ゆいツールブログ:NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)

人と人、人と自然、人と環境などを「結う(ゆう)」ということに関して、団体の活動やスタッフの思いなどを紹介していきます!

サステイナブル・ツーリズムを目指して

2019年08月22日 | 12. コラム:環境ワード

△▼△▼ 環境ワードコラム △▼△▼

今、世界では、サステイナブル・ツーリズムという概念が広がりつつあります。

それは、観光におけるSDGsにつながる考え方です。(SDGsについてのコラムはこちら

サステイナブル(持続可能な)・ツーリズム(観光)。観光が持続可能である、とはいったいどういうことでしょうか。

例えば、観光資源である「自然」や「地域のおいしい食べ物」「おもてなしをする人々」「地域独自の伝統」「お土産になる民芸品・工芸品など」があります。

ツーリズムが活発になっても、訪れる人が捨てたごみなどで「自然」が壊されたり、「地域のおいしい食べ物」の材料が実は海外からの輸入品にならざるを得なかったり、「おもてなしをする人々」の収入が低くなって生活が苦しくなったり、「地域独自の伝統」を継承する人がいなくなってしまったり、「民芸品や工芸品」の材料が減少したり高齢化によって作る人がいなくなってしまったり、そうなったら観光は長続きしなくなります。

訪れる人も、迎える地域の人たちも、ツーリズムを支える資源を大切にし、一部の人が利益を独占するのではなく多くの人たちがツーリズムの恩恵を受けられるようにすること、あるいは地域の外の人が豊かになることよりも、地域の中の人たちが豊かになることに重点を置くようにすること。

そんなツーリズムのあり方、ということができます。

さて、ゆいツールは、ロンボク島で「村ツーリズム」を開発してきました。ゆいツールが開発した「村ツーリズム」は、村でのエコツーリズムを指しています。

(2017年12月に実施した学生向けエコツアーの一場面。ツアーの様子はこちらに)

私は、すべてのツーリズムは「エコツーリズム」であるべきだ、と考えてきましたが、結局それは「サステイナブル・ツーリズム」と置き換えることが可能です。

エコツーリズム(エコツアー)は、自然の中で遊ぶことだけを指しているのではありません。

逆に、自然の中で遊んでも、そこに自然への配慮や学びが欠如していたら、単なるアドベンチャーでしかありません。

例えば、(多くの)インドネシア人は、滝や海辺へピクニックに行くのが大好き。お弁当やお菓子や飲み物を持参して出かけて、自然を満喫しながら食事も満喫して、ごみは適当にその辺に捨てて帰ります。ピクニックに行くときだけでなく、日常的に、ごみを川に捨てたり、車やバイクからポイ捨てしたり、イベントなどやろうものならゴミ箱を探す前にぽい、です。彼らは、「誰かが片付けるだろう」「どこに捨てたらいいのかわからない」「汚いものを持ち歩きたくない」と思っています。

今、インドネシアは(少なくともロンボク島がある西ヌサ・トゥンガラ州の政府は)「村ツーリズム」を地域振興のひとつの柱にしようと考えているようです。

本来、村ツーリズムは「サステイナブル・ツーリズム」の考え方をベースにすべきものだと私は考えますが、多くの村の人が捉えている村ツーリズムは、単なる村でのツーリズム(観光)でしかありません。

それもある意味仕方がないことだと言えます。なぜなら、インドネシアは最近こそ発展してきて、中流家庭(普通街に住んでいる)が増えて旅行にでかける機会も増えましたが、環境教育の場はほとんどないし、村の人が観光に行く機会もめったにありません。村ツーリズムというのは、政府が予算をつけて観光地を整備してくれて、外から訪問者が来て、食堂やお店を開いたら儲かるんじゃないか、という程度の認識です。

だから、村長などが地方政府に期待するのは、やれ駐車場を作ってほしい、とか、道路を整備してほしい、とか、そういうハード面のことになります。

でも、ゆいツールが行っている「村ツーリズム」は、村に今ある資源を生かして活用する方法です。

もちろん、駐車場や道路が整備されたらそれに超したことはありませんが、たくさんの人がどやどやと訪れるツーリズムを目指していないので、なくてもなんとかなります。重要なのは、ソフト。人や自然環境や文化や伝統的な暮らしそのものです。

