Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

彼の願い

2015-12-05 01:00:00 | 雪3年4部(彼女の意図~彼の願い)
バンッ



河村亮は握っていた姉の腕を、思い切り振り払った。

そのあまりの勢いに静香は木に打ち付けられたが、そんなことなど構って居られないくらい、亮は苛立っていた。



先程目にしたあの諍い。

あの時声を掛けなければ、今にも殴り合いが始まりそうだった。




いくつになっても血の気の多い姉。

亮は声を荒げて彼女を責める。

「なんで毎度毎度イチャモンつけんだよテメーは!!大概にしろよ?あぁ?!」



「淳にも!アイツにも!もう関わんなよ!」



佐藤広隆からもらった美術の本はコーヒーの染みで汚れ、濡れてしまった。

ガミガミと小うるさい弟の説教も加わって、静香の気分は最低だ。

「つーか淳に目つけられんの怖くねーのか?!手ぇ引けよ!」

「知るかよ‥クソ野郎‥



姉は弟の方を振り向こうとはせず、気持ちを持て余していた。

亮は静香に近づくと彼女の肩を掴み、無理矢理自分の方を向かせる。

「静香!おいっ!」



「姉ちゃん!頼むよっ!」



その叫びは怒りだけではない、どこか切羽詰まったような口調だった。

亮は静香の肩を揺さぶりながら、必死に説得を試みる。

「今からでも人間らしく生きようぜ!な?!姉ちゃんも!オレも!」



「‥真っ当な暮らしをしてみようぜ」



消え入りそうな声でそう呟く亮。

しかし目の前の姉はただ顔を顰めるばかりで、一向に弟の話を聞こうとしない。

「もうテメーだって潮時だろ!?なぁ!聞いてんのかよ?!」

「あー‥ムカツク



身を捩ってこの場から逃れようとする静香。

亮は必死に言い聞かせようとした。

「オレの話わかんねぇか?!答えろよ!」「ちょっ‥



しかしその言葉は静香には届かない。

亮は改めて顔を上げた。苛立ちのあまり、首元に青筋が浮かんでいる。



亮は強い力で姉の肩を掴むと、真っ直ぐにその目を見ながらこう口にした。

「静香。オレの願いなんだよ。オレは真っ当な暮らしがしたい。

そんな風に、生きたくなったんだよ」




言葉を紡ぐ内に、怒りはどこかへ消えて行った。

この胸の中にあるのはただ、純粋な願いが一つだけ。

「ちゃんとした人間になりてぇんだ」




「オレ‥」




それが彼の願いだった。

今まで逃げてばかりだった、彼の覚悟だ。




けれどその心の叫びは、静香の心には届かない。

バカバカしいと言わんばかりに、姉はただ顔を顰めているだけだ。



亮は再び顔を上げた。

逸る気持ちをぶつけるように、また大きな声で姉に詰め寄る。

「テメーはそうじゃねぇのかよ?!オレはそうしたいんだよ!!頼むよ!なぁ!」



真面目に、真っ当に、誰からも逃げることなく。

「なぁ!頼むから‥!!」



陽の下を堂々と歩きたい。

「なぁっ‥!!」



その魂の叫びが、秋の空に消えて行く‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼の願い>でした。

少し短めの記事で失礼しました。

亮さん‥こんなにも切羽詰まって‥。

でも全然静香に響いてないですよね‥。

「コイツまた何か言っとるわ」くらいにしか思ってないっぽいですよコレは↓‥



亮さんの気持ちが先走ってしまってる感じですね。静香は地方で働いていた時の社長のことも知らないわけですしね。

この姉弟は自分の主張ばかりをぶつけ合って、互いの気持ちを推し量ることが出来てないような気がしますね‥。


次回は<事件勃発>です。


☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!

