Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

彼とのさよなら

2014-01-17 01:00:00 | 雪3年2部(同僚上京~亮塾辞職)
塾長からクビを言い渡された亮は、今までの荷物をまとめ、職場の仲間達に挨拶をした。

すると外国人講師達は涙を流しながら亮との別れを惜しみ出した。その雰囲気たるや、若干亮が引くほどだ。

「トーマス~!アイウィルミッシュー!知らせてくだサイ、フォンナンバー!フレンドシップ続けるネ!?」



涙のみならず鼻水まで垂らして亮を追う講師に辟易した亮に、雪が声を掛けた。

「河村氏!ここでしたか!」



雪の姿を目にした亮は、これ幸いと彼女に駆け寄った。

「ダメージヘア~!」



亮は、「オレこいつと話すことあっから」と言って、

その場からさっさと退散した。

いつもと違う態度の亮に、雪は若干引き気味である。




二人はそのまま人目の付かない非常階段まで来ると、亮はいつもの調子で愚痴り出した。

「ったく‥ただ辞めるだけで今生の別れみたいな態度取りやがって‥」



そんな亮を見上げながら、雪は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

さっきはありがとうございました、と遠慮がちに口を開く。

「‥ところで、大丈夫でした?あの人達からもしかして何か‥」



あの金髪男と仲間達のことだ。

先ほど執務室にて、亮に向かって「逃げれば即通報する」と息巻いていたのだ‥。



亮は眉をひそめながらその顛末を説明した。

一応彼らのことを部屋の外で待っていたが、金髪男達は亮と共に彼らを待っていた外国人講師達にやいのやいの言われ、

結局そのまま塾の外へすっ飛んで行ったらしい。



とにかくつまんねー奴らだ、と言って亮は唇を尖らせた。

雪は申し訳無さそうに頷くと、気を咎めていることを口に出した。

「それでも‥塾をこんな形で‥私のせいで‥」



そんな雪に対して、亮はあっけらかんと「気にすんな」と言った。

どうせ辞めるつもりだったんだから、とまるで雪を責める気はないようだ。

「にしても、お前ってマジ危なっかしいな!」



亮は雪が引き起こした事件に呆れ顔である。亮は苦い表情で、彼女に対して訓戒を垂れる。

「大の男に無鉄砲に向かって行きやがって‥殴られでもしたらどーすんだコラ」



そんな亮に対して、雪は正直な気持ちを語った。あんまりにも腹が立ったから、と。

「自分なりに覚悟して飛びかかって行ったんです。とことんやってやれと思って‥」



続けて雪は、「私はこう見えてずる賢い人間ですよ」とカミングアウトした。

相手の出方を見て攻撃したし、ギャラリーが大勢いることも計算して喧嘩を吹っかけた、とも。



亮はタジタジしながら雪の話を聞き、そして彼女の賢明さに感嘆した。そして温和な態度でまた釘を刺した。

「まぁお前の頭の良さには脱帽だけどよ、もう塾にオレはいねーんだから、

二度とこんなことすんじゃねーぞ? 分かったか?」




”もう塾に河村氏はいない”

そのことが、雪の心に実感として響いた。心の中に空いた穴から、ヒュウヒュウと風が吹き込んでくる。

雪は俯きながら、口を開いた。

「‥河村氏、本当にこのまま行っちゃうんですか?」



雪の脳裏に、塾での風景の数々が思い浮かんだ。

そのどの場面にも、河村氏の姿はあった。

 

 

彼は時に憎らしかったが、時に頼もしかった。

いつの間にか雪にとって亮は、居て当たり前の存在になっていた‥。


「本当に明日からいなくなっちゃうんですか?」

 

