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男子グレコローマン77キロ級で金メダルを獲得し、宙返りして喜ぶ日下尚=パリ(共同)
レスリング 男子グレコ77キロ級 日下尚が金メダル パリ五輪 NHK 2024年8月8日 6時24分
パリオリンピック、レスリング男子グレコローマンスタイル77キロ級の決勝で、日下尚選手がカザフスタンの選手に5対2で勝ち、金メダルを獲得しました。
オリンピック初出場で世界ランキング1位の日下選手は、決勝でカザフスタンのデメウ・ジャドラエフ選手と対戦しました。
試合は序盤、相手に場外へ押し出されるなど主導権を握られ、前半で2ポイントのリードを許しました。
後半に入ると一転、日下選手が積極的に仕掛けてペースを奪い返し、相手を投げるなどしてあわせて4ポイントを取って逆転に成功しました。
この後も最後まで攻めた日下選手はさらに1ポイントを追加して5対2で勝ち、金メダルを獲得しました。
銀メダルはジャドラエフ選手、銅メダルはアルメニアのマルハス・アモヤン選手とキルギスのアクゾル・マフムドフ選手でした。
1964年東京大会以来 1大会で2つの金メダル
男子グレコローマンスタイルは前日に60キロ級で文田健一郎選手が金メダルを獲得していて、日本選手がグレコローマンスタイルで1つの大会で2つの金メダルを獲得するのは1964年の東京大会以来60年ぶりです。
日下「やったぜ!」
日下選手は「夢を見ているようだ。最高に楽しい6分間だった。マットに上がったら誰も助けてくれないので、自分と、過去の自分がやってきたすべてを信じて、自分自身を奮い立たせて前に出続けた。オリンピックへの憧れが強くてレスリングを続けてきたので、憧れの場所で優勝できて、まだ現実か分からない」と興奮気味に話していました。
最後には「やったぜ」と力強く叫んでいました。
そして日下選手は表彰式のあと再び取材に応じ「日本選手が重量級で優勝するのは難しいと聞くが、自分は全然そのように思っていなくて、何でも頑張ればできると思っている。優勝できたことでほかの選手の刺激になったと思うし、もっと切磋琢磨して日本のレスリング、グレコローマンスタイルが強くなっていけたらいい」と話していました。
「凡人」が「超人」に 愚直に重ねた努力
「自分は才能がない『凡人』。パリで優勝して『超人』になりたい」
日下選手が常々、口にしてきたことばです。
3歳から地元・香川県でレスリングを始めた日下選手。
なかなか目立った成績は残せませんでしたが「才能は努力で超えられる」という指導を受けて、高校、大学に進んでからも練習への真摯(しんし)な姿勢は失わず、ストイックにみずからを鍛えてきました。
ようやく花開いたのがパリオリンピックへ向けた代表争いでした。
東京大会で同じ階級で銅メダルを獲得した大学の先輩でもある屋比久翔平選手を破ったあと、選考会を兼ねた世界選手権で好成績を収め、初めてのオリンピック出場をつかんだのです。
強さの礎とになっているのが相撲です。
小中学生のときはレスリングと平行して取り組んできました。しこやすり足で培った強じんな足腰を生かして前に出る自分のスタイルを確立していったのです。
パリオリンピックに向けては練習拠点の母校・日体大で練習に励むかたわら、相撲部屋に通って大関・琴櫻や優勝経験のある阿炎など、大相撲の実力者たちの胸を借りて前に出る圧力を磨いてきました。
ことしのアジア選手権や国際大会での優勝にもつなげ、世界ランキングは今や1位。パリオリンピックは第1シードで臨みました。
そして今大会でも決勝まで進んだ日下選手。
みずからを「凡人」と呼び続けた23歳が、愚直に重ねた努力の成果を示し、金メダルをつかみました。