Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

彼、突然の来校

2016-05-30 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)


暫し雪は授業に集中していた。

教授の話を聞き、真剣にノートを取って‥。



しかし背中に、何やら視線を感じる。



ひしひしと感じる違和感。ノートを取る手がピタッと止まった。

「‥‥‥‥」



鋭敏な彼女ならではの敏感な感覚(だてに何度もストーカーに合ってないな)

雪はそっと振り返った。



すると。



三つ程後方の席から注がれる視線、それはなんと青田淳だった。

雪は驚きのあまり、息を飲んだ拍子に机に膝をぶつけてしまう。






彼の突然の来校にオタオタと慌てる雪。

ビックリするわ膝は痛いわ‥。もう滅茶苦茶である。

だが慌てふためく雪とは対照的に、淳はニッコリと笑って彼女に手を振っている。



しかし次の瞬間雪の目に留まったのは、

包帯ぐるぐる巻きになった彼の右手だった。



「!」



雪は思わず目を丸くしながら、

ジェスチャーで淳に手のことを問う。



淳は彼女の言いたいことを察して自身の右手を見、



庇うような仕草で痛む旨を伝えた。

痛々しい怪我とは裏腹に、その仕草はどこかコミカルで仰々しい。



しかし雪は笑いもせず、ただ真っ青になってあんぐりと口を開けた。

昨日は大丈夫だと言っていたのに、どう見ても重傷ではないか‥。

「‥‥‥」






そんな雪のリアクションを見た淳は、頃合いを図って席を立った。

ボストンバッグと赤い箱を抱え、ササッとすばやく移動する。






よいしょ、と小さく声を出し、淳は雪の隣の席に着席した。

そしてニヤリと笑みを浮かべると、おどけながら挨拶を口にする。

「おはよ~ん」



彼は至って軽い調子だが、どう見てもその手は痛々しい。

近くで見れば尚の事、怪我の具合は芳しくなさそうだった。



依然として青い顔をしたままの雪は、すばやい動作でノートに文字を書き込む。

バババッ!



そしてその文章が彼に見えるよう、彼にノートを差し出した。

手、どうしてそんな状態なんですか?!

昨日は何も言ってなかったじゃないですか!






淳はそれをキョトンとした顔で見つめると、何やら嬉しそうな顔になった。

「雪ちゃんと筆談かぁ。初めてだね~!ドキドキ」と呑気なものである。



淳は雪が文章を書き込んだページの端に、左手でゆっくりと文字を書き込んで行った。

そうして書き終えたページを、雪は手元に引き寄せて読む。

重傷じゃないよ。ちょっとヒビ入ってるだけみたい。

手もこんな状態だし出席に厳しい教授だし、今日は会社には配慮してもらって、休み貰ったよ。

俺も単位取らなきゃ卒業出来ないしね




↓教授への贈答品



彼が持っていたその赤い箱は、教授へのお土産であるらしかった。

大手を振って会社を休み、この講義での単位もちゃっかり獲得するであろう彼の、余裕の笑み‥。



淳はニコニコ笑いながら、左手で雪の頭をいい子いい子した。

掛け値無しにまず淳の手を心配した心優しい彼女の頭を、淳は嬉しそうに撫でている。







雪はそんな淳の顔をじっと見つめた後、再び筆談を始めた。

「また?それでそれで?」と淳は相変わらず嬉しそうだ。



二人のやり取りは続く。

本当に大丈夫なんですか?



再び手を心配する雪に、

大丈夫だから、授業に集中してくれませんか?



おどけて敬語で返す淳。雪は更にこう続けた。

最近ずっと怪我続きだったから、

ご実家、すごく心配してるんじゃないですか?




その文章を見た後、淳はすぐには返答を書き込まなかった。

含みのある笑みを口元に浮かべながら、彼女の方をじっと見る。






一瞬の間の後、キョトンとした顔で淳を見つめる雪に向かって、淳はニッコリと笑って見せた。

彼の脳裏に、この怪我のことを報告した時の父親との会話が蘇る‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼、突然の来校>でした。

休載空けぶりの淳、登場!

