「自己評価高すぎ」10月26日
『警察庁「闇バイト」の誘い文句発表』という見出しの記事が掲載されました。『首都圏を中心に相次ぐ強盗などで、警察庁は25日、一連の事件で逮捕された実行役らが応募した「闇バイト」の誘い文句を発表した。安易に応じないように注意を促し~』という趣旨の記事です。
記事では、『日給5万円から』『即日払い』『20万円~都内某所』の例が挙げられていました。不思議でなりません。実行役の若者は、報道を読む限り、何の資格も特別な経験や能力もない人たちばかりです。政治家が最低賃金を時給1500円にと主張しても、20年代での実現は難しいと言われている現在、資格も経験も能力もない若者がどうして5万円手に入れられると思うのでしょうか。バカなのでしょうか。そんなに割のいい仕事があれば、競争率100倍以上に求職者が殺到するに決まっているではありませんか。
まして「20万円~」などどこの国の話でしょう。ブラックジャック並みの腕を持つ外科医が手術をするというのであればともかく、です。自分には一日で5万円を受け取るだけの価値がある、そう考えてしまうのは異常です。現代の若者全てとは言いませんが、常識の欠如、自己評価能力の不足があるように思えてなりません。
私は、この記事を読んで、元プロ野球選手張本勲氏の母親の話を思い出しました。張本氏がプロ野球の東映に入団が決まり、契約金を母親に届けたとき、母親は「こんな大金、お前何か悪いことをしたんじゃないんだろうね。もしそうなら返しておいで。そんなおカネもらうわけにはいかないよ」と言い、張本氏が契約金として受けてったという話をしても容易に信じなかった、という話です。
張本氏の母親は高等教育を受けた方ではなかったそうですが、彼女には、常識があります。我が子を愛してはいても、野球はうまいらしいが他に特に優れたところがあるわけではないという、我が子に対する冷静な判断があります。現代の若者中には、こうした常識が欠如しているものが一定数以上いるのではないでしょうか。
近年、我が国では若者の自己評価が低い、自己肯定感が乏しいということが問題視され、それを受けて学校教育の在り方も、子供の良いところを見つけてほめて伸ばす、ということが重視されるようになってきています。それは私も賛成です。しかしその考え方は、何の根拠もなく「俺はすごいはずだ、もっと評価されるはずだ、特別な存在なんだ」と思わせることではないはずです。高校を卒業してから定職にも就かずぶらぶらしていただけだけど、一日に5万円受け取るだけの価値がある人間だ、という妄想を抱く人間を育てることではないのです。
若いうちはこつこつと努力して仕事を覚え、将来のために貯蓄をし~というような古い勤労観、それが行き過ぎるとブラック企業で唯々諾々と働いて体を壊すということに陥ってしまいそうですが、それでも今の未熟な自分を過大視せず、一発大逆転を狙うのではなく、大変さを感じることがあっても自己の成長のために日々の努力を重ねる、そんな考え方を再評価すべきなのではないかと思ってしまうのです。学校における職業教育でも。