Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

2017-01-31 01:00:00 | 雪3年4部(本意と不本意〜因果)


陽が傾いて暫く経った頃、再び河村静香は佐藤広隆の前に現れた。

その足取りはふらふらとおぼつかない。



「あっ」



堪らず佐藤は静香の元に駆け寄った。

「どこか悪いのか?今日おかしいぞ?」「ほっといてよ‥」

ほっといて欲しいならどうしてちょくちょく現れるんだよ!



その手にはチケットが二枚握られている。



それは、先程小西恵から貰ったものだ。

「これどうぞ」



「前に静香さんにあげたんですけど、行かなかったみたいなので。展示会の招待券です

新しいの差し上げますから、デートがてら沢山お話でもしてきて下さい。それじゃあたしは彼と会うので〜


「デ‥デートって‥」



佐藤は「デート」という言葉に動揺しながら、そのチケットを手にどう彼女を誘おうかと考えあぐねていた。

チラと静香の方を窺ってみる。



そこにはぼんやりと空を見つめる静香が一人佇んでいた。

佐藤の胸中が複雑に揺れる。

いや‥あんな様子なのにそんなこと言えないだろ‥。

どうすれば元気にしてあげられる‥




彼女のその寂しそうな横顔を見ていると、胸がざわめいた。

それはデートだなんて甘い響きよりももっと、佐藤の心を如実に揺らすー‥。







不意に静香は佐藤に背を向け、ふらつく足取りでそのまま歩いて行った。

思わず呼び止める佐藤。

「えっ?」「行くわ」

「どこへ行くんだ?!おい!静香さん!」



「静香!!」






”静香”



どこかから声が聴こえる。

「静香」



それはかつて、心の糧としていた者達の声。

「風邪引くなよ」



「すまん」



「こっちにおいで。今日学校では何事も無かったか?」



見る間に遠くなって行く。

残るのは暗く苦しい現実だけ。

「亮を探してるのかい?あの子ならいないよ!」



最後には、自分の声だけが暗闇に響いた。

もう一度、もう一度探さなきゃ‥あたしの人生‥終わっちゃう








自身を追い詰める焦燥感。

気がつけば家の前の道に辿り着いていた。目の前には、見覚えのある靴がある。



顔を上げると弟の姿があった。

目深に被ったキャップのせいで、その表情はよく分からない。



静香は呂律の回らない口調で、揶揄するように話し始めた。

「アンタあたしのことからかってんでしょ?マジで出てくつもり?」



「だったらどうして戻って来たのよ。また逃げるつもりなの?

あたしを置いて自分は好き勝手生きてくの?ねぇ」




「結局淳に弄ばれたまま逃げるんだ?

アンタ、さも自分から許したみたいにかっこつけてるけど、嵌められてんだよ!このクソが!」




静香はニヤリと口元に微笑を称えると、遂に秘めて来たその切り札を切る。

「ねぇ、面白い話をしてあげるわ」



それはあの暴行事件があった数日後のことー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<糧>でした。

亮さん‥どうしたのこのどすこい感‥。



だるまみたいです‥。

次回は<亮と静香>高校時代(32)ー後日録ー です。

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二人の未来

2017-01-29 01:00:00 | 雪3年4部(本意と不本意〜因果)


試験後のがらんとした美大の教室で、とうとう蓮がこう言った。

「俺‥アメリカ戻るわ」



重苦しい蓮の告白は続く。

「今すぐじゃなくて新学期に合わせてだけど‥」「うん!よく決心したね!」



しかし蓮にとっての苦渋の決断を、恵はまるで待ってましたと言わんばかりに喜んだ。

思わず蓮の目に涙が滲む。



「キンカン〜〜〜!」「!」



蓮は立ち上がって主張するも、恵はいたって冷静だ。

「アンタ本当に冷たい人ね!?ちょっとは寂しいとか悲しいとか何かないわけ?!」

「だって元々アメリカにいた人が戻るってだけじゃない」「そうだけども!」



「いいさ‥旅立つさ‥あば‥よ」



いっそ清々しいほどの恵の態度に、蓮は脱力して涙した。

すると次の瞬間、恵の口から衝撃発言が飛び出したのだった。

「ていうかあたしもアメリカ行くから」



「へ‥」



「ええっ?!」



寝耳に水のその告白に、蓮は目を白黒させて再び立ち上がる。

「どーゆーこと?!キンカン、お前‥!」



「留学?!いつ?!ま‥まさか俺の為に‥?」「ちーがうって」



恵は蓮の大声に耳を塞ぎながら、決意したその心の中を語り出した。

「休みの間行くことも出来るし、交流学校だってあるし、方法は色々でしょ?

