「意味がある分析を」2月3日
『中3「英検3級」7割届かず』という見出しの記事が掲載されました。文部科学省が発表した『英語の「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能に関する2015年度の調査結果』に関する記事です。記事によると『中高生とも「話す」の得点が高い生徒は、低い生徒と比べて「授業で英語による話し合いを取り入れている」と答えた割合が高く、授業内容と得点の相関関係がみられた』のだそうです。
失礼ながら、この分析にどんな意味があるのかよく分かりませんでした。何気なく読むと、日々の英語の授業で愛護による話し合いを多く取り入れると英語で話す能力が高まる、という意味のように受け取れてしまいます。しかし、それは正しくないのです。
もし、上記のような因果関係が成立するとすれば、英語に関するレディネスが同じ生徒、つまり4技能が同じレベルの生徒集団同士を、一方は英語による話し合いを多くした授業、他方は少なくした授業を受けさせ、その両集団を比較しなければなりません。しかし、この調査では、授業開始前の状態について一切考慮がなされていないのです。
英語の授業において英語による話し合いを取り入れて授業が成り立つというのは、そもそも英語全般の能力が高い集団でなければ難しいはずです。ですから英語の話し合いを取り入れている授業が行われている学校とは、元々英語の学力レベルが高かった地域にある学校である確率がすこぶる高いのです。つまり、元々英語力の高い生徒が集まっていた学校では結果がよかったという当たり前の結果を説明しているだけなのです。
こうした事情を知っているからこそ、文部科学省は因果関係という言葉を使わずに相関関係という表現にとどめたのでしょう。賢明な判断です。しかし、いつのまにか今回の調査結果が、英語の話し合いをすると話す能力が高まると短絡的な見方に結びつけられ、その結果多くの英語嫌いと落ちこぼれを生む危険性は無視できないと思います。
今後もこうした調査を続けていくのであれば、中3と高3の結果だけを分析するのではなく、英語の授業を開始したときから抽出した生徒を8年間継続して追っかけるシステムが必要です。抽出生徒は無作為に1%で十分です。
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