人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

彼女のグループ

2015-12-03 01:00:00 | 雪3年4部(彼女の意図~彼の願い)
クンクン‥



教室の前へとやって来た雪は、ずっと髪の毛の匂いを嗅いでいた。

一応洗ったのに‥



先程河村静香から掛けられたコーヒーの匂いが、髪の毛に染み付いて離れない。

雪が溜息を吐いていると、不意にポケットの中の携帯が震えた。

あたしちょっと遅れるね



送信主は吉田海だ。

雪が彼女にメッセージを送ると、すぐに返事が来た。

どうしたの? 前のバスが事故ったみたいで

ひゃー!気をつけて来てね



そうメッセージを送って、二人のやり取りは終わった。

雪は携帯を見つめながら、一人考えに耽っている。

「ふぅん‥」







すると廊下の先に、見慣れた後ろ姿が目に入った。

「あ!聡美!」



声を掛けられた伊吹聡美は、ゆっくりと雪の方へと振り向く。

ゲッソリ‥



???



そのやつれた聡美の顔を見て、思わず雪は目を見開いた。

合流した二人は、とりあえず共に教室へと入って行く。






「教授、20分くらい遅れるみたいです」「なーんだ」



その知らせを受けて、教室内はザワザワと騒がしくなった。

佐藤と並んで座っていた柳楓は、ドアから見知った後輩が入って来たのを見て立ち上がる。

「お!赤山ちゃん!伊吹ちゃん!よぉ~ッス!」「こんにちは」

 

雪は柳に挨拶をしながら、教室の中へと歩を進めた。

すると柳は雪の近くでフンフンと匂いを嗅ぎ、疑問符を浮かべる。

「ん?コーヒーの香水かなんかつけた?」「う‥いえ‥」



(そんな会話をしている雪と柳の横で、聡美はまるで魂が抜けたかのようにボーッとしていた)

彼らはワイワイとお喋りをしながら、互いに近くの席に腰掛ける。







糸井直美はそんな彼らの姿を睨みながら、フンと小さく息を吐いた。

そして教室に入って来た先輩を見つけると、笑顔を浮かべて彼に近づく。

「健太先輩~!」「おお、糸井!なーコレ見た?」「見ましたよ~マジウケるんですけど」

 

健太と直美は、いつの間にかかなりの親密さを有していた。

雪は半ば呆れた気持ちでそれを見ながら、やはりコーヒー臭い髪の毛を気にしている。

マジでコーヒーの香水つけてねーの?



すると教室内に、直美の甲高い声が響き渡った。

「えー!本当に面接まで進んでるんですかー?!」



その言葉に、皆の視線が彼らに注がれる。

「マジマジ~」「わ~!おめでとうございます!」



健太はニヤニヤと笑いながら、聞こえよがしにこう言った。

「俺も近い内、大学生活にピリオドかもな!ははは!」



暫ししかめっ面でそれを聞いていた柳だが、不意にパッと笑顔を浮かべ口を開いた。

彼特有の愛嬌と人懐っこさで、健太の気持ちを上げていく。

「おお~!そうなんすか!」



「おめでとっす!良かったじゃないすか健太先輩!」

「おお。ま、お前らにも絶対チャンスは巡って来るからよ。諦めないで頑張ることだな!」

 

鼻高々でそう話す健太。

すると柳はピッと人差し指を立て、健太の話にこう切り込んだ。

「まぁそれでも、人生が全部思い通りになるワケじゃ無いっすよ」



「面接の結果はまだ分かんないワケですし、卒験の準備も手を抜けねーっすよね。

両方の準備しとかなきゃじゃねーすか?」
「こんにゃろ‥」



そう言って釘を刺す柳に、健太の顔がピキピキと引き攣った。

健太は柳を指差し、大きな声でこう叫ぶ。

「おい!人のことに口出す前に、自分こそちゃんとしろよ?!」

「あ、俺はキッチリやってるんで。先に就職キメた淳も超助けてくれますし」



「だ~よな?赤山ちゃん!」



柳はそう言って、笑顔で雪に同調を促した。

雪は未だ髪の毛を気にしながら、真ん丸い目を彼に向ける。



そして一言「ハイ」と返事した。

柳はクククと笑いながら「淳の過去問持ってんのかな~?アンタらはww」と口にする。




マジむかつく‥ なんなの



明らかな不満を顔に出して、健太と直美はこちらを見ていた。

雪はその状況を前にして、頭の中にある意図がゆるゆると展開して行くのを知る。



雪は柳に向かって、こう切り出した。

「それじゃグループ作って勉強会します?」



柳は乗り気だ。

「お?!そうしちゃう?!」



呆気に取られる健太と直美の前で、彼女のグループはジワジワと広がって行く。

「あの過去問、淳が書き足しも整理もめっちゃしてくれてるんだよな!佐藤、お前もやるか?」

「え?」



「あ‥それじゃ‥」「よっしゃ!」



佐藤も仲間に加わった。すると後方から、遅れて登場した彼女が声を上げる。

「あたしも!」「海ちゃん!着いたんだ」



「うん、一緒にやろ。バスの事故は?

