Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<雪と淳>彼の姿を

2016-05-15 01:00:00 | 雪2年(<淳>旅立ちの前に~雪2年終了)
遅れて来た雪のバイト仲間が、カフェに入るや否や頬を紅潮させてこう言った。

「ねぇねぇ!この近くですっごいイケメン見ちゃった!」

「マジで?!」



その話題に思わず食い付いた女子達は、ガラス越しに外を覗き込む。

「どこどこ?」「え、俺のこと?」

「分かんないよー」「恥ずいから止めろっ!」



わらわらと覗き込んだものの、結局彼女達はイケメンを発見出来なかった。

するとバイト仲間の直人君が、届いた携帯のメッセージを見てこう言う。

「あ、上で呼ばれてるみたいだから俺行くわ。

ケーキだけ後から持って来てくれる?」
「うん、上がっててー」



そう言って彼はコーヒーを持ってオフィスへと戻って行った。

注文したケーキ待ちの雪達女子三人は、彼を笑顔で見送る。



やがてケーキが手元に来ると、女子達は新鮮な空気を吸いがてら(イケメンを探しがてら?)外へ出た。

「直人君、なんか雪に優しくない?アンタに気があるんじゃないの?」

「え、あの人彼女いるよ」「あぁ、そういやそうだったね」



イケメンの話題に触発されてか、女子達は恋バナを始める。

バイト仲間の三島君は、なかなかに好青年のようだ。彼について雪は自身の見解を述べた。

「それにあの人、皆に別け隔てなく優しいもん。それって特定の人物への好意とは違うでしょ」



雪の言葉に二人も頷く。すると突然、ポニーテールの子が探しものを始めた。

「あ、ちょっと待って。領収書どこやったっけ」「さっき受け取ってたよ」

「まったり探しなー」



領収書を探すのを手伝いながら、女子達は恋バナに花を咲かせる。

意外にもその続きを続けたのは雪だった。

「けど直人君の彼女は幸せ者だと思うわ」「だよねー。めっちゃ優しいらしいよ」



「そうなの?」



すると雪のその言葉に、パーカーの子が食い付いた。

「てか雪、ああいうのがタイプなんだ?合コンしよっか?」「何よ突然‥」

「いや、理想のタイプ教えてよ。マジで紹介したげるからさ。

冬休みなのにシングルで寂しいって言ってる男、周りに多いのよー」




どこか久々のその話題に、雪は白目になりながら返答する。

「理想のタイプ‥」



「めっちゃ優しくて、親しみ易くて、落ち着いてて、超イケメンかな」

「おい、フザケンナ」「www」



勿論それは冗談に過ぎなかったが、最後にはどこか本音が漏れ出ていた。

「寄り掛かれる、頼れる感じで‥」



そして雪は目をギンと鋭く見せながら、本気の「理想のタイプ」を口にする。

「あと、外国の俳優さんみたいにエキゾチックで

眉毛と目の間が1mmくらいでくっきりはっきり‥」


「もう分かった。合コン、リームーリームーw」



彼女達はキャハハと笑いながら、僅かな休憩時間を楽しんだ。

やがて領収書も見つかる。



雪は苦笑いしながら、合コンを申し出てくれた子に最後には断りを入れた。

「色々気ぃ使ってもらってありがたいけど、

私、当分恋愛する気ないんだ。ごめんね」
「ええー」



勿論二人共その答えには不可解な顔をする。

「今が恋愛真っ盛りじゃーん?」「そーだよぉ」



同年代の女の子達が持つその価値観は、雪にとってはどこか遠い世界のことのように思えた。

雪は苦い顔をしながら、鈍色をした雲をぼんやりと眺め、思い出す。



あれは去年の夏休み、横山と太一が一悶着あった時のことだった。

蘇るのは、泣きながら話す太一の言葉だ。

「聡美さんに合わせる顔が無いッス!」



「前にバスケットボール投げた時も、人に手を上げたって怒られたのに‥。

俺のこと野蛮人だって思うに違いないんス‥」




太一のその言葉を聞いた時、雪は聡美が羨ましいと思った。

聡美には、こんな頼もしい子がついているんだ、と。

自分にもそんな人が現れるのだろうか



冷たい木枯らしが、彼女の髪をたなびかせて吹き抜けて行く。

そんな風に考えた時もあったけれど



心のどこかで渇望していたそんな存在は、所詮理想の幻だったと雪はもう諦めていた。

すると突然、雪の脳裏にある人物の背中が浮かび上がる。



青田淳。



ピタ、と雪の動きが止まった。

”自分にもそんな人が現れるのだろうか?”



その問い掛けへの答えのように、なぜか青田淳の姿ばかりが浮かんで来る。

顔を上げた雪が目にした、自身のことをじっと見つめる彼の姿が‥。



「??」



ゾワッ、と全身に鳥肌が立った。

雪は白目になりながら、そんな自身に動揺する。

何?!おかしくなったか?!なんでいきなりあの人が浮かんでくるの?!



ブンブンと激しく頭を振る雪に、バイト仲間達は若干引き気味である。

嫌ってほど苦しめられたから、反射的に浮かんで来ちゃうんだ‥!

