( この写真は、前回につづいてタイ北部、メーアイにあるコック川の岸辺の風景である。
手前はモーターボートであるが、エンジンは日本製の廃車エンジンが使用されている。
つまり、トヨタやホンダの「モーターボート」・・・というわけである。《 1995年1月
撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その30
漫画家アシスタントとしてJプロに勤めだしてから、ちょうど10年目。1988
年( 昭和63年 )、秋。 私はヤングJ誌への最後の投稿作品「 人殺しのメロ
ディー 」を描き上げ、長く暗いトンネル( ボツ作品しか描けない時期 )に入
った頃です。
バンコク空港で知り合った佐々木氏( 会社代表取締役、50歳代後半 )と次回
のタイ旅行では、現地で合流する打ち合わせのために私は氏の自宅を訪ねるこ
とになりました。
氏の自宅は調布駅から少し離れた緑の多い住宅街にあります。
私は駅を降りて、氏に教えられた通りに歩いて行きました。
『 この近くのはずなんだけど・・・、株式会社○○興業の社長さん
なんだから、きっと目立つ家かもしれないなァ・・・。オレはそ~
ゆ~所慣れてないから・・・緊張するなァ・・・・ 』
などと考えているうちに佐々木氏の家の近くに来ているはずなのですが・・・
・・・・それらしい家が見当たりません・・・。
辺りには幾棟もの長屋( 木造平屋の共同住宅、終戦直後を連想させる様な・・
・・・木の板むき出しの・・・ )が並んでいる・・・・・。
『 確かにここら辺なんだけど・・・こりゃァ、道を間違えたかも・・・ 』
と、思って引き返そうとした・・・その瞬間、長屋の一棟に小さな看板を発見
したのです。それは、古い合板ドアに貼られた小さな看板で・・・
『 ○○興業 』
私は辺りを見回して、もう一度その看板を見ます・・・
『 ○○興業 』
私は少し後ずさりして、その長屋全体を見回します。水色のペンキがポロポロ
とはげ落ちている貧○長屋です。不思議な気分・・・自分が映画かテレビドラ
マのワンシーンに入り込んでしまった様な気分・・・・
私は落ち着き無く動揺しながら再び看板を見ます・・・!
『 ○○興業 』
・・・確かに佐々木氏の会社の名前が書いてある・・・! 私はドアの横にあ
る赤い郵便ポストに小さな字で「 佐々木 」と書いてある事を確認します。
突然、心の中を淋しい様な・・・悲しい様な・・・まさにペーソスな風が吹き
抜けていった様な感じが・・・・・・
私は勝手に「 ○○興業 」を大きな会社だと考えていた自分を浅はかだったと反
省したものです。
『 まあ・・・世の中には色々あるさ・・・ 』
黒い呼び鈴を押します。
ビ・・・ビ~~~~~~ッ
『 気にしない、気にしない。何も気にしない事! こんな事何ン
でもない! 』
「 漫画家アシスタント 第5章 その31 」 へつづく・・・
★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第5章 その29」へ戻る 】
注意 : お知らせも併せてご覧下さい!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
★ 単行本に登場する漫画家先生から・・・
先日、「アシスタント物語」に出てくる漫画家先生の一人から、単行本への
名前(イニシャルではない!)の掲載について、快く承諾して下さるとの連
絡をいただきました。
その先生とは30年ぶりに話をしたのですが・・・大変、感動いたしました!
