ゆいツールブログ:NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)

人と人、人と自然、人と環境などを「結う(ゆう)」ということに関して、団体の活動やスタッフの思いなどを紹介していきます!

スマトラでの活動を振り返って

2016年06月24日 | 8. スマトラでの活動

今年度、スマトラ島での活動が一段落したので、4年間の活動を振り返ってみようと思います。

スマトラ島にはゾウがいます。(ini..Taman Nasional Tesso Nilo)この写真は、ゆいツールとしての活動を始める前に、現地(リアウ州)に調査にでかけたときに、テッソ・ニロ国立公園に立ち寄って撮影したものです。(2011年撮影)

野生のゾウを追い払う役割を持つ、パトロールゾウには乗ることもできます。

私は、ゆいツールで活動を始める10年前からスマトラ島(リアウ州)をほぼ毎年訪れていました。

きっかけは、こんな風景を見たことでした。(2002年JATANスタッフが撮影)

見渡す限り、つんつるてん。ゾウもトラもサルもバクも、鳥さえも気配はありませんでした。

伐採地には、アブラヤシや紙パルプの原料になるアカシアやユーカリの仲間が植えられていきました。

リアウ州と言えば、プランテーション。と言うくらい、走っても走っても目に入るのはこんな景色だけ、という場所でした。↑ アブラヤシプランテーション(オイルパーム:パーム油を採ります)(2003年に撮影)

私は10年間この景色を眺めながら、リアウ州にわずかに残る熱帯林(ブキッ・ティガプル国立公園)とそこに暮らす人々の村を、訪れ続けました。

そして2012年度に初めて、「地球環境基金」という助成金の支給を受けて、この国立公園周辺で環境教育プログラムを実施することになりました。

最初の年は、スマトラ島の森林の生物多様性を、村の子供たちに伝えるためのツールを開発して、村の学校で教えるNGOの先生たちのトレーニングを行いました。(もうちょっと詳しくはこちら

次の年は、前の年に開発したプログラムツールも活用しながら、国立公園の中や周辺に暮らす村の大人たちをスタディツアーに連れ出して、森にダメージを与えないで豊かに暮らす方法を探ろうとしました。有機肥料の作り方を学んだりもしました。(もうちょっと詳しくはこちら

3年目は、村人へ農業研修を実施して、効率的なゴム園の管理方法について学びました。あわせて、西バリ国立公園の先進事例を学ぶスタディツアーを、リアウ州のNGOと国立公園のスタッフ向けに実施しました。(もうちょっと詳しくはこちら

そして、昨年度は、国立公園のすぐ近くの村の農業グループに、グァバの苗木を支給して、育て方のセミナーを実施しました。あわせて、村の女性たちに、プラスチック袋を再利用したクラフトづくりの講習会を行いました。

なぜ、環境教育から住民支援に発展したのか?それは、森を守ることで、村人が利益を得られる方法を見つけたかったからです。

活動の中でいくつか大事なことに気がつきました。

●インドネシアの国立公園管理事務所にとって、国立公園の森は守る対象であっても、園内に暮らしている先住民や地域住民の生活を守ることや、彼らの教育は管轄外だということ。(教育は教育局、農業支援は農業局等が管轄するようだったが、国立公園内という制約の中、各局の支援は十分に届いてはいない)

●公園内に暮らすタラン・ママッ人や彼らを祖先とする地域住民は、集約的農業や効率的な管理農業というものが苦手であるということ。(伝統的に、粗放農業でしか焼き畑やゴム園管理を行ってこなかったため)また、将来のために今努力する、今我慢する、今準備する、という思考回路がほぼない、ということ。(貧しすぎるために、そしてもともとその日暮らしをしていた民族なため、計画を立てることが得意ではない)

●現地NGOの役割は、教育を十分に受けていない村人をとことんサポートすることであるが、常に中途半端な支援にとまっていた。原因は、十分な資金がないことであったり、高い教育を受けたNGOスタッフが立場の弱い村人の側に立つことができなかったり、単に能力不足だったり、さまざまであった。

