◎ ◎ ◎ スタッフコラム ◎ ◎ ◎
今日(2019年5月25日)の東京新聞を見ていたら「こちら特報部」という面で、国内のプラスチックごみに関する記事が載っていました。
5月20日、観光省によって、全国の市町村の焼却施設で企業から出るプラスチックごみ(廃プラ)を積極的に受け入れるよう要請する通知が出されたことも、新聞を読んで知っていましたが、この記事はそれを受けて産業廃棄物のリサイクル会社や環境省廃棄物規制課、一般社団法人プラスチック循環利用協会などに話を聞いて、廃プラの問題を掘り下げていました。
(回収されたペットボトル。2014年3月横浜市にある区のごみ処分場にて)
昨年末のエコプロダクツ展で、プラスチックリサイクル関係の団体のブースで、「中国が2017年末に廃プラスチックの輸入を禁止したことで国内に廃プラが溢れている、というテレビのニュースを見たのですが」、と担当者に話しかけたときには、「テレビは一部分を誇張しているだけ。国内でプラスチックのリサイクルは十分に回っている」というような話を聞きました。
ところが、この記事を見ると、「行き場をなくした中国向けの廃プラが、国内のセメント会社やRPF製造会社などに入るようになった。そこから押し出された汚れた廃プラがどんどんウチ(産業廃棄物リサイクル会社:東港金属)などに入ってきている」とあります。
日本国内では、「汚れた廃プラはセメント会社や製鉄会社に燃料として売られたり、『RPF』と呼ばれる固形燃料などに利用されている」そうです。
もしかしたら、エコプロダクツ展で話を聞いた団体はきれいな廃プラだけを扱っていて、汚い廃プラを含めた全体のリサイクル事情には詳しくなかったのかもしれません。
前述の産業廃棄物リサイクル会社は、東京湾岸に浮かぶ東京都大田区の人工島・京浜島にヤードがあり、高さ5mの廃プラの壁ができているそうです。「このままの状態が続けば、受け入れを断らざるを得ない」と社長は言っています。
そういう現状を受けて、環境省が言ってみれば「おたくの持っている焼却炉で、企業が出したプラスチックごみを燃やしてくれない?」と市町村に頼んでいるというわけです。
市町村が持っている焼却施設は、本来住民の家庭から出るごみ(一般廃棄物)を燃やすためのもので、企業が出したごみ(産業廃棄物)を燃やすためのものではありません。ちなみに、レストランやオフィスなどから出るごみも企業が出したごみ(事業系のごみ)とみなされ、事業者の責任で処理するのが原則です。(事業系一般廃棄物は市町村指定の一般廃棄物収集運搬業許可業者へ委託して、あるいは手数料を払って、最終的には市町村の焼却施設で燃やしているようです)
いずれにせよ、企業活動で出たプラスチックごみは産業廃棄物なので、一般廃棄物を扱う市町村の焼却施設では処理しないのが日本のルールです。
気になるリサイクル率ですが、記事によると廃プラ(事業系プラスチックごみ)は年間940万t(2013年)で25%がリサイクルされ、焼却による発電や固形燃料化など、燃やすことを前提に活用する「サーマルリサイクル」が57%、単純な焼却が10%ということです。(環境省の資料より)
家庭から出るプラスチックごみは、「資源ごみとして分別されてくるのは約2割。燃えるゴミとして回収されるのは7割で、残りが不燃ごみ扱い」(一般社団法人プラスチック循環利用協会)で、資源ごみの何割からは汚れなどの理由でサーマルリサイクルに回されるということです。
つまり、7割のプラスチックごみが焼却されている、ということです。
記事に、東京農工大の高田秀重教授のコメントが載っています。「焼却すれば二酸化炭素が出て温暖化が進む。高温で燃やすとダイオキシンは出なくても、地下水汚染などの原因となる窒素化合物が出る。焼却炉建設も巨額の費用がかかる。環境や財政に多大な負担を強いるのが焼却だ」
(ロンボクのごみの様子。2014年)
インドネシアを訪れてごみ問題を目の当たりにした日本人旅行者は、ほぼ全員「どうして焼却施設で燃やさないの?」という疑問を持ちます。あるいは、どうして行政が回収に来ないの?
答えは、「お金がないから」。シンプルです。
増え続けるプラスチックごみを、どうしたらいいのだろうか。
燃やしているから大丈夫?燃やせない国はどうする?
プラスチック製品を製造している企業、利用している企業、販売している企業、利用している私たち。
責任は私たちみんなにあるのではないだろうか。
(山)
(ロンボクの海辺のプラスチックごみ。2019年)
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