なによりも、お元気そうで・・・そして・・・私のこのブログを「面白いよ」と言
って、もったいなくも褒めていただきました・・・(感涙!)。
編集、ならびに関係者一同、とても喜んでおります。これを励みにして、
さらに精進したいと思っております!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【 各章案内 】 「第1章 改訂版」 「第2章 改訂版」 「第3章 改訂版」
「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
手前はモーターボートであるが、エンジンは日本製の廃車エンジンが使用されている。
つまり、トヨタやホンダの「モーターボート」・・・というわけである。《 1995年1月
撮影 》 )
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その30
漫画家アシスタントとしてJプロに勤めだしてから、ちょうど10年目。1988
年( 昭和63年 )、秋。 私はヤングJ誌への最後の投稿作品「 人殺しのメロ
ディー 」を描き上げ、長く暗いトンネル( ボツ作品しか描けない時期 )に入
った頃です。
バンコク空港で知り合った佐々木氏( 会社代表取締役、50歳代後半 )と次回
のタイ旅行では、現地で合流する打ち合わせのために私は氏の自宅を訪ねるこ
とになりました。
氏の自宅は調布駅から少し離れた緑の多い住宅街にあります。
私は駅を降りて、氏に教えられた通りに歩いて行きました。
『 この近くのはずなんだけど・・・、株式会社○○興業の社長さん
なんだから、きっと目立つ家かもしれないなァ・・・。オレはそ~
ゆ~所慣れてないから・・・緊張するなァ・・・・ 』
などと考えているうちに佐々木氏の家の近くに来ているはずなのですが・・・
・・・・それらしい家が見当たりません・・・。
辺りには幾棟もの長屋( 木造平屋の共同住宅、終戦直後を連想させる様な・・
・・・木の板むき出しの・・・ )が並んでいる・・・・・。
『 確かにここら辺なんだけど・・・こりゃァ、道を間違えたかも・・・ 』
と、思って引き返そうとした・・・その瞬間、長屋の一棟に小さな看板を発見
したのです。それは、古い合板ドアに貼られた小さな看板で・・・
『 ○○興業 』
私は辺りを見回して、もう一度その看板を見ます・・・
『 ○○興業 』
私は少し後ずさりして、その長屋全体を見回します。水色のペンキがポロポロ
とはげ落ちている貧○長屋です。不思議な気分・・・自分が映画かテレビドラ
マのワンシーンに入り込んでしまった様な気分・・・・
私は落ち着き無く動揺しながら再び看板を見ます・・・!
『 ○○興業 』
・・・確かに佐々木氏の会社の名前が書いてある・・・! 私はドアの横にあ
る赤い郵便ポストに小さな字で「 佐々木 」と書いてある事を確認します。
突然、心の中を淋しい様な・・・悲しい様な・・・まさにペーソスな風が吹き
抜けていった様な感じが・・・・・・
私は勝手に「 ○○興業 」を大きな会社だと考えていた自分を浅はかだったと反
省したものです。
『 まあ・・・世の中には色々あるさ・・・ 』
黒い呼び鈴を押します。
ビ・・・ビ~~~~~~ッ
『 気にしない、気にしない。何も気にしない事! こんな事何ン
でもない! 』
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先日、「アシスタント物語」に出てくる漫画家先生の一人から、単行本への
名前(イニシャルではない!)の掲載について、快く承諾して下さるとの連
絡をいただきました。
その先生とは30年ぶりに話をしたのですが・・・大変、感動いたしました!
なによりも、お元気そうで・・・そして・・・私のこのブログを「面白いよ」と言
って、もったいなくも褒めていただきました・・・(感涙!)。
編集、ならびに関係者一同、とても喜んでおります。これを励みにして、
さらに精進したいと思っております!
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「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
漫画家の苦悩がよく伝わってきました。オイラてきには好きですね
こういう作品。
絵も迫力がありますねー。
あれをアシなしで一人で描き上げるのはたいへんだろうと想像します。
しかもアシスタントの仕事をやりながらですからねー。
すぐにまた別の作品を描けといわれてもそれだけの労力をかけて
描いてボツになったらとか思うと気力がなえてしまいますよね。
新人はそこが苦しいですね。
仕上げるまでにだいたいどれくらいかかったのでしょうか
自殺しようと屋上からのコマは何時間ぐらいですか?
うちのJプロは仕事がそれほど忙しくなかったので、けっこう自分
の漫画を描く時間はふんだんにありました。
ですので、他の漫画家アシスタントの仕事をしている人よりも、かな
り楽に「持ち込み」出来た方だと思います。
一作目や二作目でデビューしたり、すぐ連載がもらえたりする新人
は例外中の例外だと思います。
そうした希有な人材は横におくとして、普通の新人でも何作も描い
て何度も編集員の批評を受ける事が出来る人は少ないのではない
でしょうか・・・・・
私の知る限りでは、漫画を一作完成させただけで漫画から足をあら
う人の方が圧倒的に多いようです。
一作目で編集員から厳しく批評されて・・・二作目に向かう途中で
挫折してしまうパターンのなんと多いことか・・・・
ところで、漫画の制作時間ですが・・・・・
私の場合、1ページで6~8時間。 「壁」の場合で3,4ヶ月くらいでしょ
うか・・・・・
あの屋上から飛び降りるシーンは、うちの仕事場から見た外の景色
を写真に撮り、それを資料にして描いたものです。
制作時間は・・・8時間くらい(あのコマのみ!)・・・だったと思います。
かなり遅いです。 人物を入れるだけなら1~2時間ほどで済むので
すが・・・・・・・・
やはり、背景には時間がかかってしまいます。
「Y君は、自分の漫画にはすごい労力をかけるねぇ・・・仕事場
と全然違うじゃないかぁ・・・・・」
などと、よく先輩アシスタントから言われたものです。(苦笑)