Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

見えない相手

2014-09-06 01:00:00 | 雪3年3部(彼を待つ~窮地と逆上)
横山の元から早足で去った雪は、先ほどのことを思い出すにつれ段々小走りになっていった。心臓が早鐘を打つ。

私の人生の中で女優の真似事をする日が来るとは‥。

変なことが起こりすぎて、おかしなことばかり達者になってるな、私‥。




勢いでウソを重ねてしまった‥。雪は、これからどうするべきか考えあぐねた。

さてどうする?河村氏のお姉さんに話して、口裏合わせとくべきか?

いや‥何で私がそこまでしなきゃならないんだ‥。




よくよく考えてみると先ほど吐いたウソは、この先そこまで大事にはならなそうな内容だ。

フォローを入れなくても大丈夫、と安心する傍らで、なぜ自分がここまで神経を使っているのだと思い苛立った。

あーもう!一体なにやってんの私!

これも全部、先輩が皆に悪口言われて誤解されると思ったから‥!




雪は両手で顔面を覆いながら、こじれていく現状に頭を抱えた。

なぜここまでストレスを抱えなければならないのか。咄嗟に吐いたウソも今の展開も、全ては先輩の為なのに‥。



雪は苛立つ気持ちを押さえながら、先輩へ電話を掛けた。しかし案の定、彼は電話に出ない。

出ませんかそーですか。何が起こってるのかすら知りませんかそーですかっ



雪はくさくさしながら携帯をポイッと投げた。

そして授業開始時刻に合わせ、急いで教室へと駆け込んだ。





雪が授業を受けていると、不意に携帯電話が震えた。見てみると、彼からのメールが届いている。

ごめん。会議中で電話に出られなかった



雪はその短い文に、自分も短文で返事を返す。

今日も忙しいんですか?

 

そしてこれだけは伝えたいと思っていることを、続けて文字に連ねる。

先輩が怒ってるのは分かってるけど、

私も聞きたいことや答えて欲しいことがいっぱいあります。




メッセージを書き込んだ後、雪は再び携帯を机の上に置いて返事を待った。

授業を進める教授の声が、耳から耳へと滑って行く。



そして数分後、彼から短い返事が来た。

俺も



そして続けて、彼の気持ちが文字に連なる。

すぐ行こうと思ってたけど、色々あって‥そのままになってた。

仕事が終わり次第すぐに行くから




今まで背を向け沈黙を守っていた彼が、少しだけ振り向いた。

でもまだその心の中は分からない。

会って話しても、固く閉ざされた心の扉を、彼は開けてくれるだろうか‥。



雪はその後上の空で授業を聞いた。

文字の向こうに居る見えない相手のことを、ただずっと考えながら‥。







その日の夜、横山翔は再びあのWEB掲示板に張り付いていた。

そこにはこんなメッセージと共に、自分の写真が山のように貼り付けられている。

まだ写真はたくさんある



隠れて赤山の後ろ姿を撮る自分、彼女の細い足にシャッターを切る自分、

図書館で働く彼女を本棚の影で見つめる自分。写真はわんさとあった。

 

そしてそれに続く掲示板では、この写真を見たスレ住人達が好き勝手に書き込んでいる。

お?ここどー見てもA大じゃね?A大通ってる奴だれかいねーの?

てかdisってもdisってもどんどんクソな面が出てくるな。てかこんなん書いてマジ大丈夫なの?俺はおもろいからいーけどw

なんだよやめんなよ。もっとうpキボン。

いやまじでコイツクズだわw 氏ねばいーのに




横山はそれを見て顔面蒼白した。

ついにA大ということまで明らかにされ、いつの間にか自分が危険人物として認知されつつある。



横山は血相を変えながらキーボードを打った。

い、今まで書き込んだ文は全部消したのに‥!

畜生‥これ全部キャプチャーして警察に‥




そう思って全ての文をコピーしようと試みるが、きっとこれを持って警察に行った所で‥。

ところでこの、あなたがストーカーというのは事実なのですか?