離れ離れになるのだけが答えじゃないよ。まったく馬鹿なんだから」




「けど、ただの衝動で決めたわけじゃない。

蓮とあたしの未来がどうすればもっと良くなるだろうって真剣に考えた上で、」




「決めたことだから」



「め‥恵‥!」



二人が歩んでいる道は別々だけれど、どうすれば同じ早さで歩けるのかを、恵はずっと考えていた。

二人の未来を、より良いものにするために。



重ねた手は温かく、恵は柔らかに蓮の心を包み込む。

「だからもう二度とあんなバカな真似しちゃダメだよ?」「うん、うん!」



「分かった!分かったよ‥!」



「それでも浮かれずに残りの時間の過ごし方も考えよ」

「うわああん!」








”大事なものは全部ここにある”と、以前路地裏の隙間から空を見上げていた蓮は、

最後に一番大切な人を手に入れた。

一人では心細くて歩けない道も、二人一緒ならきっと大丈夫‥。









一方こちらは経営学科付近。

試験が終わった聡美はウキウキしながら待ち合わせ場所に急いでいた。

そこにはポケットに両手を突っ込みながら、彼女を待ってる彼が居る。



パアッ



太一の姿を目にした聡美は、思わず心が踊った。

大きな声で呼び掛ける。

「太一〜!」



太一は手を上げて応えた。

「聡美サン!」



もう冬本番の季節の中、カップルは腕を組んで歩き出す。

「寒い寒い〜」「寒〜イ」

「試験上手くいきましタ?これで全部終わりデスか?」

「明日教養一つ残ってるけど、オープンブックだから大丈夫」

「じゃあ俺明日も大学来ますネ。てか聡美さん、デートだからオシャレして来てくれたんデスか?」

「や、違うし!新しい服買ったから着てみただけ!」「そースか‥」



「可愛いデス」



「へへっ。行こ」



そうして二人は歩き出した。

腕を組んで、身を寄せ合って。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<二人の未来>でした。

蓮と恵、聡美と太一、それぞれの”二人の未来”に繋がる回でしたね^^

恵と蓮はこれで一段落ですね〜!ていうか恵が良い子すぎて‥。(本当に蓮でいいの?!)

二人一緒に頑張って行ってほしいと思います。

そしてサラッと「可愛い」と言う太一!さすがチートラ一いい男だな!!


次回は<糧>です。

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逆進

2017-01-27 01:00:00 | 雪3年4部(本意と不本意〜因果)
その頃大学では、うっかり美大に足を運んだ河村静香が眉をひそめて立っていた。

「何なの‥こっちに来ちゃったじゃない。赤山に会いに来たはずなのに‥」



目の前には佐藤広隆と小西恵がいる。



二人はふらつく静香に駆け寄った。

「君、酒飲んでるのか?!」

「静香さん、うちらの発表さっき終わったとこなんですよ!」



「どうして来なかったんですか?」



恵は残酷なまでに純粋な目をしながらそう聞いて来た。

静香の胸中が不快にざわめく。

「そりゃ‥」






恵が肩に掛けている絵画入れが、まるで嘲笑うかのように静香を刺激する。

”お前には無理なんだ”と。



瞬間、カッと火がついたかのような怒りが静香の身体を駆け抜けた。

「あたしがここの学生じゃなくてモグリだからだろっ‥!このクソがっ‥!」



そう叫びながら静香は手を振り上げた。

凄まじい打撃音が辺りに響くー‥。

バシッ‥!!!





