公営競技はどこへ行く

元気溢れる公営競技にしていきたい、その一心で思ったことを書き綴っていきます。

チリ・ボリッチ大統領:2023年4月、「国家リチウム戦略」を打ち出し → 新規の重要開発プロジェクトは、過半数をチリ政府が出資

2024-07-14 11:15:43 | 政治経済問題
チリ ボリッチ大統領




いつか電池がつくれなくなる?世界バッテリーメタル争奪戦 NHK 2024年7月13日 22時07分

毎日使うスマホに欠かせないバッテリー。
帰宅するときの電車内とか、電池残量は気になりますよね。

EVや太陽光発電の蓄電設備など、バッテリーの需要は今、急速に拡大。それをつくるためのリチウムや黒鉛などの重要鉱物、バッテリーメタルは世界各地で囲い込みや争奪戦が激しくなっています。

中国の存在感が高まり、米中対立も。争奪戦の現場を追いました。

(サンパウロ支局 木村隆介 / アメリカ総局 江崎大輔)

争奪戦の現場 チリでは
チリ アタカマ地方
バッテリーメタル争奪戦の現場を見ようと私たち取材班が向かったのは、チリ北部のアタカマ地方です。標高およそ2500メートル、見渡す限り荒涼とした大地が広がっています。

チリの首都サンティアゴから北におよそ1200キロ、空港から車でさらに3時間走ると車窓に飛び込んできたのは広大な塩の湖、「塩湖」です。
チリとアルゼンチン、ボリビアにまたがるアンデスの高地に点在する塩湖。表面は塩で覆われていて、その下にバッテリーに使われる重要鉱物、リチウムを含んだ大量の水が存在します。

日本はチリから炭酸リチウムの7割以上を輸入していますが、この重要鉱物をめぐって奪い合いが激しくなっているのです。
バッテリーの重要鉱物 中国が牛耳る
バッテリーメタルをいかに中国が握っているのかを示すデータがあります。

世界のリチウム生産量のうち中国が占める割合は14%。さらに鉱物の加工にあたる精錬の過程になると中国の存在感が鮮明になります。
IEA=国際エネルギー機関によりますと、リチウムの65%、ニッケルの28%、コバルトの77%、黒鉛の91%を中国が占めています。

この構図がさらに進みそうな動きがチリで起きていました。
最大手企業も中国の出資
チリのリチウム開発をリードする最大手企業SQMの取材が特別に許可されました。

広大な敷地に入ってみると、一面に並んでいたのはリチウムを精製するための貯水池です。
リチウム精製用の貯水池
この会社は中国から出資を受けていました。2018年に中国の天斉リチウムから出資を受け、今も22%あまりの株式を天斉リチウムが保有しています。

リチウムの生産工程は次のとおりです。

塩湖の地下からくみ上げた水を、1年あまりをかけて蒸発させ、リチウムの濃度を5%近くまで高めます。年間を通じて雨が少なく、強い日ざしが照りつけるアンデス山脈の気象環境が濃縮に適しているといいます。

会社によりますと、この場所だけで、リチウムの生産用に約100のプールを確保しているということです。

そして、リチウムを濃縮させた水を、会社の工場へ陸路運搬し、蓄電池などの原料となる炭酸リチウムや水酸化リチウムを生産します。この工場だけで、年間20万トンのリチウムを生産しているということです。
リチウム生産工場
完成したリチウムを入れた袋を見ると大きく中国語が記されていました。

ここで生産されるリチウムの大半が中国向けだということです。
チリのリチウム“国有化”戦略
こうした状況のなか、チリのリチウム戦略が大きな転機を迎えました。

ボリッチ大統領が2023年4月、長年、民間企業に委ねていたリチウム開発を、国が主導するという新たな「国家リチウム戦略」を打ち出したのです。

国レベルでリチウムを管理、新規の重要開発プロジェクトは、過半数をチリ政府が出資するなどとなっています。
チリ ボリッチ大統領
ボリッチ大統領
「国家リチウム戦略はこの国の人々にとって良いニュースです。新しい学校や病院、警察署をつくり、すべての人々がより尊厳のある生活を送るための資金を提供できるようになります」
背景には、リチウムが生み出す富が地元にもたらされていないという不満があります。
地元の女性
「大統領の新しいリチウム戦略はすべてのチリ人が望んでいることです。資源が海外に流出するだけでなく、自分たちの国に利益をもたらしてくれるようにしてほしい」
左派のボリッチ大統領は、格差是正や社会保障の強化を重要政策として掲げてきました。需要の拡大が見込めるリチウムの開発を国がコントロールすることで、生み出された利益を自国に取り込む狙いです。