淋しげにそう問う雪の表情を見て、亮まで彼女の気分が移って微妙な気持ちになった。

頭を掻きながら問いに答える。

「まぁ‥いなくなるしかねーんじゃん?辞めて切られての2連打コンボだしな」



雪は「これからどこへ行くのか」と亮に尋ねた。この近所で仕事を探すのかと。

亮は「まだ分からない」と答えた。元々引っ越しもするつもりで、この地域から出て行くのは確実だと。

とりあえず塾を辞めるのは決定事項、と亮が言うと、雪は寂しそうに頷いた。



そんな彼女を見て、亮はいつもの調子で彼女をからかう。

「おいおいどーしたよ、寂しくなっちゃった?パーフェクト河村氏がいなくなるのが‥」



いつもなら声を荒らげて反論する雪だが、今の彼女は素直に頷いた。

眉を下げて俯く雪を目の前にして、亮の心が軽く騒ぐ。



亮はわざと明るい笑顔を浮かべると、俯く雪に笑いかけた。

「どーした?子供みてぇに‥。人間はなぁ、本来出会いと別れを繰り返して生きる生き物なわけよ。

永遠の関係なんてのは存在しねーんだ。な?」




まるで小さな子どもに言い聞かせるように諭す亮に、雪は正直な気持ちを口に出した。

「それでもこういう形で終わりだなんて‥。何だか後味悪くって‥」



そう言って俯く雪に、暫し亮はどう言葉を掛けようか思案していたが、

不意に思いついた提案を、彼女に向かって口に出した。

「ならこうしようぜ。引っ越し前まではケー番変えねーから、先にお前が連絡するかオレが連絡するかでどーよ?」



続けて亮は、そんなに別れが惜しければ今までの恩を返しやがれと言って、意地悪く笑った。

別れの瞬間までもいつも通りの彼。そんな日常が今日ここで終わるということが、雪は寂しかった。



そんな雪の表情を見て、亮はフッと笑った。

そしてキャップを取り出してそれを被ると、「じゃあな」と最後に声を掛ける。



さようなら、と言う雪の方を見て、亮は笑った。

親しみを感じるその笑みを、彼女に向ける。



亮は雪に背を向けると、そのまま歩いて行ってしまった。

その後ろ姿を見て、雪は心の襞をめくる風を感じた。

また、去って行ってしまう



心の中に、呟きが落ちる。

それは風の出入口に、ひっそりと吸い込まれていく。

みゆきちゃんも、河村氏も、私の前からいなくなってしまった。

人と人との関係はいつだって、こんな風に曖昧にぼやけていってしまう




まさに、心の中にぽっかりと穴が空く、という感じだった。

脳裏には亮の姿が浮かぶ。

第一印象は最悪だったけど、気楽に話せる数少ない相手だったのに‥



人一倍気ぃ遣いの雪が、気楽に話せる相手‥。

萌奈、聡美‥それは数えるほどしかいないが、その内の一人に、いつのまにか亮はなっていた。

元々狭い人間関係が、もっと狭くなっていく感じ‥。

それに漠然とした不安を覚える




出会って、会話して、分かり合って、信頼する‥。

人との関係を育むのは時間がかかるのに、別れはこんなにもあっけなく、そして予想外にやって来る。

不器用な雪にとって出会いと別れというものは、本当に一筋縄ではいかないことだ。








塾から出た雪は、聡美と電話しながら夜の街を歩いた。



塾は辞めないよ、と雪は聡美に言った。試験を受けて成績が出たら、約束していた旅行に行こうね、とも。

ひと通り聡美への報告が済むと、今度は先輩に電話をかけた。今日の出来事を説明する。



彼女を心配してくれる、彼女の周りの人達。

雪は彼らに丁寧に語り、誠実に向き合った。手の届くところしか人間関係が築けない彼女の、それは精一杯の思いやりだった。



彼女の声が、街の喧噪に溶けていく。

ネオンの光でぼんやりと明るい都会の夜空に、それは柔らかく吸い込まれていく‥。








翌朝、SKK学院塾の前で男の絶叫が響いた。

「クソッたれ!亮の奴一体いつ辞めやがった?!」



亮の元職場の社長が、塾を訪れたのである。亮の退職を聞いた後、カンカンで塾の前の通りを歩く。

前もって自分が来ることを知っていたんじゃないか、とこぼす社長に、亮に社長の上京を知らせた張本人は顔面蒼白だ。



もう都内にはいないんじゃないですかね、と元同僚の男が社長に言うと、社長は拳を固めた。

俺を侮辱しやがって‥とメラメラ炎を燃やす社長の後ろで、元同僚が息を飲む。



しかしこれ以上亮を追う手掛かりもないということで、とりあえず二人はこの場を後にすることになった。

いつか絶対捕まえる、と意気込む社長は、さしずめルパンを追う銭形といったところか‥。



そして事態は収拾し、これにて一件落着だ。

寂しさを感じようとも危機を逃れようとも、誰の身の上にも出会いと別れは繰り返し、陽はまた昇るを繰り返す‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼とのさよなら>でした。

亮が塾を辞めてしまった~(T T)あのモップを掛ける姿、好きだったとです‥。

しかし人間関係における亮の哲学といいますか、すごく悟ってますよね、彼。一匹狼気質なんだなぁと感じます。

素直な雪ちゃんも何だか可愛い、別れは寂しいけれどどこか好きな回でした。

あ~ついに記事も今週の日本語版まで追いついてきましたね‥あと僅かで追い抜きます‥T T 不安‥。


次回は<男の不審点>です。


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決着

2014-01-16 01:00:00 | 雪3年2部(同僚上京~亮塾辞職)


廊下にて大立ち回りを演じた雪と亮、そして金髪男とその仲間達。

後ほど彼らは塾長室へと連れられ、塾長のデスクの前に座らされた。

まず塾長は、亮に対しての解雇処分を口にした。

「君クビね」                  「はい。分かってマス」



それを聞いた金髪男は、腫れた頬をニヤリと歪めて笑った。

隣に座っている彼の友人は、まだ亮に対してビビり気味だ。



そんな男を指さして、亮は無言の重圧を加えた。

テメーもこいつに手ぇ出そうとしたじゃねーかテメーもクビだコラァ


亮のメッセージを受けた男は、カッと逆上して声を上げた。

「てめーは外で大人しく待ってろ!逃げれば即警察に通報するからな!」



みなまで聞く前に亮は部屋を出て行った。

そして塾長が口を開くやいなや、それにかぶせるように男は雪を指さしながら吠えた。

「こいつが先に手を出して来たんス!俺は悪くないっスからね?!

