考え過ぎる人間は、恋愛するのが難しいと人は言う。

物語は、雪のこんなモノローグから始まる。
頬杖を突きながらぼんやりと前を見つめるのは、高校時代の赤山雪だ。

雪のクラスの担任が、授業をしているところだった。
担任は顔を顰めながら、雪の方を見てとあるジェスチャーをする。
”頬付えを突くのは止めなさい”と。

雪はそんな彼女の仕草に気づき、言われた通り頬杖を突くのを止めた。
しかし周りを見回してみると、皆頬杖を突き、果てはアクビまでしている子もいる‥。

担任は、なぜ自分だけに注意したんだろう?
何か悪いことでもしただろうか?
私の姿だけ特別ダラケて見えたのだろうか‥?

「それ、あんたが自分で招いた結果でしょ」

萌菜は、雪の方を振り向きもせずそう言った。
「今でこそ皆うちの担任変だって思ってるけど、
あんたは初めからあの人が気に入らないって態度取ってたじゃん。だからずっと目の敵にされてんじゃないの。
まぁそれさえも、あんた勉強出来るから大したことない程度だけどね」

雪が悩んでいたことに、萌菜は淡々と答えを出した。
その周りでは友人二人が、思い思いのことをして過ごしている。高校時代の雪の周りは、大体こんな感じだ。
いつもつるんでる彼女らは、皆それぞれに性格は違ったが不思議とバランスが取れていた。
中でも一番仲の良い萌菜は、ズバズバと忌憚のない意見を雪に述べてくれる、貴重な存在だ。
「この人はこの人、あの人はあの人。いちいち人の行動問い詰めて神経使ってたら、
恋人が出来た時どうやって付き合うってーの?」

わざとじゃないのに、と雪は一人心の中で弁解するが、
嘆いてみたところで、現状は何も変わらない。自分の鋭敏さがもたらす災難は、結局自分に返ってくるのだ。
そして萌菜はそんな雪を見て、いつももどかしく思っていた。雪に向かって何回も、この言葉を口にする。
”世渡り上手になれ”と。
狐のようにしなやかに、そして時に小狡く、と。
けれどまだ若い雪には、それがどういうことなのか分からなかった。
親友からのアドバイスすら、どこか遠い国の言葉のように聞こえる。
時折周りの人々から、ストイックすぎるとか、鋭敏だとか、考え過ぎとか、
そのせいで生きるのに疲れるだろうとか、そういうことを度々言われた。

担任をはじめとする、雪の周りの人達。
その人達からそういう言葉を掛けられる度、心の中で呟く言葉があった。
これといって特別なコトをしたわけじゃないのに‥

どうして私は何もしていないのに、周りはしきりに私を困らせるんだろう。
答えの出ないその問いが、いつも雪の頭を悩ませた。
漠然とした未来は霞んでいて、そんな自分が恋愛する時が来るなんて思いもしなかった。
しかし、その時は突然やって来る。歯車のように回る運命が、予想もつかない縁を紡ぐ。
そんな私が、恋愛を始めた。

そして物語の舞台は現在へと移る。
視線の先には、彼の姿があった。
相手は、付き合うことになるなんて想像もしなかった青田先輩。

待ち合わせ場所で人々と談話する彼の姿を見つけて、雪は自然と口元に笑みを浮かべた。
こんな表情で彼のことを見る日が来るなんて、一年前には想像もしていなかった。

実際、マイナスな感情しか抱くことのなかった相手だし、
これ以上関りたくないと思っていたのだが‥。
恋愛というものは分からないものだ。
今は共に過ごしながら、少しずつ先輩という人を知っていく日々だ。

例えば、と雪が例に上げるのは、一緒に勉強している彼の姿だ。
そして同時に、その彼とは同一人物とは思えないその姿も。
私より遥かに大人っぽいくせに、たまに驚くほど子供みたいだったり、

そして思い出すのは、教室での彼の姿だ。
彼はいつだって前を向き、居眠りも無駄話もせず授業に集中する。
何でも簡単にこなしてしまうように見えるのは、
その陰で綿密な計画と努力を惜しまず、目標達成に徹する人だからなのだと知った。