「OK 遅れるから他の乗って来た



海も仲間に加わった。雪と柳は会話を続ける。

「人数少ないですかね?」「だなー。後で皆来たらまた聞いてみるわ。

赤山ちゃんも何人か呼びかけてみてよ」
「ハイ」



そして柳は、聞こえよがしにこう言った。

「何人集まるかなぁ~?」



上機嫌で口笛を吹く柳。

健太は怒りでブルブルと震えながら、じっと彼を睨んでいる。







雪は教室内のそんな状況を、一人じっと眺めていた。

組み敷いた意図が、周りの環境や人間模様に反応して自然と展開して行くのを。



すると不意に、隣に座っている聡美が声を掛けて来た。

「雪、雪」



「ん?どした?」「ちょっと飲み物飲み行こう」



弱々しい声でそう言う聡美の顔を見てみると、明らかに憔悴していた。

目の下にあるクマが、余計に彼女をゲッソリと見せている。



雪はそんな聡美を前に、改めてビックリした。

これは何かあるに違いない‥。

「行こ。私はさっき飲んだからパス



そう言って雪は、鞄を置いて席を立った。

これが後々、一つの騒動の種になる‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼女のグループ>でした。

明らかに健太直美VS柳佐藤雪 ですね~。

この図式が作りたくて「佐藤に借りたノートPC壊したのを柳のせいにした」事件があったのか‥。


そしてゲッソリしてる聡美‥。

いつもはオシャレさんなのに、服も髪型も超適当になっちゃってる‥


次回は<彼の願い>です。

☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!

人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

誰の味方

2015-12-01 01:00:00 | 雪3年4部(彼女の意図~彼の願い)
「おいっ!止めろっ!!」







背後から掛かったその声に振り向くと、そこには意外な組み合わせの二名がこちらを向いて立っていた。

佐藤広隆と、河村亮である。



雪は未だ険しい顔のまま、こちらを向いている亮の方を見た。

亮は眉をひそめながら、臨戦態勢の女二人を無言で眺めている。



今にも雪に掴みかかろうとする静香を、佐藤が彼女の腕を取って引き止めた。

「どうしたんだよ?!魔が差したか?!」

「ちょっと!止めないでよ!今日こそはこの女っ‥!」



「もう!離してよっ!!」



声を荒げる静香の隣で、亮は地面に視線を落としていた。

散らばった本やプリントはどれも破れたりグチャグチャになったりした上に、

コーヒーの染みがべったりと付いている。



それを見た雪の心に、罪悪感がじわじわと積もる。

すると静香は地面に落ちた本を拾い上げると、大きな声でこう言った。

「見てよこれ!この本!広隆があたしにくれた本が!

