ゆいツールブログ:NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)

人と人、人と自然、人と環境などを「結う(ゆう)」ということに関して、団体の活動やスタッフの思いなどを紹介していきます!

スマトラでの活動を振り返って

2016年06月24日 | 8. スマトラでの活動

今年度、スマトラ島での活動が一段落したので、4年間の活動を振り返ってみようと思います。

スマトラ島にはゾウがいます。(ini..Taman Nasional Tesso Nilo)この写真は、ゆいツールとしての活動を始める前に、現地(リアウ州)に調査にでかけたときに、テッソ・ニロ国立公園に立ち寄って撮影したものです。(2011年撮影)

野生のゾウを追い払う役割を持つ、パトロールゾウには乗ることもできます。

私は、ゆいツールで活動を始める10年前からスマトラ島(リアウ州)をほぼ毎年訪れていました。

きっかけは、こんな風景を見たことでした。(2002年JATANスタッフが撮影)

見渡す限り、つんつるてん。ゾウもトラもサルもバクも、鳥さえも気配はありませんでした。

伐採地には、アブラヤシや紙パルプの原料になるアカシアやユーカリの仲間が植えられていきました。

リアウ州と言えば、プランテーション。と言うくらい、走っても走っても目に入るのはこんな景色だけ、という場所でした。↑ アブラヤシプランテーション(オイルパーム:パーム油を採ります)(2003年に撮影)

私は10年間この景色を眺めながら、リアウ州にわずかに残る熱帯林(ブキッ・ティガプル国立公園)とそこに暮らす人々の村を、訪れ続けました。

そして2012年度に初めて、「地球環境基金」という助成金の支給を受けて、この国立公園周辺で環境教育プログラムを実施することになりました。

最初の年は、スマトラ島の森林の生物多様性を、村の子供たちに伝えるためのツールを開発して、村の学校で教えるNGOの先生たちのトレーニングを行いました。(もうちょっと詳しくはこちら

次の年は、前の年に開発したプログラムツールも活用しながら、国立公園の中や周辺に暮らす村の大人たちをスタディツアーに連れ出して、森にダメージを与えないで豊かに暮らす方法を探ろうとしました。有機肥料の作り方を学んだりもしました。(もうちょっと詳しくはこちら

3年目は、村人へ農業研修を実施して、効率的なゴム園の管理方法について学びました。あわせて、西バリ国立公園の先進事例を学ぶスタディツアーを、リアウ州のNGOと国立公園のスタッフ向けに実施しました。(もうちょっと詳しくはこちら

そして、昨年度は、国立公園のすぐ近くの村の農業グループに、グァバの苗木を支給して、育て方のセミナーを実施しました。あわせて、村の女性たちに、プラスチック袋を再利用したクラフトづくりの講習会を行いました。

なぜ、環境教育から住民支援に発展したのか?それは、森を守ることで、村人が利益を得られる方法を見つけたかったからです。

活動の中でいくつか大事なことに気がつきました。

●インドネシアの国立公園管理事務所にとって、国立公園の森は守る対象であっても、園内に暮らしている先住民や地域住民の生活を守ることや、彼らの教育は管轄外だということ。(教育は教育局、農業支援は農業局等が管轄するようだったが、国立公園内という制約の中、各局の支援は十分に届いてはいない)

●公園内に暮らすタラン・ママッ人や彼らを祖先とする地域住民は、集約的農業や効率的な管理農業というものが苦手であるということ。(伝統的に、粗放農業でしか焼き畑やゴム園管理を行ってこなかったため)また、将来のために今努力する、今我慢する、今準備する、という思考回路がほぼない、ということ。(貧しすぎるために、そしてもともとその日暮らしをしていた民族なため、計画を立てることが得意ではない)

●現地NGOの役割は、教育を十分に受けていない村人をとことんサポートすることであるが、常に中途半端な支援にとまっていた。原因は、十分な資金がないことであったり、高い教育を受けたNGOスタッフが立場の弱い村人の側に立つことができなかったり、単に能力不足だったり、さまざまであった。

4年間の活動を経て、ブキッ・ティガプル国立公園の森を守るために必要なことはなにか、わかったことがあります。

それは、リアウ州の中で、国立公園管理事務所と林業局と農業局と教育局などが、ともに問題を共有するラウンドテーブルを設けること。そして、森を守ることと地域住民の生活を守ることを、両輪でやっていく方法を様々な関係者と話し合うこと。そして、それは現地NGOがファシリテートすることが望ましいということ。

あるいは、「小水力発電の設置」や「野鳥の繁殖センターの設置」など具体的な活動を行いながら、さまざまな局と連絡調整をする中で、課題を共有し、協力しあうこと。

ローカルNGOのスタッフの能力向上や国立公園スタッフの意識改革のための研修がなにより求められます。

・・・今、スマトラ島リアウ州の、国立公園や森林保護区以外の森は、大方プランテーションに代わってしまいました。

アフリカのサファリツアーと違って、スマトラ島の森を訪れても、トラや野生のゾウを直接見ることはできません。簡単に見ることができれば、熱帯林ツアーが流行って、もう少し森林保護に目が行くのかもしれませんが、実際は「森なんか茂っていてもお金にならない」から、お金になるプランテーションにどんどん切り替えられていきます。

住みかを追われた野生動物は、どこに行ったらいいのでしょうか。

その悲しい気持ちを表した看板を、1年前に横浜市の動物園ズーラシアに設置させてもらいました。(スマトラトラの展示横のパネル

ズーラシアを訪れた際には、ぜひ見てほしいと思います。

下は、2014年度に作成した冊子です。スマトラの森を守る活動を紹介しています。(ご希望の方はこちらにご連絡ください)

スマトラ島の森林問題については、WWFのホームページにわかりやすくまとめられています。

ゆいツールは、いったんスマトラの活動をお休みしますが、またなんらかの形で再開できたらよいな、と考えています。

(山)

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