Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

取り残された彼

2014-02-28 01:00:00 | 雪3年3部(キス未遂~正しさと誤りまで)


A大経営学科四年の学生達が、授業を終えたところだった。

ザワザワと騒がしい教室内に、一際大きな声が響く。

「じゃあお前来週から出勤すんのか?単位はどーなんの?」



柳瀬健太は青田淳から、来週からZ企業にインターンに行くことを聞き出したところだった。

単位も取得出来るインターンらしく、淳は余裕の表情だ。健太は羨むように言う。

「Z企業はインターンの審査基準も高かったのにすげーな!そのまま社員になれんのか?」



健太は淳にZ企業のインターンについて聞きながらも、

教室を出て行こうとする他の四年生達に声を掛けるのも忘れない。

「お?!お前ら就活セミナー行く?俺も一緒に行くからよ!」



柳瀬健太は大きな仕草と憂うような声で、淳に話しかけ続けた。

自分も含むまだ就職が決まらない四年生は、教室の半分になってしまったと。



「淳はセミナー行かねーんだろ?

Z企業のインターンなら行く必要ねーもんなぁ!いいよな~!」




柳瀬健太の声は大きかった。そのため教室中の学生が、淳の進路を知ることになる。

Z企業だって‥羨ましー‥うちの学科から何人行ったっけ?‥、囁くようなヒソヒソ声が聴こえていた。

「それじゃーな!」 「はい」



淳は健太の挨拶に頷き、同じように別れを告げた。

すると教室の入口から、明るい声が聞こえてくる。

「先輩方、終わりました~?お疲れの先輩方を、僕がオモテナシしちゃいますよぉ~!」



ワッと横山翔を囲んで声が上がる。横山が先輩達にご馳走すると言うのだ。

そしてそのまま、その場にいた四年生の大半は横山について行った。柳瀬健太もだ。

「うははコイツめ!優しいじゃねーか!直美も良い奴捕まえたなぁ~?」



そしてその輪の中に、ケラケラと笑いながら横山を囲む男子二人が居た。



淳の脳裏に、ついこの間まで同じような笑顔を浮かべ、

自分に寄って来ていた彼らの姿が思い浮かぶ‥。



淳は呆れたように息を吐くと、じっと彼らの姿を眺めていた。



「あ!」



そんな視線に気がついたのは、横山だった。パッと笑顔を浮かべると、淳に向かって言葉を掛ける。

「先輩!インターン内定おめでとうございます~!

これからはなかなか会えないんでしょーねー?」




横山はそう言った後、淳に背を向けて教室を後にした。男子学生達が、賑やかに笑い声を上げて彼に続く。

大きな目を見開きながら、淳は彼らを見送った。



不意にポケットに入った携帯電話が震えた。メッセージが入っている。

先輩、今後空き時間は図書館でバイトをすることになりました。



雪からだった。

彼女からのメッセージを受け取った後、淳は一人空を見つめる。



頭の中に、先日目にしたあの場面が思い浮かんだ。

親しげに家へ帰っていく雪と亮、そして雨の中で渡せなかった傘‥。

 

喧騒が去って行く。

今まで自分の周りに居た人々がごっそりと、横山翔に連れられて去って行った。



淳は一人教室に取り残され、その場に立ち尽くしていた‥。







外に出た横山ら一行は、何を食べようかと言ってワイワイと歩いていた。

後方に横山と健太が並び、含みのある表情でニヤリと笑い合う。



夏休み初旬から、横山が布石を打っておいた健太との繋がり‥。



それがここに生きている。

地道な活動は実を結び、全てが彼に味方しているように思えた。







横山の脳裏には、先ほど一人教室に取り残された青田淳の姿が浮かんでいた。

横山は口元に笑みを浮かべながら、始まったばかりの作戦の行く先を思う‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<取り残された彼>でした。

短い記事ですいません~!


