米軍のイラン核施設への攻撃【国際法の根拠や影響は?】 NHK 2025年6月23日 21時35分
アメリカ軍は22日、イランの3つの核施設に攻撃を行いました。今回の攻撃をめぐる国際法上の根拠や、世界にもたらす影響について、アメリカの政治や安全保障に詳しい明海大学の小谷哲男教授に聞きました。
Q.トランプ大統領は今回の攻撃の目的について「核の脅威を阻止することだった」と述べています。国際法上は認められるのでしょうか?
明海大学 小谷哲男教授
「今回の攻撃は『予防攻撃』と呼ばれるもので、長期的に見たときに脅威が発生するかもしれないので事前にたたいておこうというものだが、これは国際法上、認められないというのが一般的な見方なので、今回の攻撃は国際法上、かなり問題点があったと思う。国際法上、先制攻撃が認められるとすれば、その脅威が差し迫っているという状況がまずは必要になるが、今の段階でイランの核開発が兵器レベルにまで至っているとは考えられないし、その先すぐにアメリカやその他の国にとって脅威になるというのは、客観的に見て説明しづらいものがあると思う」
「一方でイランが核保有をするようなそぶりを見せてきたことは間違いないし、ウランの濃縮度を60%まで高める必要があったのかどうかも含めて、イラン側にも責任はあったと思う。
国際社会からしても、アメリカがイランの核保有を防がなければならないと思うことに関しては理解できるということだと思う」
Q.攻撃の必要性について国際社会への説明は尽くされているでしょうか?
「アメリカが2003年にイラクへの武力行使に踏み切った際は、情報が間違っていた点は除いて、国連安全保障理事会においてイラクが大量破壊兵器を保有しているということを説明しようとはしていた。今回、国連の場でイランの核開発計画が本格化しているという客観的な証拠を示すことはなく、国際社会に対して十分な説明をしたとは、とても言えないと思う」
Q.今回の攻撃について、軍事的には効果があったのでしょうか?
バンカーバスター
「今回の攻撃で一番の焦点となったのがフォルドゥの核施設だった。ここは地下80メートルとも90メートルとも言われているところで『バンカーバスター』を10発以上撃ち込んだということだが、果たしてどこまで深く貫通することができたのか、そして地下の施設にダメージを 与えることができたかについては現段階で評価するのは難しい。後日、客観的な情報に基づいて評価がされると思う」
Q.今回の攻撃が世界にもたらす影響はどのようなものでしょうか?
「大きな文脈では、第2次世界大戦後、国際社会が築いてきた法やルールに基づく国際秩序を主導してきたアメリカが、国際法を無視する形であからさまな軍事行動をとるようになったということで、今後の国際秩序や国際ルールのあり方に大きな波紋を投げかけるのではないか。力のある国はやりたい放題、そういう世界に戻るかもしれないという懸念が生まれるのだろうと思う」
「一方、中東に目を転じると、今後のイランの動きによっては、さらに紛争が拡大する可能性もあるし、ホルムズ海峡の航行の安全に影響が出てくれば、日本も含めて国際社会に対して悪影響を与えかねない、危険な状態になっていると思う。ホルムズ海峡が封鎖されたり、航行が危険になったりすれば、原油価格が上昇してガソリン価格も上がるだろうし、電気代も上がるだろう。物流のコストもかかるので、全般的にインフレが進むおそれがある」
アメリカ軍は22日、イランの3つの核施設に攻撃を行いました。今回の攻撃をめぐる国際法上の根拠や、世界にもたらす影響について、アメリカの政治や安全保障に詳しい明海大学の小谷哲男教授に聞きました。
Q.トランプ大統領は今回の攻撃の目的について「核の脅威を阻止することだった」と述べています。国際法上は認められるのでしょうか?
明海大学 小谷哲男教授
「今回の攻撃は『予防攻撃』と呼ばれるもので、長期的に見たときに脅威が発生するかもしれないので事前にたたいておこうというものだが、これは国際法上、認められないというのが一般的な見方なので、今回の攻撃は国際法上、かなり問題点があったと思う。国際法上、先制攻撃が認められるとすれば、その脅威が差し迫っているという状況がまずは必要になるが、今の段階でイランの核開発が兵器レベルにまで至っているとは考えられないし、その先すぐにアメリカやその他の国にとって脅威になるというのは、客観的に見て説明しづらいものがあると思う」
「一方でイランが核保有をするようなそぶりを見せてきたことは間違いないし、ウランの濃縮度を60%まで高める必要があったのかどうかも含めて、イラン側にも責任はあったと思う。
国際社会からしても、アメリカがイランの核保有を防がなければならないと思うことに関しては理解できるということだと思う」
Q.攻撃の必要性について国際社会への説明は尽くされているでしょうか?
「アメリカが2003年にイラクへの武力行使に踏み切った際は、情報が間違っていた点は除いて、国連安全保障理事会においてイラクが大量破壊兵器を保有しているということを説明しようとはしていた。今回、国連の場でイランの核開発計画が本格化しているという客観的な証拠を示すことはなく、国際社会に対して十分な説明をしたとは、とても言えないと思う」
Q.今回の攻撃について、軍事的には効果があったのでしょうか?
バンカーバスター
「今回の攻撃で一番の焦点となったのがフォルドゥの核施設だった。ここは地下80メートルとも90メートルとも言われているところで『バンカーバスター』を10発以上撃ち込んだということだが、果たしてどこまで深く貫通することができたのか、そして地下の施設にダメージを 与えることができたかについては現段階で評価するのは難しい。後日、客観的な情報に基づいて評価がされると思う」
Q.今回の攻撃が世界にもたらす影響はどのようなものでしょうか?
「大きな文脈では、第2次世界大戦後、国際社会が築いてきた法やルールに基づく国際秩序を主導してきたアメリカが、国際法を無視する形であからさまな軍事行動をとるようになったということで、今後の国際秩序や国際ルールのあり方に大きな波紋を投げかけるのではないか。力のある国はやりたい放題、そういう世界に戻るかもしれないという懸念が生まれるのだろうと思う」
「一方、中東に目を転じると、今後のイランの動きによっては、さらに紛争が拡大する可能性もあるし、ホルムズ海峡の航行の安全に影響が出てくれば、日本も含めて国際社会に対して悪影響を与えかねない、危険な状態になっていると思う。ホルムズ海峡が封鎖されたり、航行が危険になったりすれば、原油価格が上昇してガソリン価格も上がるだろうし、電気代も上がるだろう。物流のコストもかかるので、全般的にインフレが進むおそれがある」