ハッ



突然現実に引き戻された静香の目の前に、

小西恵が大きな目を見開いて立っていた。



先程見た光景は幻だった。

その頬を叩いてはいないし、佐藤も止めに入ったりはしていない。



突然キョトンとした静香を見て、二人は不思議そうに首を傾げる。

「どうした?」「大丈夫ですか?」



バッ



静香は何も言わず、勢い良く二人に背を向けた。

佐藤と恵はその静香の行動を前に、ただ疑問符を浮かべ立ち尽くす。







陽の当たる場所へと踏み出したはずが、いつの間にかまた暗く細い道に迷い込んでいた。

静香はふらつく足取りで、そのまま美大を一人去る‥。






既にネオンが灯り始めたビルの群衆を、傾いで落ちて行く冬の陽が斜めに照らす。

雪は地下鉄に乗りながら、先輩と通話していた。

「はい、試験は良く出来た‥わけじゃないですけど、頑張りましたよ。ははっ」



「もう冬休みだし、家庭教師のバイトを一つしようかなって。はい」



電話先の先輩はまだ会社にいるらしい。

「今日も遅くまで仕事ですか?

インターン生に厳しい会社ですよね〜。一体誰の会社だか。あはは」




「はい。早く会いたいです。うん。私も」



二人は恋人同士の挨拶を交わし、電話を切った。

「うん、うん、先輩も」






地下鉄の揺れに身を任せながら、雪は一人ぼんやりと空を見つめていた。

いつか芽生えた違和感の芽のことを、ほんの少しだけ思い出しながら‥。






青田淳は通話が終わった後の携帯電話を眺めながら、一人その場に佇んでいた。

今までと変わらない彼女とのやり取り。まるで時計の針を戻すかのような。



「青田君」



後ろから声が掛かり、振り返ると部長が立っていた。

「この間出してくれた企画書すごく良かったよ。初めてにしてはすごく良く書けていた」



部長は咳払いをしながらそう言って、肩を竦めてみせた。

どこかぎこちない様相だ。






淳は暫しそんな部長を見つめていたが、すぐにパッと笑顔を浮かべて礼を言う。

「ありがとうございます」



「まだまだ未熟者ですので、これからもご指導のほどよろしくお願いします」

「いや、止めてくれ」



「私の方こそ‥」



課の部長であるその男は、そう言って幾分畏まった。

それは単なるインターン生に対する態度としては、明らかにおかしいだろう。



淳はにっこりと笑顔を浮かべながら、父のあの言葉を再び思い出していた。

「世の中全てが、お前の思い通りになる訳ではない」








淳は時計の針を戻そうとしていた。

自分が今まで手にして来た物全てを駆使して、その父の言葉が誤りだということを証明してやると。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<逆進>でした。

静香‥それ幻ぃ〜〜!‥って本当に殴らなくてよかったです。黒雪が反撃に出るよ!

逆進、の題名の通り誰もが過去に引きずられている感じがする中、雪だけは前に進んでる気がして。
対比になってるんでしょうかね。

あと、以前も書きましたが韓国では電車内の通話は特にマナー違反ではないようです^^
ご心配なく‥!

次回は<二人の未来>です。

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メビウスの輪

2017-01-25 01:00:00 | 雪3年4部(本意と不本意〜因果)


雪と聡美は大学を出た後、ショッピングモールへとやって来た。

二人して雑貨などをブラブラと見て回る。

「ポケットカイロ?」「ボタン押すと暖かくなるんだってー」



ひとしきり見て回り歩き疲れた二人は、カフェで一息つくことにした。

「試験全部終わったの?」「うん」



「いいなーあたし明日教養が一つ残ってる」

「そんな難しくないんでしょ?ちゃちゃっと勉強しとけば大丈夫じゃない?」

「うう〜もう勉強したくない‥」



「あれ?てか明日大丈夫なの?お父さんの病院行くんでしょ?」

「大丈夫。午前中試験受けてからすぐ帰るし!」「良かった」



雪がそう相槌を打つと、突然聡美はギンと目を見開いてこう口にした。

「問題は太一よ!」



「軍隊に行く男に何をあげたら良いかって話よ!」

「良いものあげてもどうせ持って行けないもんねぇ」

「てか急展開すぎて考える余裕もないのよ!いくら見送る覚悟はしてるって言ってもさぁ、

煮え切らない関係続けてる間に軍隊行くこと言っとけっつー話よ!」




「太一は自分の話しないからねぇ‥一人で解決しちゃって



雪が軽く笑いながらそう言うと、それが聡美のゲキリンに触れた。

「それが寂しいんじゃないそれが!」



「雪もそうだけど太一もそうよ!

