ゆいツールブログ:NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)

人と人、人と自然、人と環境などを「結う(ゆう)」ということに関して、団体の活動やスタッフの思いなどを紹介していきます!

国立公園周辺の村人による取り組み事例(ウェイ・カンバス国立公園) in Indonesia

2014年05月19日 | 9. インドネシアでの活動
4月の終わり、ゆいツールはスマトラ島の南の端、ランプン州というところにある、ウェイ・カンバス国立公園の地域住民宅を訪ねました。(写真は、泊めてくれたお宅のご夫婦と)
 
●ウェイ・カンバス国立公園(TNWK)
スマトラ島の南東部の海岸に面したエリアにあります。
国立公園沿いに村が点在していて、そのうちのひとつを訪れました。
ここの住民による観光チームも、まだ結成されて間もないようでした。
スマトラ島ですが、住民の多くはジャワからの移民でした。
 
ここでも家畜が飼われていて、西バリ国立公園のスンブル・クランポック村と同様に、バイオガス利用が実験的に行われていました。
驚いたのは、たった一頭の牛の糞だけで4時間もガスを燃焼させることができる(コンロ1台で)、ということでした。
 
(↓ここから牛のうんちを投入。水と混ぜ合わせる。) 
 
(↓そして、ここを通って地面の中へ)
 
地面の下に施設が埋められていて外からは見えませんが、その代り説明看板がありました。
 
ガスが抜かれた後の糞(水と混ぜるのでだいぶ水っぽいです)は、肥料として使えるそうです。においをかぎましたが、ぜんぜん臭くありませんでした。
 
ガスを使っているところも見学しました。
 
日本では、バイオガスを気軽に使っているところを見たことがなかったので、インドネシアの村でごく自然に設置されているのを見て、まさにこうやってこういう場所で使うものなのだ、と納得しました。
 
それから、この村では、すでにごみを利用した商品づくりが始まっていました。
まだグループも立ち上がったばかり、ということでしたが、定番の商品はいろいろなパターンで作られていました。
 
夜、そのグループの数人の女性たちを呼んで、ロンボク島での活動で開発中のごみプログラムを披露してみました。
併せて、スマトラ島プカンバルのごみ銀行で購入した、いくつかのカバンなども見せると、みなさん興味深そうに触っていました。
この村でもやはりごみは収集されておらず、分別して捨てるという習慣はありません。
ごみを利用した商品を作ることで、住民がごみ集めに関心を持ったり、村がきれいになることを目指しているようでした。
 
また、ちょうどバクの絵本(日本語のものに、インドネシア語をふったもの)を持っていたので、子供たちを呼んでゆいツールのボランティアスタッフが絵本を読み聞かせてみました。
最初に私が、「この動物はなに?」と聞いて、子供たちは意外とわからなそうにしているので、「そこの国立公園の森にもいるでしょ」と言うと、「知らない」という答えが返ってきて、びっくりしました。
すぐそこに森があるのに、森に暮らす動物のことを知らないなんて・・・。
 
後日、TNWKでも活動するPKHS(ペーカーハーエス)のディレクターにそのことを話すと、「以前は、周辺の学校でプログラムを行っていたが・・・」と言っていました。
NGOがプログラムをやらなければ、学校ではすぐそこにある国立公園について、教えることもないのだ、と思った出来事でした。
 
ゆいツールを案内してくれているSERAI(スライ)のリキさんによれば、「森なんて危ないから、住民は森には入らない」(だから、動物のことも知らない)ということでした。
 
ゆいツールが活動しているリアウ州のブキッ・ティガプル国立公園(TNBT)では、森と人がとても近くて、森の動物のことを村人はよく知っています。
でも一方で、木の皮をはいで違法に売ったり、高く売れる鳥を生け捕りにして売ったり、そういうことが絶えません。
 
バイオガスも、参考になりそう、と一瞬思いましたが、そもそもTNBTの住民は家畜を放し飼いにしていて、糞を一か所にまとめることさえ難しい、とリキさんと話していて気がつきました。
ジャワ系の人たちは、家畜のために人間がエサを取りに行き、糞の片づけもしますが、スマトラの人たちは、家畜は放し飼い。うんちの世話なんてするつもりはありません。
 