最後、教室に一人残された先輩のカット。



皆さんこの画をよく覚えておいて下さいね。先のストーリーで重要になってきますヨ^^


次回は<亡霊>です。

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清水香織の事情

2014-02-27 01:00:00 | 雪3年3部(キス未遂~正しさと誤りまで)
清水香織は歩いていた。

一人構内の廊下を。前を向き、口元には少し微笑みを湛えて。



髪型はゆるくかかったパーマに。眼鏡は止めて、コンタクトに。

彼女は自身が望むものを、着々と手に入れていた。



さて、そんな清水香織の昨年の姿はどうだったであろうか。

一年前の同じ場所、彼女は今とはまるきり違う姿で歩いていた。



これが去年の彼女。

ひっつめ髪に、分厚い眼鏡。背を丸め、まるで何かに怯えるような仕草で歩いている。



眼鏡が重いのかそして何か不安なことがあるのか、香織の手は眼鏡とカバンの持ち手を行き来する。

そして俯き加減で歩いている彼女と平井和美が、すれ違いざまに肩をぶつけた。



あらごめんなさい、と和美はまるで悪いと思っていない口調でそう言った。

よく見て歩かなきゃ、と付け加えて。



香織はひたすらビクついたまま、和美が通りすぎるのをチラチラと横目で窺っていた。

あんな子いたっけ? と和美が友人に向かって話す声が聞こえる‥。



そして和美は廊下の先に居る青田先輩を見つけ、声を一オクターブ上げて彼に近づいて行った。

そんな和美を見ながら、香織は心の中で一人呟く。

怖い‥。あの人に目をつけられなくないな。遊び人みたいだし、男好きで‥



いそいそと教室へ急ぐと、香織はふと入り口のところで立ち止まった。

じっと、中に居るその人を見つめる。



そこには、友達に囲まれた彼女の姿があった。

ペンを持ち理知的な表情で、友人からの質問に答えている。




彼女の名は、赤山雪。





彼女は一度も香織の方を見なかったが、香織はずっと彼女のことを見つめ続けていた。




そして見ているうちに、彼女のことを沢山知ることが出来た。

よくイヤホンをして音楽を聴いていること。たまに授業中居眠りをしていること。



次席だけあって、勉強にとても熱心なこと。

教授にもよく質問をしに行って、褒められて帰ってくること。



そして周りの人達が彼女について話しているのも耳にしたことがある。

廊下を歩く彼女の後ろ姿を見て、そのスレンダーな体型でどんな服も着こなしていると同期達は羨ましそうに口にした。



香織は彼女とのすれ違いざま、そのバランスの良い身体とそのファッションを見て息を吐いた。

華美に飾らなくとも、ブランドで固めなくとも、彼女は美しかった。



凛とした横顔が、強く印象に残った‥。






ガヤガヤと教室は学生達の談話する声で騒がしかったが、香織は一人だった。

ふと視線を上げると、キャイキャイと高い声で会話する声が耳に入ってくる。平井和美とその仲間達だ。



話題の中心は化粧品だろうか。コンパクトを持ちながら、楽しそうに話をしている。

続いて香織の視線は彼女の元に流れた。



彼女の友人の伊吹聡美が、新作のアイシャドウパレットを手に彼女らは会話していた。

「雪に似合いそう」と言う聡美に雪は、ベーシックなメイクさえしてれば良い、自分にはそんな高いものは必要無いと言う。



自分とは別世界の人だ、と香織は思う。

飾らなくとも美しい彼女を前にして、羨むよりも香織はまず俯いた‥。






シャーロット・ブロンテ、ジェーン・オースティン‥。

香織の趣味は読書だった。特にイギリス文学を好み、暇さえあれば図書館に通った。



本の中ならば、何になってなることが出来た。