あたしがこれをどんなに大切にしてたと思ってんの?!」




その静香の言葉に、佐藤は幾分動揺していた。

静香の主張は続く。

「見たでしょこれ!ねぇ見たでしょ?!プリントにコーヒー零したからって、

こいつは本をこんな風にしやがったのよ!わざとじゃないのに!」







佐藤はその静香の言葉を聞いた後、あからさまに眉を寄せた。

佐藤は静香から視線を外すと、地面に座ったままの雪に手を差し伸べる。

「大丈夫か?」「え?あ‥はい」



その光景を見て、思わず静香は「は?」と声を出した。

お前が助けるべきはその女じゃなくあたしだろう?と。



「な‥な‥何なの?!もう一度本見なよ!ほらこれ!」

「だからってこの子にコーヒーぶち撒けてどうするんだよ」



佐藤は静香の方を向き、彼女に向かってビシッと言った。

「危ないじゃないか!それに都度感情をすぐ表に出すのは良くないぞ」

「はぁ?」



まるで説教のような佐藤の言葉に、静香は怒りの形相で迫る。

「広隆‥アンタこの子の肩を持つつもり‥?あぁ?!」

「い‥いやそういうわけじゃ‥カムバック理性‥



その形相に一瞬佐藤はたじろいだが、再び彼は顔を上げて声を張った。

「この子は俺の後輩なんだ。それに君はちょっとやり過ぎ‥」

「あー止め止め」



しかし最後まで言い切る前に、ストップが掛かった。

河村亮は佐藤の肩に手を置き、目を閉じたまま首を数回横に振る。







亮が目を開けて最初に視線を流した先は、静香でも佐藤でも無かった。

亮は静かに口を開く。

「ダメージ」



思わず目を見開く雪。亮は彼女を凝視しながら、淡々と言葉を続ける。

「コイツのこと刺激すんなって、似たようなこと言ったことあると思うんだけど」



「覚えてねぇか?」「え?」



突然自分に矛先が向けられたことに、雪は戸惑いを隠せなかった。

咄嗟に反論が口を突いて出る。

「や‥でもこの人が‥」

「だからってコイツと同じ土俵でヤバイことしてどーすんだよ」



亮の口調は冷静だ。

いや、それを通り越して、冷淡に近い。

「お前って賢かったんじゃなかったっけ」



「あ‥それは‥」



返す言葉が続かない。

口ごもっている雪を残して、亮は結論を下し、静香は大声でまくし立てる。

「もーいい。クリーニング代、社長に預けておくから」

「クリーニング代って何よクリーニング代って!

あたしの本弁償しなさいよ!そんで広隆!アンタには失望したわよっ!」




何度目かの”失望”発言で、地味にメンタルを削られている佐藤と、

徐々に苛立ちが募って行く雪。



「本代は?!本代!」としつこく食い下がる静香に、

とうとう雪の堪忍袋の緒が切れた。

「あーもう!弁償するってばっ!!」



雪は声を荒げながら、バッグから財布を取り出す。

「その本いくらよ?!払えば良いんでしょ?!」



そう言って雪は、札入れから札を取り出そうとした。

しかし財布を開いた瞬間、その手の動きがピタと止まる。









小さく「百円‥」と呟く雪と、彼女に注目する周りの三人。

その中で誰よりも目を丸くしているのは、雪本人であった。



‥お金が無い。

札が一枚も入っていない‥。



河村姉弟がじっと雪のことを見ている。

雪は頭の中で(☓日分の交通費や食費を引いて考えると‥)とすばやく算段をしながら、途切れ途切れに声を出した。

「口座‥にお金はあるから‥銀行に‥」



静香が訝しげな目つきで雪を見る。

「ホントでしょうね?」



雪はギクッと身を震わせたが、その後小さく頷いた。

すると静香はコロッと態度を変え、あまつさえ微笑みを浮かべて雪に話し掛ける。

「じゃ、いーわ。社長令嬢~オベンキョ頑張って下さいね~?

あたしにも良心ってモンがあるからぁww」




そして静香はこの場から去るべく、皆に背を向け歩き出した。

姉の後を、亮が黙って付いて行く。



呆れたような、訝るような、壁を一枚も二枚も感じるその表情。

雪はそんな亮の顔から目が離せなかった。

「広隆!アンタ覚えときなさいよ!」







親しげな仕草も調子の良い言葉も、何も示さずに亮は雪から背を向けた。

雪はただその場に突っ立ったままで、彼らの足元をじっと見ている。






心の中に、乾いた風が吹き抜けて行くようだ。

雪はカサカサした感情を噛み締めながら、ただ俯いていた。



握り締めた財布は、薄くてペタンとしていた。

まるで擦り減らされて行く自分自身のように。







ふと視線を上げると、二人の背中が見えた。

亮が静香を小突きながら、並んで歩いて行く。




雪の脳裏に、ふと様々な場面が浮かんで来た。


「おい、もしウチの姉ちゃんと喧嘩することがあれば、まずは髪の毛を引っ掴めよ!」



そう言って静香撃退法を伝授しようとした亮。

お互い憎まれ口を叩きながら、一緒に地下鉄に乗って帰った。



「ったく!何言ってんだかマジで!いいからメシくらい食って来いっつーの!」



あの時、亮がああ振る舞ってくれたお陰で、家族は共に食事をすることが出来た。

彼が居なければ、未だ家族の間には亀裂が入ったままだったかもしれない。



 