こう言われて墓穴を掘ることになりかねない。

横山はどうすることも出来ない現状に、ただ苛立っていた。

「クソがっ‥!!」



ガシャン、とキーボードは机に当たって落ちた。横山の心の中に、漠然とした不安が広がって行く。







翌朝大学に登校する時も、いつ後ろ指を刺されるかと気が気じゃなかった。

横山がビクビクしながら構内を歩いていると、不意に後ろから声が掛かる。

「おい!」



心臓がビクリと跳ね、全身が硬直した。

横山が恐る恐る振り向くと、そこには手を上げて走り寄る柳瀬健太の姿がある。



横山は胸を撫で下ろしたが次の瞬間苛立ちが襲って来て、先輩に向かってぞんざいな声を出した。

「な、なんなんスか?!」「なぁお前もしかして‥何か写真撮られたりしたか?」



”写真”というワードに、横山はヒッと息を呑んだが、とりあえず心を落ち着けて笑顔を浮かべた。

健太はヒソヒソと横山に耳打ちをする。

「ど、どういうことスか?」

「いや~◯◯サイトにイッてる野郎の写真が上がっててよ、それがどーにもこーにも‥」



そして健太は横山に携帯画面を見せた。そこには横山が昨日目にした、あの写真が映っている。

「ほらほら!これお前じゃね?」



ピキッと、横山の表情が固まった。

恐るべし柳瀬健太‥。普段は鈍いくせに、いざという時に野生の勘が働き、厄介な物に鼻が利く。

横山は苛立ちながら、健太に対して言葉を返した。

「俺じゃないっスよ!俺がそんなヤバイことするわけないっしょ?!

それでなくても俺最近不幸続きなんすから、もう絡まんで下さいよ!」




ウザそうに健太を追い払う横山に、健太も青筋を立てながら「あーそうかよ。エッラそうに」と言葉を返し、背を向けた。

どう見ても横山の写真なのに‥と健太は首を傾げながら去って行く。



横山の心の中に、不安がじわじわと波のように押し寄せる。

その場に立ち尽くした横山の、握った両の拳が震えている。



そんな横山の横を、直美を含む同期女子達が歩いて行く。彼女達は、すれ違いざまに横山を罵倒した。

「うわっ最悪!クズ野郎!」



四面楚歌だった。誰も自分の味方になってくれる人は居ない。

横山は苛立ちながら、こうなってしまった原因の雪に向かってメールを打つ。

クソが!あのヤンキー野郎がネットに俺のこと書き込んでんだろ!?

いい加減止めねーとマジで告訴すんぞ!




メッセージを送信してから、横山は周りを見回した。

その顔には冷や汗とも脂汗ともつかぬ汗が、滝のように流れている。



構内には平和な風景が広がっているのに、通行人は誰も自分を見ていないのに、

横山は怖くてたまらなかった。全身にかいた汗が、みるみる内に冷たくなって行く。



横山は目を皿のようにしながら、木々の間や建物の影を必死に探した。

見えないその相手の姿を。向けられる携帯電話を。聞こえないそのシャッター音を。

どこだ‥どこで見てやがる‥!



どこにも姿が見えない。その素顔は謎のベールで包まれている。

横山は身を震わせる恐怖と共に、抑え切れない程の怒りが全身を包むのを感じた。

「クソがぁっ‥!!!」



横山は吼えた。その場で何度も地団駄を踏む。

しかし不安と恐怖は消えない。再び全身に汗が吹き出す。



見えない相手がどこかから自分を見つめ、そしてそのシャッターを切る‥。

横山は経験したことのないその恐怖に、全身を震わせていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<見えない相手>でした。

横山よ、それはあなたによってずっと雪が経験してきた恐怖ですよ‥。(と言ってやりたい)

ただ横山は相手が見えない分、恐怖も大きいのかもしれません。

そして横山ガン無視の直美‥(笑)




次回<窮地と逆上(1)>です。

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