革命の中で愛に生きるジェーン・エアにだって、理不尽な階級社会の中でも運命に屈せず生きる、エリザベス・ベネットにだって。

中でも心酔したのはジェーンだった。彼女は容姿が美しくないにも関わらずヒロインを張り、

激動の時代を自由闊達に生きていく力強い女性だった。



ページを捲る度に心が踊った。

香織の全細胞が本の中の彼女達と、その人生の喜怒哀楽を共にする。



しかしふと我に返ると、言い知れぬ虚しさが心の中に広がった。

表紙を閉じた本は沈黙し、先ほどまで脳裏にありありと浮かんでいたイギリスの風景も消失する。


どう足掻いても逃げられない現実、自分は自分でしかないという残酷な真実。

誤魔化しようの無いその事実に、本を読み終わった後は胸の中が酷く揺れる。



香織は赤山雪のことを思った。

彼女はどこか特別に見えるが、それでも彼女も恋人はおらず、その点では彼女も香織も同じだ。

そんなことを胸の内で呟いて、香織は束の間の安息を得る‥。





廊下を歩いていると、中庭の方で誰かが言い争う声が聞こえた。

香織は身を低くしながら窓ガラスに近寄り、その様子をこっそりと窺い見る。



声の主は、平井和美と赤山雪だった。

彼女は香織の恐れていた平井和美を真っ直ぐ見据え、口論していた。



和美と対等に渡り合う雪の姿は、香織に強烈な印象を与えた。

その姿を格好良くさえ思った。



本を握った手に、力が入った。

その物語の主人公のように、赤山雪は真っ直ぐに立っていた‥。






結局、赤山雪と平井和美の口論は決裂した。

去って行く平井和美の背中を見ながら、諦めたように溜息を吐く雪の横顔に同情した。



大学生にもなって幼稚な喧嘩をふっかける平井和美が、何よりも嫌だった。

香織は本を強く握りしめながら、心の中に残るわだかまりを感じていた‥。






そしてあの事件が起きた。

ある晴れた秋の日のことだった。



香織は見てしまったのだ。

突っ伏している雪のコップに、平井和美が何か入れるのを。



香織は思い悩んだ。

どうすればいい、私は何をすればいい、と自問自答の末、結論を出した。



深く考えるより先に、行動していた。

心臓は早鐘を打ち、手は細かく震えている。自分の中に生まれた小さな炎が、香織を突き動かしていた。






コップをすり替えたことをこっそりと伝えると、彼女は血相を変えて教室を飛び出して行った。

香織は彼女の行く先のことやこれからのことは考えられなかった。ただ、高鳴る鼓動に打ち震える。



香織は全身を震わせながら、口元に笑みを浮かべた。

それは微笑みにしてはあまりにもぎこちなかったが、しかし彼女の心からの笑みだった。

やった‥!やり遂げた‥! か、簡単なことじゃない‥!

平井和美に勝つくらいわけないわ!なんてこと無いじゃない‥! 雪ちゃんも私のお陰で助かった‥!





興奮した彼女は心の中で歓喜した。

自分のお陰で雪が救われたと、何度も何度も自身を褒め称える。


私が助けなかったら今頃恥ずかしい目に合っていたはず‥!

私のお陰よ‥!





私の‥!




香織は鏡に映った自分を眺めながら、暗示にかけるように自己を奮う。


やっぱりやってみることが大事なのよ。

やり始めたことで、もう目的は半分達成しているようなものなんだわ。




努力すれば報われるってこと、頭でなく心で悟ったのよ。それも自らね。


香織の部屋には、山のような書物が散らばっていた。

自己啓発本、理想の自分になる本、研究ノート‥。




鏡の中の自分が、変貌しようとしていた。

香織は口角の上がっていく自分の顔を見ながら、一人心の中で声を上げた。


私は特別な人間なのよ!まだ誰も気づいてないってだけ。

まだ、やり始めてないってだけ‥!