最後に、図書館で共に勉強した時の場面が、記憶の中で再生される。

言い争うこともあったけれど、あの時確かに彼は、自分の味方だったー‥。





「おい‥」



俯きながら大きく息を吐く雪に、佐藤は心配そうに声を掛けた。

雪は息を吐き切ると、パッと笑顔を浮かべ、佐藤の方を向く。

「行きましょ」「あぁ‥」



「助けて下さってありがとうございました」「いや別に‥」

「でも大丈夫ですかね?」「‥‥



そして雪は、佐藤と並んで歩いて行った。

髪の毛が揺れる度に臭う、コーヒーの匂いに辟易しながら‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<誰の味方>でした。

雪ちゃん‥100円しか持ってないのか‥どうやってお金を工面するんでしょう‥。

そしてなんだか冷たい態度の亮さんが切ないですね。

佐藤先輩は変な情に流されず、物事を客観的に見ることが出来てステキです。
(でもちょっと世渡り下手?そのへんが雪ちゃんに似てるのかも‥)


次回は<彼女のグループ>です。


☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!

人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

女の戦い

2015-11-29 01:00:00 | 雪3年4部(彼女の意図~彼の願い)


構内を闊歩する美しき虎、河村静香。

そんな彼女の前に現れたのは、げんなりとしたライオン、赤山雪である。



美しく輝いている静香の前で、雪はあからさまに顔を顰めた。

顔を見合わせながら、二人は暫し固まっている。



先に口を開いたのは静香だった。こちらもあからさまに嫌な顔をしている。

「あぁーーっもう!どうしてやたらめったら会うのよ!こんなに大学広いのに!」

「いえ、この建物に用事があって‥」



静香は雪の方へと近付くと、皮肉るような表情で言葉を続けた。

雪は前を向いたまま、淡々と彼女の質問に答える。

「広隆?」「はい」

「ふざけんじゃねーよ。広隆はあたしと行くんだけど?」

「何言ってるんですか?佐藤先輩は私と勉強しに行くんですよ?」

「は?広隆があたしを置いてどうしてアンタと?」



雪は「それはですね、」と前置きした後、バンッとプリントを掲げて見せた。

「財・務・学・会!」



「一緒に課題やるんですよ、課題。

急ぎですんで邪魔しないで下さいね」




そっけなくそう言って、雪は静香に背を向けた。

静香の顔がみるみる歪んで行く。

「このクソ××‥!」



鬼の様な形相で、静香が追って来た。

「マジで人生そんなもんに捧げんの?!

勉強勉強でポックリ逝ったら心残りで成仏出来ないとか考えないワケ?!

つーかそれに広隆を巻き込むんじゃないわよ!あぁ?!」


「それじゃあマジで一緒に勉強すれば良いじゃないですか」



雪は溜息を吐いた後、静香の方に向き直って口を開く。

「一緒に行きます?」



しかし静香はその言葉に対し、吐き捨てるように言った。

「悪あがきっての?みっともな」



雪のその誘いが、上辺だけのそれだと分かっていたからだった。

雪はそんな静香に別れの挨拶を口にし、パッと背を向ける。

「はい、それじゃこれで」「は?何だっつーの?」



しかし想定外なことに、静香はその背中を追った。

「ちょ、アンタ!誰が嫌だっつったよ?一緒に行くって」



タタタ、と小走りで雪の背中に駆け寄る静香。

「アンタって見かけより‥」



「冷たいのね?」「キャッ!」



追いつくその勢いのまま、彼女は雪に体当たりをかました。

思わず前のめりに転ぶ雪。

「あらぁ?」



「あらぁ~ごめんねぇ~あたし貧血持ちで‥」

「いやいやいや今押しましたよね?!



