ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

砂上の楼閣?いじめ防止対策推進法

2013-06-27 07:58:48 | Weblog
「実現可能?」6月21日
 いじめ防止対策推進法の成立を報じる記事が掲載されました。いくつかの疑問点があります。
 まず、『心身に重い被害を受けたり、長期欠席を余儀なくされたりする重大ないじめ事案』の報告義務付けについてです。この両者を並列することに違和感を感じるのです。「軽微」ないじめが発端となり、学校を欠席し、その後昼夜逆転などが起き不登校が長期化するというケースは珍しくありません。そうしたケースが報告の対象として、暴行罪に匹敵するような事例と同じ扱いということが実態に合わないと思うのです。
 また、『学校に文部科学省や自治体への報告を義務付け』ということにも違和感を感じます。学校が教委の頭越しに文部科学省に報告するということなのでしょうか。そんなことをしても何の意味もありません。文部科学省が地教委に「きちんと対応するように」と言うだけのことなのですから。むしろ、間に文部科学省を挟む分対応が遅れるというマイナスが生じるでしょう。現在でも、大部分のまともな自治体では、「重大ないじめ事案」は教委と自治体が把握しているのが普通なのです。こんなことが「対策」になるとは考えられません。
 次に、『各学校には教職員や心理・福祉の専門家などによる組織を常設する』ということについても、そんなことが可能なのかと、首を傾げてしまいます。東京都を例に考えると、2000校以上の公立校があります。私立を加えれば、2500を越えます。上記の常設組織が機能するためには、いつでも集まれる、ある程度の期間集中的に対応できる体制が必要になります。それには、何校も兼任するのではなく、専任であることが必要です。東京都に、それだけの専門家がいるでしょうか。おそらく、既に各校に配置されているスクールカウンセラーが「専門家」として充てられる可能性が高いでしょう。それでは、従来の体制と何も変わりません。もっとも、スクールカウンセラーも、現状では掛け持ちの人が少なくないのですから、実際には機能しない見せかけだけの組織となってしまう学校も少なくないでしょう。過疎地の学校、交通網が未整備の地域の学校などでは、都会以上に「専門家」確保は難しいと思われます。なお、同じ懸念は、いじめ発生後に設けられる「調査委員会」への第三者登用にもあります。
 そもそも、この推進法を策定するに当たって、「重大ないじめ」の発生率をどの程度に想定したのかが不明確です。このブログの中で繰り返し述べてきたことですが、「いじめ」の発生件数自体は、全国で年間で百万件を超します。では、「重大ないじめ」は何件なのか、10000件なのか1000件なのか、それとも十数件なのか、全国紙の紙面に掲載されるような事例だけであれば、十数件でしょうが、それによって体制づくりは大きく違ってきます。大まかな理念だけで後は地方に丸投げなのでしょうか。
 紙の上に砂上の楼閣を築いて終わりということの内容に期待したいものです。

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