変体前のサナギは、その羽根が開くのを胸を踊らせて待っていた。


それが蝶になるか蛾になるか、分からないまま‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<清水香織の事情>でした。

なぜ香織が雪の真似をするようになったのか。彼女が何を考え、どういう信念を持って行動しているのか‥。

そのプロローグ、といった内容でした。

皆様どうでしたでしょうか^^


自分とは正反対の主人公や雪に惹かれる気持ちは共感出来るんですけどね。憧れて、それに近づきたいと思う気持ちは。

しかしその後が‥。”自分は特別だ”という思い込み(錯覚?)が激しいところが‥。

問題児だなぁ(汗)



次回は<取り残された彼>です。


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秘密の共有者

2014-02-26 01:00:00 | 雪3年3部(キス未遂~正しさと誤りまで)
ピロリン、とメールの受信フォルダが光った。雪は届いたメールを見て、思わず一人声を出す。

「お!図書館のバイト申請通ったって!」



隣に居る聡美が、「ヤッタじゃん!」と相槌を打つ。今学期、雪は大学内でアルバイトをすることにしたのだ。

「もう学外でバイトはしないの?」「うん、空講時間にだけバイトして、残りの時間は勉強しようかと思って。

お小遣程度だけ稼げれば良いから」




聡美は頷き、軽く溜息を吐いて天を見上げる。もうすっかり秋の空だ。

聡美と雪は三年生も後半に突入し、青田先輩の代に至っては大学生活最後の学期だ。

先輩がインターンに正式に行くことになれば、もう大学構内で会うことも難しいだろう。

「はぁ~先輩いいな~。お金持ちだし~イケメンだし~。

倍率ヤバイZ企業にもビシッとインターン決めちゃってさぁ!この世で手に入らんもんはないだろーね!」




雪は聡美を前にして、乾いた笑いを立てるしかなかった。会長の息子だからネ‥と心の中でそっと呟く‥。

すると聡美は、雪の携帯に付いているストラップを手に取った。

「それに彼女持ちだし!」



以前先輩から貰った、モジャモジャたてがみのライオン人形が揺れる。

「これ先輩とおそろなんでしょ?あ〜なんだかこそばゆいわぁ!」



聡美は青田先輩がこれを付けているのが想像できない、と言って笑った。

高い物では無いんでしょ? という聡美の問いに、雪はかぶりを振った。

大学の近くのKマートで買った物で、スマホにした記念につけてみた、と。



すると不意に聡美が眉を寄せながら、

「あ!そういえば!」と言って声を出した。



聡美は雪に忠告するような口調で、雪と先輩のこれからのことを心配する。

「インターン先にはコンサバ系のキレーなお姉さまが溢れてると思うけど、

会いに行った時変に自分と比べたりしないのよ!」




「え‥会社まで行きは‥」 「近くなら遭遇するかもじゃん!」

聡美は雪と先輩が、Z企業の近くでデートをすることを想定して忠告をしているのだった。

「てか先輩の周りに美女がひしめいてるって状況が問題なんじゃん!

だからある程度はキレイ目な服や靴を用意しなくちゃ!」




聡美からそう言われ、雪は先輩が美女と一緒にいるところに会いに行った場面を想像してみた。

どんな場面よコレ‥と思いつつ、実際そういった状況に遭遇したら、何だか惨めになりそうな気もする‥。

「知ってる店で、安くて可愛いとこがあるの!学校の近くで値段も手頃で質も良くてさ‥」



積極的な聡美の誘いに、雪は戸惑いつつ頷いた。

そしてキャイキャイと会話している二人の元に、あの彼女が現れた。

「雪ちゃん!」



清水香織は気安い笑みを浮かべながら、二人の元に近付いた。

「ねぇねぇもうお昼食べた?よかったら一緒に‥」



苦笑いを浮かべる雪の横で、聡美が「あー食べた食べた!」と投げやりに言った。

そっか、と言いながら香織は頭を掻く。彼女を見つめる雪の視線は少し厳しい‥。



暫し会話の無くなった三人だったが、香織は雪の方を向くと再び嬉しそうに口を開いた。

「私たちの服、今日似てるね?流行ってるのかな~?