彼と一緒に勉強していると、その計画の綿密さに驚くばかりだ。
今週はこれをして来週はこれをして‥と小さな目標から大きな目標まで細かく立ててある。
週三でジムに通い、忙しい時は無理しない。自分に対して厳しく、しかし時に寛容に、力の抜き加減も分かってやっているように見えた。
だからこそ、ぜひとも一度勝ってみたい‥。

雪はそんな彼を知る度、密かにライバル心が燃えた。
努力の量なら彼にも負けない、雪の心の中にはそんな自負があった。
「グループワーク、うちの班のが上手くやりますからね!」「ははは、それはどうかな?」

恋人同士である前に、二人は一流大学に在籍する優秀な学生だ。
いつか彼に勝ってみたいという欲求が、雪を更に高めていく。
付き合って二ヶ月、目にしてきたこういった彼の一面は隙がなく完璧で、誰しもが一目置く存在だ。
しかし雪は、彼の顔がもう一つあることを知っていた。
けれど時折、常軌を逸した行動をした。

レポート事件の時に彼は、”お前の為を思って”と平気な顔をしてそう言った。
平然と遠藤さんを利用し貶めて、それすらも正義だという顔をしていた。
脳裏には、彼が特定の場合に浮かべる笑みが蘇る。
他では決して見せることのない、奇妙な笑みを浮かべる時‥

気をつけろよと肩を掴まれた時の笑みも、先日教室で目にした柳瀬健太に送る笑みも、共通する点があった。

まるで裂けたように上がる口角。
鋭敏な雪の性分が、その笑顔の種類を見分け、彼の本心を看破する。

あの路地裏で見た光景を、雪は未だに忘れることが出来ない。
衝撃だったのは苦痛に歪んだ変態男の顔でも、足を怪我した事でもなかった。

無慈悲に男を蹴り続ける、彼の姿。
何の感情も読み取れないその瞳。
顔色一つ変えずに人を蹴る、その心の中ー‥。

この人が何を考えているのか、全く分からなくなるー‥

どうして? と雪は考える。
どうして彼は、何故に彼は、何で彼は‥。
疲れないの?

ふと萌菜の言葉が、鼓膜の奥で響いた。
いちいち人の行動問い詰めて神経使ってたら、恋人が出来た時どうやって付き合うっていうの?と。

夢から覚めたような顔で、頬杖を突くのは大学生の赤山雪だ。
テーブルの上にはコーヒーが二つ。彼女には恋人がいるのだった。

不意に肩を軽く叩かれた。
顔を上げると、彼が微笑んでいた。次授業あるんでしょ?と言って。
「行こうか」

微笑む彼に、微笑みを返す彼女。
表面をなぞるようなそんなやり取りで、彼らは恋人を続けている。

確かに私たちは付き合っているけれど、未だにどこか互いに距離があり、深く分かり合えない。

物理的な距離は近くとも、心と心の間に見えない壁があるかのようだった。
どこか寂しい気持ちを抱えて、雪は彼を見上げてみる。
確かに好きなのに‥

また私が無駄に考え過ぎているだけなのかもしれないが、
この人のことが分からないので、彼の核心に近づくことが出来ないのだ‥。

彼の心の扉にはいつだって鍵がかかっていて、
見上げた彼の横顔からは、その在処を窺い知ることは出来なかった。
けれどそこは本当に扉なのか? そう自らの鋭敏さを咎める、もう一人の自分が口にする。
私が考え過ぎているだけなのか、先輩が本心を隠しているからなのか、まだその理由は分からない。

そこは扉ではなく単なる壁なのかもしれない。
また考え過ぎの癖が出ただけで、元々開くはずのない場所なのかもしれない。
もっと深く彼を知りたいと思う自分と、どこかブレーキを掛ける自分。
雪の心の中では、両者がせめぎ合っている。
そして本当の彼を知る時が来たならば、その時私がどんな風に思うかは、
予測もつかない。