どうしてあたしの周りは全部一人で解決しようとする子ばっかかなぁ?!」


「なんでいきなり私に矛先が‥」



あの日聡美から言われた言葉が、鮮明に脳裏に蘇る。

「アンタはいつもそう!必要な場面で黙ってばかりいて!」







「あーもーマジでどうしよ〜検索してみよ」



物事を深く考え過ぎるくせに、それを口に出すことをひどく躊躇う。

それが雪の性分だが、それは彼に関しても言えることだった。



突然来校した先輩と一緒に授業を受けた時のこと。

先輩は前方の席に座った柳瀬健太の背中をじっと睨んでいた。

隣に座っていた雪が、いくら見つめても気付かない。



光を宿さぬその瞳には、領域を犯したターゲットの背中が映っている。



彼が考えていることは、聞かなくても分かる気がした。

いやどうせ聞いたところで、はぐらかされるだけだっただろう。



先輩が健太先輩に対して腹を立てるのは理解出来るけど、

やっぱり私の知らないところで事を進めていたんだな




どうして何も言ってくれなかったのと言えないのは、

私だって静香さんと勉強していたことを黙っていたからだ。




そう。私に彼を責める権利はない。



私は先輩がこういった行動に出る度、おかしいと言って怒っていたけれど、



結局私だって黙っていたことがあった。




以前聡美のお父さんが倒れた時、病院でこんなことを彼と話し合った。

「私も努力します。お互いに嫌なことがあったとしても全部忘れて」



「これからは失望することや不満に思うことがあれば、すぐに話し合って‥

私も、先輩も」




これから付き合って行く上での二人の約束事。

あの時彼は、それに笑顔で頷いた。

「ああ」




なのに。


何なんだろう、今の私達の状況は。まるでメビウスの輪のように繰り返す







相手の為という免罪符を掲げ口を噤み、自分の中で結論を下して事を進める。

彼も、そしていつしか彼女も。

それはまるで連鎖だった。

あたかもメビウスの輪のような。



「もー知らない!」



太一へのプレゼントの検索を諦めた聡美は、そう言って雪に笑い掛ける。

「雪!冬休みどっか遊びに行こう!ペンション借りてさ!女子旅しちゃおうよ!」

「うん、いいね」



あの日壊れるかと思った聡美との関係は、今も続いている。

仲直りの時本音を語ったお陰で、絆はより強固なものになった。




そのきっかけをくれたのは彼だった。




けれどその彼とはずっと、問題は平行線だ‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<メビウスの輪>でした。

似たもの同士故に繰り返してしまう負の連鎖‥。

そしてやっぱり健太を睨んでトントンしてた時の先輩、雪ちゃん見てたんですね。



そんな先輩も受け入れると言ってあげて欲しいですね。もう逃げないよと。

この二人は圧倒的に話すべき言葉が足りない‥。


細かいクラブとしては、先輩の後ろに回した手が塗り忘れ!




次回は<逆進>です。


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本意と不本意

2017-01-23 01:00:00 | 雪3年4部(本意と不本意〜因果)
「ってなわけよ!」



淳との間にあったカラクリを口にした柳は、そう言って得意そうに笑った。

見上げる雪は、初めて聞くその話に目を丸くしている。



「え?ってことは‥あの壊れた時計って、柳先輩からのプレゼントだったんですか?!」

「ウン。知らんかった?」



「淳に時計あげるつもりだったけど、既に赤山ちゃんがあげちゃってたじゃん?