今までの活動の成果としてあげられるものは、以下のとおりです。

●ゆいツールが一番最初に村ツーリズムを試した中部ロンボクのタナ・ベア村のトニーさんの活動。

(2016年12月のツアーの様子はこちら⇒タナ・ベア村「村の生活満喫編」「村の若者とワークショップ編」

トニーさんは、ゆいツールと一緒に活動する中で、村ツーリズムが何であるか理解した後は、自分で実践しています。

トニーさんは、村で英語教室「Bright Course」を運営していますが、欧米のお客さんが来ることが度々あります。トニーさんは、彼らを村に案内して、村の暮らしを体験してもらったり、時にはパイズルさんのごみ銀行に連れて行ったり、村にあるドラゴンフルーツの観光農園をもり立てようとがんばったりしています。

●ゆいツールが今も協働している、中部ロンボクのランタン村のBale Lantan(若者グループ)

(ランタン村を訪れた日本人の学生さん)

トニーさんと一年目に村ツーリズムを試した後、ゆいツールはとなりのランタンむらに場所を移しました。

こちらには、やる気のある若者たちがたくさんいて、ゆいツールは彼らとタッグを組むことにしました。

今では、ランタン村にいくつかの村ツーリズム実施グループがあるようですが、ゆいツールは最初から一緒にやっているBale Lantan(バレ・ランタン)のメンバーとエコツアーを実施しています。

●西ロンボクのブウン・スジャティ村のマデくん

ブウン・スジャティ村のマデくんは、以前このブログでも紹介しました。

ロンボクの村ツーリズムが、サステイナブルなものになるように、ゆいツールは今後も若者たちと一緒に活動していきます。

(山)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)
Eメール:yuitool☆gmail.com

(☆→@に変えてメールをお送りください)

ホームページはこちら

https://yui-tool.jimdofree.com/

Facebookはこちら
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

持続可能な社会ってなに?ESDについて

2019年08月16日 | 12. コラム:環境ワード

△▼△▼ 環境ワードコラム △▼△▼

前回はSDGsの話でしたが、今日はESDについて書いてみます。

(←環境省のホームページより借用)

Education for Sustainable Development(持続可能な開発のための教育)。いったいなんのことでしょう。

SDGsを支えている考え方が、ESDです。ESDとはなにか。

環境省のサイトでは、「一人ひとりが世界の人々や将来世代、また、環境との関係性の中で生きていることを認識し、持続可能な社会の実現に向けて行動を変革するための教育のこと」とあります。

文部科学省のサイトでは、「ESDとは、地球に存在する人間を含めた命ある生物が、遠い未来までその営みを続けていくために、これらの課題を自らの問題として捉え、一人ひとりが自分にできることを考え、実践していくこと(think globally, act locally)を身につけ、課題解決につながる価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。」とあります。

以前のゆいツールブログで、ESDについて説明した部分があるので、こちらをご覧ください。(前半部分を参照)

そして、持続可能な社会を実現するための開発目標がSDGsというわけです。

キーワードは、サステイナブル(Sustainable)。

これは、別に自然環境の問題だけに限ったことではありません。

平和も、福祉も、ジェンダーや差別問題など人権に関することも、ひきこもりといった社会問題も、経済活動でさえも、持続可能な社会を作っていく上で重要な要素であり課題となります。

サステイナブルな社会を、どうやって作っていったらいいのだろう。

平和は、平和を壊そうとするものに敏感になって、積極的に守る側に立たなければいけない。

福祉は、障がいのある人、自立的な生活が困難な年配者などの生活を思いやる余裕を持つことが大切です。

人権は、社会の中でどんな差別があるのか、知るところから始まります。

(日本には、アムネスティという人権団体があります。この団体は世界とつながっているので、世界中で起こっている人権問題を学ぶには最適な機関です)

持続可能な社会とは、一部の人がお金持ちになったり、一部の人だけが幸せになったりする社会ではありません。

様々な立場にいる多くの人たちが、幸せになれる社会です。障がいのある人が、自立して生活することが困難な年配の方が、そういう人たちを介護している人が、お金があまりない人も、LGBTの人も、結婚していない人も、子供がいない夫婦も、この社会の中で生きる場所があり誰かの役に立つことができて、幸せだなあと感じることができる社会です。

(LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーをはじめとするセクシュアルマイノリティの総称)