それこそが、ブレーキを掛けている原因だった。
雪はそれ以上近づくことの出来ない場所で、彼の横顔をじっと見つめている。
時折目にする、少年のような彼の顔。
少し俯き加減で歩く彼の横顔に、今日もその少年が見え隠れする‥。
そして物語は再び高校時代の記憶に飛ぶ。
雪のクラスの担任が、授業をしているところだった。

この日雪は頬杖を突かず、姿勢を正して授業を受けた。
理解出来ない彼女とも、いつか分かり合えると信じながら。

しかしそんな雪の真摯な態度を前にしても、担任は顔を顰めたままそっぽを向いた。
そしてそれきり、こちらを向くことはなかった。

相手を知り過ぎることは、時に不快なこともあるけれど、
互いを全て分かってこそ、近付くことが出来るんじゃないかと考えたこともあった。

他の生徒は、頬杖を突き居眠りをし、果てはイヤホンで音楽を聞いてる子もいた。
その中で雪だけが、真面目に授業を聞いていたのに。
けれど、それは違った。

理解出来ない人とも真っ直ぐ向き合おうとするのは、雪の律儀な性分だ。
けれどそれによって相手と理解し合えるかどうかと言ったら、それはまた別の話である。
教室の中で味わった苦い記憶が、雪に一つの結論を教える。

青田淳の隣を歩く、赤山雪。

赤山雪の隣を歩く、青田淳。
二人は手を繋いでいた。
互いの体温が溶け合うほど、二人の距離は近かった。

けれどあの日出た結論が、雪と淳を別々の個体に分けていた。
それは残酷で目を覆いたくなるような結論だったが、しかしそれこそが雪の思う真実だった。
なぜならば私達は、完全に別の人間なのだから‥

全く別の人間同士が理解し合うなど不可能だと、雪はそう思っていた。
だからこそ分かり合うことが必要だとも考えていた。
けれどその先が明るい未来かどうかなんて、誰にも分からないのだ‥。
彼と手を繋ぎながら、その体温を分け合いながら、雪はそんなことを考えていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<特別編 あなたと私>でした。
何だかまとまらない記事になってしまい申し訳ない‥。読みにくくてすいません。
モノローグ中心だと解釈が入れづらくて‥難しかったです。
さて今回で、雪と淳が真反対の考えを持っていることが明らかになりましたね。
淳は変態男に言った通り、「あの子と俺は同類」と思っているのに対し、雪は「私達は完全なる他人」だと思っています。
これ、きっとどちらでも無いんだと思うんですよね。
完全に同じでもなければ、完全に違うわけでもない。
同じ所もあれば違う所もある、そうやって互いを認めて自分を肯定することが、二人の成長に必要なプロセスだと思うのですが‥。
ラストが楽しみですね^^
次回は<赤山連の悩み>です。
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物語は、雪のこんなモノローグから始まる。
頬杖を突きながらぼんやりと前を見つめるのは、高校時代の赤山雪だ。

雪のクラスの担任が、授業をしているところだった。
担任は顔を顰めながら、雪の方を見てとあるジェスチャーをする。
”頬付えを突くのは止めなさい”と。

雪はそんな彼女の仕草に気づき、言われた通り頬杖を突くのを止めた。
しかし周りを見回してみると、皆頬杖を突き、果てはアクビまでしている子もいる‥。

担任は、なぜ自分だけに注意したんだろう?
何か悪いことでもしただろうか?
私の姿だけ特別ダラケて見えたのだろうか‥?

「それ、あんたが自分で招いた結果でしょ」

萌菜は、雪の方を振り向きもせずそう言った。
「今でこそ皆うちの担任変だって思ってるけど、
あんたは初めからあの人が気に入らないって態度取ってたじゃん。だからずっと目の敵にされてんじゃないの。
まぁそれさえも、あんた勉強出来るから大したことない程度だけどね」

雪が悩んでいたことに、萌菜は淡々と答えを出した。
その周りでは友人二人が、思い思いのことをして過ごしている。高校時代の雪の周りは、大体こんな感じだ。
いつもつるんでる彼女らは、皆それぞれに性格は違ったが不思議とバランスが取れていた。
中でも一番仲の良い萌菜は、ズバズバと忌憚のない意見を雪に述べてくれる、貴重な存在だ。
「この人はこの人、あの人はあの人。いちいち人の行動問い詰めて神経使ってたら、
恋人が出来た時どうやって付き合うってーの?」