4年間の活動を経て、ブキッ・ティガプル国立公園の森を守るために必要なことはなにか、わかったことがあります。

それは、リアウ州の中で、国立公園管理事務所と林業局と農業局と教育局などが、ともに問題を共有するラウンドテーブルを設けること。そして、森を守ることと地域住民の生活を守ることを、両輪でやっていく方法を様々な関係者と話し合うこと。そして、それは現地NGOがファシリテートすることが望ましいということ。

あるいは、「小水力発電の設置」や「野鳥の繁殖センターの設置」など具体的な活動を行いながら、さまざまな局と連絡調整をする中で、課題を共有し、協力しあうこと。

ローカルNGOのスタッフの能力向上や国立公園スタッフの意識改革のための研修がなにより求められます。

・・・今、スマトラ島リアウ州の、国立公園や森林保護区以外の森は、大方プランテーションに代わってしまいました。

アフリカのサファリツアーと違って、スマトラ島の森を訪れても、トラや野生のゾウを直接見ることはできません。簡単に見ることができれば、熱帯林ツアーが流行って、もう少し森林保護に目が行くのかもしれませんが、実際は「森なんか茂っていてもお金にならない」から、お金になるプランテーションにどんどん切り替えられていきます。

住みかを追われた野生動物は、どこに行ったらいいのでしょうか。

その悲しい気持ちを表した看板を、1年前に横浜市の動物園ズーラシアに設置させてもらいました。(スマトラトラの展示横のパネル

ズーラシアを訪れた際には、ぜひ見てほしいと思います。

下は、2014年度に作成した冊子です。スマトラの森を守る活動を紹介しています。(ご希望の方はこちらにご連絡ください)

スマトラ島の森林問題については、WWFのホームページにわかりやすくまとめられています。

ゆいツールは、いったんスマトラの活動をお休みしますが、またなんらかの形で再開できたらよいな、と考えています。

(山)

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はちみつグァバ(ジャンブゥ・マドゥ)を育てよう! in Sumatera

2016年03月19日 | 8. スマトラでの活動

最近、スマトラ島で流行っている「はちみつグァバ(ジャンブゥ・マドゥ)」。都会のスーパーで高値で売られています。Jambu madu di Sumatera.

これは、農業指導員のサイフルさんが自宅で育てているものですが、実は同じ苗木をブキッ・ティガプル国立公園(リアウ州)近くのレマン村の農業グループにも、50本提供しています。

9月に様子を見に行った時のようすはこちら

今回(1月末)は、サイフルさんによる第2回目のセミナーを実施しました。

1回目は、昨年8月末に「ジャンブゥ・マドゥとは何か?植え方と育て方など」について教わりましたが、2回目は「害虫対策と、よりよい収穫を得るための管理方法」などを学びました。

Pak Saipul..

サイフルさんは農業局のスタッフですが、ゆいツールの活動へは2013年から個人的に協力してくれています。

スマトラでの数々の出来事が、私のやる気をくじかせる中、サイフルさんだけは期待を裏切らず、時間を惜しまずいつも積極的に協力してくれました。

セミナーでは、プカンバル(リアウ州の州都)でジャンブゥ・マドゥの畑を持っている農家の方が紹介されているテレビ番組を、農業グループメンバーに見てもらいました。

セミナーでは、肥料の与え方や害虫対策、実がついたときの管理の仕方などを学んだ後、村人が実際に育てている木を回って、余分な葉を摘んだり、殺虫剤をまいたりしていきました。熱心に話を聞く村人たち。

殺虫剤をまくサイフルさん。村人は、これが毒であることを理解しているので、吸い込まないように気をつけていました。

いらない葉っぱを取り除く。

村人は、今まで「かわいそうに思って」葉っぱを茂らせるにまかせてきましたが、管理のためにはいらない葉っぱを摘むことも大切なのだと理解しました。

はちみつグァバは、今レマン村で順調に育っている、はずです。

ゆいツールのスマトラでの活動(森に関する活動)は、いったんこれで終了となります。

4年間の活動で得たものや失ったものなどについては、そのうちスタッフコラムとして書こうと思います。

1冊の本としてまとめても、まとめきれないほどの物語がありました。

ゆいツールが現場に残せたものは、このグァバの木以外にあったのだろうか、と自問しています。

最後は、活動の中で訪れたテッソ・ニロ国立公園(TNTN)での子象とのツーショットです。

どうか、野生のゾウやトラやバクが生きていく森が、スマトラにずっと残されますように。

(山)

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スマトラ島の村の女性たちへスキルアップ講習会を実施 in Sumatera

2016年02月02日 | 8. スマトラでの活動

ミシンを使ってプラスチックごみをかばんに変える!

