ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

針小棒大で誤誘導

2014-05-25 07:54:03 | Weblog

「転換点」5月19日
 作家半藤一利氏へのインタビュー記事が掲載されました。その中に『今の日本は太平洋戦争へと突き進んだ最初の転機である31~33年の3年間に重なる、と指摘する。情報の国家統制、臣民教育を目指した国定教科書の改訂、5・15事件などのテロ。「今はまだ幸いなことに新聞各社が自由な論調を維持できているが、間もなくかもしれません。その証拠にNHKはすでに危うい。歴史教科書の問題も、仮想敵国が強調されるのも~」』という記述がありました。
 いわゆる左翼、進歩派が言うのではなく、あの半藤氏の言葉だけに気になります。転換点ということで言えば、教育への政治家の介入を容認する教委制度改革も、忘れてはなりません。個人的には、教科書問題よりもこちらの方が、後の時代に「あのときの改革が~」と言われるような気がしています。
 教委改革法案は、衆院を通過し今国会での成立が確実視されています。しかし、施行される来年の4月までには、まだ10ヵ月あります。改めてその危険性を、半藤氏のように歴史的視野で考えておくことは大切だと考えます。
 「転換点」になるかもしれない大改革が行われる契機は、3年前の滋賀県大津市の中学校におけるいじめ自殺問題への同教委の対応のまずさでした。この件についてはこのブログでも触れ、批判してきましたので繰り返しませんが、重要なのはあくまでも一地方自治体における教委の無能さが明らかになったことに過ぎない「事件」が、我が国全体の学校教育行政の問題にすり替えられてしまったということです。
 ある警察署での不祥事で警察機構が抜本改革されたり、自衛隊のある部隊での事件で自衛隊の存在自体が問題になったり、検察庁の隠蔽体質への疑問が警察庁解体につながったりするようなものです。いずれも近年実際に、組織内のいじめ自殺や証拠のねつ造などの事件を起こした組織ですが、それが制度全体の問題へと発展することはありませんでした。それなのになぜ教委制度だけが大改革されなければならなかったのか、きちんとした検証が必要です。
 私が上記の3つの組織を例に挙げたのは、単に不祥事があったというだけでなく、いずれも政治家と距離を置くことが期待される組織であるということがあります。警察や検察は政治家を対象に捜査を行う組織であり、真実や正義が政治家の力で捻じ曲げられることがあったはなりませんし、自衛隊という「軍隊」と政治家の癒着の悲劇は先の大戦の歴史が証明しています。私は、学校教育も同様に政治家と距離を置くべきだと考えています。半藤氏の指摘通り、外部からの圧力に屈した学校教育が我が国を戦争の道へと誘う役割を果たしたという歴史的事実があるからです。
 針小棒大、小さな事件を意図的に大事件とし、国民世論を誤誘導したと後世に判断されることがなければよいのですが。

 

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