それと、今回もグルワあるね!一緒の班になれるといいなぁ~!」




でしょ? と同意を求める香織を前にして、雪は自分の顔が引き攣っていくのを感じた。

先学期のグループワーク、彼女のせいでDをもらったことを、未だに雪は忘れていない‥。



それじゃ‥と言ってこの場から退散しようとした雪だったが、不意に香織が雪の方に身を乗り出してきた。

雪の携帯にぶら下がったライオンの人形に目を留めている。

「あれ?このストラップ可愛い~!」



どこで買ったの?とすかさず香織が聞いてきた。

雪は嫌な予感がして、そのまま何も言わずに沈黙する。







似たような服装、同じ髪型、そして何でも一緒にしたがるその性質‥。

聡美が嫌がっているのもあって、雪はだんだんと香織に優しい態度が取れなくなっていた。

「あ‥私らちょっと用事が‥」



雪はそうそっけなく言って、彼女に背を向けた。

これまでとは違った雪の態度に、香織は微細な変化を感じた。口を開けたまま、向けられた背中を見つめている。



「雪ちゃん!」



その後ろ姿が去る前に、香織は雪の名を呼び引き止めた。

苦い表情をして振り返る雪に、「ど、どうしたの? 私‥何かした?」と言って頭を掻く。



そして彼女は雪が予想もしなかったことを口にした。

浮かべられた笑顔に、どこか優越感を含みながら。

「難しく考える必要はないけど‥私達、秘密を共有した仲じゃない」



「は?何‥」



雪は最初、香織が何を言っているのか分からなかった。

しかし暫くすると、脳裏に浮かんでくる記憶があった。あれは丁度一年前の今頃‥。



平井和美が、雪のコップに下剤を入れたことを清水香織が教えてくれたのだった。

そういえば先学期グルワで一緒になった時も、香織はそのことを口にしていた‥。

去年は二人だけの秘密もあったし‥



実を言うと、雪自身そんなことはとっくに忘れていた。

けれどそのことを未だに口にしてくる香織はどこか嬉しそうで、そして誇らしげだった‥。



雪が何も言えずに黙っていると、香織は「だから気楽に接してくれればいいよ」と言って微笑んだ。

聡美は一人置いてけぼりで、苦い表情をしてその会話を聞いている。



香織はその後、授業があるからと言ってその場を後にした。

彼女の背中が小さくなるのを見届けて、聡美は雪の肩を揺さぶりながら問う。

「何何?なんなの?!あの子何言ってたの?秘密って何?!」



雪は戸惑いながらも、去年平井和美がコップに下剤を入れた時のことをかいつまんで話した。

その話を聞き終わった聡美は、すごい形相で立腹した。一体いつまで自分の恩を売るつもりだ、と。

「あの子マジでちょっとおかしいんじゃないの?!‥ムッカつく」



怒り心頭の聡美の肩を抱きながら、雪は彼女を宥めて廊下を歩き出した。

聡美ほどの怒りを感じているわけではないが、どこか嫌な気持ちがする‥。



そして雪の第六感が、香織に不気味な何かを感じて反応していた。

振り返って窺った彼女の後ろ姿は、雪ととてもよく似ている‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<秘密の共有者>でした。

キレイ目スタイルの雪ちゃん、また見たいなぁ‥。

いつものファッションも好きですが、又斗内との合コンの時や、

聡美のお父さんが病院に運ばれた時に来ていたワンピース姿も、すごく好きです。また見れる日は来るの‥か?^^;

そして今回の雪のボーダーシャツ、途中でボーダーが消えるというマジコーが起きてますね‥。イッツァマジコー!


さて清水香織がジワジワ来てますね~。

次回は彼女が雪をコピるキッカケとなった話です。(しかし大半の方が興味ないことを予想


<清水香織の事情>です。


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横山翔の計画

2014-02-25 01:00:00 | 雪3年3部(キス未遂~正しさと誤りまで)


昨夜降り続けた雨はすっかり止み、空には明るい太陽が浮かんでいた。

聡美と雪が構内でまったりお茶していると、突如一人の女子学生が興奮た様子で飛び込んで来た。

「マジ大大大ニュース!今そこで聞いたんだけど!横山と直美さん付き合うらしーよ!!