あいつ‥ここまで来たら洗脳の域っ‥あいつだけが男じゃないでしょーがぁぁ!





「そ、そんなに恋愛したくないの?」「うん、これは止めといた方がいいわ‥」



そんな雪の姿を、青田淳は複雑な表情をしながら見つめていた。

(眉の辺りを押さえているのは、

目と眉の間が1mmのくっきりはっきりな顔立ちでないことを気にしているせいであろうか?)




彼女の姿を見ている内に、淳の心に空いた隙間は、いつの間にか塞がっていた。

彼は満足そうに微笑みながら、いつしかその場を後にする。






ビルの前に居たイケメンは、軽く笑いながら去って行った。

遠ざかる二人の背中。

彼女は彼のことには気付かないまま。






未だ恋バナを続ける女子達の中で、雪は頭を掻きながら笑っていた。

しかしふと、誰かの気配を感じて振り返る。



けれど最後まで、雪が淳に気付くことはなかった。

まだ寒い二月の風の中を、ポケットに手を突っ込んで一人歩いて行く。




これが雪が三年になる前に起こった出来事の、全てだ。


あの人に何もかも、



取って食われるー‥




そう思っていた雪の運命はこの先、数奇な軌跡を辿ることになる。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<雪と淳>彼の姿を でした。

これで雪が二年生時の時系列の話は全て終わり、だそうです。

作者さんのブログにそう記載されていました。


雪が渇望していたものと、淳が渇望していたもの。

辿って来た過程は違えど、それは似通っていたのですね。

そして現在へと戻った時、そこから二人で良い未来へと歩んで行って欲しいなと思います。


さて次からあの保健室の続きへと戻るわけですが、4部33話のそこの描写が少なかったので、

以前の記事、<線の中>へと入れました。


次回は<虚勢の裏側>です。


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<雪と淳>彼女の姿を

2016-05-13 01:00:00 | 雪2年(<淳>旅立ちの前に~雪2年終了)


旅立ちの前の空白の時間。

淳はぼんやりと天井を眺めて寝転んでいた。脳裏には、雪の後ろ姿ばかりが浮かぶ。



ふと、先日の閉講パーティーの時に耳にした彼女達の会話を思い出した。

「ねぇ雪、アンタ休み中またバイトすんでしょ?どこでやるの?」

「‥XX企業に願書送っ‥」



そして保健室で目にした、

彼女のポケットに入っていた紙切れのことも。



手に入れていた二つの情報が、淳の頭の中で一つに繋がった。

‥彼女は今、XX企業にてバイト中だ。



飛行機の時間まではまだ余裕がある。

淳はガバッと起き上がった。



「近所だ」



XX企業、その場所はここから随分と近い。

すぐに淳は出掛ける準備を始めた。

もしかしたら、彼女に会えるかもしれないという微かな期待を込めてー‥。






案の定雪は、XX企業にて絶賛バイト中だった。

通常業務はオフィス内にて、PCでの作業である。



その他は雑用で、電話対応をしたり段ボールを運んだりと、それなりに忙しかった。

雑用途中で社員に呼ばれても、雪は嫌な顔一つせず素直に業務をこなす。

 

PCに向き合っての作業中、ふと今日の日付を見てこう思った。

もうちょっとで成績発表の日だな‥うーん‥



休学すると決めたものの、奨学金のことはいつも頭にあった。

全額は無理だと思うけれど、もしかしたら‥。

雪がモヤモヤと頭を悩ませ始めたその時、少し離れた席から名前を呼ばれた。

「赤山さーん!コーヒーの買い出し頼む!

ここメニュー書いたから、他のバイトの子達と行って来てー」
「あ、はい!」



そして雪はバイト仲間と共に、オフィスの下にあるカフェへと向かった。

それはビルの真下にあるため、外に出ずとも買いに行けるのだ。







えんじ色のセーターを着て、佇む彼女。

少し猫背な後ろ姿。



XX企業前に到着した淳の目に、その姿は飛び込んで来たのだった。

まだ空気が冷たい二月、彼は白い息を吐きながら彼女の姿を覗き込む。



オレンジ色の豊かな髪。ひと目で彼女だと分かった。

久しぶりに目にするその背中に、どこか懐かしさを感じる。



淳はボストンバッグを背負い直しながら、その場に立ち止まった。

彼女の後ろ姿から目が離せない。



じきに、Pick-upのカウンターから雪達に声が掛かった。

「まずコーヒー四つお渡しします。お待たせしましたー」



それを受け取ろうとした雪の元に、バイト仲間らしい男性がすぐに駆け寄った。

どうやら「俺が持つよ」と声を掛けているらしい。



雪は首を振りつつ、何やら彼に話し掛けていたが、やがてその男に任せることにしたようだ。

バイト仲間達は親しげに会話を重ねている。





そんな彼女の様子を、淳はガラス越しにじっと眺めていた。

どこか面白くない気持ちを胸に秘めながら。



俺は一体何をやっているんだろう。

何度も頭を巡るその自虐的な問いが、またもゆらゆらと自身を揺らす。






そして淳は一歩踏み出した。

もう旅立ちの時間なのだ。

しかしそう考える思考とは裏腹に、心はじっとこの場に佇んだままだ‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<雪と淳>彼女の姿を でした。

淳ってば‥雪の姿見たさに少ない情報をかき集め、バイト先に出向くとは‥!

