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官民ファンド全廃すれば、アベノミクス第三の矢は「全敗」

2018-12-11 09:12:59 | 安倍、菅、岸田の関連記事
だから、やめたくてもやめれない。

でも、アベノミクス第三の矢なんて、とっくの昔に「全敗」してるよ。




12/10(月) 7:00配信 AERA dot.

会計検査院も財務省も官民ファンドは問題だというが、ちょっと意味が違う。

 「経産相と次官 給与返納 産業革新投資機構の報酬問題」。

 12月4日付朝日新聞夕刊1面記事の見出しだ。大臣と次官が給与返納というのだから、どんな不祥事があったのかと思うだろう。これは、世耕弘成経済産業相の「より大きな責任逃れのために小さな責任をとる」という高度なパフォーマンスなのだが、その点はさておき、この件は、最近よく話題に上る官民ファンドの問題点を象徴的に示す事例だ。

 官民ファンドとは、政府と民間が共同出資して、ベンチャーの起業、高度な研究開発、地域経済の振興、日本文化の海外への発信、農林水産業の振興など様々な政策目的のために投資する基金のことだ。安倍政権になって雨後のたけのこのように増殖し、現在は14もの官民ファンドが活動中だ。それぞれが掲げる目的は、一見異なるが、実際には重複している。14のファンドへの、政府の出資や融資は18年3月時点で計8567億円、ファンドが資金調達するうえで政府が元本の返済や利子の支払いを保証した金額は計3兆円近くにもなるそうだが、有望な投資先を見出せず、集めたお金を眠らせていたり、赤字決算になっているケースが多発している。しかも、個別案件の情報開示がほとんどなく、今後どうなるのか非常に不安なファンドばかりだ。

 さらに、官民ファンドは、各省庁からの現役出向などの受け皿にもなっているので、役所にちゃんとやれと言っても、簡単には進まない。こうした事態に対して、会計検査院は、使えない資金の返還や情報開示の徹底などを求めているが、はっきり言って、真面目に対応しているファンドはない。

 官民ファンドの問題事例はたくさんあるが、いくつか紹介してみよう。
経産省が日本文化の海外輸出支援のために鳴り物入りでスタートさせた「クールジャパン機構(CJ機構)」という官民ファンドの名前は聞いたことがある人も多いだろう。ここは、1910億円の投資計画を策定したものの、実際の投資額は399億円どまりで、しかも、98億円の累積赤字を抱えてしまった。


この機構が投資した個別案件で有名な例としては、三越伊勢丹ホールディングスとの共同出資で2016年10月にオープンした「イセタン・ザ・ジャパン・ストア・クアラルンプール」がある。スタート時には、新聞・テレビでも大きく報じられた。しかし、この案件は、開業から不振続きで、結局、CJ機構は18年6月に株式を売却して撤退した。

 同じくCJ機構が投資したバンダイナムコホールディングスなどが設立したアニメ配信会社アニメコンソーシアムジャパン(ACJ)も大々的に宣伝されたが、失敗して撤退。

 13年設立の農林水産省所管の官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」(A―FIVE)には、政府が300億円を出資したが、18年3月までの投資額はたったの98億円で含み損は10億円。これに対して役職員約50人の人件費を含む運営経費が何と40億円超だというから、開いた口が塞がらない。

 15年設立の総務省所管の「海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)」も、投資実績がたったの4件。昨年3月に話題になったプラスワン・マーケティング(格安スマホ事業)のアジア進出支援を目的にした13億円の出融資は、1年もたたないうちに同社が破綻して、海の藻屑と消えた。

 国土交通省所管の「海外交通・都市開発事業支援機構」も、4179億円と巨額の投資計画に対して、実績はわずか263億円で、しかも、累積赤字は46億円。

 こうした事態に対して、マスコミの批判記事も増えた。各省庁への批判ももちろんだが、政府出資の総元締である財務省への批判も強い。それを恐れたのか、18年11月10日付の日本経済新聞に、財務省が、官民ファンドの管理強化に乗り出すという記事が出た。具体的に何をするのかは不明だが、その趣旨は、せっかくお金があるのだから、もう少しちゃんと投資しろという方向を向いているようだ。官民ファンドの体たらくを見れば、財務省が官民ファンドの経営をテコ入れするのは、確かに当然のことだと思う人もいるだろう。