女子学生の声は大きく、その場に居た全員が一瞬にしてその噂を知った。

勿論、雪と聡美もだ。



「マジ?!嘘でしょ?!」

「いや〜直美さんすぐ嫌になるでしょ、だって横山だよ?!」



「横山、皆が見てる前で花束とプレゼント渡して、告白も盛大だったらしーよ」

「うっわ最悪‥マジ恥ずかしいわ」



女子学生達は横山と直美が付き合うことについて、各々好き勝手に自分の意見を口にしていた。

どうやら横山の告白は映画のように派手なものだったらしく、それはそれは見応えのあるものだったらしい。

そんなドラマティックな告白(プロポーズ級だったらしい)を羨ましい、と思う子もいれば、

恥ずかしくてとてもじゃないけど耐えられない、と言う子も居た。



雪と聡美はゲンナリとした表情で、その会話を聞いている。

な、直美さん‥何でまた横山なんかと‥。



女子学生の話によると、横山の大仰な告白を直美さんは嫌がる素振りをしつつも、嬉しそうに受けたと言う。

横山に肯定的な子も居る中で、雪は一人黙り込んで考えた。

そういえば‥皆は横山があちこちちょっかい出してたのは知ってても、

あいつがヤバイ行動に走るってことは知らないんだよな‥




横山のストーカー気質を知っていたら、まず彼に肯定的な見方は出来ない。

雪が横山からされたことは今思い出しても腹立たしく恐ろしいものだが、しかしそれもすでに去年のことだ。

今更そのことを口にするのも躊躇われ、雪はうむむと唸って口を噤んだ。

「んー‥でも羨ましいっちゃ羨ましいかも?

相手が横山じゃなかったら、あたしひょっとするかも~」




悩む雪の隣で、聡美がどこかウットリとした眼差しをして呟いた。

どうやら聡美はロマンティックな演出に弱いらしい。

はて、そんな彼女の王子様は今どこにいて、何をしているのだろうか‥。







その頃太一は、およそロマンティックとは程遠いところにいた‥。

携帯ゲーム機を両手で持ち、廊下を歩きつつも画面に釘付けだ。

うちの軍団、人数は増えたけど兵力ランカーがいない‥。
けど武器合成やら製錬が三時間かかるな‥。
うちの軍団員誰が占領した?徴収の時ダメージ受けるはず。助けなきゃな‥




何が何やら分からないが(汗)、とにかく太一はゲームに夢中になっていた。

ゲーム内で重大な決断をする時が来たようで(課金するかどうかの瀬戸際らしい)、

その眼は真剣そのものだ。



そのため、不意に横から足を出されたことに太一は気が付かなかった。

太一は思い切りつんのめり、脱げた靴が高く飛ぶ。



地面にうつ伏せるような格好で倒れた太一の頭上から、聞き慣れた声が掛った。

「あれ?どうした~?転んだ?」



ゆっくりと顔を上げた先に、横山翔の姿があった。

どこかニヤついた表情で、横山は太一を見下ろす。

「大丈夫?」



太一は横山の顔を見上げながら、ゆっくりと身体を起こしかけた。

すると横山は太一の隣にしゃがみ込んで、彼に向けて手を差し出す。

「ちゃんと前見て歩かなきゃ~」



しかし太一はその手を取ることなく、それどころか横山から顔を背けた。

差し出した横山の手が、手持ち無沙汰で元に戻る‥。



すると横山の後ろを、彼と同期の男子学生達が通りがかった。彼らは思い思いに口を開く。

「太一転んだん?」「タッパあるから転びやすいんじゃん?」

「ははは 痛そ」 「ゲームがww」



歩きながらゲームすんなよ、と横山は太一に軽く注意し、立ち上がった。

そのまま「昼飯食った?」と言って彼らと合流する。



そしてそのまま一行は、太一の方を振り返りもせずに行ってしまった。

横山のくせのある笑い声が、響いて消えていく。

太一は立ち上がることも忘れて、その後ろ姿を眺めていた。



心の中に小さな刺が一本、チクリと刺さったような気分で‥。





横山ご一行は、そのまま昼食を取りに学食へと向かった。

男子学生の一人が、ふと思いついて横山に話しかける。

「そういや太一の奴、去年お前にバスケのボール投げつけたんじゃなかったっけ?」



何でそんなことがあったのに太一に良くしてやるんだ、と彼は不思議そうに言った。

その隣で横山が、ニヤリと笑っている。



そして彼らは、去年の球技大会の記憶を辿った。

伊吹聡美をめぐって横山と太一が一騒動起こした、あの時の記憶を‥。

 