一方、リチウムの開発には高い技術力を持つ民間企業の協力も不可欠です。そこで、ボリッチ政権は、ただリチウムを生産するだけでなく、現地で電池に使う材料などの生産までを行う企業に、通常よりも安い価格でリチウムを販売する方針です。

これにより、チリをリチウム産業の一大拠点に発展させたい考えです。
アウロラ・ウィリアムス鉱業相
ウィリアムス鉱業相
「優遇価格で販売すれば、(世界の)企業はチリ国内で付加価値をつけることに関心を持つようになります」
中国企業 積極進出
こうしたチリ政府の動きに素早く反応しているのが中国企業です。

中国のEV大手「BYD」は、現地で電池材料などの生産を表明。優遇価格でリチウムを入手する権利を得ました。
「BYD」の進出を伝える地元メディア
また、金属大手の青山控股集団も、子会社が電池材料を現地生産することを明らかにしています。

中南米で最も早く中国との外交関係を樹立したチリは、輸出、輸入ともに中国が第1位の貿易相手国です。

去年、中国を訪問して、習近平国家主席と会談したボリッチ大統領は、リチウム開発における中国の役割に期待を示しました。
中国 習近平国家主席と会談するボリッチ大統領(2023年)
ボリッチ大統領
「中国がここ数年、リチウムなどの戦略的プロジェクトにおいて、わが国への投資に大きな関心を寄せていることを高く評価します。チリと中国は、リチウムの開発を推進する戦略的パートナーになることができます」
日本が入ろうとしても入れない?
チリ政府がパートナー企業に求める条件は資金供給力と操業能力の高さの2つで、特に資金力が重要になっていると専門家は指摘します。

中国は積極果敢に投資しており、今後開発するプロジェクトの権益を中国が握ってしまえば、日本が入ろうとしても入れない、または日本がリチウムを割高で買わなければならなくなるおそれもあるという懸念も出ています。
リチウム権益買収の6割が中国!
南米ではボリビアやアルゼンチンでも中国の存在感が高まっています。

ボリビアでは2023年、中国の大手電池メーカー「CATL」など中国企業2社が、日本や欧米に先駆け、豊富なリチウムを埋蔵する「ウユニ塩湖」などでのリチウムの生産に向けた協定をボリビア政府と取り交わしています。
協定締結について会見するボリビア政府と中国企業(2023年6月)
アルゼンチンでも中国最大手のリチウム開発企業、「ガンフェンリチウム」が、5つのリチウム開発プロジェクトを抱えていて、総生産能力は年間10万トンを上回るとしています。

経済産業省によりますと、中国はリチウム資源の確保に向けて、世界各地で積極的に鉱山権益の獲得を進めているといいます。リチウム権益の買収案件では金額ベースで中国企業に関連する取引が全体の6割を占めるといいます。
危機感抱くアメリカ
バッテリーメタルの分野で権益獲得に動く中国を強く警戒しているのがアメリカです。

バイデン政権は、2022年、IRA・インフレ抑制法を制定しました。名前はインフレ抑制となっていますが、実質的には北米の重要鉱物のサプライチェーンから中国を締め出す狙いがあるといわれています。
インフレ抑制法に署名するバイデン大統領(2022年)
EVを購入する人に対して「税制優遇措置」を設け、1台あたり7500ドル、およそ120万円の税額控除が受けられる仕組みです。ただ、この税額控除には条件があります。
税額控除の条件
▼電池の原料となる重要鉱物の採掘や加工などのうち一定の割合をアメリカと、アメリカがFTA=自由貿易協定を結ぶ国で行うこと
▼車両の最終的な組み立てがアメリカやカナダなど北米地域で行われること
こうした条件を満たさないと税額控除が受けられなくなる仕組みです。