また、将来にわたって、この幸せを享受することができるような社会です。

私たちの生活は、豊かな自然環境(きれいな空気、きれいな水を生み出す自然はなんでしょうか)によって支えられています。

私たちはこの地球を、多くの生き物たちと共有しています。なぜ、人間だけが資源を好きなように採り、利用することができるのでしょうか。

ほかの生き物のことを考えず、好きなように自然環境を変えることができるのでしょうか。

昔の日本人は、自然を恐れていました。自然の中にいる神様を信じていました。今はどうでしょうか。

サステイナブルとは、神様がいなくなった現代(神様を信じる人が少なくなった現代)に導入された、新しい概念です。

さて、ゆいツールは、ESDをテーマに2010年より活動しています。現在は、インドネシア・ロンボク島のごみ問題解決のために、若者たちを育てています。

日本の学生さんの現地でのボランティアの受け入れ、ロンボク島エコツアーのコーディネートもいつでもいたします。

興味のある方は、こちらからお問い合わせください。

(山)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)
Eメール:yuitool☆gmail.com

(☆→@に変えてメールをお送りください)

ホームページはこちら

https://yui-tool.jimdofree.com/

Facebookはこちら
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SDGs(エスディジーズ)を知っていますか?

2019年08月08日 | 12. コラム:環境ワード

△▼△▼ 環境ワードコラム △▼△▼

先月、テレビで「ハイパーハードボイルドグルメリポート」(テレビ東京)という、変わった番組を見ました。グルメという切り口ですが、ハードなドキュメンタリー番組で、とても考えさせられました。

ケニアのごみの山で、ゴミ集めをする18歳の青年がいました。14歳で家族と別れて、ひとりで生活するようになったそうです。

ナイロビ近くにあるダンドラというごみの山で、一日千トン近くのごみが埋め立てられていて、貧しい人たちが段ボールやプラスチック、金属などを集めています。ごみの山は、24時間ずっと内部でくすぶるように燃えていたり、豚や牛などの家畜がエサを漁ったりしています。18歳の青年は町にごみを集めに行くトラックに乗って、ゴミ収集を手伝いながら、プラスチックや金属を集めていました。袋いっぱいに集めても、100円や200円にしかならず、一日一食のひもじい食生活でした。捨てられている空き缶に買ってきた米と豆と水を入れて煮込んでいましたが、その時に燃やすものは周りにあるごみでした。片言の英語を話す青年は「また学校で勉強したい」と言いました。

さて、SDGsとは、このケニアのごみの山の青年のような人を救うための人類共通の目標です。持続可能な社会を実現するための17のゴール(目標)があります。1つめが「貧困をなくそう」(あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ)です。ケニアの青年に関係することで言うと、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」、ゴール4「質の高い教育をみんなに」などもそうです。

  

私は番組を見ながら、SDGsが本当にこのような人たちを救ってくれるのだろうか、と考えていました。もちろん、まずケニアが国として努力しなければいけません。でも、長い間欧米の植民地にされていた開発途上国は、今もなお構造的な不平等から抜け出せなかったり、長期的な視点で問題に取り組むことが苦手だったりします。先に豊かになった国は、後から豊かになろうとしている国を支援する義務があると私は考えます。

そのことに関係するのは、ゴール10「人や国の不平等をなくそう」です。

今、日本の企業も、SDGsを意識するようになってきています。企業はこの共通の社会でビジネスを展開している以上、同じ社会の中で起こっている諸問題に関係がないとは決して言えないからです。例えば、貧困から抜け出せない国、日本国内にもいる貧困から抜け出せない人たちに対してさえも。(このことは、2019年5月24日のスタッフコラムにも書きました)

ゆいツールの活動では、SDGsのどの部分が関係するでしょうか。

    

みなさんも、SDGsについて調べてみませんか?