ゆいツールは1月下旬に、スマトラ島リアウ州で活動しました。

5月に行ったクラフトづくり講習会の、スキルアップバージョンとして実施しました。

講師は、前回と同じルンガット市のごみ銀行のアドリアニさん(Ibu Adriani)。

5月には手で編む方のクラフトづくりを教えたのですが、今回はミシンを使ったクラフトづくりを教えたい、というアドリアニさんの強い要望がありました。

アドリアニさんが住んでいるルンガット市では、クラフトを作れる職人さんがなかなか見つかりません。

でも、ブキッティガプル国立公園周辺のこの村では、女性たちは仕事があるなら喜んで働きます。

ゆいツールの現地での協力団体であるPASAが、以前支援したミシンを活用してアドリアニさんが教えます。

一方私は、手で編むやり方の別の編み方を伝えます。

これは、女性たちが前回の講習会後、作ったクラフトです。

初めてにしては、なかなかの出来栄えでした。

そして、こちらが今回作ってみたかばん。

女性たちは、アドリアニさんから「このかばんをひとりひとつ作って、私に見せて。作れそうだな、と思ったら注文するわ。材料は提供するから。」と言われて、真剣にうなづいていました。

村の人たちは、収入に結びつく仕事なら喜んでします。逆に、なにか作ってもそれが売れなかったら(現金が手に入らないので)、“骨折り損のくたびれ儲け”なので、いやがります。実はこの村の女性たちは、以前PASA(リアウ州のNGO)からパンダンという植物を使ったクラフトづくりを指導されたことがあります。もともと作る技術を持った人はたくさんいるのですが、それをたくさん作ってお土産用に売る、という発想がなかったのでPASAがサポートしたのですが、上手に販売ルートを確保できず、女性たちはやる気を失ってしまいました。おまけに、なぜか材料を外から購入していたので、予算がストップして活動もストップしてしまいました。

今回はそんなことにならないように、指導しているアドリアニさんと、PASAのローカルスタッフアンディさん(Andi Raja:下の写真左)と、女性たちの連携がうまくいくといいな、と思っています。(山)

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煙に包まれたスマトラでの活動...in Sumatera

2015年10月14日 | 8. スマトラでの活動

9月のスマトラでの活動は、煙に阻まれました。

100メートル先の視界もきかないため、飛行機も飛びません。

予定していた活動をやむなくキャンセルすることになりました。

この煙の原因は、山火事と焼き畑(プランテーション造成も含まれる)によるものです。

毎年、乾季には時々見られる光景でしたが、今年は史上初と言っていいほどの状況で、9月に入ってから1か月以上煙が充満しています。

時々雨が降ったり風が吹いたりして、数日視界がきくことがあっても、基本的にまっしろな世界です。

今年はリアウ州だけでなく、となりのジャンビ州、そのとなりの南スマトラ州も同じような状況らしく、人々はマスクをしたり、子供たちは学校が休校になったり、日常生活に支障をきたしています。

そんな中、ゆいツールはブキッ・ティガプル国立公園近くのレマン村を訪れ、8月末に現地のNGOが農業グループメンバーに提供した果物の苗木の状況を確認してきました。

(↑ NGOスタッフ〈右〉とレマン村が所属するランタウ・ランサール村の村長)

今回提供したのは、ジャンブゥ・マドゥ(ハチミツグアバ)という品種の苗木です。

(Yui-Tool sudah membantu bibit jambu madu kepada kelompok tani di dusun Lemang)