「てかフツー女のために先輩にあんなことするかぁ?」 

「あん時は翔の失言でそのまま流れたけど、考えてみりゃ太一の奴笑えるよな」

「あんなことまでやらかして、結局伊吹と付き合うことも出来ねーでやんのww」



彼らは嗤いながら太一のことをこき下ろした。

それを聞いた横山は、どこか憂いを帯びた表情で彼らに向かって口を開く。

「まぁ‥俺が悪いんだからさ。キレて暴れて‥今考えるとどうしてあんなこと‥」



しおらしい横山の態度に、彼を取り巻く連中は優しい。

「お前もようやく人間らしくなったか!」



そして彼らは笑いながら食堂へと向かって行った。

横山翔の計画は、着々と進められている‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<横山翔の計画>でした。

どんなんだったんでしょうね、横山の告白‥。

花束持って直美の前で跪いたりしたんでしょうかねぇ。。私だったらヤダな‥笑

そして太一がしているゲームは、

「上告の伝説」というゲームらしいです。



あと「手のひら三国志フュージョン」もやってるらしいです。

ゲームに疎いので全然分からないですが‥^^;

ピンクのカバーからして、お姉さんのDSですかねぇ。



次回は<秘密の共有者>です。


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渡せなかった傘

2014-02-24 01:00:00 | 雪3年3部(キス未遂~正しさと誤りまで)


淳は彼女が去るのを見送ってから、帰宅の為に車を走らせていた。

脳裏には先ほどの彼女の姿が、何度も浮かんで来る。

 