参考:「SDGsとは?(イマココラボ)」

https://imacocollabo.or.jp/about-sdgs/

(山)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)
Eメール:yuitool☆gmail.com

(☆→@に変えてメールをお送りください)

ホームページはこちら

https://yui-tool.jimdofree.com/

Facebookはこちら
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本にも村ツーリズムがありました!徳島県にし阿波の山里の暮らし

2019年08月01日 | ●コラム:日本の事例

◎ ◎ ◎ スタッフコラム ◎ ◎ ◎

先日、徳島県のにし阿波地域で村ツーリズムをしかけている団体の事例を学びに行ってきました。

一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)の企画した「農山漁村コニュニティ・ビジネスセミナー」に参加したのです。

徳島は行ったことがなく、いったいどうやって行けばいいのかもわかりませんが、パンフレットの裏面の地図を見ると、飛行機だと「徳島阿波おどり空港」「高松空港(香川県)」「高地龍馬空港」へ降り立ち、そこから「阿波池田」まで1時間20分または2時間近くかかるようです。東京駅から、新幹線のぞみに乗って行くと、岡山で特急に乗り換えて約5時間かかるそうです。

遠い。でも、しょっちゅう行っているロンボク島に比べれば近い。国内ですから。

さて、そんな山深いところに、外国人がたくさん訪れているというではありませんか。それも、観光バスに乗ったアジア人の団体旅行とかではなく、日本の山里の暮らしに興味を持って、ディープな日本を味わうためにやってくる欧米の人たちが。

にし阿波の観光地域づくりは「住んでよし、訪れてよし 住みたいまち 世界に通用する観光地域づくり」で、人口減少・過疎対策と謳われています。(資料より)

地元には長く農業を営んできた人々が暮らしていて、おそらく日本のどこにでもある過疎地なのだと思います。

そんなところへやってくる欧米の人たちは、日本の伝統に触れ、自然に触れ、農家の人たちの暮らしに触れ、非常に感激して帰っていくそうです。

なぜ、にし阿波でこんな特殊な取り組みが行えているのか話を聞いてみると…。

にし阿波は、元々15の自治体があり、それが合併で4つの自治体にまとまりました。

そして「にし阿波~剣山・吉野川観光圏」というのものができました。

この観光圏の整備について、官民で構成する観光圏協議会が計画を作って、行政・民間・DMO(Destination Management Organization:デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)が一体となって取り組む仕組みができました。

広域が一体となって大きな目標を共有できるというのは、とても大切なことだと思います。

日本の場合、自治体毎に観光パンフレットがあって、市町村レベルではそんな狭い範囲の情報しかないの?と思うことがよくあります。

予算が縦割りなので、情報も縦割りになってしまっていて、もったいないです。

話は脱線しますが、最近環境省でも「地域循環共生圏」という考え方をベースに施策が動いているようです。

 ※「地域循環共生圏」とは、各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方。「地域循環共生圏」は、農山漁村も都市も活かす、我が国の地域の活力を最大限に発揮する構想。(環境省のWEBサイトより)

なんにしても、小さな範囲ではなく、ある程度の広さを前提に計画を作ったり、協力し合ったり、融通し合ったりすることは、観光という分野でもとても意義があることだと感じます。

外国人向けのプロモーションビデオを紹介してもらいましたが、まさにイメージを売るといった感じで、日本でよく見かける観光ビデオとはまったく異なりました。

そういえば、セミナーで初めて聞く言葉がありました。「ポタリング」和製英語だそうです。

サイクリングよりも、もう少し街中をゆっくりと散策するような意味に近いようです。

にし阿波では、ポタリングを仕掛けている会社があります。折り畳みができる自転車を使って、電車やバスに乗って3時間から8時間のツアーを楽しめるようです。

こういう、他ではあまりやっていない乗り物を使ったツアーなどがあると、面白そうだな、行ってみたいな、という気持ちが沸き起こってきます。

ところで、世界ではサステイナブル・ツーリズムという概念が一般化しています。

(日本で、サステイナブル・ツーリズムという概念を拡げようとしてるNPO法人日本エコツーリズムセンターのWEBサイトはこちら

国際認証もあります。日本ではまだ広がっていませんが、世界基準を取り入れて持続可能な観光地開発を進めていくことが、今後世界的に求められていくことになるかもしれません。

にし阿波の取り組みは、ロンボク島の村ツーリズム開発を進めているゆいツールの活動とコンセプトが一緒で、とても共感できました。

失われかけている伝統、守るべき自然、人の温かさ、そういうものを活用しながら残せる方法が、村ツーリズムあるいはサステイナブル・ツーリズムなのかもしれません。(山)

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

NPO法人ゆいツール開発工房(ラボ)
Eメール:yuitool☆gmail.com

(☆→@に変えてメールをお送りください)

ホームページはこちら

https://yui-tool.jimdofree.com/

Facebookはこちら
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする