クロガネモチの木 剪定前(二回のベランダから) 剪定後
剪定前 (東側畑から) 剪定後
松などの植木に巣くう虫がうごめき始める頃を「啓蟄」という。今年は3月6日であった。
啓蟄を迎えると、普段なら春が来たという表現が使われるのが一般的だが、今年は様子が違った。
低気圧や異常寒波の居座りで寒い日が長く続いた。いつまでたっても陽春という言葉とは縁遠かった。
だからということで、虫たちとは感度が違う人間様は、啓蟄になってもなかなかうごめき始めない。それどころか「風邪でも引いたら大変」と、益々ガードを固めて家の中にこもりがち。暖かくなるのを待った。
啓蟄から2週間余り、お彼岸の中日も過ごした今日は、やっとこさそれらしい青空と穏やかな春風に恵まれた。
早いとこやらなきゃ新芽の時季を逸すると心配していた庭木の剪定。今日こそは張り切ってやったのだ。
庭の東南隅にある、かれこれ樹齢60年になるクロガネモチの木。幹の大きさは直径25cmくらいまでになった。
「やがて剪定などできなくなるのだから、今のうちに根元から切ったら?」という声を聞き流し、今年も切り倒すことなく、剪定で丸坊主にはなったが、原形をとどめている。それにしても、枝ぶりもなにもない、ただバッサリ切り刻むだけ。
樹齢60年といえば、まさに我が人生そのものみたいなものだ。歴史が詰まっている。物語も秘めている。
やがてはこの手で引導を渡す日が来るのだろうが、それまではもう少し長生きしてもらって、東南からの風をしのいでもらいたい。
そしてなにより、ヒヨドリのペアの餌場として、ピーピー甲高い声で感謝の言葉を発しながら、満腹になって飛んでいく。
またやって来る。そんな平凡の繰り返しの中で、我が家のクロガネモチの木は、自分たちのもの、と決めたペアがいるようだ。
もうしばらく餌を与えよう。その代償にあの冬の風物詩ともいえる、甲高い鳴き声を聞かせてもらおう。
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