雪と共に倒れている。








突然の大きな衝撃。雪はただ目を閉じていた。

そして彼女が薄目を開けると同時に、聞き覚えのある声が掛かる。

「大丈夫?」







見上げたそのすぐ傍に、今ここに居るはずのない人物の顔があった。

青田淳。

思わず雪は目を見開く。






「先‥」



青田淳は、ふと右手の手の甲に痛みを感じて、そこを眺めた。

しかしやがて、痛むその手を、守り切った彼女にそっと被せる。



嵐の前の静けさのように、不気味な静寂が三人を包み込んだ。

しかしそんな彼らの元へ、大声を上げながら近づいて来る三人組の姿がある。

「おいっ!」



「ストップストップ!おいっ!」



「何だよこのヤバイ男は!!」「止めろ止めろ!!落ち着いてくれぇぇ!!」



そこには、凄まじい形相で木の棒を掴み、こちらへ向かって来る河村亮の姿があった。

しかし彼を止めるべく、両脇に柳楓と佐藤広隆が必死になって縋り付いている。



亮は大汗をかきながら、はぁはぁと肩で息をしていた。

混乱の嵐が、皆を巻き込んで吹き荒れるーー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<健太との対決(3)>でした。

なんとここで主要人物達が一同に会すると‥!

今まで平行線だったストーリーが、ここを境に動き始めますよ!


次回<二度目の闇>です。

次回更新の2月17日は、0時ちょうどに日記もアップします~。そちらもよろしければどうぞ~^^


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健太との対決(2)

2016-02-13 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)


両手をぶらんと下げた状態のまま、健太は雪の言い放った言葉を聞いていた。

”私に謝らなければならないのはあなただ”と、六つも年下の後輩からキッパリと言われたのだ。



握り締めた健太の拳が、ブルブルと震えている。

健太は俯きながら、まるで怒りを溜めているかのようにじっと押し黙った。






雪の今までの経験値と本能が、これはマズイとシグナルを送る。

その証拠に、健太がぐっと歯を食い縛っているのが見えた。



‥そろそろ爆発するか?



柳瀬健太の物事を受け止めるキャパシティが、そろそろ限界を迎えようとしているのだ。

今にも暴れ出すのではと危惧する雪だったが、次の瞬間、健太は意外にも静かに口を開き話を始めた。

「赤山」



「前のグルワん時、お前が俺の名前をレポートから消した時も感じたが‥」



「お前、俺に何か恨みでもあんのか?」



言葉を続けるほど、健太の形相はだんだんと凄まじいものになっていった。

しかし今言われたことは、雪にとっては心外である。

「はい?違いますよ、そんな理由じゃなくて‥」



その正当な理由を続けようとした雪だったが、遂にここで健太が爆発した。

「恵ちゃんの紹介の件だってわざとなぁなぁにしやがって!!」



「それでも可愛がってる後輩だから我慢して来たってのによぉ!

弟まで連れて来て俺をコケにするわ、今度は泥棒の濡れ衣まで着せようってのか?!」




「ひどすぎるだろうがよ!!あぁ?!」

「いつ私がそんな‥!」



その大声とオーバーアクションが、雪をどんどん後退させる。

しかし健太は本能のままに、その巨体を揺らして主張を続けた。

「俺は四年でしかも復学生だぞ?!今就活でストレスMAXだっつーのに、

お前は俺に汚名まで着せようってのか?!良心ってもんはねーのかよ!」




「あぁ?!」



あれほど固く決意していた心は、いとも簡単に崩れそうだった。

健太の前に立っている自分の足が、震えているのが分かる。

ぶっちゃけ‥話を始めてみたものの‥



さっきから本当に‥



コワイ‥!