中国の工場で加工された鉱物を使った電池を搭載したEVはこの税額控除の適用対象外となり、消費者がメリットを感じなくなる、つまり売れなくなり、最終的に中国製のEVや中国の関与する鉱物を締め出す狙いといわれるゆえんです。
アメリカのEV市場は今は鈍化傾向ですが、中長期的には大きな成長が見込まれています。

アメリカは巨大市場をテコに、友好国と非友好国を峻別することで、中国に対峙しようとしているのです。
日本の商社 北米シフトを加速
アメリカのこうした動きに日本の大手商社は相次いで北米に活路を見いだしています。

三菱商事は2024年3月、カナダ・オンタリオ州にあるリチウムの鉱山開発への参画に向けて、カナダの鉱山開発会社との合弁会社に出資することを発表しました。
三菱商事が開発事業に参画するリチウム鉱山
この鉱山は2027年ごろに生産を始め、年間のリチウムの生産量はEVおよそ30万台分の電池に必要な量に相当する、2万トンを見込んでいるということで、事業化に向けて調査を進めています。
電池に必要な黒鉛の生産をカナダで
一方、三井物産はカナダ・ケベック州の黒鉛の鉱山開発プロジェクトに参画しています。

黒鉛は電池の負極材と呼ばれる部材をつくるのに欠かせない鉱物で、中国が生産量のおよそ6割を占めています。

開発現場を取材するため、モントリオールから車で2時間ほど走ると、広大な鉱山が姿を現しました。
三井物産が開発プロジェクトに参画する黒鉛の鉱山(カナダ ケベック州)
鉱山の開発現場は、すでに採掘に向けた準備が急ピッチで進んでいました。

現場を訪ねると、掘り出された、きらきらと光る鉱石を見せてもらうことができました。

光っている部分が黒鉛だということです。
プロジェクトでは3年後の2027年に生産を始め、年間およそ10万トンの黒鉛を生産する計画です。

特徴は、負極材に加工するまでを一貫して手がけていることです。
ヌーボー・モンド・グラファイト エリック・デソルニエCEO
デソルニエCEO
「私たちは将来、少なくとも北米で電池の材料を調達するという選択肢を電池メーカーに提供し、中国市場に代わる選択肢となりたいのです」
北米で一貫生産を築くことができるか
7月上旬、カナダ・モントリオールの鉱山開発会社のオフィスを訪ねると、三井物産の担当者が駐在していました。
三井物産の担当者と鉱山開発会社との会議(カナダ モントリオール)
鉱山開発会社との会議で担当者は、黒鉛の生産に向けたプロジェクトの進捗を確認しながら、支援することを伝えていました。

この会社では、中国が黒鉛の生産で大きなシェアを握る中、このカナダの鉱山でいち早く黒鉛を生産し、電池の部材まで一貫して北米で生産できることが重要と考え、プロジェクトに力を入れているのです。
三井物産 小紫貴範さん
小紫さん
「主に中国で作られている黒鉛に関して、中国以外の国で一貫生産するというのはまだ、実現に至っていないのが現実です。それを北米でいち早く達成するというのは非常に意義のあることだと考えています。
アメリカやカナダにおける資源調達のサプライチェーンの構築の可能性は十分にあると感じております」
2つの荒波 一致団結した対応必要
リチウムイオン電池は1991年にソニーが世界で初めて実用化に成功し、その後も日本勢がビジネスや技術で世界をリードしてきました。
ソニーが世界で初めて実用化したリチウムイオン電池
しかし、市場が拡大するにつれて中国や韓国のメーカーにシェアを奪われつつあります。

重要鉱物は当初から海外頼みですが、資源国では輸出停止や国有化、国家管理といった資源ナショナリズムの動きが広がっています。米中の対立は続き、アメリカの中国締め出しの戦略はバイデン大統領が続投してもトランプ氏が返り咲いても変わらないとみられています。

日本は資源ナショナリズムと米中対立という2つの荒波にどう対処していくのか、国が前面に出て企業を強力に支援し、企業も積極的に投資していく、一致団結した対応が今すぐ求められているように思います。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京都内でリチウムイオン電... | トップ | イスラエル軍が空爆 “少なく... »
最新の画像もっと見る

政治経済問題」カテゴリの最新記事