昨年からいろいろと検討してきて、支援する苗木を本種改良したゴムの木の苗木から果物の苗木へ変更したのです。

有機農業の専門家、サイフルさんのアドバイスを参考にしました。

2014年9月の活動時の様子

2015年2月 サイフルさんの畑の様子

ジャンブゥ・マドゥ(ハチミツグアバ)は、まだ栽培している農家が少なく、都会のスーパーなどでとても高値で売られているものです。

サイフルさんは自分でも育てていて、また農業指導をしている個人のお宅でも栽培していて、レマン村でも村人が真剣に世話をすればきっと収入増加につながるはず、と熱心に勧めてくれました。

(↓ サイフルさんと、サイフルさんが農業指導しているお宅のジャンブゥ・マドゥ)

メンバーと話し合ったあと、各家を周りました。

(↑ 植えられた苗木)

苗木が、ヤギなどの家畜に食べられないように、厳重に柵を作っています。

人によって、柵の作り方もさまざま。

毎夕、川から水を汲んできて水やりをしている、と農業グループのメンバーは言っていました。

そんな日本人からしたら当たり前のようなことでも、水道が引かれていない村で、離れた川までわざわざ苗木のために水を汲みに行く、というのはめんどうな仕事です。

彼らはもともと狩猟民族で、きめ細やかな管理をする農業の経験はありません。また、ゴム園でゴムの木を育て樹液を売って現金を得ていますが、最近はゴムの値段が安くなり、生活に困っているようです。年々少なくなっていく森の恵み(市場で高値で取引される木の実など)に頼るだけでは、豊かになることはできません。

国立公園の中で、違法な行為をしている村人もいるようです。(木の皮を剥いで売買したり、鳥を捕まえて売ったり、罠でトラを捕まえようとしたり)

ゆいツールは、村人がジャンブゥ・マドゥを栽培することで生活向上につながれば、と期待しています。

(山)

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スマトラの森 自然と人の暮らし in Sumatera

2015年07月09日 | 8. スマトラでの活動

今回は、ゆいツールが活動しているスマトラの森について、自然や人の暮らしの写真をアップしました。どうぞご覧ください。

こちらは、リアウ州にあるブキッ・ティガプル国立公園の森の様子です。(Hutan Taman Nasional Bukit Tigapuluh)

グラニット・キャンプに宿泊すると、早朝のサルの吼え声がこだまする音で目が覚めます。

森の中をトレッキングすると、こんな大きなタネに出会うことがあります。

あるいは、こんな可憐な花に。

国立公園の中に暮らす人たちの村です。

村人が森の中から取ってくる、プタイという実。市場で高値で売買されます。生で食べると少し苦いです。

川は、村人にとって道路みたいなもの。筏や舟で、スイスイ移動します。

川にもぐって魚を捕まえることも朝飯前。

森に残る、大きな大きな木。

この森や、森に生息する生きものたちは、少しづつ少しづつ姿を消しています。

インドネシアでは、国立公園の森だからと言って安心できません。ブキッ・ティガプル国立公園の場合は、周囲はアブラヤシプランテーションに囲まれ、移り住んできた住民による開拓も迫っています。違法な伐採行為や野鳥の捕獲なども後を絶ちません。スマトラトラを捕まえるために罠を張る密猟者もいます。

いったいどうすればいいのでしょうか。

最後に、こちらは、同じリアウ州のテッソ・ニロ国立公園の朝焼けの様子です。

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スマトラ島でも村の女性たち向けにクラフトづくり講習会を実施! in Sumatera

2015年06月07日 | 8. スマトラでの活動

5月にゆいツールはスマトラ島で活動していました。

今回は、9月に実施する「西バリ国立公園(TNBB)スタッフとブキッ・ティガプル国立公園(TNBT)スタッフの経験のシェアリング」活動の準備のための打ち合わせと、TNBT周辺のレマン村で女性向けにプラスチックごみを活用したクラフトづくり講習会を行うことが目的でした。

このクラフトづくり、実はロンボク島で何度も行っているものなのですが、スマトラで実施するのは初めてです。

〔ロンボク島でのクラフトづくり講習会活動:アナック・バンサ財団(12月)、バトゥ・ジャンキ村(1月)、スカララ村他(3月)〕

↓レマン村での講習会の様子

スマトラでの活動の目的はTNBTの森林保全なのですが、貧しい住民の生活向上も同時に目指さなければ森が守れません。(十分な教育を受けていない住民たちは、手っ取り早く収入を増やそうと禁止されている行為を行うことがあります。国立公園内で鳥を捕まえたり、木を伐採した後樹皮を剥いだりして売ることもあります。)