190センチを越える巨体が、目の前で暴れている。

雪はぐっと唇を噛んで、今にも崩れ落ちそうな心を奮い立たせていた。

昔からこの人の前では、本能的に萎縮してしまう。この人が熊なら‥



私はリス



雪の脳裏に、ここ最近の自分と健太の関係性を象徴する場面が浮かんだ。

最近になってちょっと流せるようになってきたものの、

いつも頼まれれば拒めなかったのは事実だ。すぐに卒業するだろう、するだろうと思いながら




このまま頷いてしまえば、私は最後まで、この人に対して正しい事は何一つ言えないだろう



そして‥これからもずっと私は‥



雪の拳が、徐々に強く握られて行く。

健太に対する恐怖心よりも、それに屈する自分への抵抗が雪をこの場に留まらせていた。

「あん?!赤山ぁ!何か言えよ!赤山!赤山!赤山ってばよ!!」










雪は一度、大きく息を吸った。

そして自身を奮い立たせながら、自分の中にあるその正義を信じる。

「卒業試験にも落ちて、成績も芳しくなくて、ストレスを感じているのはよく分かりました」



「だからといって、いつまでそれを配慮しなくちゃいけないんですか?」



真っ直ぐに、前を向く。

もう”お人好しバカ”になるのは、懲り懲りだった。

「お願いですからもう止めて下さい。金輪際、こういったこと全て!」











さっきまで暴れながら大声で喚いていたその巨体は、雪の反撃を受けて暫くフリーズした。

今までの赤山雪ならば、ちょっと大声で脅せば頷いていたはずなのに‥。

「なっ‥?なっ‥な‥」



動揺する健太。目の前に居る後輩は、そんな自分に対して厳しい視線を送ってくる。

「今何て‥」

「それにしても残念でしたね」



「あんなことまでしたのに、結局何も手に入れられなかったんですもんね。

青田先輩の過去問だと思ってたものがー‥」




「結局直美さんの過去問だったんだから!」



三連打、と心の中で叫びながら、雪は遂にこの事件の真相を口にした。

健太はぐっと言葉に閊えながら、思わずその場で固まる‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<健太との対決(2)>でした。

今回健太が雪に大声で迫る部分は、

作者さんのブログで、とある箇所のパロディになっていると明かされました。



亮さんとの対話の場面‥!ブログには「誰も気が付かなかった‥」と記してありました(^^;)

なんか‥亮さんのイケメンが際立ちますね(そこ)


さて次も<健太との対決(3)>です!


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健太との対決(1)

2016-02-11 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)


赤山雪はじっと足元を見つめながら、長いことその場に立っていた。

ここ、講義室の裏にある駐車場にて、先ほど柳瀬健太と会う約束をしたのだ。



やがて連続講義を終えた健太は、急ぐことなくこの場所へとやって来た。

そして俯いている後輩に向かって、素知らぬ顔でそのわけを尋ねる。

「さて何の用かな?赤山よ」






互いに目を合わせようとしない二人の間を、ひゅうと北風が吹き抜けていく。

雪はやはり健太の方へは視線を向けないまま、ポツリと話を切り出した。

「大体見当ついてると思いますけど‥」

 

その雪の言葉に、わざとらしく首を捻る健太。

「ええ?何をだぁ?」



しらばっくれるのは想定内。

雪は冷静に、その続きを口にした。

「なぜ直美さんに、あんなことなさったんですか?」



「ん?何‥」

「不自然なほどお節介を焼いて、大きな声出してゴタゴタに発展させて‥」



続ければ続ける程、健太の顔がみるみる歪む。

「一体どうして私個人の問題をそんなに気にするんですか‥」

「ちょ‥何だよ‥」



そして健太は、いつもながらのオーバーアクションで大きな声を上げた。

「どういうことだかサッパリだぜ?

糸井が何をしたのかは、赤山の方がよく知ってるだろ?」




「先輩として俺が、赤山の代わりに言い出してやったってのに‥」

「だからこれは、私の個人的な問題です。健太先輩が関与してくるのはー‥」



「違うでしょう」



雪は強い意志を持って、健太に自分の気持ちを伝えた。

しかし依然として、健太と目は合わせられない。

 

健太は先輩の厚意(表向きだが)を無下にする赤山雪のことを、ぽかんとした表情でじっと見ていた。

しかしその不満そうな顔を見ている内に、健太の心が苛立ちで騒いで行く。



そして遂に、健太は声を荒げた。

「おい赤山!ひどくねぇ?!」「?!」



「俺ゃあこんなにも赤山のことを‥」

「それとも、」



雪はそこで、健太の芝居がかった言動の流れを切る。

「何か後ろめたいことでもあるんですか?」



その言葉が放たれた瞬間、健太がピタリと止まった。

沈黙が落ちる二人の間を、吹き抜けて行く風の音だけが聞こえる。



健太は、あからさまに動揺していた。

パクパクと言葉にならない声が、その青白い唇から漏れる。



「は‥はぁ?何言って‥」

「だって明らかにおかしいですよ。

正直健太先輩って他人事に無関心な方なのに、わざわざ首を突っ込んで事を荒立てて‥」




そして雪の持つ秘蔵カードが、遂に健太に差し出された。

「学科長の所にも‥お一人で行かれたんですよね」

「!!!」



健太が受けたその衝撃は、かなり凄いものだったらしい。

健太は両手をぶらんと下げながら、差し出されたジョーカーの前に言葉を失くす。

二連打‥



”明らかにおかしな言動”と”学科長の元を訪れた”という二段コンボの雪の攻撃。

それは見事に、健太の図星を突いたようだ。

やっぱりね‥



その証拠に、目の前の健太はおかしいくらいに動揺している。

なんだ?なんの話?意味分かんな~い‥。

誰に聞いたの?学科長の件‥




雪は改めて確信した。過去問を盗んだ真犯人は、柳瀬健太だと。

そしてその事実は、俯いてばかりだった雪を奮い立たせる。

「やっぱり」



「どうやら私に対して謝らなければならないのはー‥」



「直美さんではなく、健太先輩のようですね」







健太は目を丸くして固まっていた。

さっきまで下を向いていた後輩が、強い眼差しで自分の方を睨んでいるーー‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<健太との対決(1)>でした。

健太‥ちょ‥ごまかすのが下手すぎる‥

よくこれで今までやって来れましたよね‥。逆に感心しますよ‥。

では彼氏彼女の事情の雪野さんに、健太に言ってやってもらいましょう。



こんな風にね!




さて雪ちゃんの追及はまだまだ続きます~


次回<健太との対決(2)>です。

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あの人は何故

2016-02-09 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)


授業が終わって教室内が喧騒に包まれていても、柳瀬健太は腕組みをしたままじっとその場に座っていた。

頭の中は「こんなはずじゃなかった」と、苛立ちと後悔でいっぱいなのだ。

せめて過去問でも手に入れようと‥あんなことまでしたってのに‥くそっ‥



親からの就活へのプレッシャー、受からない卒業試験、思い通りにならない物事と人間関係‥。

せめて赤山雪の持つ過去問を手に入れれば、ここから脱却出来ると思ったのにーー‥。



そう思った時、突然視界に赤山雪が飛び込んで来た。

口元を歪める健太を、じっと見つめる彼女‥。






心を読まれたかのようなタイミングに、健太は驚いて口をあんぐりと開けた。

しかしすぐに笑顔を浮かべると、先輩らしくこう声を掛ける。

「ん~~?赤山ぁ!どうしたぁ~?」「あの、先輩」



雪は淡々としたトーンで、健太に向かって話を続けた。

「終わってから時間ありますか?」「ん?なんでだ?」

「ちょっと折り入って話が‥」



「なんだ?俺に相談事か~?HAHAHA!」

「はいまぁ‥似たようなものです‥」



相変わらずの健太のオーバーアクションに雪は引き気味だったが、

その要望は決して取り下げたりはしなかった。

「あーでもほら!俺これから連続講義で‥」

「それは待ちますので」



雪はそうあっさり返すと、お辞儀をしながら健太の元を離れて行った。

「それじゃ後で、講義室の裏の駐車場でお待ちしてます」






「赤山雪グループ」のメンツの元に、こうして雪は帰って行った。
(話を聞いていたらしい柳は雪のことを凝視し、聡美と太一は未だにいがみ合っている)

健太は笑顔を浮かべながら、とある考えが頭の中に広がるのを感じる。

「‥‥‥‥」



けれどそれは取り越し苦労に過ぎないだろうと、健太は自身を擁護しこう呟いた。

「まさか‥んなワケ‥」



赤山雪は、自分が過去問を盗んだ張本人だと気づいているだろうか?

いやまさかそんなわけはない。自分の行動は完璧だったはず‥。






同時刻、キャンパス近くでこの二人がまた顔を合わせていた。

「てことは‥あの本、お前がぁ~?」



「いやその‥」



佐藤広隆と河村亮。この奇妙な組み合わせも、だんだんとシックリ来るようになっていた。

「お前なぁ!良くしてやるのは構わねぇけどよ、

現実的に欲しがってるモンやりゃいいじゃねーかよ。静香の場合は金!無条件で金なんだよ!」


「いや俺はスポンサーじゃないし‥どうして金出さなきゃいけないんだよ!てかそれも既に何度も‥

それにアンタも、静香さんの弱点教えてくれるって言ったのに会ってもメシ奢らされるだけじゃないか!」




亮は幾分強引に佐藤の肩を引き寄せると、手で金のマークを作りながらこう続ける。

「いやいやアイツをそそのかすのに必要なのはコレ。コレだっての」

「いやいやそんなモンで人をそそのかしてどーする?!」



何度亮が「静香が喜ぶのは金」と教えても、佐藤は一向に納得しない。

若干焦れた亮は、呆れながら彼にこう言った。

「あーもう!この甘ちゃんが!マジでわかんねーのか?!まどろっこしいなぁ!

静香のことあんなに見てんのに分かんねーのか?あぁ?!弟のオレが言うんだから‥」




間違いない、と亮が言う前に、佐藤はこんな質問をぶつけた。

「それじゃ静香さんは、どうして授業に来るんだよ?」



「えっ?」



予想外の問いに、目を丸くする亮。

佐藤は真面目な表情で、その質問をもう一度投げかけた。

「金にしか目が無いなら、どうして彼女は美術の授業を聴きに来るんだよ」



瞼の裏に、いつか目にした彼女が消えない。

あの人は何故、美術の本を目にした時、あんな目をしていたんだろうーー‥。






「そりゃ‥」



亮はその続きを口にしようとしたが、続けられなかった。

自身の奥に沈めてある気持ちが、その先の言葉を見失わせる‥。



亮は暫く言葉を飲んだが、じきに再び軽い調子に戻って肩を竦めた。

「そりゃあさぁ‥」

「お?!」



するとそんな佐藤と亮の前に、柳楓が現れた。

「佐藤!ここで何してんだよ!」



柳は忙しない様子で、佐藤に向かって早口で質問する。

「隣誰?」「え?ただの知り合い‥」「あーもういいや!」



「今すぐ、俺と一緒に来てくれ!」「え?どうした?」



尋常ではないその様子に、佐藤も勿論亮まで目を剥いた。

そして三人は、柳の話すその場所へと走って行く‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<あの人は何故>でした。

佐藤先輩は優しい人ですね‥。

静香の本当の所を見極めているからこそ、彼女を放っておけないんでしょうね。

それに引き換え健太‥

さて次回、遂に雪が健太を追い詰めますよ~


次回、<健太との対決(1)>です。

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事件簿・その顛末

2016-02-07 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)
これは今から六日前、つまり先週火曜日のことである。