わざとじゃないのに、と雪は一人心の中で弁解するが、
嘆いてみたところで、現状は何も変わらない。自分の鋭敏さがもたらす災難は、結局自分に返ってくるのだ。
そして萌菜はそんな雪を見て、いつももどかしく思っていた。雪に向かって何回も、この言葉を口にする。
”世渡り上手になれ”と。
狐のようにしなやかに、そして時に小狡く、と。
けれどまだ若い雪には、それがどういうことなのか分からなかった。
親友からのアドバイスすら、どこか遠い国の言葉のように聞こえる。
時折周りの人々から、ストイックすぎるとか、鋭敏だとか、考え過ぎとか、
そのせいで生きるのに疲れるだろうとか、そういうことを度々言われた。

担任をはじめとする、雪の周りの人達。
その人達からそういう言葉を掛けられる度、心の中で呟く言葉があった。
これといって特別なコトをしたわけじゃないのに‥

どうして私は何もしていないのに、周りはしきりに私を困らせるんだろう。
答えの出ないその問いが、いつも雪の頭を悩ませた。
漠然とした未来は霞んでいて、そんな自分が恋愛する時が来るなんて思いもしなかった。
しかし、その時は突然やって来る。歯車のように回る運命が、予想もつかない縁を紡ぐ。
そんな私が、恋愛を始めた。

そして物語の舞台は現在へと移る。
視線の先には、彼の姿があった。
相手は、付き合うことになるなんて想像もしなかった青田先輩。

待ち合わせ場所で人々と談話する彼の姿を見つけて、雪は自然と口元に笑みを浮かべた。
こんな表情で彼のことを見る日が来るなんて、一年前には想像もしていなかった。

実際、マイナスな感情しか抱くことのなかった相手だし、
これ以上関りたくないと思っていたのだが‥。
恋愛というものは分からないものだ。
今は共に過ごしながら、少しずつ先輩という人を知っていく日々だ。

例えば、と雪が例に上げるのは、一緒に勉強している彼の姿だ。
そして同時に、その彼とは同一人物とは思えないその姿も。
私より遥かに大人っぽいくせに、たまに驚くほど子供みたいだったり、


そして思い出すのは、教室での彼の姿だ。
彼はいつだって前を向き、居眠りも無駄話もせず授業に集中する。
何でも簡単にこなしてしまうように見えるのは、
その陰で綿密な計画と努力を惜しまず、目標達成に徹する人だからなのだと知った。


彼と一緒に勉強していると、その計画の綿密さに驚くばかりだ。
今週はこれをして来週はこれをして‥と小さな目標から大きな目標まで細かく立ててある。
週三でジムに通い、忙しい時は無理しない。自分に対して厳しく、しかし時に寛容に、力の抜き加減も分かってやっているように見えた。
だからこそ、ぜひとも一度勝ってみたい‥。

雪はそんな彼を知る度、密かにライバル心が燃えた。
努力の量なら彼にも負けない、雪の心の中にはそんな自負があった。
「グループワーク、うちの班のが上手くやりますからね!」「ははは、それはどうかな?」

恋人同士である前に、二人は一流大学に在籍する優秀な学生だ。
いつか彼に勝ってみたいという欲求が、雪を更に高めていく。
付き合って二ヶ月、目にしてきたこういった彼の一面は隙がなく完璧で、誰しもが一目置く存在だ。
しかし雪は、彼の顔がもう一つあることを知っていた。
けれど時折、常軌を逸した行動をした。

レポート事件の時に彼は、”お前の為を思って”と平気な顔をしてそう言った。
平然と遠藤さんを利用し貶めて、それすらも正義だという顔をしていた。
脳裏には、彼が特定の場合に浮かべる笑みが蘇る。
他では決して見せることのない、奇妙な笑みを浮かべる時‥