この女、マジでイカれちまってんスよ!!」




そう言われて、雪は口を結んで沈黙した。勿論心外な言われようだが、自分がこの事件の発端であることは間違いない。

すると雪と男の後ろにあるドアが少し開き、そこから講師達がひょっこりと顔を出した。

「ちょっと待って下さい。事情はよく分からんが‥

赤山君は私が名前を覚えるくらい真面目で良い学生ですよ‥」




「Yes,She is a very good student,very nice ,beautiful, gorgeous, good good good good and..」

講師達は僅かな隙間から顔を出し、各々の意見を口にした。縦に並んだ彼らの顔は、さしずめトーテムポールのようである。

その中の外国人講師の一人は、金髪男の顔を見てカタコトながら声を荒げた。

「あのガクセはワタシタチのコトバカにしてイマス!ジュクチョサン、あのヒトクビにしてくだサイ!」



塾長はとりあえず騒がしい講師達を宥め、扉を閉めるよう促した。

静かになった室内に、雪と男の溜息が浮かぶ。



とにかく何か弁明をしようと、雪が口を開きかけた時だった。

塾長は雪の前でへりくだるような笑みを浮かべ、彼女のご機嫌をとりはじめたのだ。

「あなた大丈夫ですか?驚いたでしょう。

うちの大事な女学生がこんな目に合ってどうすればいいのか‥。本当に申し訳ないですよ」




雪は予想外の塾長の反応に、ただ頷くしかなかった。

そして予想外という点では隣の男にとっても同じである。そして次の瞬間塾長は、もっと予想外の態度を男に取ることになる。

「そして‥君達がおかしな噂を流して最近塾の雰囲気を悪くしているという子達かね?

この頃私の耳にもチラホラ情報がね‥そうか君達か‥」




先ほどの雪へのそれとは180度違う塾長の態度に、男たちは思わずたじろいだ。

「残りの授業料は返金するから、申し訳ないが他の塾に移ってもらえるかな」



「何で俺が‥!」と男は反射的に声を上げたが、

続けて仲間の「いいよもう、行こうぜ。恥ずかしくてどうせもうここには通えないし」という言葉に何も言えなくなり沈黙した。



こんなとこ頼まれてもいてやるかと、男は捨て台詞を吐いて部屋から出て行った。

慌ててその友人が彼の後を追いかける‥。



雪はそのまま暫し呆然としていた。一体何が起こっているというのか‥。

すると口が開きっぱなしの雪の背後から、塾長がぬっと現れて彼女に声を掛けた。

「気分を害したでしょう‥。私が代わりに謝りますから、どうかご勘弁を‥」



尚もへりくだってくる塾長に、雪は「そんなに言って頂かなくても‥」とタジタジだ。

塾長は雪に、この塾で起こった問題はこれで全て解決したと伝えておいてくれと伝言を託した。

「青田会長の息子さんに、よろしくお伝え下さいね」



それきり雪は塾長室を出た。

後ろ手に戸を閉めながら、塾長から言われた言葉の意味を反芻する。

‥先輩が‥



会長の息子、という立場の彼の存在が、間接的に今回の事件をまとめたようなものだった。

塾長への情報提供‥。そこに彼の影を色濃く感じる。

これでよかったのだろうか‥?

だけど‥



鷹の目のように鋭い視線で事の審議をはかる雪だが、結果的にあの金髪男はどうなったかというと‥。

今回の受講申請はミスれないと言っていた男が、最終的に亮の一撃で吹っ飛んで行った‥。

 

