漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第7章 その5

2009年10月10日 22時58分54秒 | 漫画
( この漫画は、1992年頃に描いたパロディー漫画「暗黒劇画劇場」の一部です。どこかで見た様な
  ・・・顔かもしれませんが・・・・・ただのデブボクサーとトレーナーです! どうか・・・そ
  の辺のところは、気になさらずに・・・本文の方へどうぞ・・・・《 1992年頃、作画 》 )  
  
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
                 その5
 
 
 
1992年から93年にかけて・・・パロディー漫画の「 第1回 」と「 雑踏市 」を仕
上げ、さらに4,5本の下書きを描いてからS英社( ※参照 )へ持ち込みに出かけま
した。
 
自分の漫画のシナリオを考える時は、「 マンガ 」なんだけど・・・けっこう難し
い顔をしているものです。
 
しかし、この「 パロディー漫画 」のシナリオに関しては、本当に楽しかったので
す。 まさに「 自画自賛 」! 私自身・・・その破滅的( 無謀 )な作品に、なぜあ
れほどの自信を持つ事が出来たのか不思議でなりません。
 
私がS英社の「ヤングJ誌」でデビュー( 87年 )以来、ずっと担当を務めてくれてい
たK編集員( ※参照 )は、相変わらず無表情な顔に忙しい毎日のストレスを隠す様に
薄っすらと笑顔を浮かべながら私を迎えてくれました。
 
 「 コーヒーでも飲みながら見ましょう・・・ 」
 
いつもの様に、K編集員がそう言った時に・・・いつもとは違う事が起こりました
・・・・
 
 「 君も一緒に! 」
 
そう言うと、すぐ隣のデスクに座る後輩らしい女性編集員を促すのです。
 
 「 ハイ 」
 
そう言って、素直につき従う彼女は・・・今年、大学を出立てのまるでつるつるの
ゆで卵の様な女性でした。 パサパサしたセミロングの髪を振りながら、慣れない
動作で私とK編集員の後を付いてきます・・・
 
先輩編集員が実際に「 持ち込み 」にどう対応するかの実地研修だったのだと思い
ます。
 
喫茶店は近くの喫茶店・・・だったか、S英社のビル内にある喫茶店だったか・・
・・・もう忘れてしまいましたが・・・・とにかく、小さなお店で背中を丸める様
にして店のスミにあるテーブル席に3人が掛けました。
 
私は自信満々で原稿用紙を取り出します・・・
 
 「 ギャグなんですが・・・ 」
 
 「 えッ? ギャグ~ッ??? 」
 
クールなK編集員は目を丸くしながら原稿を受け取ります。 とは言っても、期待
に胸躍らせる・・・と、言うよりも・・・
 
 『 あんたがギャグを・・・・なんで・・・・?? 』
 
明らかに失望したような・・・そんな顔を原稿に向けます・・・・・
 
私は、それでも・・・
 
 『 最初のページから度肝を抜くぜ・・・フッフッフッ! 』(「 第1回 」)
 
しかし・・・・・・・・・K編集員は、驚くどころか二コリともしないでパラパラ
と原稿をめくる・・・・・・

見終わった原稿を隣に座る女性編集員にアゴで読む事を指示する。
 
私は、それでも・・・・・
 
 『 タイトルの「 第1回 」に驚かないとは・・・やっぱ、タイトルだけで「 完 」
  じゃキビシかったかな・・・・・・でも・・・「 雑踏市 」は、きっとバカ受け
  間違いなし! 』
 
K編集員は「 雑踏市 」のゴミゴミした人物の絵に見入る・・・・そして・・・・・
・・・しばし手が止まる・・・・・・と、思ったら・・・・・・・・・・・・あっさ
り、パラパラと4枚を流し読み。
 
そのまま、女性編集員の手へ・・・
 
私は、それでも・・・・・自信に満ち溢れていた・・・・・・ってなわけもなく・・
・・・さすがにイヤな脂汗がにじみ出て来ます・・・・そして、手のひらが汗でベト
ベト・・・・・
  
 『 なぜ・・・・・・・・なぜ笑わないの? 』
 
二人の編集員は冷静に・・・まずい料理を無理やり口に運ぶ様に・・・原稿を読み進
むのです。
 
K編集員は「 第3回 」( 下書き )分の原稿を読みはじめます・・・・・
 
しかし・・・K編集員の顔に笑顔はありません・・・・・・お笑い芸人が舞台で全然
笑ってもらえない時の死にたくなる様な心境は、きっとこんな感じなのではないでし
ょうか・・・・・
 
しかし・・・・・・
 
私は、それでも・・・・・・「 第3回 」に最後の望みをかけるのです・・・・・・
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第7章 その6 」 へつづく・・・


               ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第7章 その4」へ戻る 】

 
  
【 ※参照 】
 ・K編集員・・・・・・私より1つ年下の中堅編集員、後に「少年J誌」の副編
  集長になる。
 ・S英社・・・・・・・・少年誌、青年誌、発行部数で常にトップを争う大手出版。
  1992年当時、「YJ」は発行部数300万以上。「○忍!!空手部」「○氏の隣
  人」などが連載。
 
 

 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 ★ このブログ「漫画家アシスタント物語」が書籍化! 
   詳しくは・・・ 《アマゾンのネット通販》
   
 
 ★ 拙作、文庫本『 劇画 蟹工船 覇王の船 』も発売中!
  ○ 送料がかかってしまいますが・・・ 《アマゾンのネット通販》
  
 
 ★ 拙サイト 「WEB漫サイ」 に漫画家志望青年物語「雨のドモ五郎」「壁」
   などを「解説」と共に無料公開中! 
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

     
 

【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」




コメント (32)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする