Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

鏡(2)

2016-11-30 01:00:00 | 雪3年4部(鏡〜露呈)


雪が起こした行動の波紋が、疎ましい人達を遠ざけて行く。

無意識と意識の狭間で嘲笑う彼女に、音も無く手が伸びた。



「どうして笑ってるの?」



雪の顔を自分の方に向けながら、眠っていたはずの淳が彼女に問うた。

雪は目を丸くしながら、不思議そうに聞き返す。

「え?」







淳は雪の顔を凝視した。けれど彼女の瞳の中に翳りはない。

雪は目をこすりながら、特に何も気に留めない素振りでこう返した。

「あ‥ウトウトしちゃった‥夢見てたみたい」

「集中出来ないんなら、もうこっち来て寝なよ」



淳からそう言われた途端、雪は一層眠気が襲って来た気がした。

ふわぁ、と大あくびをする。

「ほら、やっぱり」



淳は雪をベッドに上げ、甲斐甲斐しく彼女を寝かしつける。

「よく寝れば試験も上手く行くよ」「はい‥」

「ほらもっと内側入って。電気消すよ。布団も掛けてな」








雪は柔らかな枕に顔を埋めながら、うつ伏せの体勢で横になった。

隣には淳が居る。



暗くなった室内。

まだ闇に目が慣れていないせいか、彼の笑った口元がぼんやりと見えるだけだ。






淳は雪に布団を掛け、彼女の頭を優しく撫でた。

雪はその心地良さに瞼を閉じながら、小さな声でこんなことを話し始める。

「実は‥私最近らしくないことしてるんです‥」



「らしくないこと?」

「だって‥このままじゃ直美さんに申し訳ないし‥健太先輩は許せないし‥」

「何の話?」



眠りの淵に居るせいだろうか、彼女の話は唐突すぎて淳にはすぐには分かりかねた。

けれどそんな状態だからこそ、雪は普段語らないような本音を口に出している。

「やられてばかりなのがすごく嫌だったから、

過去問泥棒を探すために皆を巻き込んで、結局直美さんを責め立てる形になっちゃったんです‥」




「それで直美さんは夜間授業の方へ移ってしまって‥」

「‥何だって?」



それは淳が初めて耳にする情報だった。彼女は話を続ける。

「だから直美さんに話したんです。

健太先輩が犯人に違いないけど、証拠が無いんだって」
「糸井に話したの?!」



「はい‥」



「‥‥‥‥」



雪の話は、少なからず淳を驚かせた。

あれほど揉め事やゴタゴタを嫌っていた彼女が、まるでそれを誘導するかのような行動を取ったからだ。

糸井直美に健太が犯人に違いないと言ったらどうなるか、今雪から簡単に話を聞いた程度でもその先は予測出来る。

「‥糸井、怒ってたろ?」「はい、すごく‥」



「そしたら健太先輩が、

直美さんから卒業試験の過去問についての情報を貰ったって言い出したんです」




「試験をダメにしようとしたんだと思います。

直美さんが黙ってるわけないと思ってましたけど、本当にそこまでするなんて‥」




雪はそこまで喋った後、一つ大きなあくびをした。

だんだんと眠りの帳が降りて行く。淳は雪を見下ろしながら、静かに彼女の話を聞き続けた。

「偶然かもしれませんけど‥」



「健太先輩も直美さんも私の望み通りになって、少し怖い気もするんですけど‥

正直、嬉しいんです」




「やられっぱなしはもう嫌だから‥」



雪は微かに目を開けながら、最後にこう言った。

瞳は既に暗闇に慣れ、深い闇を宿している。

「今は前よりもっと、先輩のことが理解出来る気がします」








光を宿さない彼女の瞳が、ゆっくりと瞼の帳を下ろして行く。

淳は彼女の傍らに座ったまま、その瞳が閉じるのをただ呆然と見つめていた。






やがて雪は眠り、静かな部屋に彼女の寝息だけが響く。



淳は彼女の肩まで布団を掛けた後、仰向けにゴロリと横になった。

そのまま、ぼんやりと白む天井を見つめる。







彼女に出会って、赤山雪という同類を見つけて、少しずつ自分は変わって来たと思った。

けれどそれは、自分だけじゃなかったのだ。



”私達は変わった”と、いつか雪が言った。

彼女に影響を受けた自分と同じ様に、彼女もまた、淳の影響を受けて変わって来ているー‥。




彼らは互いを映す鏡だった。

二人は互いに影響を及ぼし合い、その影響はさざ波のように互いに打ち寄せる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<鏡(2)>でした。

最後の雪の黒淳化!!そしてそれを見た淳の衝撃!