「おい、男らしくあの時のことは全て水に流そうぜ」



佐藤広隆のノートPC事件以来、健太のことを避け続ける柳楓。

健太は自身のプライドを捨て、柳にそう話し掛けたのだった。

「もう一度一緒に勉強‥」

「あ、イヤっすよ」



しかし柳は健太からのその提案を、点一秒で却下する。

「過去問は渡しませんから」



しかもその狙いもあっさり見抜かれて。

終いには、戻った教室にてダメ押しされる始末だ。

「それじゃグループ作って勉強会します?」「いいね~!」



ますます「青田淳の過去問」を持つあのグループには入りづらい。

そんな中、赤山雪が伊吹聡美と席を外した。

「ちょっと飲み物飲み行こう」「うん」



健太は雪が教室から出て行くのをじっと見ていた。

心の中にある、欲望の虫が騒ぎ出す。



するとそんな健太の方へ、糸井直美が近付いて来た。

健太はビクビクしながらサッと身を翻す。



直美は海の座る後ろの席へと着席すると、海に向かって話し掛け始めた。

「海ちゃんちょっと」「何ですか?」







チラ、と教室内を窺う健太。

自分の方を見ている人は誰もいない。



直美は依然として海に向かって、過去問についての不満を漏らしているようだ。

健太はさり気ない風を装いながら彼女達から離れ、目当ての席へとゆっくりと歩を進めて行く。

「う~んと‥試験範囲は~と‥」



そしてその席の真後ろに来た時、健太は手に持っていたプリントをわざと落とした。

「おっと‥」



拾う為を装い、身を屈める。

そして健太はそこに置かれた赤山雪の鞄を、じっと凝視した。



アレだ



薄紫のファイルに挟まれたプリントこそ、求めていた「青田淳の過去問」に違いない。

そう思った健太は、身を屈めたままプリントに手を伸ばした。






プリントを手に取った健太は、何事も無かったかのようにスッと立ち上がった。

すると雪の鞄の上に乗せてあったマフラーが、そこからスルリと滑り落ちる。

「!」



そこに置かれていたものがあからさまに乱れていては、すぐに気づかれる恐れがあった。

健太は超スピードで、マフラーを拾い鞄の下に敷く。



するとそのせいで、鞄の中に入っていたらしいペンが転がり出し、椅子の下に転がった。

思わず「あっ」と声を出す健太。



これも拾わないとと思ったが、どうやらタイムアウトのようだ。

うっ‥ペンが‥あっでも人が来るぞ







健太は迷ったが、とりあえずこの場所から去ることにした。

えーいもう知らん!コピーしてからまたこっそり返せば良いだろ



そう思いながら、後輩達に一緒に勉強しようぜと声を掛け、健太は元居た席へと戻って行った。

何食わぬ顔をしながら、いつも通り笑い声を上げる‥。









席に戻った赤山雪は、すぐに過去問が無くなっていることに気がついたらしい。

健太は彼女達の方へ聞き耳を立てながら、じっとその様子を窺っていた。

そして丁度良い頃合いを見計らって、赤山雪に声を掛けたのだった。

「何っ?!青田から貰った過去問が無いだとぉ?!」



しかしそこで健太は、思いも寄らないことを耳にすることになる。

「青田先輩から貰った過去問じゃないですよ。それは今ここにはありません」

「そうなのか?そんじゃ他の過去問ってこと?赤山は他にも過去問持ってんのか?」

「はい」



段々と狂い行く歯車。

健太は表情が引き攣って行くのを感じながら、柳楓が皮肉にこう話すのを聞いていた。

「誰かが淳の過去問狙ったものの、無駄骨折ったんじゃねーか?ww」



全く図星のその意見を聞きながら、健太は苛立った。

そして休憩時間に廊下へと飛び出して、赤山雪の鞄から盗み出したそれを改めて確認する。

あーもう!意味ねーじゃねーか!