暴力は良くないと日頃から思っている雪だが、今回の事件では亮のお陰で胸をすくような思いがした。

今回ばかりは感謝だと亮に思いを馳せた時、ふと思いついた。

それより河村氏はどこ行ったんだろ‥。本当に警察に行くなら私も一緒に行って証言しなきゃ‥



雪は心の中で呟きながら、亮の姿を探して廊下を歩いた。

近頃は”警察”というワードがまるで親しい友人のように身近に感じる‥。雪は苦い顔をして一人歩いていた。



すると前から、見覚えのある彼女が歩いてくるのが目に入った。

近藤みゆきだった。



雪はみゆきに気がつくと、足を止めて彼女の前で立ち止まった。

そんな雪にみゆきも気がついて、二人は暫し沈黙した。



みゆきは雪の顔を見て、哀しいとも傷ついたとも言いがたい表情をした。



やがて目を逸らすと、

俯いたまま雪の横を通り過ぎ、そのまま小走りで行ってしまった。



雪もみゆきが通り過ぎるのと同時に、彼女と逆方向に歩き出した。

ぽっかりと空いた心の穴に、ひっそりとした内省が浮かぶ。

正直に言えば、みゆきちゃんのこと初めは苦手だった



雪の脳裏に、みゆきと過ごした時間の記憶が思い浮かんでくる。

けどどんな服を着ようと、誰と付き合おうと、人に迷惑掛けなければ全然いいと思ってた



瞼の裏に、気安そうに笑うみゆきの笑顔が浮かぶ。

深く知るほど素直でいい子だと思えたし、実際それで好きになった。

それは今でも変わらない。けど‥




他人から陰口を叩かれているみゆきの外面ではなく内面を、雪は好きだと思っていた。

けれど心の中に抜けない刺がある。そこに触れると、チクリと痛む鋭利な刺が。

けど‥こんなにも私が腹を立てている理由は‥



先日廊下でみゆきと言い争った時の場面がフラッシュバックする。

雪は目の前にいるのに、どこか遠くのものを真実と錯覚したみゆきの態度が蘇る。

一緒にいるメリットもないでしょ?もうあたしたちもう話すのやめよ



それこそが、雪がみゆきに対して絶望したことだった。

私の悪い噂が流れた時、すぐに関係を切ってしまったあの子の態度




もし聡美なら‥、もし萌奈なら‥、と雪は想像してみた。

きっと血相変えて男のところへ殴りこんで、ボコボコにしてくれるだろう。



そしてもし自分がみゆきの立場だったとしても、

男に食って掛かっただろう。




けれど、と雪は思う。


みゆきちゃんにもみゆきちゃんの考えがあるだろうし、私も私で面倒なことに巻き込まれるのが嫌で、

みゆきちゃんの噂から目を逸らしたまま過ごした‥





逆方向に歩いて行く雪とみゆきの間の距離が、だんだんと開いていく。


私もあの子も、互いのことを責められない。

過ちを追及することも出来ないし、自分の考えを押し付けることも出来ない




物理的にも精神的にも、二人の距離は明白に開いていく。

雪の心に、結論が浮かんだ。


寂しくて色彩の乏しい、けれど明白でどうしようもない真実が。

結局私達の関係は、この程度だったということ




今回の事件も近藤みゆきとの関係も、これにて一件落着した。

どこか腑に落ちない決着であろうとも、真実は残酷なほどに結論を定めてくる。





もう廊下には誰も居なかった。

元々何も無かったかのように、しんとした静寂がそこに広がっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<決着>でした。

なんかこのコマのみゆきちゃん‥



急激に太ってません?!こんな丸かったでしたっけ?!

↓前日はくびれてたのに‥。




さて、次回は<彼とのさよなら>です。

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追撃

2014-01-15 01:00:00 | 雪3年2部(同僚上京~亮塾辞職)
男の方を向いて、雪は顔を上げた。瞳の中に固い決意が燃えている。

雪は男を見据えると、強い口調で一言発した。

「幼稚過ぎて聞いていられないわ」



今まで沈黙し、どちらかというと落ち込んで見えた雪がそう言ったことで、男は目を見開いた。

口ごもる男に向かって、雪は言葉を続ける。

「素直にこう言ったらどうですか?

A大生の私にB大生の自分がフラれたから、プライドが傷つけられたって




「はぁ?!」と男は素っ頓狂な声を上げた。

動揺する男に向かって雪は続ける。

「それに教務室を変な場所だと勘違いしてません?私はただ質問しに行ってるだけですけど。

あ‥だからあなたは行かないんですか?変な想像されると思って」




雪はそれとなく男の不勉強を責めるようにも言葉を紡いだ。ギャラリーの学生たちは男を見て嗤っている。

廊下を見回すと女子学生も沢山いる。雪はそれも利用してこうも言った。

「女子学生は英語塾に外国人講師を目当てに通っていると考えてます?

講師と少しでも仲良くなったらすぐに付き合うとでも?男性と二人きりでいるだけですぐに不埒な目で見るんですね」




計算通り周りの女子学生達は、雪の言葉を受けて男を指さして顔をしかめた。

雪は相手が一番堪えるところに向けて言葉を続けた。それは急所を突くナイフのように男を攻撃し、返す言葉すら許さない。

「本当に低俗すぎて相手にしていられないんですけど。

頭の中そういうことばっかりなんでしょうね。これからB大生だって言わない方がいいですよ。大学の名前に泥塗るし」




雪は最後に彼のコンプレックスを突いた。B大よりレベルの高いA大生の雪が言うことで、それは尚の事意味を持った。

「他のB大生が可哀想だわ」



雪のその台詞を聞いて、とうとう男がブチ切れた。乱暴に雪の胸ぐらを掴むと、凄い形相で声を上げた。

「この野郎ーー!!!」



きゃあッ、と周りから声が上がる。

男は「バカにしやがって」と言いながら、掴んだ胸ぐらを自分の方へ寄せ拳を固めた。



怒れる男、青ざめる雪、騒然とするギャラリー。

そんな中、咄嗟に二人の間に近藤みゆきが駆け寄った。

「やめ‥!」



しかしみゆきの手が伸びるより先に、男の拳が雪に向かって振るわれた。

「死にてーか?!」



雪は思わず目を閉じた。そして本能的に拳を握ると、男に向かってがむしゃらにそれを突き出した。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」