なんというか、私もこの流れを知った時は衝撃でした。

自分に似てくる雪を通して、淳が己の過ちや欠けた所に向き合うことになるとは。

雪が完全ダークサイドに落ちるまでに、なんとか引き戻してもらいたいですね。頑張れ白淳!!


次回は<微かな違和感>です。

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鏡(1)

2016-11-28 01:00:00 | 雪3年4部(鏡〜露呈)


その日の夜が更けても、雪はまだ淳の家に居た。

鞄からズボンを取り出し、得意気に彼に見せつける。

「ジャン!今日は着替えを持って来ました!」



「先輩のズボン、大きすぎてブカブカでしたからね」

「家には何て言って来たの?」「勿論聡美のとこ泊まるって言ってあります」



ククク‥と二人は肩を揺らして笑い合った。

今日雪は、淳の家に泊まるつもりでここに来ていたのだった。






マグカップに注がれた温かい飲み物を飲みながら、ベッドサイドに座った雪が言った。

「授業一つ切りました」







淳はベッドにうつ伏せで寝転びながら、そんな彼女の話を聞いている。

「本当?」

「友達も一人縁を切りました」



淳にとっては幾分予想外の、彼女の告白は続いた。

「後々どうなるか気になりはしますが、スッキリしました」

「そっか。それで?」「それで、」



「ずっと勉強ばっかりしてるの、しんどかったなって思って。

週末は絶対に一人でガリ勉するんだって思い込んでましたけど、

そんな必要ないんだって思ったら、自然と足がここに向かってました。

単位を諦めるのは良いことじゃないでしょうけど、そういうの考えるのももう止めにしようと思って」









そう話し終えた雪は、何かが吹っ切れたかのようなさっぱりとした顔をしていた。

雪は以前彼の車の助手席で未来を憂いていた時の、あの言い様のない焦燥を思い出して言葉にする。

「先輩の未来に私がいないって思って、虚しく感じたことがありました。変に焦っちゃって‥。

でも次第に、未来に対する考え方を変えてみても良いんじゃないかって思うようになったんです」




「こんな風に、ただ会いに来ればいいんですよね」



雪はそう言いながら、淳の方を見て笑った。

淳もまた微笑みながら、彼女の達した結論に同調する。

「うん、その通り」






二人は暫し見つめ合い、キスをした。

彼らは互いを映し合う鏡のように、同じ気持ちを持つ。

「俺も、」



「正直に言えば、もう亮とは完全に終わらせようって思ってたんだけど‥」



彼の口から河村氏の名前が出て来たことで、雪は若干かしこまったように「あ、ハイ」と返事をした。

けれど彼の表情は柔らかく、亮との関係を語る口調も随分と和やかだ。

「他の方法もあるんじゃないかって‥思ってみたり」







亮の話題になると嫌悪感を剥き出しにしていた昔の彼とは、比べ物にならないくらい穏やかな彼がそこに居た。

そして淳はそんな自分自身を、どこか喜んでいるように思う。

「雪ちゃんと一緒に考えて進んでたからかな。

去年の自分と今の自分を比べてみたら、俺は少しだけど変わったんじゃないかって思うよ。

変化することもあるんだなぁって‥」




「多分未来の自分も、今とは違っているんだろうね」



”人は簡単には変わらない”そう思っていた以前の彼は、彼女に出会ってゆっくりと変わって行った。

そしてようやくそこに思い至ったのだ。

彼女の中に自分と同じ面影を見つけたその日から、運命の歯車は回り始めたのだと‥。





「雪ちゃん」



優しくその髪に触れながら、淳は彼女の名を口にする。

「俺は‥」







彼らは互いを映す鏡だった。

二人は互いに影響を及ぼし合い、その影響はさざ波のように互いに打ち寄せる‥。






しんと静まる広い部屋に、彼の寝息だけが小さく聞こえる。



雪はそれを聞きながら、手元の参考書を一人読んでいた。



しかし次第に思考は過去を辿り、様々な場面が脳内で再生されて行く。


「うん、オハヨー。ちょっとどいてくれる?トイレ行くから



少しずつぎくしゃくして行った糸井直美との関係。


「マジか?!どうして無くなった?!ちゃんと探してみろ!教室で無くなったのか?!」



わざとらしく騒ぎ立てる柳瀬健太に困惑したあの時。


「典ちゃん」「キャッ」



黒木典。

この人がどう動くか、その先を予測して話し掛けた。


「逆に証拠が無いから、あの人はあんなにも堂々としていられるんです」



それと同じことを、直美に対して行った時のこと。


「不自然なほどお節介を焼いて、大きな声出してゴタゴタに発展させて‥」



出来得るだけの証拠を集めて、柳瀬健太に詰め寄った時のこと。

この後糸井直美が、健太に対して制裁を加えることになる。


「なによ‥大人でも大学生でもなく高校生よ?

父親に色々喋って何が悪いワケ?ぶっちゃけフラれた腹いせだけどぉ‥スッキリしたっつの‥」




偶然耳にした河村静香の告白。

そのチャンスを生かして、

「電算会計。サボらず学校に通って勉強して、私にチェックさせて下さい」



彼女を自分の意のままに動かした時のこと‥。


それなりの理由あってのことだ。それなりの理由が



皆自分の人生を謳歌してほしくて‥



瞼の裏に、微笑む河村氏と先輩の顔が浮かんだ。

彼らの為に自分が出来ること、それを追求し掴んだからこそ、今があるのだ‥。



だんだんと睡魔が、雪の意識を奪って行く。

浮かんで来るのは、



あれほど大きな顔をして歩いていた健太がオドオドと姿を隠すところや、



度々雪に向かって文句を口にした直美が逃げて行くところ、

そして、



河村静香との関係性の主導権を勝ち得たと、確信したところー‥。





無意識と意識の狭間で、雪は嘲笑っていた。

まるで誰かと同じ様に、打ち寄せるさざ波を見下ろしながら‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<鏡(1)>でした。

本家の題名と合わせてます。

二人のチューシーンがあるのに、なんとも不穏な雰囲気ですねー。

そして意外にも先輩、亮との関係を終わらせない方法を考えたりしていたとは‥。

このまま雪に影響を受けて淳が変わって行ってハッピーエンド‥だったら良いんですが‥。

次回<鏡(2)>に続きます。

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二人の休日

2016-11-26 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)