そこでゆいツールは、女性たちの手仕事にクラフトづくりも加えられないかと考え、ルンガットという町のごみ銀行のアドリアニさんに協力を求め、講習会を実施しました。

↓ルンガットにあるごみ銀行のアドリアニさん(Ibu Adriani)

↓準備したのは、プラスチックのコーヒーなどの空き袋です。これがクラフトの材料になります。

これらの材料とはさみ、洗濯バサミなどの道具をセットにして以下のバックに入れてパケットを作りました。このバックは、アドリアニさんが製作したものです。村人にこれもセットで渡すことで、ごみが役立つことを実感してもらおうという趣旨です。

↓クラフトのできあがり見本はこんな感じです。

レマン村は幹線道路からだいぶ離れていて、森のすぐ近くにあるため、町によくあるワルン(ちょっと座ってコーヒーを飲むような店。個包装されたプラスチック袋に入った、とても甘いインスタントのコーヒーが出されます)などの数は限られます。

つまり、今後材料が手に入るか、という問題です。でもよく見ると、村の中はごみがいっぱい。あちこちに捨てられたプラスチックごみが分解されずに土に交じっています。

実はこのプラスチックごみは活用できるんですよ、ということが、この講習会で女性たちに伝わった最大のことかもしれません。

今後、ルンガットのごみ銀行から材料を届けたり、女性たち自身が市場に行った時などにワルンから材料をもらってきたりしてクラフトづくりが進み、質がよいものはアドリアニさんが買い上げて販売することもできる、ということも伝えました。

この、販売のルートを示せるかというのが、住民をやる気にさせられるかどうかの決め手になることを、ロンボクの活動で学んでいました。

また、今年度活動をサポートしてくれる地元のNGO:PASAの経験としても、売れるあてのない工芸品を女性グループに作らせて、事業が軌道に乗らなかったために、資金が尽きたら活動停止になってしまった、ということがあります。その失敗は、地元で簡単に手に入る材料を使っていなかったことと、販売ルートを確保できなかったことが原因だと思われます。

今回ゆいツールが試すのは、材料費ほぼゼロのプラスチックごみ。ただ、ルンガットのアドリアニさんのところから購入したり、ワルンの人に集めてもらったりすることに多少のお金はかかります。本当は、レマン村か近くの町にごみ銀行ができることが理想です。(ルンガットは、レマン村から車で1時間半ほどかかります。)そして、村人が村のごみを積極的に集めるようになることが、本当のこの活動の目的です。

女性たちのやる気具合を見ながら、今後の展開を考えたいと思っています。(山)

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スマトラ島でもオーガニック野菜!? in Sumatera

2015年02月27日 | 8. スマトラでの活動

ゆいツールは2月後半、スマトラ島で活動していました。

今回は、オーガニック野菜を育てているサイフルさん(Pak Saipul)のところで、村ガイドのマルディウスさん(Pak Mardiyus)と現地NGOのPASAのスタッフとともに、有機野菜を使った野菜やくだものの世話の仕方、種の撒き方などを教わりました。

これがサイフルさんの畑です。

実は、お店の屋根の上で栽培しています。

サイフルさんはここで、実にさまざまな野菜・果物を育ててきました。

最近は、自ら開発した「スクリーンハウス」(屋根はビニール、壁面はネット)で、何種類かの葉っぱものの野菜を20日間ローテーションで育てて収穫しています。(↑写真奥)

野菜を洗うサイフルさん。

みずみずしい野菜たち。

一束5,000ルピア(45円~50円)で、自分のお店(コンビニ)で売っています。

市場で売られている同じ野菜は、1,000ルピアから2,000ルピアなので、かなり高めです。

でも、健康のことを考えて、環境のことを考えて、またはおいしいから、買う人は確実にいるそうです。

サイフルさんのお店兼家があるのは、東京のような大きな街ではなく、田舎のちょっとした町の中です。それでも、オーガニック野菜を買い求める人がいる、というのは、ちょっとした驚きです。