イケ淳ジャケット着てますね~。



イケ淳ジャケットとは:以前亮の元職場の社長が大学に雪を探しに来ていた時にも着ていた淳のジャケット。

この後のコマの淳が近年稀に見るイケてる淳だと話題になった(当社比)





そして教授への贈答品はアリなのか‥。

なんと根回しの良い‥

↓イメージ



次回は<脱却へ>です。



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友の慟哭

2016-05-28 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)


雪は河村亮とのことを考えながら、一人教室へ向かって歩いていた。

するとその道中で、大きな声が雪に掛かる。

「雪っ!」「!」



声の主は伊吹聡美だった。

聡美は大声を上げ慟哭しながら、雪の肩に縋り始める。

「ゆきぃぃぃぃ!!」

「??!えっ?!どしたの?!アンタここで授業じゃないでしょ?!」



「ゆきぃぃぃぃ!!」「どうしたの?!何かあった?!」

「太一が‥」「太一が何?!」



そして聡美の口から語られた真実は、何も知らない雪を驚愕させた。

「う、うちら‥付き合うことになったのに‥」「へっ?!」



「軍隊に行くってぇぇぇ!」「はぁぁ?!」



聡美は涙をポロポロ零しながら、がっくりと肩を落とす。

「あたしとはもう終わったんだと思って、

ヤケクソで軍隊に申し込んだんだって‥」


「ちょ‥待って何が何だか‥」



「もう取り消しも出来ないってぇぇ‥!」



聡美の目からブワッと涙が溢れ出した。

「取り消しの期間も終わっちゃってて‥」と力なく呟く聡美に、雪は何も言葉を掛けてあげられない。



混乱の最中で、こう叫ぶのがせいぜいだった。

「な‥何がどうなっちゃってんの?!?!」



季節の移ろいと共に変化して行くそれぞれの関係。

冷たい秋風はただ静かに、彼らのその間を吹き抜けて行く‥。






次の授業が始まっても、雪は先程の衝撃から依然として立ち直れていなかった。

手元のノートには、「聡美」と「太一」の名が延々と書かれている。



先ほどの衝撃の告白の後、泣き続ける聡美を宥めるのは一苦労だった。

「雪ぃ‥あたしもうどうしたら‥」

「とりあえずアンタ授業あるんでしょ?落ち着いて、ね?

泣くの止めて、後でちゃんと話しよ。分かった?」
「ん‥」



涙ながらに唇を噛み締め、頷く聡美。

彼女が握った携帯電話が、何度も震えていた。きっと太一からなのだろう。

この二人は、一体どうなってしまうんだろう‥。



雪は後ろ髪を引かれる思いで、とりあえず授業を受けに教室へと向かった。

出席に厳しいと評判の教授の講義だ。休むことは出来なかった。

「おはようございます」「皆さんおはよう」



「授業を始めます」



痛む頭を庇いながら、教室へと入って来た教授をぼんやりと見ていた雪。

その視線の先に、先程までは確認できなかった人物の背中を見つけて目を見開く。



柳瀬健太‥。



雪の胸中がムカムカと憤る。

滑り込みで入って来たってわけね



雪から一番遠いと思われる席に、おそらくコソコソと就いたであろう健太。

苛立ちは隠せないが、とりあえず授業に集中せねばならない。

雪は目を閉じ、一度大きく深呼吸をする。



健太への対応をどうするか、未だ結論は出ていない。

無鉄砲に向かって行ったら、また思わぬ所に余波が押し寄せてしまうかもしれないから。



雪は授業に集中しようとノートを取り始めた。

頭の中には無数の考えが、次から次へと浮かんでは消えて行くけれど。



静かに授業を聴き、黙々とノートを取る。

今の場面だけ切り取れば、何てことのない日常の一片だろう。

けれど周りの環境や人間関係は常に変化し続け、それは少なからず雪に影響を与えて行く。



教授の声が広い教室に反響し、やがて消えて行った。

雪はぼやけていくその記録を、忘れないようにノートに書き留めて行く‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<友の慟哭>でした。