雪が先輩の机を借りて勉強を始めると、彼も自分の仕事を持ってやって来た。

「俺も報告書書かなきゃなんだ。一緒にやろう」



雪は微笑みながら彼の為に場所を空ける。







二人の休日。

互いの仕事に目を向けながら、二人は同じ空間で同じ空気を吸う。



閑静な彼の部屋に、パソコンのキーボードを叩く音だけが響いた。

時間は刻々と流れて行く。







雪は熱心に課題に取り組んでいたが、淳は少々退屈になってきたらしい。

頬杖をつきながら顔を上げた。



チラ、と横目で雪に視線を流すと、

彼女は相変わらずPCとにらめっこの最中だ。

難航しているのか、うむむ、と小さな声を漏らしている。



「‥‥‥‥」



淳は、そのままじっと雪のことを見つめてみた。

けれど雪は絶対にこちらを見ようとはしない。



クス、と淳は小さく笑った。

鋭敏な彼女が、見られていることに気付かないわけないのに。



今度はわざとらしく大きな音を立ててキーボードを叩いてみた。

けれど雪は眉間にしわを寄せながら、じっと自身の課題を睨み続けている。

集中







それなら、と今度は顔を覗き込んでみた。

彼女の視界に入るように身を屈める。



それでも雪は彼の方を見ようとしなかった。

少し考えがまとまったのか、PCに手を伸ばしてキーボードを叩く。



淳はテーブルに突っ伏した姿勢のまま口を開いた。

「本当に勉強だけなんだ?」






彼女からの返事は無い。

課題に没頭する雪の横顔を見ながら、淳はふっと微笑んだ。







真剣な顔をしてプリントに目を落とす雪の横顔を、淳は心地良さを感じながらずっと眺めていた。

結局雪はそのまま時計の針が十二時を指すまで、”勉強だけ”していたのだった‥。



「お昼、デリバリー頼んでもいいですか?検索しますね

「いいよ。何食べよっか」



お昼になり、二人はデリバリーを頼んで昼食を取った。

雪は慣れているが、どうやら淳は慣れていない様子‥。



「これはこうして箸を使って‥と」「おぉ」



「出来た!」



まるで初めてコンビニおにぎりを二人で食べた時のようなやり取り。

けれど二人の間には、もうその頃とは比べ物にならないくらい優しい空気が流れている。

「コップ洗いますね」

「いいよいいよ、置いといて」



「うわっこぼれた!」

「台拭き台拭き」「これだ!」



「俺やるよ」「私が!」



ビショビショになってしまった床を拭くのでさえ、二人でやれば楽しかった。

雪と淳は肩を寄せ合いながら、気の置けない者同士笑い合う。





お腹が膨れた二人は、食後の休憩にソファに座りテレビを点けた。

「映画一つだけ観ようか」



そう言って淳が選んだのは、小難しそうな戦争映画だ。

雪はその選択にぶーたれながら、彼に向かって不平を鳴らす。

「本当に趣味が合わない!」「ふーん」



ワチャワチャやっている間に、気がつけば結構な時間が経っていた。



<結局集中出来ず外出>



午後は近所のカフェで勉強し、

一段落してカフェを出る頃には、すっかり日も暮れていた。

さむっ!さむ〜〜!



「寒い〜〜〜!」



雪がそう言って震えていると、淳が温かな珈琲を淹れて彼女に差し出す。