サイフルさんは農業局のスタッフで、考え方も先進国の私たち並です。

農薬がかかったものを毎日毎日食べていたら、体の中に毒素が貯まっていく、というような話をインドネシア人から聞くのはとても新鮮です。

 

これは、サイフルさんが管理を任されている畑のスクリーンハウスです。

雨は直接野菜に当たらず、水はホースで撒きます。

そうすることで、小さな種を撒いたあとに雨に流されたり、強い雨が降った時に土が葉っぱに跳ね返ったりすることを防ぎます。

そのため、サイフルさんの作る野菜はとてもきれいです。

 

種まきについて教えてもらいました。まずは、種を数えるところから。

え、どうしてこんな細かなことをするの?と思いましたが、実は畑の大きさに対して適切な種の量を把握するためでした。

これくらい小さな種の場合、だいたい何センチ間隔で生えてほしいから、そうなると100cm×100cmの面積がこれくらいで種は625粒で十分。さあ数えてみましょう。とサイフルさん。

くしゃみをしたら吹き飛びそうな小さな種を、ひとつふたつと数えていきます。100粒の量が把握できたら625粒はだいたいこれくらいね、と小さなスプーンに乗せてみると、スプーンの半分ほど。

 

畑に行って種まきの準備です。有機肥料をまいて、土に均等に混ぜます。小さな鍬でザクザクと。

実際の種まきは、サイフルさんの畑の大きさに合わせて種を調整して、ふるいをかけた砂と肥料に混ぜてから撒きました。

種が均等になるように丁寧に丁寧に、器に移し替えたりしながら混ぜてから撒きます。

サッサッサッサッと、手際よく均等に撒くサイフルさん。

それを称賛のまなざしで見つめる私たち。

そのあとは、先ほど撒いた種よりもほんの少し大きな種の撒き方を教わりました。

こちらは、小さなポットを使います。

指で押したへこみに3粒づつ撒きます。

サイフルさんのやり方は、最小限の材料(つまりお金)と力・時間で、最大限の収穫を、というものです。

種を適当にばらまいて間引くのではなく、最初から適切な量を均等に撒いて、均等な大きさで育て、チョキチョキと手軽に収穫して、終わり。実に簡単そうに見えます。

害虫対策は?と聞いてみると、まずはネットで卵を産むちょうちょやハエなどが中に入らないようにすることと、葉っぱを食べている虫を見つけたら速やかに発見して除去すること、虫の嫌がる薬(主に有機由来のもの)をまくこと、と教えてもらいました。

 

ゆいツールは、サイフルさんのやり方を真似て、国立公園の近くの村で野菜作りを試してみようと思っています。

実際は、村ガイドのマルディウスさんが、自分の家で小面積で試してみます。何かを世話するより、森に入って高く売れる木の実などを探すほうを好む気質の村の人たちが、後に続くかどうかはまだわかりません。

 

ちなみに、ゆいツールが以前国立公園内で試した野菜畑は、昨年の6月に洪水にあってストップしてしまいました。

その代りに、以前畑を管理してくれていた村人がひとりで、別の場所に畑を作っています。(写真は12月の様子)

今回、この村人も研修に誘ったのですが、連れて行くことはできませんでした。

なかなか思い通りにいかない活動ですが、少しづつ村の人たちの考え方を変えていけたらいいなぁと思っています。

(山)

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森の暮らし in Sumatera

2015年01月08日 | 8. スマトラでの活動

ゆいツールが活動しているスマトラ島の森(ブキッ・ティガプル国立公園)には、独自の文化を持ったタラン・ママッの人たちと、タラン・ママッの血を引く地域住民が暮らしています。(写真は、タラン・ママッの男性が作った腕輪です) 

彼らの暮らしはとてもシンプル。

焼畑で稲や野菜を育て(きわめて粗放的)、男たちは木の実やイノシシ、シカなどを森に取りに行くという生活です。

↓ 焼畑の様子(ダタイ村:dusun Datai)