■官民ファンドが赤字になるのは当然

 しかし、投資実績を伸ばすための管理強化なんて全くの愚策だ。なぜなら、管理強化をして、もっとちゃんと投資しろとやったら、どうなるか。投資額は増えるだろうが、官民ファンドの収益はさらに悪化し、赤字幅が際限なく拡大するのは確実だからだ。

 では、一体どうして、官民ファンドの投資は失敗ばかりなのだろうか。

 官民ファンドは、一部民間からの出資を受け入れるが、その他は、国の出資や政府保証付きの債券発行などで資金集めを行う。焦げ付いても最後は国が損失をカバーしてくれるので、多額の資金が簡単に集まる。

 リスクなしで好きなように投資できるとなれば、どうなるか。まず、最初のスタッフのリクルートで問題が起きる。リスクなしで好きなことをできるということに妙味を感じる人が集まることになるからだ。民間の「プロ」と言われて集まったスタッフは、実は、金儲けと売名狙いの輩ばかりということになる可能性が高くなるのだ。

 それを最も端的に表したのが、冒頭の産業革新投資機構(JIC)で起きた今回の騒動だ。18年9月に産業革新機構(INCJ)を延命・改組してスタートした資金量2兆円の巨大官民ファンドだが、そのJICの田中正明社長が、給料を1億円以上寄越せと言い始めた。ファンドかぶれの経産官僚やこれまたベンチャー大好き人間の世耕経産相がこれに賛同して、いったんはJICの幹部などに1億円超の給与を払える制度にすることでJICと経産省が合意した。ところが、この世界のプロの人たちから、いくら何でもあの人たちに1億円はないんじゃないかという批判が集まった。さらに、ゴーン前日産会長事件で、高額報酬問題が世論の注目を集めるという事態に巻き込まれた。最後は、自民党内からも批判が出て、菅義偉官房長官からもダメ出しがあったとかで、ついに経産省は1億円報酬を撤回した。もちろん、田中社長は、話が違うと激怒。経産省は、田中社長に辞任を迫り、さらには、追加出資の大幅減額で脅しをかけているなどとも報じられる。完全な泥仕合だ。


ちなみに、この問題に陽が当たったのは、朝日新聞の11月3日付1面の「官民ファンド高額報酬案」という記事が発端だ。この記事がなければ、田中社長の思惑通り、高額報酬が認められていた可能性が高い。

 官民ファンドに群がる民間人材は、自分たちはリスクを取らないので、マスコミや世間の注目を浴びやすい派手な投資案件をぶち上げたがる。それで名前を売れば、転職後の給料も上がるという計算が働くからだ。官僚には目利き能力はないから、そうした派手な案件を並べられると、さすが民間のプロは違うなと感心するというお粗末な状況になる。かくして、官民ファンドでは、当初の公共政策的な目的は忘れ去られ、「儲かるぞ!」という掛け声のもとに、イケイケドンドンでずさんな投資がまかり通ってしまうのだ。

 また、官民ファンドが使う政府出資や政府保証付き債券発行という資金集めの手法は、官僚にとっても使いやすい。これらは、補助金事業のように国庫からすぐに予算を拠出して費消してしまうわけではない。一般会計の予算措置がないので、国会や財務省による厳しいチェックも受けなくて済む。

 さらに、官民ファンドの設置期間は常に長期化するというのが実態だ。前述したINCJの発足は09年で、設置期間は15年間だった。しかし、一度作られると官僚は決して廃止しない。天下りや現役出向で甘い汁を吸えるからだ。今回もJICに衣替えすることにより、通算存続期間24年間への延命に成功してしまった。