現在、TNBTのサダン村で行っている野菜づくりもそうですが、もともと村人が習慣として行っていないことを持ち込むのは、非常に難しい取り組みです。
 
他の国立公園のよい事例を見れば見るほど、TNBTの森で参考になることがあるのだろうか、と立ちすくんでしまいますが、どこかに道はきっとあるはず、と信じて進んでいきたいと思います。
(山)

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国立公園周辺の村人による取り組み事例(西バリ国立公園) in Indonesia

2014年05月15日 | 9. インドネシアでの活動
 4月にゆいツールはバリ島とスマトラ島で、国立公園周辺の住民による取り組み事例を調査してきました。
 
今回は、西バリ国立公園について書きます。(写真は、バリ島の固有種カンムリシロムク:Jalak Baliという鳥)
 
●西バリ国立公園(TNBB)
バリ島の西の端、ジャワ島がすぐそこに見える地域に位置しています。
今回は、この国立公園に隣接するスンブル・クランポック村を訪れました。
ヒンドゥー教徒(バリ民族)とイスラム教徒(ジャワ系住民)の両方が暮らしていて、近年、絶滅が危惧されているバリ島の固有種カンムリシロムクを繁殖させる住民グループが発足し、村ツーリズムも盛り上がってきました。
私ははじめ、絶滅しそうな鳥を繁殖させている、と聞いて、目的は放鳥だろうと思いこんだのですが、実はそれだけではありませんでした。
考えてみれば、住民が見返りも求めずに鳥を繁殖させるわけはありません。
住民の目的は、繁殖させること。繁殖させる目的で鳥を購入したい人に、売ること。
そして将来的には放鳥もして、昔のようにカンムリシロムクが飛び交う村にすることを目指しているそうです。
 
カンムリシロムクを繁殖させるためには、国立公園から許可を得なければいけません。血統図も作られ、きちんと管理されているそうです。
 
住民は、それはそれは大切にカンムリシロムクを繁殖させていました。
多くの住民が、カンムリシロムクの鳥小屋を家の中に組み込んで作っていました。
昔、日本の田舎で馬が家の土間の一角にいたようなイメージです。
エサは、コウロギ数匹とバナナ(さすがインドネシア!)、イカの背骨など。
繁殖中のつがいは敏感になるので、壁の穴のようなところから覗き込みました。
 
案内役のイスムさんが、この村ではごみ銀行(Bank Sampah)ではなくて、肥料銀行(Bank Pupuk)ってやつをやってるんだ、と言ったときには驚きました。村には、牛やヤギがたくさん飼われていて、それらの糞は今まではほったらかしだったのですが、肥料を作ろう!とイスムさんが思いつき、村の若者に声をかけてグループ(Embik Makmur)を結成したそうです。
作った肥料を売った売り上げを、1年後にメンバーに還元する仕組みのようです。 
(村では、牛の糞を使ったバイオガスの利用もモデル的に行っていました。)
 
肥料の切り返しをしているところを見学させてもらいました。
 
TNBBの職員は、村人に村にあるものの価値に気づいてもらい、村の活動を熱心にすることで、国立公園の木を切ったり、生きものを捕って売ったりしないようにすることが大事だ、と言っていました。
村の中にある資源を活用すること。何が活用できるのか探し出すこと。
 
実は、TNBBの職員がコミュニティの人たちに寄り添い、ともに歩んでいけるファシリテーターとなるために、日本の一般社団法人あいあいネット(http://www.i-i-net.org/)が、研修や助言を行っています。
時間をかけて、国立公園スタッフや住民を育成すること。それがなによりも大事なことだ、とゆいツールは考えます。
 
TNBB周辺の村の住民が活動している理由は、一番はもちろん経済のためです。
でも本当の目的は、国立公園の自然を守ること。自然を守りながら、経済的に豊かになるために、カンムリシロムクの繁殖を行ったり、村ツーリズムに力を入れている、というわけです。
 