バキッ!と、雪の右カウンターが男の頬にヒットした。

殴られた男も殴った雪も、そしてそれを見ていたギャラリーも、一瞬何が起こったか理解できなかった。



駆け寄ろうとしたみゆきも手を伸ばした格好のまま固まっていた。

しかし一番予想外だったのは雪のようだ。

震える自分の拳を見ながら、む‥無意識に‥と心の中で思う。



男は頬を押さえながら座り込んでおり、仲間たちが彼を取り囲んで声を掛けた。

女のくせにすげー力、お前大丈夫か歯は折れてねーかなど、その声はざわめく喧噪に溶けるようだ。



雪はとんでもないことになった、と心は動揺していたが、弱みを握られないようわざと険しい顔をして言った。

「そっちが先に殴ろうとしてきたから。正当防衛です」



最悪殴られるかもしれないと、雪は多少覚悟はしてきたつもりだった。まさか自分が手を出すことになるとは思わなかったが‥。

しかし雪のその言葉が、男に更なる火をつけた。

「このクソ女‥!」



男は止めようとする仲間たちを振り払い、雪を追いかけて再び拳を握った。

雪は両手で頭と顔をガードしつつも、今度こそ殴られると思い身を固める。

もうダメだ、と思った矢先、背中に大きな掌が触れた。



あ、と雪の口から小さく声が漏れる。

背中に触れた手は雪の背中を押し、そこに振るわれた男の拳が、河村亮の頬にヒットした。



思わぬ展開。

雪は目を丸くし、男は顔を青くした。



そして三人はそのまま暫し固まった。亮から押された雪だけが、オットットとたたらを踏む。



やがて雪は足がもつれてその場に座り込んだ。

トーマス?!と男は上ずった声で彼の名を呼び、俯いた亮は低い声で口を開く。

「‥偶然通りがかっただけだってのに‥」



亮は微かに震えながら、視線を漂わせて言葉を続けた。若干声も震えている。

「何で‥突然‥」



どこか哀しそうな亮の台詞。それは勿論お芝居だ。

「突然降りかかる‥オレの生命に対する‥」



哀しさの芝居は徐々に怒りのそれへと変わっていき、演技がだんだん本気へとシフトしていった。

尋常じゃない眼差しを向けられた男は身を竦め、そこに亮の拳が唸った。

「その危機、どんだけ~~~~?!!」



亮は全身の力を乗せて、渾身の左ストレートをお見舞いした。

その威力たるや、殴られた男が床をゴロゴロと転がるほどであった。



男の仲間達は彼に駆け寄り、亮を非難した。

雪も予想外の展開に口が開きっぱなしだ。



しかし亮はまるで気にしない素振りで目を閉じ、独りごちている。

「世の中は覗きからくり、カオスのるつぼ‥ってね‥」



亮は有名な演歌の歌詞を引用した。

インテリっぽい仕草で憂う亮を見て、雪が苦い顔をする‥。



殴られた男は未だ痛みに震えて顔も上げられずにいた。彼の仲間達が亮に向かって声を荒げる。

「講師が生徒殴っていいと思ってんのか?!クビになりてーのかよ?!」



切り札にも似た彼らの脅迫も、亮には何の意味も持たなかった。

「あ、オレどうせもう辞めようと思ってたから」



あっけらかんとした亮の態度に男は歯噛みしキャンキャンと吠えた。

「クッソ‥!俺の女に手出すなってか?!前に違う奴もそうやってぶん殴ってたよな?!」



男の”俺の女”に亮は疑問符を飛ばす。「あいつ何言ってんだ?」 「さぁ‥」

「やっぱ似た者同士だな!どうせ自分の国で就職出来なくてこっちに来たんだろ?!」



男の”自分の国”に亮はまた疑問符を飛ばす。「オレここが自分の国だけど?あいつ何言ってんだ?」 「さぁ‥」

あっけらかんとした亮と雪に男は苛立ち、脅迫めいた暴言を再び続けた。

「お前ら二人俺に一発ずつかましたんだからな?!二人まとめて警察に通報‥」



男の言葉を受けて、亮はニッコリと微笑んで頷いた。

そして男を見据えて口元だけ笑った。目は据わっている。

「ああ。通報でも何でもしろこのヤロー」



その目つきの恐ろしさに、男も仲間達も身を竦めた。

あんぐりと口を開けたまま顔面蒼白する。



亮は表情を変えないままゆっくりと男に近づいた。高身長の亮が、座り込んで萎縮した男を俯瞰する。

「どうせ警察行くんなら、もっと痛い目見とくか?」



「オレまだまだ物足んねーんだわ‥」

バキバキと指の関節を鳴らしながら近付く亮を見て、男は悲鳴を上げた。

男を庇う仲間達、亮を必死に止める雪‥。



廊下はそのまま暫し騒然としていた。

やがて彼らは塾の責任者に呼ばれ、すごすごと塾長室へと入って行った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<追撃>でした。

いや~やってくれましたね雪ちゃん。理路整然と真っ直ぐに相手を責めるのは、和美の時を彷彿とさせました。

 

なんとなく似ている二つのカット↑

ただこうすると相手は居直るかキレるかしかないんですよね‥。

和美は前者、今回の男は後者です。

しかし亮がいてくれてよかったですね~。困ったときに現れては助けてくれる亮。太一に次ぐヒーローですな。

亮が口にした「世の中は覗きからくり、カオスのるつぼ」というのはこの歌の詞です。

シンシネ-セサウン ヨギジョン  


韓国の演歌、トロットだそうで。

う~ん昭和を感じさせますね。

次回は<決着>です。

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追及

2014-01-14 01:00:00 | 雪3年2部(同僚上京~亮塾辞職)
雪は一人、塾の廊下を歩いていた。

何かを決意した時特有の表情をしている。



去年の夏休み明けもそうだった。

両の拳を握りしめ、覚悟を決めて口を真一文字に結んだこの表情。



あの時の対象は青田先輩だった。

今回の対象者は‥。



雪は鷹のような目でその男を見据える。

真っ直ぐな芯の強さが彼女を支えていた。


「お前夏休み終わっても塾通うの?」 

「おお。前回受講申請しそびれた講座があってよー。今回は絶対ミスれねー」



男達は軽い調子で談笑していた。勉強したくねーと言ってケラケラと笑い合う。

そんな彼らに向かって、「あの」と雪が声を掛ける。金髪の男が彼女の方に振り向く。



話があるんですけど、と言って雪は男の真正面に立った。

男はヘラヘラと笑いながら応じる。そんな男を見据えながら、雪は単刀直入に切り出した。

「昨日私の友達と問題を起こされましたよね?」



雪の切り出しに、男は周りの仲間達と共にニヤニヤと笑って言った。

「あ~そのことね。昨日?問題?‥いやいや問題ありすぎっしょ」



そう言って男はヤレヤレといった仕草で、首を横に振りながら話始めた。

「いきなり走って来たと思いきや、何の罪もない俺の頬をバチン!だぜ?

あんたの友達ちょっとおかしいんじゃねーの?」




男は静聴する雪に向かって問うた。

A大という名門大に通う雪が、みゆきのようなおかしな女とどうして友達なんかやってるのかと。

あんなおかしな女は相手にすべきじゃない、と言いかけた男に向かって、雪は話を遮るように口を開いた。

「”何の罪もない俺”? デマの根源地じゃなくてですか」



急所を突いた雪の攻撃に、男の表情が変わった。

畳み掛けるように雪は続ける。

「あなたが私の友達に陰口を叩いていたのは前から知っていたし、

私についても何かコソコソ噂してるのも分かってます」




雪の追求は不器用な程真っ直ぐだ。

男の後ろにいる彼の仲間達は、雪の方を見て顔を顰めている。

そして男も雪に向かって、言い聞かせるように自分の意見を述べる。

「いやその‥あのさぁ、みんな他の子見てアレコレ言うもんでしょ?

あの子はキレイだとか他の子はどうだとか‥。んなことにいちいち因縁つけてたら世の中渡っていけねーよ?

あんたそんなことも分かんない年齢じゃないっしょ?」




男は仲間の方に向き直り、噂を流したら罪になって捕まりでもすんのか?と言って嗤った。

そんな男に向かって、雪は怯むこと無く追及を続けた。

「そんなあなたは名前も知らない子の品評会がそんなに楽しいですか?」



男は「はぁ?何言って‥」と言って眉根を寄せた。

塾の廊下で、衆人環視の中で、雪は敢えて皆に聞こえるように言い切った。

「あの子は援交してる、この子は外国人講師に尻尾を振る、なんて噂をみんなが流すですって?」



男の顔がみるみる青くなっていく。

雪が全てを知っているということに対して、周りの人達に全てを暴露されたことに対して。

「この塾であなたの他に誰がそんなことを言っているんですか?詳しく教えて下さいます?」



周りの人達、特に女子学生達は彼の方を見ながらヒソヒソと何やら噂を始める。

その中には近藤みゆきの姿もあった。二人の対決を前にして目を見開いている。



雪は尚も言葉を続けた。射るような視線で彼を見据える。

「A大がB大がって大学の名前を出して人を判断する前に、まずは自分の言動を慎重に省みたらいかがです?」



「証拠もないのにあることないこと言ってると、結局自分に返ってきますよ」

「そんなことも分からない年齢じゃないでしょ?」



彼女は先ほど彼から発せられた台詞をそのまま彼に切り返した。

因果応報にも似た彼女の追及は、どこか淳に似ている。



しかし淳と違うのは、男に反論の余地と逆上の環境を与えているところだった。案の定男は雪に向かってキレ始めた。

「お前一体何様なんだよ!俺に説教しようってのか?!そもそも証拠ならあるっつーの!!」



そして男は雪を嘲り始めた。

雪のことを、A大生のくせにみゆきと一緒になって男に尻尾を振るビッチだと。口元がニヤリと歪む。

「あ、違ったか。A大生だからレベル高い外国人講師しか相手にしないんだよな?

あのだらしねー女とつるんで毎日教員室までセコセコ通って、外国人講師達に尻尾振ってんだろ?」




「それが何よりの証拠だよ。分かりきってることだろ?」

男は雪に対して抱いているイメージ、”外国人贔屓”というところを特に罵倒した。

自国の男には見向きもせず外国人講師に色目を使い、特にトーマスには積極的だと嘲笑する。



男は普段目にする、亮と雪の真似をした。ダメージヘアーと呼ぶ亮と、それを嫌がる雪のやり取りだ。

周りの仲間達は男のモノマネに爆笑した。耳障りな声が廊下に響く。



尚も続く男の寸劇を前にして、雪はただその場に立ち尽くしていた。

しかしショックで何も言えないのではない。

雪は、男と自分の間に何か一枚透明なフィルターが挟んであるかのような隔たりを感じていた。

この人は一体何が不満なんだろう



それは雪にとってこの男が、理解の範疇を超える存在だからだ。

頭の中で、この男の持つ特性に近い言葉を探しあぐねる。

自分の大学に対するプライドとコンプレックス? 近藤みゆきに対する嫌悪感?

私に相手にされなかった不快感? 外国人に対する根拠の無い自己恥辱感?




様々な憶測が浮かんでは消える。

しかし雪はもう分かっていた。そういう明確な理由があるわけではないということに。

‥違う。この人は、ただ楽しんでいるだけだ。



雪は自分でも驚く程冷静にこの男の分析をした。尚も”トーマスと雪”をからかってくる男の言葉など微塵も耳に入らなかった。

目的も無く、適当にターゲットを決めて根拠の無い噂話を作り出しているだけだ。

ただ嫌いだから。それが面白いから。




雪の脳裏に、今まで生きてきた中で同じようなケースを目にしたことがあったとその記憶を辿る。

ヒソヒソと噂を流される対象者、下を向いて涙する姿‥。



今まで傍観していた雪だが今回初めてその対象になって、あの時涙を拭いていた彼女の気持ちが分かったような気がした。

鼓膜の内側に、聞こえて来る声があった。昨夜雪の隣で語られた、彼の言葉だ。

打ち勝つには、誰より毅然と賢明にね



雪は心の中で、彼に話しかけるように自分の気持ちを述べた。

‥分かってます。

どうすれば賢明になれるのかは分からないけれど‥




俯いた雪の瞳の中に、固い決意が滲んで燃えた。

私もこのまま黙ってやられるばかりじゃないです



握った拳に力が入った。

雪の更なる追及が始まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<追及>でした。

雪ちゃんの反撃が始まりましたねー。正面切って行くところに彼女の真っ直ぐさを感じます。

けど同じ台詞でやりこめるところなんかは先輩を彷彿とさせますね~。

次回も続きます<追撃>です。


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同じ屋根の下で(4)ー二度目の問いー

2014-01-13 01:00:00 | 雪3年2部(同僚上京~亮塾辞職)


それきり二人は黙りこんで、並んで座りながら時を過ごした。

外の喧噪は既に静まり、季節の終わりに鳴くセミの声が遠くに聞こえる。



雪はチラと彼の横顔を窺った。僅かに口元に笑みを湛えた彼は、穏やかな表情をしている。

二人の間にある雰囲気と、肩がくっつきそうな程の今の彼らの距離が雪の心に、あることを聞きたい衝動を掻き立てる。



雪はしばし思案したが、やがてその質問を口にした。

「先輩は私のどこが好きなんですか?」



それは言葉は違えども、以前彼にしたことのある質問だった。

何で告白したんですか?!