言ってやりたいですね。
「恋~しちゃったんだ~多分~気付いてないでしょ~」と!


次回は<雪と淳>彼の姿を です。

次で、雪が二年生の時の時系列は全て終わりだそうですよ!

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<淳>旅立ちの前に

2016-05-11 01:00:00 | 雪2年(<淳>旅立ちの前に~雪2年終了)
冷えた空気が、雲ひとつ無い空へと昇って行く。

高く聳えるビルが立ち並ぶ、ここは都内某所。



淳は自室にて、アメリカに居る母親と通話しているところだ。

「‥はい、まだ家です。飛行機の時間までまだあるので、

持って行く本を選別しようかと思って」




「ええ、気をつけます」



「空港に迎えの人間は要りませんよ」



冬休みを利用してアメリカに来る息子を心配してか、母は空港に人を寄越すと言ったが、淳はそれを断った。

続いて母は、帰国してからの息子の予定について話を振る。

「ええ、忙しいですよ。冬休みも」



淳は携帯を肩に挟みながら、空いた両手で本棚から何冊か本を取った。

「もう卒業控えてる身ですし、約束もいっぱいあって。目が回りそうですよ」



母親の声が大きく聞こえる。

「先の準備をするのも良いけど、休みは休みとして楽しまなきゃね」

「はい」



淳は行儀良く相槌を繰り返した。

もう手配済みの飛行機のチケットに目を留めながら。

「はい、はい‥」








通話を終えると、部屋の中はしんと静まり返った。

淳はただ真っ直ぐに前を向いている。



目の前の棚には、抜き出した本数冊分の隙間が空いていた。

ぎっしりと詰まっていたそれに、急に穴が空いたような隙間。



淳の心の中にも、どこか穴が空いたような気分だった。

旅立ちの前の空白の時間。

淳はあぐらをかきながら、ぼんやりとただその場に座っている。



僅かに首を傾けながら、淳はポツリと一言呟いた。

「冬休み‥」



淳の脳裏に、数日前の出来事が思い出された。

遠藤修を訪ねて行って、レポートを捨てて欲しいと依頼したこと‥。



後はもう遠藤が動き、全体首席のレポートが紛失し、

奨学金が赤山雪の元へと渡るのを静観しているしか他無い。

その後、赤山雪がどう出るか、淳はこの場で待つしか出来ないのだ‥。



それでも、じっとしてはいられなかった。

淳は急く心を持て余しながら、携帯へと手を伸ばす。



淳はおもむろに連絡先をスクロールし始めた。

<2年>伊吹聡美、<1年>福井太一、の箇所で手を止める。



二人の名前を選択し、淳はメッセージを打ち始めた。

文面を考えながら、ゆっくりと文章を作って行く。

こんにちは。青田です。

先学期、君たちにあまり良くしてあげられなくて申し訳なかったね。同じ経営学科の後輩なのに‥。

近いうち、開講前に君らと友人達で一緒に‥




‥まどろっこしいだろうか。

淳は作成した文章を、推敲の末打ち消した。

「‥‥‥‥」



今度はもう少し砕けた言い方にして、メッセージの中で本題を切り出すことにする。

元気?冬休み、楽しんでる?

ちょっと気になってることがあるんだけど、もしかして雪ちゃんって、ずっと大学を‥




いや、これも違うだろう。

というか一体自分は何をやっているのだろう。

出来ることなんてないはずだと、とっくに自身に言い聞かせているというのに。



淳は溜息を吐きながら、携帯電話を脇に置いた。

「何やってんだ」と、幾分自虐的に呟きながら。







淳はそのまま天井を仰いだ。

足を投げ出し、ゆっくりと床に寝転ぶ。



硬いフローリングの感触が、直に背中に伝わって来た。

見上げた天井は無機質に白く、淳の感情を曖昧にぼやかして行く。



先の見えない賭けのようなトラップの行末は、なんとなくしか掴めない。

根拠無き未来を、自分の策を信じて進んで行くしか。

淳はその場に寝転びながら、白い天井に、彼女の後ろ姿が走り去る残像をいつまでも追っていた‥。

「‥‥‥‥」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<淳>旅立ちの前に でした。

冬休み、淳はアメリカに飛んでいたのか‥。お母さんのお家に行くんですね。
(やっぱりビジネスクラスで行くんだろうか?)

以前車の中で淳が雪にこういうことを言っていましたが↓



雪のことがなければこのタイミングで留学していたのかも?

そのことの布石としての今回のこの場面なんですかねぇ。


そう仮定して考えると、淳が雪の為に犠牲にしたものってすごくありますよね。。

全体首席に留学に早期卒業に‥。

それだけ雪を、同類を渇望していたのな‥と少しホロリとしてしまうのでした‥。


4部32話はこれで終わりです。ではまた~


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