さて、ゆいツールが活動するスマトラ島の国立公園で、参考にすることができるでしょうか。一番の違いは、民族の気質です。
働き者で熱心なジャワ系の住民と違い、スマトラ島の先住民/地域住民は、楽してお金を稼ごうとする傾向があります。
今年、もう一度、スマトラのNGO仲間や国立公園レンジャーとともに、TNBBを訪れて、再度調査を行おうと考えています。
(山)
国立公園の端、ランプ・メラという場所からジャワ島を望む。

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ごみ銀行をはやらせよう! in Indonesia

2014年05月09日 | 9. インドネシアでの活動
今回の活動で、ロンボク島とバリ島(西バリ国立公園)、スマトラ島(リアウ州とランプン州)を訪れて、ごみの現状を探りました。
(写真は、民間のごみ収集業者〈pengepul:プンゲプル〉の集積場)
 
ロンボク島では、州都マタラム市清掃局が運営する「ごみ銀行」の現状を視察しました。
 
看板だけはやけに立派ですが、ごみはご覧の有様。
JICA隊員によると、"半年前に訪問した時はゴミ銀行スタッフが地域に出向いて、ゴミを計って住民も頑張っていたのに、上手く機能しなくなってしまった。"ということです。 
 
スマトラで見た「ごみ銀行」とは雲泥の差です。
 
また、清掃局の担当者に日本から持って行った、ごみの捨て方が説明してある冊子(横浜市作成)を見せると、こういうものはインドネシアにはまだない、と言っていました。マタラム市では、1日300トンのごみが捨てられるそうですが、行政はその64%しか回収できてないそうです。(回収する車両が足りない、と言っていました)
 
それから、プラヤ市にある中部ロンボクの環境局を訪れると真新しいごみ箱が設置されていました。
どうやら3つに分別するようです。
 
ここでも、最近「ごみ銀行」を始めた、と担当者のアリフさんが自慢げに話してくれました。
住民への説明を順次行っている、ということでしたが、本当に機能しているのかどうか、確認できませんでした。
 
バリ島の西バリ国立公園周辺のスンブル・クランポック村を訪れたときには、ごみから作った商品を村人に見せると、作り方を知りたい!とママたちが集まってきました。
同行したロンボクのJICA隊員が、プラスチックの袋を切ったり折ったりして商品の素材づくりの手ほどきをしました。
 
この村では、行政のごみ回収はなく、ときどきプラスチックごみや段ボールなど、お金になりそうなごみを回収にくる業者はいるようですが、住民はプラスチックごみでもぽいぽいと家の周りに捨てるのが習慣です。
住民グループを率いるイスムさんに、ごみ銀行の仕組みを伝えると、まずはよく捨てられる甘いコーヒーの空き袋(1杯づつパックになっている)を集めてみようか、と言っていました。
 
スンブル・クランポック村は、カンムリシロムクというバリ特有の鳥を繁殖させている住民が多く、最近は村ツーリズムがはやりつつあるようで、ごみから作った商品も観光客に売ることができるかもしれない、とイスムさんは考えたようでした。
 
驚いたことに、いつも活動で訪れるスマトラ島リアウ州の田舎町ルンガットにも、「ごみ銀行」ができていました。
 
飲食店を営むアドリアニさん(女性)が、ごみの可能性に気づいてごみを集め出し、行政も最近ごみ置き場やごみ収集のためのバイクを提供してくれたそうです。
学校も少し回収に参加していて、クラス単位で通帳を持っている、と話してくれたのはルンガットの高校の先生でした。
 
ルンガットでは、民間のごみ収集業者(pengepul:プンゲプル)を訪れ、ごみの値段やごみの量などについてヒヤリングをしました。
pengepulでは、一般の住民がごみを持ち込むことはまれで(ある程度の量のごみをまとめて持ち込まないとお金にならないため)、ごみ回収を仕事にしている人たちが、それぞれ専門のごみを集めて、毎日売りに来るそうです。
 
「ごみ銀行」は、言ってみればpengepulの教育版です。
「ごみ銀行」で集めて、商品化しないごみは、pengepulに売ることになります。
pengepulも、ごみをまとめて売ってくれる人がいるのはありがたいし、住民も身近でごみを集めてくれる「ごみ銀行」があったら、貯金もできるし、手の空いている主婦たちは小遣い稼ぎで商品作りをすることもできます。
 
最後にランプン州では、ウエイ・カンバス国立公園に隣接する村を訪れた時に、ごみから作られた商品を見学することができました。
まさに、インドネシア中で流行る「ごみ銀行」「ごみ利用」です!
 
