Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

彼のコレクション

2014-09-28 01:00:00 | 雪3年3部(対面~彼のコレクション)


雪はポケッとした表情で、そこに佇んでいた。

視線の先には、見たことのない部屋がある。



雪を探していた淳も、彼女に続いてこの部屋に入って来た。

「ここに居たの?そろそろ行こうか」「一体いくつ部屋があるんですか‥一人暮らしなのに‥」



雪はこの家の部屋数の多さに驚いていた。

パッと見狭そうに見えるこの家だが、迷路のように入り組んでいて、一体何部屋あるのか今も分からない。
(前回雪がここを訪れた時は、この部屋には入らなかったようだ)



そういう造りなんだよ、と淳がニッコリと笑って言う。

そして淳は雪に、自分の腕時計コレクションを見せた。

「ひゃあ‥」



それを見た雪は、思わず声を漏らした。高級そうな腕時計が、ズラリと並んでいる。

「これ全部でおいくら万円‥」



そう言って目を剥く雪に、淳は「高いのはあんまりつけないけどね」と言って、

今自分がつけている腕時計を雪に見せる。

「最近は雪ちゃんに貰ったやつばっかりだよ。どれか一つあげようか?欲しいのある?」

「いえ‥結構デス‥」



二人がそんなやり取りをしていると、不意に雪があるものに目を留めた。

「ん?」



雪はその棚に近づきながら、不思議そうな顔をして彼にこう聞いた。

「あの‥どうしておもちゃを飾ってるんですか?」



おもちゃ?と聞き返した淳だったが、飾ってあるラジコンカーに目を留めて、合点がいったという相槌を打った。

「あぁ‥。全部俺が小さい時に集めたものなんだ。

収集癖っていうか、色々なものを集めるのが好きで」




そこには、サイン入り野球ボール、蝶の入った額縁、ラジコンカーなど、実に多様な物が並んでいる。

淳は続けた。

「けど色々集めても、結局いつかは終わりが来るだろう。

だから一番好きなものを一つだけ残して、後は整理してるんだ」




幼い彼のコレクションの一片が、その棚にひっそりと飾られている。

先ほど目にした腕時計のコレクションのように、昔はきっと膨大な量のそれがあったのだろう‥。

「へぇ‥そうなんだ‥」



雪はそう相槌を打ちながら、惜しい気持ちがしてこう口にした。

「う‥でもなんか勿体無い‥」

「いいんだよ。結局自己満足なんだし」



雪はコレクション自体というより、それに掛かった費用が勿体無いと思っていたのだが‥。

それは口に出さないことにした。

「あれ?」

 

続けて雪が見つけたのは、一冊の楽譜だった。「即興の瞬間」、シューベルトのピアノ曲。

雪はパラパラとそれを捲ってみた。

「あ‥楽譜もあるんだ」



淳は雪の頭の上から、それに目を落としながら言う。

「あぁ、それね。俺の好きな曲なんだ」



そうなんですか、と言いながら雪はもう一度表紙を見ていた。

「Moment musical」と書いてはあるが、雪はそれをよく知らなかった。

「あ、サインも入ってるじゃないですか」「うん。有名なピアニストなんだよ」

 

うわぁ‥と雪は声を漏らしながら、その楽譜をマジマジと眺めた。

「先輩、ピアノにも興味があったんだ‥。

そういえば、クラシック好きって言ってましたもんね」




以前、二人は「好きな曲」について話をしたことがあった。

そういえば彼は「運転しながらクラシックを聴く」と言っていた‥。



すると淳は、少し言葉を濁しながら口を開いた。

「いやそれは‥」



「亮にあげようと思って貰ったものなんだ」



その言葉を聞いた雪は、目を丸くして固まった。

淳の口から河村亮の名前が出ると、わけもなく緊張する。

「そ‥そうなんですか‥?」「うん」



ニコッと微笑んだ淳に向かって、雪は恐る恐る問い掛けた。

「でも‥どうしてあげなかったんですか?」



淳は空を仰ぎながら、こう答えた。

雪の手から楽譜を柔らかに取り上げながら。

「‥それはもう時遅しだよ。色々な面でね」



淳は楽譜を手に取ると、そのままパラパラとそれを捲った。

雪は取り上げられたその格好のまま、彼の横顔を見上げてみる。



長い前髪のせいで、彼の表情はよく分からなかった。

しかし彼の発する空気から、今まで抱えて来たそのしがらみを仄かに感じる。



雪は彼の横顔を見つめながら、彼と亮とのことに思いを馳せた。

やっぱり二人は‥



単なる”高校の友達”程度の仲じゃなかったってことは聞いたけど‥

それよりはるかに特別な関係だったんだろう‥




彼の手元に残っている、一冊の楽譜。

有名ピアニストのサインが入っているということは、そうそう手に入る物ではないだろう。

そして今でもそれを、彼は本棚の端に残しているのだ。

どうして‥これほどまでになってしまったんだろう‥



淳と亮の関係がこじれた原因を、雪はまだあやふやにしか分かっていなかった。

そしてそんな思いを馳せる雪の前で、淳は楽譜を手に沈黙している。



じわじわと、過去の記憶が淳の脳裏に蘇る。

あの時の、暗い記憶が‥。


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<彼のコレクション>でした。

彼の部屋に残った、彼を形作った様々な物たち。

蝶の入った額縁もラジコンカーも、そのエピソードが以前ありましたよね。
(野球のボールが気になりますね‥)

そして淳の本棚に残った、シューベルトの楽譜。

F. Schubert - Moment Musical Op.94 (D.780) No.3 in F Minor - Alfred Brendel


「Monent musical」小曲集の中で、「第三番」が一番好きだと淳は以前言っていましたね‥。

さて彼らの過去に一体何があったのか‥気になります。


そして淳の時計コレクションの見事なこと!

「高いのはあまりつけない」と言っていた淳を見て、一部のこの場面を思い出しました。



健太さん‥淳はガチの金持ちでした‥。。



次回は<亮と静香>高校時代(11)ー三人の関係ーです。

過去編です。

河村姉弟カテゴリーですね。


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