気をつけろよと肩を掴まれた時の笑みも、先日教室で目にした柳瀬健太に送る笑みも、共通する点があった。

まるで裂けたように上がる口角。
鋭敏な雪の性分が、その笑顔の種類を見分け、彼の本心を看破する。

あの路地裏で見た光景を、雪は未だに忘れることが出来ない。
衝撃だったのは苦痛に歪んだ変態男の顔でも、足を怪我した事でもなかった。

無慈悲に男を蹴り続ける、彼の姿。
何の感情も読み取れないその瞳。
顔色一つ変えずに人を蹴る、その心の中ー‥。

この人が何を考えているのか、全く分からなくなるー‥

どうして? と雪は考える。
どうして彼は、何故に彼は、何で彼は‥。
疲れないの?

ふと萌菜の言葉が、鼓膜の奥で響いた。
いちいち人の行動問い詰めて神経使ってたら、恋人が出来た時どうやって付き合うっていうの?と。

夢から覚めたような顔で、頬杖を突くのは大学生の赤山雪だ。
テーブルの上にはコーヒーが二つ。彼女には恋人がいるのだった。

不意に肩を軽く叩かれた。
顔を上げると、彼が微笑んでいた。次授業あるんでしょ?と言って。
「行こうか」

微笑む彼に、微笑みを返す彼女。
表面をなぞるようなそんなやり取りで、彼らは恋人を続けている。

確かに私たちは付き合っているけれど、未だにどこか互いに距離があり、深く分かり合えない。

物理的な距離は近くとも、心と心の間に見えない壁があるかのようだった。
どこか寂しい気持ちを抱えて、雪は彼を見上げてみる。
確かに好きなのに‥

また私が無駄に考え過ぎているだけなのかもしれないが、
この人のことが分からないので、彼の核心に近づくことが出来ないのだ‥。

彼の心の扉にはいつだって鍵がかかっていて、
見上げた彼の横顔からは、その在処を窺い知ることは出来なかった。
けれどそこは本当に扉なのか? そう自らの鋭敏さを咎める、もう一人の自分が口にする。
私が考え過ぎているだけなのか、先輩が本心を隠しているからなのか、まだその理由は分からない。

そこは扉ではなく単なる壁なのかもしれない。
また考え過ぎの癖が出ただけで、元々開くはずのない場所なのかもしれない。
もっと深く彼を知りたいと思う自分と、どこかブレーキを掛ける自分。
雪の心の中では、両者がせめぎ合っている。
そして本当の彼を知る時が来たならば、その時私がどんな風に思うかは、
予測もつかない。

それこそが、ブレーキを掛けている原因だった。
雪はそれ以上近づくことの出来ない場所で、彼の横顔をじっと見つめている。
時折目にする、少年のような彼の顔。
少し俯き加減で歩く彼の横顔に、今日もその少年が見え隠れする‥。
そして物語は再び高校時代の記憶に飛ぶ。
雪のクラスの担任が、授業をしているところだった。

この日雪は頬杖を突かず、姿勢を正して授業を受けた。
理解出来ない彼女とも、いつか分かり合えると信じながら。

しかしそんな雪の真摯な態度を前にしても、担任は顔を顰めたままそっぽを向いた。
そしてそれきり、こちらを向くことはなかった。

相手を知り過ぎることは、時に不快なこともあるけれど、
互いを全て分かってこそ、近付くことが出来るんじゃないかと考えたこともあった。

他の生徒は、頬杖を突き居眠りをし、果てはイヤホンで音楽を聞いてる子もいた。
その中で雪だけが、真面目に授業を聞いていたのに。
けれど、それは違った。

理解出来ない人とも真っ直ぐ向き合おうとするのは、雪の律儀な性分だ。
けれどそれによって相手と理解し合えるかどうかと言ったら、それはまた別の話である。
教室の中で味わった苦い記憶が、雪に一つの結論を教える。