ゆいツールはこれから、ロンボク島で「ごみ銀行」のネットワークを作ろうと考えています。もっともっと「ごみ銀行」が流行るように。もっともっと街がきれいになるように。
まずは、学校のごみ回収から改善しなければ、と考えています。
(山)

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ごみプログラムを開発しました!in Lombok

2014年05月05日 | 4. ロンボクでの活動(下記以外)
4月上旬にゆいツールはロンボクで活動してきました。
今回も、現地のJICA協力隊員(環境教育部門)にコーディネートしてもらいながら、充実した活動となりました。
 
今回は、開発したごみについて学ぶオリジナルプログラムを中学生や関係者に体験してもらったり、ロンボクのごみの現状を見学したり、自然に親しむ公園を訪れたりしました。
ごみの現状は、マタラム市の清掃局を訪れて話を聞いたり、市がごみを埋め立てている場所(TPA)を見学したり、サーフィンスポットの海に浮かぶごみをボートに乗って見に行ったり、さまざまな角度から深く知ることができました。
 
まずはこの写真から。(ごみの埋め立て地:TPA)
 
インドネシアでは、行政が集めたごみは焼却されないで、そのまま埋め立てられます。
ごみを拾って生計を立てている人たちが、この場所だけでも70人くらいいるそうです。
 
ゆいツールが開発したばかりのプログラムを、プラヤ市にある中学校で試してみました。
 
「今日、なにかごみを捨てた?」
「捨てた」
「どんなごみ?」
「プラスチック!」
「プラスチックのどんなごみ?」
そんなやりとりから始まり、ごみには「土に入れるといずれは消えてしまうごみ(オーガニック)」と「土に入れてもいつまでも消えないごみ(ノンオーガニック)」があることをコンポスト写真で確認してから、ごみ分けゲームを行いました。
 
子供たちは、ごみを2種類に分けることができても、実際には学校のごみは未分別で捨てられているそうです。
それは行政側の対応が追いついていないから。
プログラムを広めることと併せて、ごみの分別処理を進めていかなければ、ロンボクのごみを減らすことはできないと思いました。
 
こちらはロンボクの海。
 
そして、ごみ・・・。
 
グルプックというサーフィンポイントの町に住む日本人夫妻に、ボートを出してもらい海のごみの様子を見学しました。
ここ1年くらいで、急に波間を漂うごみの量が増えた、と夫妻はおっしゃっていました。
あまりに海が汚くなるので、ボートを出すたびにごみを拾って帰るそうです。
グルプックでは、行政のごみ収集の手が回らず、過去には民間団体によってごみ箱の設置とごみの回収が試みられたこともあったようですが、今は機能していません。
 
どんどん汚れていく海を、悲しそうに見つめる夫妻の様子が心に残りました。
 
そしてメインの活動は、行政担当者(環境局や教育局のスタッフ)、学校の先生、NGOスタッフを対象としたワークショップの開催です。
 
1月に引き続いて集まっていただいたみなさんに、開発したばかりのプログラムを体験してもらい、どんな場所で使えるか、どんな改善が必要かグループで意見交換をしてもらいました。
プログラムそのものは、みなさん好意的に受け止めてくれました。
小学校・中学校で使える、という声が最も多く、あとは字の読めない人たちにごみの捨て方を説明するときに使える、という声や、主婦対象でもできる、という意見もありました。
 
ワークショップの終盤で、参加者同士の意見交換が一部エキサイトし(ネガティブ思考の行政担当者と、ポジティブ思考でごみ商品を開発しているNGOスタッフの意見が対立し)、ロンボクでのごみ問題をめぐる現実の一端を垣間見た気がしました。
 
ゆいツールは、8月にまた現地を訪れ、プログラムの使い方トレーニングを各地で行っていく予定です。
それと同時に、ロンボクでも一部始まっている≪ごみ銀行≫を発展させてごみ問題の解決に、一歩でも近づきたいと考えています。
 
次回のブログは、≪ごみ銀行≫についてです。
(山)

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