あちゃー‥太一‥。


クール◯コ再び‥

軍隊に申し込んだのはやけっぱちだったんですね‥。

あのピアスをお別れにしようと思っていたのかな。。うう‥(T T)
二人‥どうなるんだろう‥。

次回は<彼、突然の来校>です。

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白紙の準備

2016-05-26 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)
聡美と太一がカップル最大の危機に直面している頃、

雪は一人構内を歩いていた。



分かれ道に差し掛かった時目に入ったのは、

何度か足を運んだことのあるあの建物だ。

音大‥



雪は少し考えた後、そちらの方向へと足を伸ばす。







入り口の方へと近付いて、キョロキョロと辺りを見回す雪。

会えるわけないかと思いかけたその時‥。

「おい」



聞き覚えのある声が、後方から掛かった。

振り返ってみると、彼が立っている。



河村亮。

亮は無表情のまま、じっと雪のことを見つめている。



「河村氏‥」



雪は少しきまり悪い表情を浮かべながら、彼の名を口にした。

二人の間に沈黙が落ちる。





亮は首の後ろに手をやりながら、その大きな目をキョロッと上に動かした。

未だ黙っている雪に向かって、彼女がここに居る理由を当ててみる。

「謝んの?礼言うの?」



「あ‥どっちも‥」



そう気まずそうに口にした雪を見て、亮はふっと静かに笑った。

以前のような仏頂面でも、雪を突っぱねる態度でもない、どこかすっきりとした笑顔を浮かべて。



亮の視線は空を仰ぎ、落ち着いた口調で、雪に向かって口を開き始めた。

「いらねーよ。この前はオレも言い過ぎたし、昨日はお前んこと助けらんなかったし。

だからお前がオレに気ぃ使う必要なんて、全くねぇってこと」




亮はゆっくりと、雪の方へと視線を流す。

「だから全部忘れてくれ。最初から、何も無かったみてーにな」



「分かったな?」



亮からそう言われ、雪は言葉に詰まった。

彼が口にするその言葉の意味が、二人の間に見えない壁を作る。



秋の終わりの風が二人の間を吹き抜けて行き、鳥の鳴き声だけが辺りに響いていた。

その中で亮はただ静かに、穏やかな笑みを浮かべて佇んでいる。



彼の心の中を目で見ることは出来ないけれど、それにどうやら何かしらの折り合いが付いたことを、

無言の中で雪は感じ取った。

「‥‥‥‥」



これ以上自身が立ち入ることは出来ないのだ、と。



雪は若干わざとらしい程の声を上げ、亮の前で笑って見せた。

「いやいや~!それでも助けようとしてくれたじゃないですか!