青田淳の隣を歩く、赤山雪。

赤山雪の隣を歩く、青田淳。
二人は手を繋いでいた。
互いの体温が溶け合うほど、二人の距離は近かった。

けれどあの日出た結論が、雪と淳を別々の個体に分けていた。
それは残酷で目を覆いたくなるような結論だったが、しかしそれこそが雪の思う真実だった。
なぜならば私達は、完全に別の人間なのだから‥

全く別の人間同士が理解し合うなど不可能だと、雪はそう思っていた。
だからこそ分かり合うことが必要だとも考えていた。
けれどその先が明るい未来かどうかなんて、誰にも分からないのだ‥。
彼と手を繋ぎながら、その体温を分け合いながら、雪はそんなことを考えていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<特別編 あなたと私>でした。
何だかまとまらない記事になってしまい申し訳ない‥。読みにくくてすいません。
モノローグ中心だと解釈が入れづらくて‥難しかったです。
さて今回で、雪と淳が真反対の考えを持っていることが明らかになりましたね。
淳は変態男に言った通り、「あの子と俺は同類」と思っているのに対し、雪は「私達は完全なる他人」だと思っています。
これ、きっとどちらでも無いんだと思うんですよね。
完全に同じでもなければ、完全に違うわけでもない。
同じ所もあれば違う所もある、そうやって互いを認めて自分を肯定することが、二人の成長に必要なプロセスだと思うのですが‥。
ラストが楽しみですね^^
次回は<赤山連の悩み>です。
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プランナー先輩のセリフは「雪ちゃん、来週はxx科目を一緒に勉強して、ooへ行って遊ぶのよ。来来週は~をして、来来来週は...」
ちなみに「完全に別の人」は「(性格が)完全に違う人」とも訳せます。韓国語じゃ同じ形容詞ですからね。(あ、もしかして日本語の「別」にもこんな意味が?)
どこがどうわからないのかも分からないくらい…
内容とははずれていますが、これはスンキさんの思っていることを雪ちゃんにかぶせてかいたのではなくて、スンキさんが、雪ちゃん目線で(雪ちゃんになって?)かいたものですよね……?
もしそうなら、この作品の最後がスンキさんの答えになりますよね。
まだ社会に出なことのないぴよっこの私は、どういうことが“世渡り上手”なのかはっきりとはわからないですが(でもこう言っている萌菜さん、高校生なんですよね…すごい…^^;)、このような作品は、一つの考えとしてものすごく参考になります。
もちろん、読んだものをそのまま鵜呑みにはしませんが…(というか出来ないです^^;)
そして、師匠の解釈やみなさんのコメントも、とても参考になります。
ありがとうございます!!!
そしてそして。先輩、週3でジム通ってたんですね!これ、本編で出てきてましたっけ??
もし出てきてたら、すみません!
いつから通ってるんだろう…( ̄▽ ̄)
正直淳への感じ方とかはさもありなんてな感じで疑問とかはささほど感じなかったのですが
ジム週三回はね、確かにストイックだわと思いましたが
澪さんと同じく、そこはお億としたポイント(笑)
ほんと雪と淳は努力を惜しまないタイプですよね
で閑話休題
担任教師の態度はほんと教師としても人間としても最悪ですけど、それだけ言ったら何もないので雪サイドから考えてみると
ほんと大人しく優等生のくせに何かかんに障るタイプなんでしょうかね
私たちは雪のモノローグをつぶさに眺めているから共感してますけど
やたら反感買いやすいですよね
気に入らないと思ったら結構態度出しすぎでなのかも
そのくせ大人しいタイプだから舐められては目の敵にされちゃう
器用にならないと社会人になったときに厳しいかもしれないタイプですね
頭良くても社会はいろんな人とのすり合わせやおもねる事も必要じゃないですか
そんなの必要ないって言ってしまえば簡単ですが実際能力以外のものが影響する事って多いですからね
モナはその点凄いですよ