けど違うデザインのだったらいいかなって思ってさ」




柳はそう言って、あの時計に関する裏話を暴露する。

「ツイッターとかブログとか鬼検索してカンペキなレプリカ探し出したからね!

まぁパチ物なんてちょっと恥ずかしいかな〜とは思ったけど、淳ってそういうのあんま気にしないじゃん?」


「ですよね。私のも露店物‥」「だろぉ〜?」



「赤山ちゃんが時計あげた時もあちこちに自慢してたしな!」



それが柳が淳に時計をあげるに至った顛末であった。

淳の他に唯一真実を知っていた柳は、おかしくて仕方がないようだ。

「ってか‥」



「健太の奴マジウケるんだけど!!!」



「アイツ何十万もする時計だと思いこんで大騒ぎしたのに、結局数千円だったっていうね!

いやもうマジでウケるわーー!!ギャハハハ!!」




柳は思い切り高笑いしながら、健太に対する鬱憤を存分に晴らしているようだった。

ガッツポーズを決める柳の後ろで、雪は「わぁ」と言いながらパチパチと手を叩く。

「っしゃー!てか、マジすっきりしたんじゃね?な、赤山!」








結局柳とはそこで別れた。

互いに手を振り合い、別れの挨拶を交わす。

「バイバーイ」「さようなら」



そして雪は残すところあと一つとなったテスト会場へと移動し、一人席に就いた。

胸の中には複雑な感情が渦巻いている。



おかしな気分だ



痛快でありながら憂鬱で、いい気味だと思いながらも

そこまでする必要あったのかなと思ってる




雪は本意と不本意の間で、そのどちらにも足を伸ばせないでいた。

特に先程聞かされたそのカラクリは、両者とも雪を不本意へと引っ張る。

プレゼントに貰った時計をそんな風に利用してもいいの?



柳先輩は何とも思ってないの?



けれどそのカラクリが事を運んだ先の結果は、雪にとっても本意なのだ。

まぁ‥皆健太先輩には積もるものがあったから、

こんな風になってスッキリはするけど‥それにしても




けどそれで本当に良かったのか?

頭の中に、健太の今の悲惨な現状が浮かぶ。

復学生である健太先輩は直美さんの策略で卒業試験に落っこちて、

青田先輩の策略で単位も失った。




そしてその始まりは私だったということは否定出来ない



自分の投石で、みるみる周りに波紋が広がって行った。

さざ波は岸に近づくにつれ勢いを増し、思っていたよりもその余波は大きかった。

健太先輩に対して特に同情はしないけど、

私のせいで人生を狂わせてしまったかと思うと、なんだか心がチクチク痛む。

その気持ちは、形式的ながら胸の中をぐるぐると回った。




正義感だとか倫理観だとか、良い子の顔をした感情が雪の心を刺激する。

そしてどこからか、冷たい風が吹き込んで来た。

そして、この一連の流れを先輩からでなく柳先輩の口から聞くに至ったことが、



妙に寂しくておかしな気分になる‥



さざ波が打ち寄せる。

自身が投石したことによる波紋が、岸にぶつかって再び返ってくる‥。




「試験を終わります」



遠藤助手はそう言ってテストを回収した。

「楽しい冬休みを」



期末試験の全日程が終わり、雪はホッとした気持ちで外に出た。

顔を合わせた海ちゃんや同期達と、その頑張りを称え合う。



「雪ぃ〜〜!」



「試験終わった!」「終わったのー?」



聡美と雪は手を取り合ってくるくると回ると、そのまま街へと繰り出したのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<本意と不本意>でした。

なんだか雪ちゃんらしい回でしたね〜。黒淳化が進んでいるといっても、やはり根っこの部分は変わらないみたい。

けど柳にしても淳にしても直美にしても、つい最近健太から被害を被ったから、

ここまでの行動に出れてるという部分はあるのかもしれないですよね。

雪ちゃんも健太のせいでD取った春学期終わりのグルワ発表がここ最近のことだったら、
こんな風に後味悪く思うこともないのかも‥?どうでしょうね‥。

次回は<メビウスの輪>です。


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