焼畑後に、ゴムの木を植えます。

ゴム園を作るのは、現金収入を得るため。

でも、品種改良されていないゴムの木を粗放的な方法で管理しているので(つまりほったらかし)、収量も多くありません。

おまけに、もっともっとと畑を広げるので、国立公園の森は内側からどんどん削られてしまっています。

写真のゴムの木は、PASAというNGOが住民に支援した品種改良を施したものです。

PASAは、このほかにもゴム園の効率的な管理方法を学ぶためのスタディツアーを住民向けへ実施しました。

国立公園内には、公立の学校がありません。唯一タラン・ママッの人たちの村(ダタイ村)には、政府の教育局から派遣された先生が教えに来ていますが、スムーズにはいっていません。

その代り、PASAやPKHSといったNGOが先生を雇い、授業を行っています。↑ ダタイ村では村の女性が先生になって教えています。(PASAの支援)

以前も、このブログで紹介しましたが、村の男たちは竹で筏を作れるのは当たり前。

すべて自然の中から取ってきたもので、あっという間に作り上げます。

彼らの村のある国立公園に向かう道すがらは、こんな風景です。

ここも10年前は国立公園の中と変わらない森でした。いつの間にか、外からやってきた人たちが木を伐り、アブラヤシ農園に姿を変えつつあります。

スマトラ島リアウ州は、大きな会社が所有するプランテーションと、このように住民が所有する小さな規模の農園が競い合うように森を食いつぶしてきました。

せめて、国立公園の中の森は守りたい。それが、ゆいツールの願いです。

(山)

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住民に寄り添う活動を意識して in Sumatera

2014年09月27日 | 8. スマトラでの活動

9月にゆいツールは、スマトラで活動しました。
(スマトラでよく見る風景。右側はアブラヤシプランテーション。これがどこまでも続く・・・)

 

今回は、6月に農業(ゴム園管理)訓練を行った住民が住むレマン村(ブキッ・ティガプル国立公園:TNBT内の際の村)で立ち上がった農業グループと話し合いを行いました。

農業訓練に参加したときに、村で品種改良されたゴムの木を将来にわたって植えられるように、親木園を作ろうという話になりました。
通常は、農業省などから一時的に苗を支援されることがあっても、支援を待たなければ自分たちでは質のいいゴムの木の苗を買うことができません。そのため、ゆいツールの支援で、親木園を作るための苗木を購入し、それが成長したら森で通常手に入るゴムの種から育てた苗木に親木園の"芽"を植え付けて、それを植えられるようにしたいと思っています。
村の人たちは、将来の計画を立てるのが苦手です。今準備をすれば、数年後には確実に収入を増やすことができるのに、今努力することを嫌います。
親木園は、そんな村の人たちの考え方を変えるひとつのきっかけになるかもしれません。
同時に、品種改良されたゴムの木を種から育てることにしました。種は苗木よりも安いため、21人いるメンバー全員に行き渡らせることができます。しかし住民は種をポリベットで育てた経験がありません。8ヶ月待たないと植えることもできません。おそらく半分くらいの村人は脱落して行くだろうと思います。少なくとも訓練に参加した5人の村人は、真剣に取り組んでくれるはず、と期待しています。


(右側が、農業グループのリーダーマルディウスさん。ゆいツールの山本とは10年以上のつきあいです)

 

TNBT周辺の村人は、従来森の中で狩りをしたり、売れる木の実を探したりすることを好み、ゴム園も焼畑後に種を植えてほったらかし、ヤギを飼っても放し飼い(餌の草を刈って与えるのが面倒)、畑などの野菜を甲斐甲斐しく世話をしたりすることができません。
そういう住民の性格を十分に分かった上で、彼らと一緒に森を守るためにどうやって生活を向上させて行くか、来年以降もゆいツールは活動を続けて行く予定です。
(山)

 

(↓その他いくつかのNGOと打ち合わせも行いました)

 

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スマトラで農業研修! in Sumatera

2014年07月09日 | 8. スマトラでの活動
2014年6月中旬に、スマトラで村の人を対象に農業研修を実施してきました。
(ゴムのタネについて説明する農業局の講師と、真剣に話を聞く受講生)
 