本当にありがとうございました!あの時怒っちゃったのもとにかく‥すみませんでした!」




亮はそれをただ黙って聞いている。

雪の笑い声は、二人の間に虚しく響いて消えて行った。






雪は咳払いを二、三回した後、この場を立ち去る挨拶を口にする。

「あ‥それじゃコンクール‥の準備、頑張って下さいね。私授業行くので‥」



雪もまた、亮と同じような笑顔を浮かべた。

「頑張って下さいね」



亮は片手を上げて、彼女の笑顔に笑顔で応える。

「おう」






亮が浮かべるその笑顔を、雪は暫しじっと見つめた。

その笑顔の裏にある、何らかの決心を感じながら。



笑顔を崩さない亮の前から、

雪はやがて背を向ける。







亮は雪の背中が小さくなっても、上げた左手をそのままの状態で彼女を見送った。

彼女との関係を白紙に戻す、そのカウントダウンがだんだんと迫っている‥。



亮は音大の方へと歩き出した。

一度も彼女の方を、振り返らないまま‥。




これで充分だ



雪はだんだんと遠くなって行く彼の存在を背中に感じながら、亮のことを考えていた。

嫌だと言われたのに、家族のような付き合いを強要するのは違うし、

本人の心の整理はまだのように感じだけど、結論を下したのは確かなのだろう。

これ以上は、私も何も言うことは出来ない。




どうせ河村氏との関係が上手く行ったところで

先輩とはずっと衝突することになるだろうし‥。

二人が誤解を解いて円満な関係になることを願ったけど、

私が彼らのプライバシーに介入するのにも限界があるだろう。

ただ‥




冷たい風が頬を刺し、それは雪の心の中にもひゅるりと入り込んで来た。

河村氏との関係は、先輩に関する縁だけじゃなく、

私個人の人間関係の一つでもあったから‥。こういうぎこちない感じに慣れなくて、




ただ寂しさだけがしんしんと積もる



脳裏に浮かぶ亮の笑顔が、だんだんと霞んで行く。

「ダメージ!」



胸の中に煙る靄が彼の顔を白くぼやかし、まるで白紙の状態に戻して行くかのように感じた。

心の中に、ぽっかりと穴が開く。



ふと、雪は音大の方を振り返った。

上手くやってるなら良かった



そこにはもう誰も居ない。

河村氏がどこに行ったとしても



上手く‥行きますように



ぐらつく心に言い聞かせるように、雪はそう胸の中でひっそりと祈った。

その表情には、そこはかとなく寂しさが滲んで居たけれど‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<白紙の準備>でした。

なんとか4部35話の亮と雪の会話、記事に間に合いましたー^^

急いで訳したので、翻訳間違いあるかもしれません(汗)、あったら教えて下さいー。


着々と別れの準備をしている亮さんが切ないですね(TT)

全力で引き止め隊、集合!


次回は<友の慟哭>です。

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聞きたい言葉と聞きたくない言葉

2016-05-24 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)
翌日。



教室の中で、あの人の後ろ姿を見掛けた。



柳瀬健太。

雪は彼の背中をじっと凝視している。



誰よりも先に連絡が来るべき人からの連絡は、来なかった。



健太は若干挙動不審の体で、コソコソと席へと歩いて行った。

雪と目が合うとギクッと身を揺らし、速攻で顔を背ける。



申し訳なかったとか、大丈夫かとか。



謝罪の言葉も、気遣いの言葉も、あの時口先だけで発せられたあれだけだった。

雪が心から聞きたい言葉は、健太の口から出て来ない。

保健室に行った時も特に連絡は無かった。私が来るなって言ったわけだけど‥

先輩には個別に謝罪しただろうか?してないだろうな。




授業終わったら行ってみるか‥。






前方の席に座る健太。

出来ることならすぐにでも行って問い詰めたい気分だ。

けれどとある考えが、雪を止める。

‥いや、



今回もそうだし、英語塾の時もそうだった。



私が無鉄砲にぶつかって行ったから、

河村氏にも先輩にも結局ケガをさせて‥




雪は思う。

それって突き詰めれば、私のせいなんじゃないのか?



自分の行動のせいで誰かが怪我をすること。

それはどう考えてもよろしくない事態だった。

とりあえず、様子を見よう



雪は一旦時間を置くことに決めた。

だが、胸の中に揺蕩う靄は依然としてそのままだ。

でも様子を見てからどうするの?今回のことは‥

「ねぇ雪にうちらのこといつ言う?」「ハァ‥」「今はちょっと取り込み中だからなぁ~」



ただ水に流すってこと?