・・・答えのない問題を前にしたようでとても難しく、コメントが全くまとまりませんでした。
ここで作者さんがどういうことを言いたかったのか、私には全く分からないのです・・・。
考えているうち、否定的な(?)感想が出てきてしまい、困っているのですが、反対意見を覚悟でコメント入れます。むくげさんとも真反対に近いのですが、すみません。
全くまとまらないので、書き散らかします・・・。
担任の先生について、生徒の感想しか描写がありませんが、私には悪い先生には思えませんでした。
雪ちゃんが自分を取り巻く人たちについていろいろ考えているのは共感します。
ただ、萌菜の言う通り、担任が変なのか、皆そう思っているのか、雪ちゃんが“あの人が気に入らないって態度を取っていた”のか・・・。それは萌菜目線でのことであって、雪ちゃんが自分よりもしっかりしていて頼りになる親友の意見をそうだと思うのは仕方ないとして、でも雪ちゃんの中には萌菜と違って先生を解りたい、先生に解ってもらいたい気持ちがあるのだと思うのです。そして先生は先生+普通の人として当たり前の態度をとっていると思う・・・。自分の授業を生徒たちが聞いてくれているか。そうでないなら投げやりな授業にもなるでしょうし。ただ、真面目に聞いてくれている雪みたいな子にはちゃんと気付いている。それでも特別視はせず、淡々と授業を進める。授業に生徒を引き付ける技術がないことはさておき、真面目に聞く生徒には反応し義務を果たす。先生のそういう姿勢がなんとなくわかるから、雪ちゃんもしっかり向き合おうという気持ちになるのかなと思いました・・・。
>どうして私は何もしていないのに、周りはしきりに私を困らせるんだろう。
困ったり嫌な思いだったり哀しみだったり辛い想いだったりをしたくないから、萌菜も先輩も皆、かたちは違えどそれぞれの結論になっているのかと・・・。(佐藤先輩がいつも不機嫌で自分を守って(?)いるのもそうなのかと。 あ―...まとまらない・・・。書き散らかしスミマセン・・・。
Yukkanen師匠のおっしゃる通り、
>同じ所もあれば違う所もある、そうやって互いを認めて自分を肯定することが、二人の成長に必要なプロセスだ
「互いを認めて自分を肯定すること」
温かいこの言葉を思いながら、もう一度、「あなたと私」を読みます・・・
雪ちゃんはただただ平穏に過ごしたいと思っている。揉め事とか避けたいし、自分のことを敵対視されるなんてもってのほか。
しかし、そういう思いとは裏腹に周りはしきりに自分を困らせる…そう捉えてしまっている、そんな頃のエピソードですね。
告白される回の時には自分にも原因があったんだと考え方が少し変わっていました。根本的な平穏でいたいっていうのは、2人共通なところですよね。
雪ちゃんとにかく頭の中で考える考える…。そして自己解決。
この特別編、各人の考え方がよく表れたエピソードだと思いました。
ジムの話は、おまけ漫画でしたね?
特別編、前に師匠概要教えてくれていますよね?なんで知ってるんだろうと思って。自分の訳すげー!と一瞬思ったけど、自力じゃないな。笑
急いだから、私も書き間違ってるかも。
皆、それぞれ別々の考え方をしている。
違っていて当たり前。
だけどその中で相手を理解したいと思ったり、共感したり、孤独を感じたり・・・。
人とのかかわり方が変わっていく様を見ている・・・。
誰が良くて誰が良くないという、そういう回ではありませんね。
りんごさん、ありがとうございました。
この先生がどんなキャラなのか、萌菜が言うようにホントにおかしな先生なのかはこの場面だけで判断はできないですよね。
萌菜はいつも一刀両断ですが、彼女の言うことにいちいち影響されるのもどうかなと思います。萌菜もまた萌菜、ですから。
(まぁ雪ちゃんは萌菜の意見に大概「そうなのかな?」のスタンスなので安心してますが)
ミもフタもない言い方ですが、先生が雪ちゃんだけに注意したのは、雪ちゃんだけが先生を見ていたからではないですかねぇ。単純に。でも、説教にしろ文句の言い合いにしろ、そもそも目が合わなければ成り立たないってもんです。
相手をまっすぐ見る。これが正攻法というべき雪ちゃんのコミュニケーション術なのでしょう。
しかしながら、何か強いコンプレックスを持っている人は、雪ちゃんのような正論タイプにまっすぐ見つめられるのを居心地悪く思うもの(リメンバー青田淳)。
どんぐりさんがおっしゃるように、この先生、生徒たちに馬鹿にされ続けてひねくれちゃったのかもしれません。そんな彼女にとって、すべてを見透かすような雪ちゃんの目は痛かったり怖かったり…なのかもです。
注意深く観察して、その人をよく知ろう、理解しよう、そうすれば相手もきっと心を開いてくれる、分かり合える。雪ちゃんは基本的にそう思っている子なんですよね。
まったく別の人間同士なんだから、そういう努力をしなければ分かり合えるはずがないと。
でも、相手もそれを望んでいるとは限らない。
そして、すべて理解しあったとしても、それが互いにとって幸せなこととは限らない。
実体験からそれに気づきつつあって、揺れる乙女雪ちゃん…。てな感じですか。
やがて大人になれば、見てはいけないものを見ないようにしたり、見なかったフリができるようになったりするもんです。それが実は優しさだったりする場面も多いですよね。
雪ちゃんは自分を不器用だとか生きにくいタイプだとか思っているのかもしれませんが、結局は雪ちゃんのように「他人を理解しようと努力できる」子だけが、本当の大人になっていくんだと私は思いますね~。(と強引にしめくくる)
スマホからだと前記のコメントみれなくて勝手に記憶違いとかしてしまう
アホさかげん露呈しまくりですね えへへ
にしても色んな感じ方捉え方頑張って出来る回だなーと感じました
師匠の解説でも解釈深まるのに更にコメント読んで自分が気づかなかった事を教えてくれるので
にしてもほんとこの回の存在理由って何でしょうかね
自分の理解が悪いのかはっきりわからなくて
なくてもまあ進行上問題にないけど入れた訳ですし
皆さんのコメント含めてじっくり考察再度してみなくては
CitTさん手書き文字教えてくれてありがとう~~!本当助かります。
先輩は来々来週のことまで決めてあるんですね!(驚愕)よく休日までタイムスケジュール決まってる人とか居ますが、そんな感じでしょうか。
ぽこ田さん
>これはスンキさんの思っていることを雪ちゃんにかぶせてかいたのではなくて、スンキさんが、雪ちゃん目線で(雪ちゃんになって?)かいたものですよね……?
そうだと思います!だから最後の結論は、やはり雪ちゃんの答えになるんじゃないのかな~^^
何でこんな色々な人を書き分けられるんでしょうね、スンキさん。マジぱねぇっす(むりくり若者に合わせる三十路)
週三でジムはりんごさんご指摘の通り、おまけ漫画です。自転車片手に佇む先輩のカットがあるところです。
今回の走って息切れてるっぽい先輩のカット、いいですよね。。雪はジュース持って待ってあげてたのかしら‥とか考えて萌えです。
そしてむくげさんの言う通り、この回の存在意義‥。
考えてみました。
やはり現状での雪→先輩への気持ちを見せたかったのかな~と思います。担任の話云々も「分かり合えると思ったけどやっぱあかんかった」的なエピソードの一つな感じがしてますねぇ。
雪ちゃんがこのままなら先輩とはBADエンドな空気プンプンですが、やはりそこは雪ちゃんも変わって行くんじゃないかなと期待しています。
皆が成長した先に、どんな未来が待っているのか‥!
私がそれが楽しみでなりません!(語録より)
どんぐりさんの細やかな視点、素敵ですね^^
そしてここのところ
>どうして私は何もしていないのに、周りはしきりに私を困らせるんだろう。
これに気づいてもらえて嬉しいです。そうです、告白の時雪が話していた、雪の昔の人生観です。
りんごさんも気づいてらっしゃって‥。本当にここの常連さん達は読み込んでいらっしゃる!
さかなさんのまとめ力も相変わらず素晴らしいですな~。「要約集・さかな白書」出したいですね。
強引な締めもさすがです^^
そう、揉めてる時もご飯を食べに行く「約束は守る男」青田淳!
本家はデコチュー青田祭りが繰り広げられとりますねぇ…ドンドン。
師匠予想の泣きの雪ちゃんも!