ジャーン






二人は温かなそれを飲みながら、楽しそうに笑い合った。

勉強だけの一日。

それでも二人一緒に居れば、随分と楽しい日に変わる‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<二人の休日>でした。

なんと平和な‥。でもチートラにおける平和は嵐の前の静けさなので、ブルブルしますね

しかしあの「これはこうして箸を使って」のところ、一体何をしているのだろう‥。



*追記 コメント欄にてミロさんより↑の場面の解説いただきました〜!

ミロさんありがとうございます^^

次回は<鏡(1)>です。


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突然の訪問

2016-11-24 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)
まだ日が昇る前のほの暗い空。

鳥の声がまばらに響いていた。



そんな時刻に関わらず、雪は自室にて外出の準備を始めていた。

鞄に参考書を詰め、鏡の前で身支度を済ませて。



外に出ると冷たい空気が頬を刺し、

雪はその中をあくびを噛み殺しながら歩く。



地元の駅から乗るとほぼたいてい座れる地下鉄。

雪はその揺れに身を任せて瞼を閉じた。



目的の駅に着く頃には、太陽もすっかり空に馴染みいつもの朝の風景だった。

雪はマフラーに顔を半分以上もぐらせながら、冷たい空気の中を歩いて行く。









青田淳は突然鳴り出した携帯電話の着信音で目を覚ました。

けれどまだ早い時刻だったので、彼はなかなか覚醒出来ずに着信音は長いこと部屋に響き渡っている。



ようやく淳はベッドサイドに置かれた携帯に手を伸ばし、その画面に目を落とすと、

そこには彼女の名前がチカチカと点滅していた。

「雪ちゃ‥どうしたの‥」



「私、今先輩のマンションの下まで来てるんですけど」



寝起きの頭に、その雪の言葉は唐突に響いた。

思わずパチリと目を開ける淳。



そして数秒後、雪の携帯からは彼の素っ頓狂な叫び声と転げ落ちるような音が聞こえた。

「えっ?!」 ガタガタッ



「ちょっ‥ちょっと待って!今下開ける、うっ‥ちょ‥待っ‥」

「だ‥大丈夫ですか?」



明らかに動揺している先輩の声を聞きながら、その数秒後に開いたオートロックの扉を雪はくぐった。

エレベーターに乗り、彼の家のフロアに着くと、前まで行ってインターホンを押す。



数秒後、先ほど聞いた慌てた声そのものの先輩が出て来た。

「雪ちゃん!」






寝起きそのままの彼の姿を見つめながらその場に佇む雪と、

突然の訪問に驚きを隠せない淳。二人は互いに目を丸くしながら向かい合う。

「どうして‥」



なんだか急に力が抜けたような気分だった。雪は大きく息を吐く。

はあ‥



「ふー‥」



長く息を吐き出しながら、彼の胸に額を付ける雪。

先程まで布団に包まれていたであろう彼の胸は、とても温かだ。

淳はそんな雪を受け止めながらも、やはりまだ思考がついて行かないらしい。

「え?ええ?」

「もしかして今日、何か先約ありますか?