わざとらしい静香の演技に青筋を立てる雪。

すると静香は、なんと足元に落ちたプリントにコーヒーを零したのだった。

「あらっ!」



「あらあらあらあらどうしよ~~!すぐに拭いてあげるわぁぁ!」



そう言いながら、静香はプリントをグチャグチャに踏み潰した。

そしてそれを指の先で摘み上げ、半笑いを噛み殺しながらこう口にする。

「あーあ。ごめんね?」



「勉強出来なくなっちゃったー」



信じられない展開に、思わず口をあんぐりと開けて固まる雪。

しかし雪は勝ち誇ったような静香を見上げながら、冷静にこう返答した。

「いえ、また貰えばいいですから。」

「このクソッ!」



地団駄を踏む勢いで悔しがる静香。

雪は溜息を吐きながら、散らかった本やプリントに手を伸ばす。

「はぁ‥マジか‥」



しかし冷静な行動とは裏腹に、心の中で振り切れていく怒りのバロメーター。

徐々に雪の顔が歪んで行く。



そして雪は立ち上がると見せかけて、静香に向かってタックルをかましたのだった。

「あっ!足元にネズミが!」「ギャッ?!」



バシャン!



するとその勢いで静香の持っていたコーヒーが落ち、その中身が彼女の持っていた本にぶち撒けられた。

その光景を目にしながら、思わず固まる二人。







先ほどまで振り切っていた怒りのバロメーターは、逆方向に向かってメーターを上げていく。

ヤバイ、マズイ、そんな感情が心の中に膨れ上がる。



雪はゆっくりと静香の方へと顔を向けた。

は‥と声にならない声が口から漏れる。







次第に上がっていく静香の手が、まるでスローモーションのように見えた。

それが振り下ろされるのとほぼ同時に、雪はそれを避けるため身を捩る。

「ぶっ殺す!!」「ヒィィィッ!」



地面に膝をついた雪めがけて、静香は落ちていたコーヒーを拾って彼女にそれを投げつけた。

雪は頭を庇う姿勢で、その攻撃に身を竦める。

「キャッ!」

 

コーヒーの飛沫が髪を濡らした。雪は青い顔で静香を見上げる。

静香は怒りのあまり俯いていた。

マジで何なの‥



雪の心の中で、再び怒りのメーターがぐんぐんと上がって行く。

は?”仲良くしよう”?

私にこんな仕打ちしといて?私が住んでる所も、私自身もディスって‥




雪の脳裏に、これまで静香に対して取っていた自分の態度が次々と浮かんで来た。

ずっと笑って流して避けて、様子見てたけど‥



考えれば考える程、今のこの状況もこの女も、あり得ない。

私のこと、お人好しバカだとでも思ってんの!?



なめられるばかりじゃいられない。

雪はグッと鞄を掴んで、自分を見下ろしている虎に牙を剥くーーーー‥。

「このクレイジー女ぁっ‥!!」



女の戦いにゴングが鳴る、そう思われた時だった。


「おいっ!止めろっ!!」







背後から掛かったその声に、目を見開いて振り向く二人‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<女の戦い>でした。

コーヒー零すのは‥ナシでしょう‥静香さん‥

本当子供の喧嘩っぽいですよね。それでも裏でコソコソやられるよりは良い‥のか‥?


次回は<誰の味方>です。


☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!