本来は、ブキッ・ティガプル国立公園(以下、TNBT)の中のサダン村及びアイル・ボンバン村の農業グループのおじさんたちを連れて行く予定だったのですが、諸事情により、国立公園のすぐ外のレマン村のおじさん5名を研修に連れ出しました。
 
今回の研修は、ゴム園の効率的な管理方法を学ぶもので、研修に参加した村人は全員ゴム園を所有しており、研修を受けることで、今後新しいやり方を村に広めてくれる可能性があると見込んで実施しました。
 
村人にとって、ゴム園を所有することは、銀行にお金を預けるようなもので、貴重な現金収入の元となります。ただ、きちんと管理されたゴム園に比べて、1ヘクタールあたりのゴムの木の本数も少なく、きちんと管理をしないので、収量も多くありません。
 
今回の研修の目的は、新しいやり方を学んで村に持って帰り、ゴム園から収穫をあげ、生活向上のきっかけにすることです。
 
研修は4日間で、リアウ州プカンバルにある農業研修センターのAmrizal(アムリザル)さんを中心とした、地方農業局のスタッフ等の協力により実施することができました。
 
まず1日目は、品種改良されたゴムの木の苗木の作り方を学びました。
 
土台となるゴムの木を種から育てる方法、その苗木の幹の部分に、ゴムの液をたくさん出すように品種改良された別の品種のゴムの木の芽を移植する方法を、実践により学びました。
1本の親木を元にして、たくさんの子供たち(苗木)がクローンとして育っていきます。
(これが、移植する“芽”)
 
(“芽”を取る練習中)
 
現在村人が所有しているゴム園は、森の中にあるゴムの木を親木としていて、品種改良されていないため、病気などには強くても収穫できるゴムの液は、品種改良されたものに比べて少ないのが現状です。
 
2日目は、アムリザルさんによる講義(農業グループの必要性やマネージメントについて)と、実際に苗木を生産している農家の見学を行いました。
(立っているのがアムリザルさん)
 
 
(苗を生産している農家の見学)
 
生産現場では、木の芽を移植する専門のスタッフが働いていて、実際に芽が出て順調に育ったものの数を確認して、出来高制で給料が支払われているようでした。
実際、移植した芽がすべて順調に育つことはなく、素人がやっても多くは失敗するそうです。
(幹の途中から生えている緑の部分が移植した“芽”から生えた部分)
 
ゆいツールとともに活動している地元のNGOのRiki(リキ)さんは、村で親木から芽を移植する専門のスタッフを育成して、村で苗が生産できるようになったら、農業局が買ってくれるだろうし、売り上げは農業グループの収入として活用することができる、ということを話していました。
実際にそうなるまではまだ長い時間がかかるとしても、そこを目標にがんばってみてはどうだろうか、と私も思いました。
 
3日目は、プカンバルからほど近いバンキナンという地域の農業グループを訪ねました。彼らが所有するゴム園を見学し、自分たちが所有してるゴム園との違いを認識することができました。ゴムの本数、植えられているゴムの木の種類、1日の収量、管理方法、なにもかもが村とは違い、村人は小さいエリアで十分な収量をあげられることを学びました。
また、肥料をつくるために牛を飼っている牛舎も見学しました。
(ゴム園で記念撮影。ゴムの木が整然と並んでいます。)
 
4日目は、朝、アムリザルさんから、活動計画を作ることの大切さについて話があり、今後SERAIがサポートして、レマン村で農業グループを立ち上げること、そのあと苗木などの支援を行うことなどを確認しました。
その後、プカンバルから車で小1時間のところにあるルンビオの森(たびたびゆいツールの活動で訪れている場所)で、住民が守っている森を散策したり、魚の養殖を見学したりしました。
夜は、住民グループと、森林の管理の歴史や管理方法などについて意見交換を行いました。
(魚の養殖場見学。川の中に専用の船を浮かべて、その中で養殖しています。)
 
研修に参加した村人は、村で今回学んだことを生かすことを約束してくれました。
 
ゆいツールは、9月に現地を訪れ、活動の進捗を確認する予定です。
果たして、村人のやる気が持続しているかどうか、そこが重要なポイントだと思っています。
(山)
 
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