ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

暴言王はここにも

2016-12-25 08:17:43 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「こんな人が最高責任者」12月19日
 『「中高時代たばこ」 批判受け「女教師みたい」 西宮市長が発言』という見出しの記事が掲載されました。西宮市長の今村岳司氏が、『市内の中高生を対象にした市主催の催しで「中高時代、授業を抜け出して校内でたばこを吸っていた」などと発言した』ことにまつわる記事です。
 記事によると、今村氏の発言は、『中高生の頃に自分たちの居場所は「授業を抜け出してタバコが吸えて楽器が弾けるところだった」と説明。また、校内の部屋のカギを盗んで合鍵を作り「そこで私たちは自由にタバコが吸えて楽器が弾けました」』というもので、市議会からの批判に対しては、『「ピンクのダサいスーツに黒縁眼鏡で「お下品ザマス!」って言っている女教師みない」と揶揄』し、『キレイゴトは彼らを子供扱いしている。敬意を欠いている』と述べたということです。
 私はこのブログで、教員が子供との信頼関係を築く上で自己開示が大切であることを述べると共に、自己開示においては「失敗」は欠かせない要素だが、「悪事」は有害不要である旨を主張してきました。ですから、今村氏の言動には批判的な立場です。教員と政治家は立場が違うという意見があるかもしれませんが、そうではありません。教委改革が断行され、地方教育行政も首長が管轄下に治めるようになったのですから、首長は教育のトップとして、その言動に配慮する義務を負わなければなりません。
 即ち、個人としての見解だという言い訳は通用せず、西宮市の学校教育における公式見解として、中学生が、授業を抜け出すこと、部屋の鍵を盗み合鍵を作ること、喫煙をすることに肯定的な見方を示したということになるのです。西宮市の中学生が、同じような行動して発見されたとき、「市長さんは、学校のいろいろなことを決める人でしょう。その人と同じことをしたのに、いけないんですか」と屁理屈を言うチャンスを与えたのです。
 さらに、タバコ発言への非難に対し、キレイゴトと批判したことは、教員が、「授業はきちんと受けましょう」「たばこを吸ってはいけません」「ものを盗むのはいけないことです」という指導をする際、「先生、そんなキレイゴト言っちゃいけないんだよ」と揶揄する権利を認めたことになるのです。こうした行為が、現場での指導をどれだけ難しくするか、考えたことがあるのでしょうか。
 そもそも、未成年者の喫煙や窃盗、無断での合鍵作成はいじれも法に抵触する犯罪行為です。法治国家の我が国で、公教育の場で、犯罪行為をしないように指導することがキレイゴトだという発想が理解できません。子供扱い、という主張にも、あえて中学生は子供なのだと言いたいと思います。そして学校教育は、ある意味世間とは離れていても愚直に正論を叩き込むところに存在価値があるのです。学校でのキレイゴトと実社会での「汚れた現実」の間で悩み葛藤することで、子供は健全に成長していくのです。学校も世間もキレイゴトなしでは、まともな人間に育ちません。
 今村氏のように、教育行政を司るという自覚のない首長が多いのであれば、そして安易な気持ちで、その場の受け狙いのような感覚で失言を繰り返すのであれば、教委改革について、数年後には再評価することが必要になるのではないでしょうか。
 女教師云々については、今村氏も後日訂正したようなので、ここではふれません。

 

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