靄は胸中に広がり、先が見えない。自身が進むべき方向も、未だ曖昧なままだった‥。


そして雪がそんな考えに頭を悩ましている隣で、聡美は太一と付き合い始めたことに胸を弾ませていたが、

太一はというと‥。



幸せ顔の聡美とは対照的に、青い顔をして口を噤んでいる。

そんな太一を見て、不思議そうな顔をする聡美。

「どしたの?どっか悪いの?」「イッ‥イエ‥」



太一は怯えたようにビクッと身体を強張らせると、

口元を押さえて黙り込んだ。



そして恐る恐る、聡美に向かって話を切り出そうとする。

「あ‥あの‥聡美さん‥」



「ん?」






しかし、嬉しそうに微笑む聡美の顔を見ると、何も言えなくなってしまった。

震えながら後ろを向いて、小さな声でこう口にするのがせいぜいだ。

「あ‥後でちょっと話が‥」「??」



聡美は小首を傾げながら、不思議そうな顔をして太一を見ていた‥。





授業が終わり、学生達は皆退席の準備を始めた。

柳瀬健太はギクシャクしながら急いで立ち上がり、



目にも留まらぬ早さで教室を出て行った。



そんな健太を見て、聡美は「うーわあの人ナイわー」と顔を顰める。

雪は去って行く健太をじっと見つめていた。



このまま雪が何も言い出さなければ、健太からの謝罪は永遠に得られないだろう。

そんなモヤモヤとした考えを胸の中に秘めながら、雪はただその場に立ち尽くしていた‥。








授業後のキャンパス内を、若干険しい表情を浮かべて歩く聡美。

けれど目の前には太一が居て、昨日彼氏となったその人と、聡美は手を繋いで歩いている。



彼の背中を見ながら、聡美の胸の中はモヤモヤと煙った。

何だろ

 

何か変じゃない?



どうしていきなりキョドってんの‥?



今日は終始オドオドしている太一。聡美の脳裏に、ふと昨日の出来事が蘇る。

まさか告白したの後悔してるんじゃ‥



一瞬不安要素が胸を過ぎったが、昨夜鳴り続けた携帯を思い出して、すぐにそれを打ち消した。

‥ないよね、絶対



「聡美さん!映画観に行きましょうこれはデートですネ初デート聡美さ~ん」

嬉しそうなメールが次々と届いた。

そして今繋いでいる手は温かく、太一の手の平にぎゅっと力がこもるのを感じる。





くくく‥と思わず笑いが零れた。

そして太一が立ち止まったその場所を見て、聡美は合点がいったという顔をする。

「あっ!何よも~~」



「ここ告白した場所じゃん?なに~?何の話よぉ~?」



ピアスピアスね と聡美の胸の中はバラ色だ。

以前太一の携帯を見てしまった時に目にしたあのピアスを、

プレゼントしてくれるに違いない‥。



しかし目の前の太一を見上げると、

青い顔しながら聡美と目も合わせない。



一体何があったのだろうか?

暫し固まっていた太一だが、覚悟を決めると、ようやく話を切り出した。

「聡美さん‥俺‥実は‥」「ん?」「俺‥」



次の瞬間太一の口から飛び出したのは、

聡美が世界で最も聞きたくない類の言葉だった。

「軍隊に行くことになりまシタ」






え‥



え‥



え‥



兵役の期間は約二年。

ようやくカップルになった二人の元に、最大の試練がやって来たー‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<聞きたい言葉と聞きたくない言葉>でした。

さ、聡美‥



ようやく上手く行ったと思ったのに‥。また一波乱ですね

韓国のカップルは兵役で引き裂かれ破局するケースが多いらしいですが、

この二人にはぜひともそれに打ち勝ってもらいたいですね。

そして健太‥。安定のダメ男
本当終わってますね‥。どうなることやら‥。


さて次回はとりあえず4部34話の最後まで記事アップします。

また35話が更新され次第、記事に追加しますのでよろしくお願いします~。


次回は<白紙の準備>です。


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彼女の確信

2016-05-22 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)
その日の夜、雪はベッドに寝転びながら携帯電話を眺めていた。