人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

自信の裏付け

2015-11-27 01:00:00 | 雪3年4部(彼女の意図~彼の願い)
翌日。



A大学のカフェテリアにて、意外な組み合わせの二人組がテーブルを囲んでいた。

「はぁーーーーー」



「うちの姉ちゃんの話なんだけどよぉ‥」



河村亮×佐藤広隆。

キャンパス内にて佐藤を見つけた亮は、お得意の「メシおごれ」作戦でハンバーガーをゲットした。

佐藤は心の中で静香の弟静香の弟静香の弟静香の弟と念仏のように唱えて今の状況に耐えている。



亮は溜め息を一つ吐いた後こう言った。

「超のつく金好きでよ」



その言葉に、佐藤は心の中で「よく存じ上げております」と唱えた。

亮は目を閉じながら、しみじみと自分の姉という人間について話す。

「性格も汚ぇし、人に頼る(吸い尽くす)んも好きだし、

超メンクイだし、100%俗っぽいもんで出来てんじゃねって感じだし」




静香の特性が口にされる度に、生気が萎えて行く佐藤。

「それでも人間なんだから、弱点が無いワケは無いけどな」



その言葉を聞いて、佐藤はパアッと息を吹き返した。

「こっち一人前追加で!」「注文はカウンターでお願いします」



どさくさに紛れて追加注文しようとする亮のことなどそっちのけで、佐藤はモゴモゴと口を動かす。

「そ、そうだよな。彼女みたいなタイプは、心に弱みを抱えてるってこともあるから‥」

とりあえず変なヤツじゃなさそーだな。もうちっと様子見てみっか



亮はそんな佐藤のことを眺めながら、冷静にそう判断を下した。

ひとまずこの眼鏡の男は、変な目的を持って姉に近付いているわけではなさそうだ、と。







ところ変わってこちらは売店。

サンドイッチを齧りながら、太一が口を開いた。

「つーか雪さん、聡美さんって何かあったんスか?」



「何かって?」



雪は首を捻りながら太一からの質問に答える。

「さぁ‥私が知る限りは何も無いハズだけど‥。

お父さんも退院したって言うし」
「そうっすよね」



しかし記憶を辿ると、確かに聡美はちょっとおかしかったかもしれない。

雪は「そういえば‥」と昨日聡美と交わした会話を太一に教えた。

<昨日>

「なんでこんなに遅れたのよ!授業終わっちゃったじゃん!」

「超便秘で‥」



けれど聡美がどこかおかしいということは分かっても、その理由が分からない。

雪は眉を寄せながら、親友の現状について頭を痛めた。

「はぁ‥」



雪は溜息を吐きつつ、サンドイッチを頬張る太一にこう言っておく。

「何か分かったらメールするよ」「ハーイ。つーか雪さんこんだけしか食べないんスか?」

「うん。私もダイエット」「ほう」



グルグルと鳴るお腹を押さえながら、雪はそう言って売店を後にした。

太一と別れた後、一人図書館へと向かう。



やることはウンザリするほどあった。

雪は机に広げたテキストを片っ端から片付けて行く。



頭の中に、先日先輩から言われた言葉が蘇った。

「会うの大変かもだけど‥努力してみよう」



彼の口から出た”努力”という言葉が、雪の心に残っていた。

自分の方を見ながら、嬉しそうにこう言う彼の姿も。

「来週末は映画観に行こっか」



雪は肩を回しながら、今自分が取り組むべき仕事を改めて確認する。

週末まで資料の調査+勉強、期末準備、課題の資料も準備して‥



彼があれだけ余裕を持ってそう言えるのは、それが可能だという根拠と裏付けが見えているからだ。

”努力”を惜しまない彼と彼女だからこそ見える、その自信の裏付けがー‥。








A大学敷地内、美術学科の近辺。

その女は美術のテキストに挟んである、「展示会」のチケットを見ながら構内を歩いていた。

 




その女、河村静香。

ウインドウに映る姿は、今日も見目麗しい。



静香は得意気な笑みを口元に浮かべながら、髪の毛を軽く耳に掛けた。

ほらね。超イケてる美大生スタイルじゃん?あたしってば



右手に美術のテキスト、左手にカフェ。

静香は誰よりも美しく、キャンパス内を闊歩する。



脳裏に、高校時代の記憶が思い浮かんだ。

「弟さんはピアノでお姉さんは美術?」「ステキ!」「芸術家一家なのね」



羨望の眼差し、感嘆の溜息。

彼女の自信を支えるのは、いつもそんな他者からの評価。



今の自分を目にした誰もが、憧れの眼差しを送って来るだろう。

そんな確かな自信が、今河村静香を支えているーーー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<自信の裏付け>でした。

ここのコマ下方、紺色に白地で「BGM 猟奇的な彼女」と書かれています。






日本でも有名な映画ですよね!

BGMがどの曲を指すのかはいまいち分かりませんが‥。


さて今回は、雪と静香、それぞれの自信の在処のようなものが浮き彫りになったような回でしたね。

雪は努力とそれに付随した評価でそれを得て、静香は外面や他者からの評価でそれを得る‥。

静香が本当に求めているものは、そこには無い気がするんですけどね。

彼女がそれに向き合う時は来るのか、これからの展開が楽しみですね。


次回は<女の戦い>です。

☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!

人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!