 政治家もまた、それをチェックするどころか、そこの利権に一枚かもうと躍起になっている。ベンチャーの世界は、実は政治家にとってはブルーオーシャン(競争相手のいない未開拓市場)と呼ばれる有望な資金源だ。成功したベンチャー経営者は、巨額の資産を持つ。彼らと仲良くなれば、パーティー券の購入や政治献金も期待できる。ベンチャー経営者への見返りには、経団連などの大企業経営者への紹介という手がある。また、役所の審議会などの委員に抜擢するというのもよく使われる手だ。これらは、カネはあっても社会的信用力がないというベンチャー経営者にとっては、非常に魅力的な飴になるのだ。政治家や官僚から見ると、簡単な便宜許与なので、最近の政府の審議会や研究会にはベンチャー経営者がメンバーになるケースが増えている。


■2年で異動する官僚にファンドをやらせると…

 ファンドの活動期間は長い。官民ファンドでは、長くなればなるほど、個々の投資案件への評価はあいまいになるのが宿命だ。ファンドを監視しているはずの出向している官僚は1年か2年で元の所属省庁に戻り、後任者は新規案件には熱心でも既に投資された案件にはどうしても無関心になる。結局、あとは野となれ山となれの無責任体制となるのだ。

 過去には、旧郵政省と旧通産省が「基盤技術研究促進センター」という官製ファンドを作り、「民間のプロを集めて」ベンチャー投資をしたが、NTT株の配当金約3000億円を投資して9割以上を失ってしまったという大事件があった。しかし、この大損失の事態にも、官僚は誰も責任を取らずに済んでいる。

 今やファンドのノウハウは民間にも定着し、市場の資金もじゃぶじゃぶだ。それでも金が集まらないベンチャー企業は、はっきり言って、不良案件だけ。それが官民ファンドに群がってくるのが実情だ。

 そもそも、民間ではできないのに、官が出てくればできるというのは、なぜかということを考えてみてほしい。官僚が民間人よりもベンチャー投資の目利きができるはずもない。最新の業界動向、技術動向に通じている訳でもない。では、何が強みなのか。

 それは、国民の税金を好きなように使って、しかも、責任を取らなくてよい。それだけが官民ファンドの強みだ。だから民間なら「やめた方が良い」という事業に投資できる。もちろん、リスクは国民が負っている。

 そう考えると、はっきり言って、官民ファンドは百害あって一利なしだ。本当に公的な目的があり、かつ、民間ビジネスではできないというのなら、補助金を出せばよい。補助金なら、毎年の予算として、厳格なチェックを受ける。それを通るだけの必要性があるものに限って支援すれば済む話だ。官民ファンドの管理強化などは不要。すぐに全廃すべきだ。

■三流案件の吹き溜まりとなる官民ファンドは全廃しかない


最近の優秀なベンチャー企業経営者には、下手に官民ファンドから支援を受けると、できが悪い官僚に付き合わなければならなくなるという理由でこれを嫌がる人も増えている。私が知る若者も、米国でベンチャーを立ち上げると、政府系ファンドから声がかかったという。しかし、話しているうちに、官僚たちのレベルがあまりに低いことに気づいた。話をちゃんと理解できないし、反応が遅すぎる。これでは、とても自分たちの事業についてこられないなと思って、丁重にお断りしたそうだ。手続きが煩雑で手間と時間を浪費するだけなら、自力で資金を調達したほうがいいというのは、当然の論理だろう。

 また、最近、米国で頭角をあらわした日本人の若手ファッションデザイナーが事業拡大のため出資者を探す際、CJ機構を知人に勧められたそうだ。しかし、その若者の答えは、「僕がやってるのは、ただのファッションですよ。そんなことに国が貴重な金を使うんですか? もっと必要な分野があるんじゃないですか? そんなものの世話になるのは、僕は嫌です」。

 この答えこそ、この問題の本質ではないだろうか。

 賢明な超一流の若手起業家は、日本の官民ファンドを相手にしない。こうした風潮はさらに強まっていくだろう。そうなると、この先は、政府にしか相手にしてもらえない、本当にできの悪い民間企業ばかりが、官民ファンドのまわりに集まってくることになる。

 もう一度言おう。

 やっぱり、官民ファンドは、即刻全廃した方が良い。(文/古賀茂明)


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