身体は疲れているが、考えることがありすぎてなかなか眠気がやって来ない。

とりわけ気になるのは、手を怪我してしまった先輩のことだった。



ポチポチとメッセージを打ち始める。

「先輩、手はどうですか?痛みは‥」



けれどその途中で、とあることに気が付いた。

「あ、ケガしてるんだった。返事ダメだ



それなら‥と、

次は通話ボタンに指を伸ばしてみるが、



「いやもう寝てるよね‥むしろ寝てなきゃ



そう思い直して、携帯を枕元に置く。







雪の脳裏に、昼間の光景が蘇って来た。

バランスを崩した雪を庇って、共に倒れた先輩の姿が‥。

「‥‥‥‥」



先輩が私の為にあんな行動に出るなんて‥



去年からは考えられなかったな、本当‥



たった一年で、彼と自身との関係は180度変わった。

けれど雪は気が付いていたのだ。

それは自然に変わって行ったのではなく、彼が意識的に変えたということに。

「俺しか居ない」



彼しか居ない領域の中に、雪を招き入れたということに。

「だろう?」






夏のボランティアの時、自身が問うた質問が蘇る。

「どうして私に告白したんですか?」



平井和美との一件があって、彼に疑心が募っていた最中のことだった。

どうしてあれほどまでに雪のことを嫌っていたのに、彼は告白して来たのか。

「あ‥それは‥」



「好きだから‥」



あの時彼は、雪からの質問に即答出来なかった。

本当に単純に好きだったから近づいたんだとしたら、あれほど戸惑いはしなかっただろう。


「あまり関わるなと言ったじゃないか」



あれは河村亮に家まで送ってもらった時、先輩と鉢合わせしてしまった時のことだった。

きつく抱き締められた背中越しに伝わって来た、彼の静かな怒り。

自身の手元に置いたはずの雪が、思い通りにならないことへの憤り‥。


「俺ら互いに気づいて、互いを見抜いたよね?

けど、最近は俺のこと見てくれないよね?もう冷めちゃった?」




秋の夜、今までに無いくらい酔っ払った時の彼が思い浮かんだ。

あの時口にしたその言葉は、本心だったのだろう。

互いに気付いて、互いを見抜いた、それが二人の始まりだった。


「もしかしたら俺は、君のことが怖かったのかもしれない。

最終的には俺のことを、侵害するんじゃないかと思って‥。

俺はそれが‥すごく嫌で。本当にすごく‥嫌なんだ‥」




”取って食われる”と、去年の雪が彼に感じていたのと同じ思いを、実は彼も感じていたのだ。

自身を奪い行くその存在へと向けられる、例えようのない恐怖心‥。








あの時、彼は最後にこう口にした。

「好きだと言ってくれて、ありがとう」と。







雪の心の中に、確信が浮かぶ。

もう確実に分かった。



地面にばら撒かれた書類。

かつて足蹴にしたそれを、あの時彼は差し出した。



あの人が、私に何を望んでいるのかが。



単純に好きだから、で告白して来たわけじゃない。

彼は自分を理解してくれる唯一無二の存在を、雪に求めて近付いて来た。

一度は蹴られたその書類が、再び拾い上げられて差し出されたように。






枕元に置いた携帯が震えた。

聡美からメッセージが届いている。

雪、大丈夫?先輩はどう?心配でさ



雪はすぐに返信を打った。

「うん、大丈夫だよ。

聡美も太一と早く仲直りするんだよ」




打ち終えた後メールフォルダをスライドすると、

佐藤と柳からメッセージが届いていることに気が付いた。

大したケガじゃなくて良かった。ゆっくり休んでくれ



赤山ちゃん、超驚いたっしょ。大丈夫かー?

柳瀬健太、マジ何なんだアイツ!




二人共、雪を心配し親身になってくれている。

「はい、ありがとうございます‥」と呟きながら、雪は二人にも返信する。






暗闇の中でほのかに光る携帯を眺めながら、雪は自身の確信を少し持て余していた。

彼との関係性、彼の真意、全てが明らかになった今、

雪は自身の進むべき道をぼんやりと思い描く‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼女の確信>でした。

やはり保健室での雪のあの表情は‥



彼の思惑に気付いてしまった表情だったのですね。

淳が自身の理解者を求めて近付いて来たことが分かった今、

以前雪が思っていた自身へのこの問いに↓



答えが出る日も近いんじゃないでしょうか。
(というかここのばら撒かれた書類のシーン、今回の回想シーンへと繋がりますね)


次回は<聞きたい言葉と聞きたくない言葉>です。

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