勝手に来ちゃったから‥」




雪は彼の動揺ぶりを、先約があって雪が来られたら困ると言う意味で受け取った。

彼が雪の訪問を断る余地を彼女は与える。

「先約があるなら、行って下さい。顔見れたし、近くのカフェで勉強すればいいんですから‥。

でももし無いなら、今日は先輩の家で試験勉強しても良いですか?」


「え?いやいや!」



淳は引き続き動揺しながら、とりあえず雪の質問に答えつつ彼女を招き入れた。

「約束なんてないよ。あ‥あってもキャンセルするし。行かなくていい、いいんだけど‥とにかく上がって」



手を引かれながら、雪は彼の家の廊下を歩いた。中を見回すと、普段通りの先輩の家だ。

先約が無いのも本当らしく、出掛ける準備も特にしていなかった。

「外寒かったろ?地下鉄で来たの?」



「朝食は食べた?あ‥家に食べ物‥家政婦さんが‥」



廊下を歩き切る間に、淳はいくつもの質問を雪に浴びせた。

雪が口を開く前に、淳は早回しのように動きながら彼女をもてなす。

「とりあえず座って。鞄貸して」



「珈琲淹れようか?えっと‥試験‥試験勉強するんだよね。

俺、机仕舞っちゃってたっけ‥ちょっと待っててな」




「あ、俺顔洗って来なきゃ‥」



くるくると動き回る彼の背中を見つめながら、雪は胸の中にこそばゆい気持ちが芽生えるのを感じた。

起き立ての部屋着で、寝癖姿で、こんな青田淳の姿を誰が見たことがあるだろう‥。







ははは、と雪は声を立てて笑いながら、テーブルの上に上半身を倒した。

突然の彼女の来訪に慌てている彼を、可愛らしく思いながら。

「大丈夫ですよ。そんなに気を遣ってくれなくても」「え?」



「あ‥」



雪からそう言われて、淳はいかに自分が動揺していたかをジワジワと思い知った。

顔も洗ってない着の身着のままの自分は、どんなにかおかしく彼女の目に映っていただろう。



淳は目尻を下げながら、そんな自分と今の状況に思わず笑ってしまった。

静かだった彼の部屋に、二人の笑い声が響き渡る‥。

「本当にビックリだよ」「ごめんなさーい」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<突然の訪問>でした。

我々は今まで、ここまで慌てた先輩を目にしたことがあっただろうか。いや、ない。(反語)

慌て淳に寝グセ淳‥。まるで早朝ドッキリでしたね。雪ちゃんGJ!

先輩だけだとアレなので、以前寝起きを訪問された亮さんの寝起きショットも載せましょう。

寝起き亮と寝起き淳
 

ごちそうさまです!

次回は<二人の休日>です。


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最善の方法

2016-11-22 01:00:00 | 雪3年4部(忠告と真実〜二人の休日)


雪はPCの画面を前にして、思わず白目を剥いていた。

教養グループ課題のグループトークには誰も現れず、

同期のグループトークにはゆりっぺからの怒りメッセージがひっきりなしに届いている。

「‥‥‥‥」



とりあえず雪はグルワの方のトークにメッセージを書き込んでみた。

雪:誰も居ないですか?

雪:他のメンバーまだ来てないですか?


メンバー1:??

雪:私達二人だけ?



同期のトークの方は、ゆりっぺのメッセージがじゃんじゃん入って来る。

ゆりっぺ:アンタにはマジでガッカリなんだけど

ゆりっぺ:合コンしてほしいってことの

ゆりっぺ:何がそんなに問題なの?

ゆりっぺ:萌菜にまで言うこと?




「‥‥‥‥」



大層な剣幕で捲し立てるゆりっぺに、雪は一言こう返した。

何も言ってないけど



課題グルワの方は、唯一現れたメンバーの一人がこう呟いていた。

メンバー1:どう考えてもうちらのグループ終わってますよね



二つのグループトークは一方はひっきりなし一方は閑古鳥で正反対の様相だったが、

そのどちらも雪にとっては益を成さないという意味では同様だ。

ゆりっぺ:同級生なんだから、これくらいのお願い聞いてくれたっていいじゃん。

一体何がいけないっていうの?


