ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

情実人事

2014-05-17 07:37:07 | Weblog

「情実横行」5月11日
 『内閣人事局30日発足』という見出しの記事が掲載されました。記事の中には、『官邸に近い人物が重用される「情実人事」が横行すると懸念する声も出ている』『過度な政治介入で、役所の人事構想がゆがむことへの懸念は絶えない』など、弊害を予想する見解が述べられていました。また、「弊害」とは違いますが、『新制度は女性幹部登用で一役買う可能性がある』との指摘もありました。
 教委改革が進み、首長が地方教育行政に大きな権限をもつようになると、非公式な形で教員人事、特に校長や副校長の管理職人事に首長の意向が反映してくるようになると予想されます。それは、内閣人事局制度同様、政治介入による歪みという問題の発生に結びついていきます。
 現在は、学校管理職人事は、業績評価と管理職選考試験の結果によって昇任が決定し、異動については教委の人事担当が原案を作成し狭義の教育委員会の承認を得て決定しています。そこには情実が入る余地はありません。
 昇任試験は第一次が論文と記述問題で行われ、採点は受験者が分からない状況で行われます。ここで合格しなければ面接には進めません。面接官は受験者と関わりのないものが選ばれます。さらに業績評価が加味されるわけですが、業績評価自体が毎年その的確性を複数の幹部で検証されているのですから、試験用に細工することは不可能です。
 しかし、現行制度の下でも首長からの「横槍」やありました。議員からの苦情や地域の有力者からの偏った情報などにより、「あの校長他区に出せないか」「A校の校長は今年限りで代えろ」「以前B校の校長だったC先生をまた戻せないか」などと言ってくることはあったものです。しかし、それらはあくまでも「私的な思い」であったり、非公式な場での「雑談」であったりしました。首長自身が、教育行政は教育委員会の管轄という意識をもっていたからで、その分遠慮がちになっていたものです。ですから、制度を盾にとり「そのご要望にはお応えできません」と断ることができたのです。
 しかし、制度として首長権限が強化されれば、首長は遠慮しなくなるでしょう。雑談ではなく、命令や指示という形をとるようになるかもしれません。さらに、「野心的」な管理職の中には、直接首長との間に「コネ」をもとうとするものが出てくるかもしれません。教委の人事担当者は数年で異動していきますが、首長は通常2期8年は権力の座にあるのですから、一度お気に入りの立場を確保しさえすれば、天下無敵だと思う管理職がいても不思議ではありません。
 もちろん、首長は自らの責任でよりよい教育行政、学校体制を実現したいという善意で取り組むのでしょう。しかし、民意の反映、仲間内の馴れ合い人事の追放などという掛け声の下、教員人事が歪み、教員人事への住民の信頼が損なわれるようになれば、学校教育は停滞することになります。善意が好結果を生むとは限らないことは、歴史が教えています。

 

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