ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

情けない

2014-05-24 07:26:40 | Weblog

「情けない」5月19日
 『大手塾が担う新人教員研修』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、『足立区教育委員会が4月から、子供の学力向上を目指して小中学校の新人教員研修に大手進学塾「早稲田アカデミー」のeラーニング教材を導入した』ということです。記事で紹介された研修内容は、『やる気を引き出す授業を目指して、声量や目線、立ち位置、話し方など教科と関わりなく必要な基本動作』を学ぶ、でした。『同塾の基準のよる実技検定』も行われるそうです。
 情けない、の一語です。受講対象者が600人ということですから、教委の事業として研修を行うのであれば、eラーニングの活用は適切な判断です。ただ、こうした基本的なことは、本来であればそれぞれの学校において、OJTという形で指導がなされるべきであると考えます。再三同じことの繰り返しで恐縮ですが、私は「教師の仕事は職人芸。いくら本を読んでも授業はうまくならない。手本となる人を決めて技を盗む、何回も試行錯誤を繰り返す、そして体で覚えていくのが教師という仕事なのだ」(拙著「教師誕生」帯書きより)と考えています。
 映像の中の講師からは、技を盗むことが出来ません。eラーニングの解説書を読んでもコツはつかめません。それらは体で覚えることとは異なるのです。それは、落語家が師匠に教わらずに、テープを聞いて修業するようなものです。それでは落語を覚えることはできても、聞き手の心に届く話はできないでしょう。また。伝統工芸の職人先人の作業VTRを見て技能習得を図るようなものでもあります。それでは、精密機械も及ばない微妙な感覚を体得するのは無理です。
 そもそも学校に限らず組織というものは、後輩を育成する機能をもたなければなりません。その中で、教える側の技術も磨かれ、新しい試みが生まれ、伝統の上に創造性が加味されていくのです。授業についても、そうした長年の積み重ねで、新しい工夫や発想が生まれ、各教科の指導法が確立され更新されてきたのです。
 上記のような伝承は研修会という形ではなく、日常的にOJTという形で行われるのが自然であり最善です。足立区教委の試みは、現状では仕方がないのだと思います。しかし、それは教委や校長が意図的に「教員の指導ができる教員」の育成を怠ってきたことの証明でもあります。教員を育てる学校でなければ子供を育てることはできません。

 

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