プフフフ、と淳は笑いを堪えきれずに一人で吹き出した。

嬉しさと可笑しさでいっぱいで、とても愉快だ。



彼女はいつだって、予想外の行動で自分を驚かせる‥。

しかしふと、似たようなことがあったと淳は思い出した。



視線を漂わせながら思い出すのは、ある夏の夜のこと‥。






淳が雪に告白をした日のことだ。

あの時淳は一度断られて、握っていた彼女の手を離した‥。



手が離れていくその様子を、彼女は目を見開いて追っていた。

その表情はどこか淳の心に残るものだった。



あの時一度離れかけた淳の手を、彼女は強く掴んだ。

それは去って行くものを咄嗟に引き止める、彼女の本能のようなものを感じた。




そして今夜、淳はもう一度彼女の本能を垣間見た。

触れていた手を離した瞬間、咄嗟に自分の手を強く掴んだ彼女に。



目を見開いて自分を凝視する、彼女の表情の中に‥。









淳はハンドルを握った自分の手を、沈黙の中で眺めていた。

強く握られたこの手に、彼女の手の力と体温が未だ残っているような気がした。



ふぅん、と淳は一人呟いて、彼女の中の眠れる本能に思いを馳せた。

彼女自身は気づいていないかもしれないが、彼女は去るものに対して異常な程の執着を見せる。

それは彼女の性分か、その生い立ちに由来するものなのか‥。



どちらにしても彼女が自分を求めたのは、純粋な好意にあるわけでは無さそうだった。

淳は暫し思案していたが、不意に大きな雨粒が車を叩く音が聞こえた。



それはみるみるうちに大きくなり、気がつけば土砂降りになっていた。

その激しい雨音の中で、淳はキョトンとした表情を浮かべる。



確か彼女は傘を持っていなかった。

淳は車線変更の為に、ウインカーを出す‥。









あと家までもう少しというところで、雨が降ってきてしまった。

雪はコンビニの軒下にて、雨宿りをしているところだった。雨は土砂降りに近い降りだ。

「あーもぉ~!お母さん何で来ないの~?電話して随分経つのに‥」



傘を持ってきて欲しかったのに、母はなかなか現れなかった。雪は雨足を眺めながら溜息を吐く。

ここから家までそんなに離れているわけではないが、この降りでは走って帰ったとしてもびしょ濡れになるだろう‥。



雪はぼんやりしながら、その雨の音を聞いていた。

すると頭の中ではモクモクと、先ほどの場面が次々浮かんでくる。



雪は頭をブンブン振りながら、やはり雨の中を走って帰ろうかと思い直していた。

この雨は、頭を冷やせという神様からのメッセージかもしれない‥。



「姉ちゃーーん!」

すると通りの向こうから、蓮が飛沫を上げてこちらにやって来るのが見えた。雪は目を丸くする。

「何でこんなに早く帰って来たのよ?」



いつも夜中まで遊び歩いている蓮が、早い時間に帰って来たことに雪は驚いていた。

蓮は「お小遣いが無くなっちゃってさぁ」と言って、濡れた身体を震わせる。

そしてそんな赤山姉弟の元に、思いもしない人物がやって来た。

「お?」



二人は近づいてくる彼を見て目を丸くしたが、彼もまた、不思議そうな顔をして二人を眺めている。

「何で二人もいんだ? 傘一つしかねーってのに」



亮の姿を見て蓮は喜び、雪は首を傾げた。

「何で河村氏が‥?」という雪の問いに、



亮は雪達の母親から雪を迎えに行くよう頼まれたと答えた。今店は忙しく、母親は手が離せないのだ。



亮と蓮が一つの傘に入り、亮が持ってきた傘は雪が差した。

「なぁなぁところでよぉ、コンセントを幾つか差すやつって何て言ったっけ?」



突然の亮の問いに、雪は疑問符を浮かべながら何でそんなことを聞くのかと聞き返したが、亮は答えなかった。

隣で蓮が「マルチタップ?」と答えを口にしているが、

その時亮はあることに気づき、後方に視線を送っていた。



幼少時からピアノを習っていただけあって、亮は耳が良い。

激しい雨音の中から低い車のエンジン音を聞き取って、その車の主が誰であるかを知る。



すると亮はわざとらしく大きな声を出しながら、雪の方に背を屈めて近寄った。

「あ~!それにしてもオレみてーな心優しいバイトがどこにいるってーの?

二人とも一回ずつメシおごれよな!分かったか?」




亮はそう言って二人の肩に腕を回し、雪と蓮を自分の方へ引き寄せた。

楽しそうに、そして誰より親しげに。



遠目から見ている三人は、わいわいと騒ぎながら道を行く気の知れた友人のようだ。

亮の口角がニヤリと上がる。



亮はそんな自分達の姿を、後ろの彼に見せつけていた。

雪と蓮に気づかれないように、亮は彼に向かって後ろ手を振る。



早く帰れという意味か、お前の出番は無いよというメッセージか‥。

亮のシグナルは、路肩に停められたポルシェに送られた。



ザァザァと強い雨が、その車体を濡らしていく‥。





二つの傘を差した三人の後ろ姿を、車の中から淳は見つめていた。

先ほどの亮の仕草が、瞼の裏に焼き付いている。



後部座席には、彼女に渡そうと思っていた傘が転がっていた。

いつだって彼女を助けようとするそのタイミングの前に、亮が出てきて邪魔をする‥。



渡せなかった傘は、役に立てなかった自分の象徴のように思えた。

淳は様々な思いを抱えながら、暫し車中で遠ざかる三人の後ろ姿を眺めていた‥。


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<渡せなかった傘>でした。

無意識のところで去るものを引き止める、という雪ちゃんの性分を、先輩が気づきましたね。

その元になっている”愛情への飢え”みたいなところは、先輩と雪ちゃんが持つ共通点ですね。


そして亮の頭の中は、電子ピアノのことでいっぱい!

きっと倉庫の中で一日中どうすれば音が鳴るか考えながら作業していたんだろうなぁ。。かわいい奴(笑)


次回は<横山翔の計画>です。


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