青田の過去問じゃねーなら、ここまでする必要全く無かったじゃんかよ!




糸井の過去問ならもう既に俺の同期も持ってるやつだっつの!!いつでも手に入るヤツ‥

つーか糸井のヤツ、俺にこれくれるとか一言も無くなかったか?!




健太は頭をぐしゃぐしゃ掻きながら、その苛立ちの矛先を糸井直美へと向けた。

クッソ!!マジでありえねーっ!

「この前あたしが出したから今日はアンタがコーラ買ってー」「いいですよ」



するとすぐ傍に、糸井直美を始めとする三年生の女子達が歩いているのが見えた。

健太は息を飲みながら、サッと壁際に身を隠す。






そこから見えたのは、糸井直美の後ろ姿だった。

結構良くしてやったのに、持っている過去問を自分にくれなかった薄情な後輩‥。



彼女の後ろ姿を見ている内に、とある考えが健太の頭の中に浮かんで来ていた。

もしこの計画が上手く行けば‥と考えながら、チラと教室内を窺ってみる。



休み時間の教室はしんとしていた。

見る限り誰も残っていない。



今ならば、糸井直美のせいに出来るかもしれない。いや、逆に今やるしかないーー‥。

健太は急いで糸井直美の席へと走ると、机の上にこっそりと過去問を置いて来た‥。





二日後、健太はとんでもない話を耳にすることになる。

「雪ちゃん学科長に言いに行ったっぽいね」「えーそれはさすがに大袈裟すぎない?」

「嘘ついてるようには見えなかったけどなー」



「でも学科長まで出て来たら、マジで大事になるよねー」



その話を聞いた健太は、自身の心臓がドクンドクンと大きな音を立てるのを感じた。

しかし震える身体とは裏腹に、頭の中はなんとか平静を装おうとしている。

いや‥大丈夫だ。

教室に監視カメラがあるわけじゃねーし、バレるわけねーだろ




なんといっても、手元にあの過去問があるわけではないのだ。

健太は、前方の席に座る糸井直美をチラと窺ってみる。






彼女はソワソワした様子で、焦れたように爪を噛んでいた。

それを見た健太は確信したのだ。

彼女に罪を被せることが出来た、と。

そして健太は、自身から目を背けさせるカモフラージュとして学科長の所へ直訴しに行った。

「泥棒を早く捕まえて下さい」と。




これが「赤山雪の持つ過去問盗難事件」の、顛末であった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<事件簿・その顛末>でした。

やはり真犯人は健太ということが判明‥!

健太、都合が悪くなると人に罪をなすりつける、人間の小ささが浮き彫りですね!

けど今回の事件、時系列を考えるとちょっと混乱してくるのでまとめてみました。

<日曜>先輩と雪 家デート



<月曜> 海と過去問交換



<火曜> 柳、健太からの和解を突っぱねる

 

雪、勉強会提案



過去問盗まれる(健太盗む)

 

健太、盗んだ物は青田淳の過去問じゃないと知り、過去問を直美の机の上に置く



過去問が机の上に置いてあったことを受けて、雪に文句を言う直美



夜 先輩、柳から過去問事件のことを電話で聞く




<水曜> 雪の勉強会詳細話し合う



雪、典に過去問盗難事件を学科長に言うかもと伝える


   
<木曜> 勉強会スタート



典、過去問を破いて捨てる直美目撃



典、直美に確認 雪、典から直美が破いていたと聞く

 

健太 学科長の元を訪れる


   
<金曜> 直美がやったと学科に噂広まる



雪、遠藤から健太が学科長の元を訪れたと聞く



そして土日、聡美の襲撃と先輩とのデートキャンセルを挟んでの、

<週明けの月曜日>



ということになってます。

何気に過去問が無くなってから一週間経ってるんですね。

読者も雪ちゃんも、なんだか疲れる一週間ですね‥。


さて次回は<あの人は何故>です。



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