
亡くなった安田種雄さん(遺族提供)
【アーカイブ動画】「木原事件」を巡り実名告発 警視庁捜査一課殺人捜査第一係 元警部補・佐藤誠氏 記者会見
「オマエなんて、いつでもクビ飛ばせるぞ!」自宅に向かうと木原副長官は怒鳴り…“妻の元夫怪死事件”全容を“捜査一課伝説の取調官”が実名告発!(文春オンライン 2023年7/26(水) 16:12配信)
「 週刊文春 」が3週にわたり報じてきた、木原誠二官房副長官(53)の妻の元夫“怪死”事件。2018年の再捜査開始にあたり、重要参考人であるX子さんの取り調べのために投入された「伝説の取調官」がいた。警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係・通称「サツイチ」に所属していた、佐藤誠警部補(当時)だ。
今回、佐藤氏が小誌の再三の取材依頼に応じ、5日間、計18時間にわたって実名で全てを語った。
「警察庁長官のコメントは頭にきた」「志半ばで中断させられた」
昨年、警視庁を退職した佐藤氏。取材に応じる契機となったのは、7月13日の露木康浩警察庁長官の定例会見での発言だった。小誌がこれまで報じてきた、安田種雄さん(享年28)の不審死について、露木氏は「証拠上、事件性が認められないと警視庁が明らかにしている」と述べた。だが、佐藤氏はこう憤るのだ。
「警察庁長官のコメントは頭にきた。何が『事件性はない』だ。あの発言は真面目に仕事してきた俺たちを馬鹿にしてるよな。当時から我々はホシを挙げるために全力で捜査に当たってきた。ところが、志半ばで中断させられたんだよ」
佐藤氏が警視庁本部2階の取調室で、木原氏の妻となっていたX子さんと初めて向き合ったのは、2018年10月上旬のこと。当初、X子さんは無言を貫いたという。
佐藤氏「X子さんよぉ、呼ばれた理由くらい分かるよな?」
X子さん「……」
X子さんは連日、警視庁本部と自宅を往復。まるで武装するかのように完璧にメイクを施し、香水の香りを振りまいた。
「取り調べでは癖を見抜くために、カマをかけることもある。X子は分かりやすくて、素直な子だった」(佐藤氏)
そんな中、X子さんはDNA採取のための採尿や採血を拒否。佐藤氏はやむを得ず、身体検査令状を取ってX子さんの自宅へ向かった。だが、待ち合わせ時間に認識の相違があり、佐藤氏は予定時刻を30分ほど過ぎて木原家に到着。すると、待ち構えていた木原氏が怒髪天を衝く勢いで向かってきたという。
「時間ぐらい守れよ! お前なんて、いつでもクビ飛ばせるぞ!」
「X子の取り調べが佳境を迎えた矢先にストップした」
木原氏は、X子さんの取り調べにも注文を付けていた。
「木原氏は『国会の召集日までに取り調べを終わらせろ』と捜査幹部に話していたと聞いている。『国会が始まれば、妻の取り調べの間、子供の面倒を見る人間がいない』というわけだ」(佐藤氏)
その臨時国会の開会が10月24日。だが、12月には閉会を迎える。そのため佐藤氏は「国会が終わったら取り調べ再開だろう」と高をくくっていた。だが――。国会開会直前の10月下旬、佐藤氏は上司である佐和田立雄管理官(当時)に、こう告げられたという。
「明日で全て終わりだ」
佐藤氏が語気を強める。
「X子の取り調べが佳境を迎え『今から証拠を探そう』という矢先にストップした。捜査一課で100件近くも調べをやってきたけど、これだけ流れができていたのに調べが取りやめになるなんて経験したことがない。悔しくて、頭にきたよな」
そして、佐藤氏は一つの決断を胸に、X子さんの「最後の取り調べ」に臨んだ――。
最後の取り調べで、X子さんは何を語ったのか。7月26日(水)12時に配信される「 週刊文春 電子版 」および7月27日(木)発売の「週刊文春」では、取調室でのX子さんとの会話に加え、捜査期間中に木原氏がX子さんに語りかけた衝撃的な内容を記録した映像の存在、種雄さん不審死の「事件性」について当時の捜査一課長が小誌に語った内容、木原氏に捜査協力を促した自民党の大物議員の実名など、13ページにわたって「木原事件」を詳報している。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年8月3日号
《記者会見詳報》「断言する。これは殺人事件。被害者が可哀想だ」木原誠二官房副長官の妻を担当した取調官・佐藤誠警部補が語ったこと(文春オンライン2023年7/28(金) 16:02配信)
2018年に再捜査が始まった、木原誠二官房副長官の妻X子さんの当時の夫、安田種雄さん(享年28)の“怪死”事件。X子さんの取り調べを担当したのが、警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係の佐藤誠警部補(当時)だ。
7月28日、その佐藤氏が都内で記者会見を開いた。会見場には140人を超える報道陣が殺到。会場が満員で入れず、急きょ会場側が用意したライブ配信用モニターで会見を見守る記者も多かった。
1983年に警視庁に入庁し、昨年退職した佐藤氏。問題視しているのは、7月13日に開かれた、露木康浩警察庁長官の定例会見での発言だ。露木氏は種雄さんの不審死について、「適正に捜査が行われた」「事件性は認められない」などと説明していた。
会見冒頭で、佐藤氏はこう述べた。
「断言する。これは明らかに殺人事件だ。それを『事件性がない』と言うのは、被害者が可哀想だ、と思った。だから文春の取材にも応じた。『退職した警察官がべらべら喋るほうが怖えじゃねえか』という意見もあるかもしれない。ただ、俺は『被害者が可哀想』と思っちゃったんだ」
「終わり方が異常だった」
2018年10月上旬からX子さんの取り調べをスタートさせた佐藤氏。だが、10月下旬に突如、上司だった佐和田立雄管理官(当時)から「明日で調べは終わるぞ」と告げられたのだ。
「終わり方が異常だった。殺人事件は時効がないので、自殺(と結論づける)か(犯人を)捕まえるか、どちらかしかない。灰色はない。10月24日から国会が始まるというのはあったが、12月に国会が閉会すれば再開すると思っていた。しかし、全く再開する様子もないまま自然消滅した」(佐藤氏)
「事件性は認められなかった」に佐藤氏は…
種雄さんの遺族は先日、大塚署に再捜査を求める上申書を提出。だが7月24日、大塚署で、警視庁捜査一課の特命捜査第一係長から「捜査を尽くした結果、事件性は認められなかった」と告げられていた。これに関して、佐藤氏はこう憤った。
「殺人事件はホシ(容疑者)を捕まえることも大事だが、一番大事なのは遺族なんだ。(再捜査が開始してから)5年後に突然『事件性がない』と言われれば、怒っちゃいますよね。だっていままで放っぽっていたんだから。さらに、自殺という証拠がない。『遺書がある』とか、そういうものもない。それでは遺族が納得するはずがない」
さらに、業務上知り得た情報を漏らすことで、地方公務員法に触れる可能性があることについても質問が飛ぶと、
「当然、(その可能性については)分かっている。ただ、(取材に応じたときの)気持ちは今も変わりません」(同前)
佐藤氏はこの会見に先立ち、「週刊文春」の取材に18時間にわたって応じている。その全容については、現在発売中の「週刊文春」(8月3日号)、「 週刊文春 電子版 」で読むことができる。
「週刊文春」編集部/週刊文春