少しウトウトしかけていた彼も、その一言を耳にして目を見開いた。



少し唇を尖らせながら、雪は言葉を続ける。

「正直何で先輩が告白してきたのか本当に信じられなくて‥。

元々親しくもなかったじゃないですか」




雪の言葉に、淳は幾分自虐的なトーンで

「まぁ‥そうだよね」と言って頷いて見せた。



そんな彼を見て、雪はウリウリと肘で小突きながら話し続ける。

「お?認めるんですね?」 

「はは‥それはお互い様だろ?雪ちゃんも俺のこと好きじゃなかったでしょ?」



「やっぱりお互い嫌い合ってましたよね」

雪は微妙な感情を抱えて頭を掻いた。思い出すのは、先学期始まってばかりの頃のことだ。

「そんな関係だったのに、いきなりご飯行こうとか言われて‥。あの時どれだけ驚いたか」



雪の話に、淳もあの時のことを思い出して吹き出した。

「そうそう。あの時の雪ちゃんの顔ったら‥ぷはは!」



青筋を立てる雪が続けて問う。「一体いつから気持ちが変わったんですか?」と。

そう問われて、淳は思い出を巡らすように天を煽いだ。どこか懐かしむような口調で話を始める。



「そうだなぁ‥大学で君の姿をいつも目にして‥。

いつからか嫌いだった君の行動や言動が嫌じゃなくなって‥。見てるとどこか仕草も面白くて」




淳の脳裏に、あの頃の雪の姿が浮かんだ。彼女との初対面から持っていた、嫌悪を孕んだあの感情。

それから嫌悪感は悪感情に変わり、彼女の何もかもが気に障る時期もあった。



けれど数々の出来事を経て、悪感情のもたらす関心はだんだんと良いものへ変わっていき、

気がつけばいつも彼女の姿を目で追っていた。



彼女の印象の変遷を口にする彼は、懐かしむような表情をしていた。

「そんな姿を見ているうちにかな‥」



心の中に芽生えた彼女への感情をそっと眺めるように、その視線は優しかった。

そんな彼を眺めている彼女に、淳は聞き返した。その頭を、彼女の小さな肩に乗せながら。

「雪ちゃんはどう? 前よりは好きになった?彼氏として」



言葉は違えども、彼の問いも二度目のそれだった。

それじゃあ俺はどうだった?前より良くなった?




雪の左肩に、彼の重さを感じる。温かさも、その息遣いも。

イメージや思い込みで作り出していた虚像とは、それは真逆にあるものだ。

「‥はい」



彼女の肩に凭れたまま、彼は小さく笑った。

雪も彼の頭に頭をもたげると、二人の距離がもっと縮まる。

うん。確実に彼氏としては。

そしてそれ以上は、これから彼の傍で過ごしながら知っていくのも、きっと悪くない






これは好きだということなんだろう





雪の心の中に、気づかない内に芽吹いた新芽が揺れていた。

やがて花をつける前の柔らかなその二つの葉は、まるで肩を寄せ合う彼らのようだ。


今夜二人は、互いに二度目の質問をし合った。

一度目は戸惑い、言葉に詰まっていた彼らの答えは、

 

時を経てこんなにも互いの心に正直に寄り添い、近づいたものとなった。

 

そしてきっとこれから育っていくその新芽に希望を乗せて、雪と淳は目を閉じた。

窓の外では満月が夜空を照らしている。

その柔らかな光が、彼らを導く光明のように仄かに灯る‥。










朝日が昇った後の、爽やかな空気に鳥のさえずりが響く。

一夜を超えた雪と淳は未だに眠りの中にいた。スヤスヤと寝息を立てる彼女と、若干寝苦しそうな彼‥。



突然ガチャッと玄関のドアが開き、朝帰りの蓮が帰ってきた。

「姉ちゃんただい‥」



いきなり目に入ってきた光景に、蓮は驚愕の叫びを上げた。

「どぅわぁぁぁぁぁ!!!」



その叫びでバタバタと鳥は飛び去って行った。

この後も一騒動だが、三人はなんだかんだ笑いながらその時間を過ごした。





暗い闇にくすぶっていた気持ちが、朝日の光で照らされる。

いつしか夜は明け、誰の身の上にも等しく朝はやって来る‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<同じ屋根の下ー二度目の問いー>でした。

振り返って見てみると二人の距離も縮まりましたね‥。

お互いの心にあった相手への不信が、こんなにも無くなっていたのですね‥なんだか感慨深いです。

しかし最後のグルグル巻き先輩は、どうやったらああなるのか‥不思議です(^^;)

もしやあのあと先輩が雪に手を出そうとして雪の反撃に合ってグルグル巻きにされたんじゃ‥ (;´Д`)ハアハア

次回は<追及>です。

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