メンバー1:それじゃお開きということで



雪はただ無心で、二つのやり取りを同時に終わらせる。

ゆりっぺ:アンタの彼氏が 雪:もう連絡してこないで

メンバー1:それじゃお開きということで 雪:はい。では失礼します



バンッ!







「あースッキリした」



PCを閉じると同時に、雪は色々なものから解放された。

神経を磨り減らしてまで、繋ぎ止める意味の無いものばかりだ。

もういいや。同窓会も出なきゃいいわけだし



奨学金は‥



けれど奨学金は諦められず、せめてもの足掻きで雪はテキストに手を伸ばす。

「試験は頑張ろう‥」



さぁ集中、と思った矢先に携帯電話が震え、

雪は「何よ」と呟きながら届いたメールに目を通した。

オススメ問題集、教えなさいよ



河村静香からのメール。

その内容を見て、雪は少し驚いた。

自分が持ち掛けたあの条件を、無視せずあちらからコンタクトを取ってきたのだ‥。

おお‥本気?



塾に登録したらそこで指定されるので、

それを中古サイトを見てみて下さい




「‥‥‥‥」



簡潔なメッセージを送り返し、一息つく。

自分が誘導した現状、そしてそれによって導かれる未来を思って、思わず雪は声を上げた。

「あああ!自分のことで精一杯なのに!何やってんのぉぉぉ!」



試験勉強に財務学会の課題、店の手伝いに周囲との人間関係‥。

自分の抱える様々な荷物の他に、更に手の掛かりそうな厄介事を自ら引き寄せてしまった。

けれど‥。



雪は机に突っ伏しながら、その”厄介事”について思いを巡らせる。

正しかったのかな。先輩に話もせず‥こんな風に自分勝手に‥。

いつかは話すべきなんだろうけど




でも今話したところで‥昔のことでまたストレス与えちゃうのもな‥。

新しい環境に慣れるのに大変だろうし、敢えて傷つけたくない‥




脳裏に、昨日偶然静香から聞いた”真実”が蘇った。

雪はあの時の自分の気持ちを思い出して、こう分析する。

私だってあの瞬間、怒りが湧き上がったけど



いきなり静香さんに対して私がキレたところで、

彼女の犯した間違いが消えるわけでもなく




先輩のトラウマがなくなるわけじゃない



それでも真実は誤魔化せない。

静香さんが‥今まで密告してきたことが‥先輩を‥







彼の抱える暗い闇、彼が負った深い傷の元凶は、河村氏ではなく静香の方にあった‥。

雪は自分の感情は置いておいて、その真実を客観視しながらこう思う。

先輩のための最善の方法はまだ分からないけれど、

静香さんが自立する為に私が少しでも助けになるのなら、それが最善なんじゃないかと思った




まだ道には霧がかかっていて先は見えないが、それがやがて思い描いた未来に繋がっていて欲しい。

その為には今自分が最善だと思う道を歩くしかないのだ。

険しくても、どんなに不安でも。



目の前には、やらなくてはならない勉強が山のようにあった。

雪はそれを横目で見つつ、携帯を手に取ってメールフォルダをスクロールする。



未だ返信出来ずにいる、先輩からのメールを再表示してみた。

来週は期末試験だから、今週末は会えないね。

試験頑張ってな




先輩の言う通り、今週末が山場だった。

眼前に積まれたテキストを、この週末で全て消化しなくてはならない。



けれど‥。



目の前のことしか見えなくなった時、ふと立ち止まって一歩退く。

そして周囲を見回すと、自ずと自分がすべきことが見えて来るー‥。


悟ったその考えをもう一度思い出し、今自分はどうすべきかを、雪はじっと思案していた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<最善の方法>でした。

ゆりっぺ‥ウザス‥ 

そんなに合コン開きたいなら西条和夫の繋がりで開けばいいのに‥。(ろくなメンバー集まらないと予想)


しかし雪ちゃんの黒淳化がここでも見て取れますね。

全て自分の頭の中で結論付けて動いちゃう感じ‥。

2部のレポート紛失事件発覚の際は先輩にこう言っていた雪ちゃんですが‥



相手を思いやってのこととはいえ、結果的に同じことになっちゃっているような‥?

それで自分がしんどい思いをするところは、雪ちゃんの憎めないとこですけどね‥。


次回は<突然の訪問>です。

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